「【LINE特集 by Blockchain EXE】LINEが展開する国内外のNFT事業の全貌とは?」を開催しました

2022年12月19日、「【LINE特集 by Blockchain EXE】LINEが展開する国内外のNFT事業の全貌とは?」を開催しました。

2018年にブロックチェーン事業へ参画以降、ベータ版を経て2022年4月に「LINE NFT」をローンチするまでに、LINEがブロックチェーンそしてWeb3時代をどのように捉え、取り組んできたかが語られました。イベント中に掲示されたQRコードを参加者がスマホで読み取り、NFTをエアドロップするという試みもなされました。会場にいたほぼ全員が自身のLINEアカウントから簡単にNFTを受け取る光景は、コミュニケーションの生活インフラである「LINE」だからこそなし得る、NFTのマスアダプションを実感しました。

セッションの登壇資料は下記よりご覧いただけます。

ブロックチェーン市場の動きとLINEのブロックチェーン事業の現状と課題について
上遠野 大輔 | ブロックチェーン事業部 事業部長 

LINEが展開する国内外のマーケットプレイスの仕組みについて
栗原 俊幸 | ブロックチェーン企画運営チーム LINE NFT プロジェクトマネージャー 

NFTを活用したマーケティング手法と効果について
佐野 由生子 | ブロックチェーン事業部 マーケティングマネージャー 

米ガートナーの先進技術トレンド指標「ハイプサイクル」では「過度な期待」から「幻滅期」に入ったNFTですが、投機層が抜けた今こそが好機であり、正念場でしょう。プロフィールNFT、LINEスタンプ付きNFT、エアドロップ機能など、LINEならではの機能がこれからどう進化していくのか、楽しみになる回となりました。Blockchain EXEでは引き続き、ブロックチェーンの社会実装の最新動向および事例を追っていきます。

EEA Japan主催「【スクエニ、日立が語る】ゲームxNFT、Web3x分散型IDによるブロックチェーン事業の最前線」を共同開催しました

2022年10月31日、EEA Japan(エンタープライズ・イーサリアム・アライアンス・ジャパン)主催による「【スクエニ、日立が語る】ゲームxNFT、Web3x分散型IDによるブロックチェーン事業の最前線」を開催しました。

日立製作所 高橋さんからは、PBI(公開型生体認証基盤)を活用した実店舗での指静脈認証決済の動画デモや、スクウェア・エニックス 畑さんからはNFTゲーム事業化における苦労や工夫が発表され、まさにブロックチェーンの「実行(Execution)」の最前線を垣間見ることができるセッションとなりました。Blockchain EXEのファシリテーターを交えたディスカッションでは、会場参加者からも多くの質問が挙げられました。

各セッションの登壇資料は下記よりご覧いただけます。

エンタープライズブロックチェーンの可能性
石井敦 | Enterprise Ethereum Alliance 日本支部代表

Web3時代のデジタルアイデンティティ
高橋健太 |株式会社日立製作所 研究開発グループ

資産性ミリオンアーサーを通して語るNFT事業の取り組み事例
畑圭輔 | 株式会社スクウェア・エニックス ブロックチェーン・エンタテインメント事業部

最新のユースケースを通して、ブロックチェーンのエンタープライズ活用が着実に進んでいることを感じることができました。高橋さんからは、同社が研究開発を進める、本人がサイン(or mint)したことの証明を行えるNFTの偽造対策技術に関するPoC(Proof of Concept:概念実証)パートナーを探しているとの案内もありました。業界を超えた企業の共創の場にもなれるよう、Blockchain EXEでは引き続き、エンタープライズブロックチェーンの最新動向および事例を追っていきます。

「Web3はインターネットを民主化できない!?識者による徹底討論」を開催しました

今回はITジャーナリストの湯川鶴章氏によるプレゼンを通して、ブロックチェーン/Web3に精通したお二人のゲストにもディスカッションに参加いただきました。

ゲストスピーカー
・湯川 鶴章 | 作家、学習コミュニティTheWave代表、TheWave湯川塾・塾長、株式会社あしたラボラトリー・チーフストラテジスト 
・西村 祥一 | コンプス情報技術研究社 代表取締役 
・町 浩二 | SingulaNet株式会社 代表取締役 

「Web3で分散化社会は可能か」と題した湯川氏によるプレゼンでは、イーサリアムの共同創設者の一人であるVitalik Buterin氏の最新論文をベースに、Web3の本質とは何か?現在地はどこで、どのような課題や、ビジネスの可能性があるのか等、ITジャーナリストとしての考察を踏まえつつ詳しく聞くことができました。

その後のディスカッションでは、ブロックチェーンの社会実装の最前線に身を置く、西村氏、町氏が加わり、実践者ならではのリアルな経験談や考察が語られました。また、NFTの次のトレンドとも言われているSBT(Soul Bound Token)について、会場参加者も巻き込んで白熱した議論となりました!

湯川氏による登壇資料は下記よりご覧いただけます。

今ではWeb3というワードも浸透しつつあり、大手各社も乗り遅れまいとそれぞれに動き出しています。ですがWeb3の本質とは何なのか・・・、そんな疑問の答えが確かに垣間見えた、貴重な回になったのではないでしょうか。

❖次回はEEA(Enterprise Ethereum Alliance)とブロックチェーンエグゼの共催企画!
【スクエニ、日立が語る】一過性で終わらないブロックチェーン事業の現実解:toC vs toB最前線

スクウェア・エニックスと日立からのゲストスピーカーが最新のブロックチェーン事業について語ります。10/31(月) 19:30スタート、会場開催のみとなります。皆さまのご来場を心よりお待ちしています!

「【メルカリ特集 by Blockchain EXE】価値交換は新しい世界に突入するのか?メルカリが取り組むブロックチェーン事業の全貌に迫る!」を開催しました

2022年7月29日、「【メルカリ特集 by Blockchain EXE】価値交換は新しい世界に突入するのか?メルカリが取り組むブロックチェーン事業の全貌に迫る!」を開催しました。

メルカリのブロックチェーン事業を牽引する3名によるプレゼンを通じて、Web2.0において日本最大のフリマサービスという新しい経済圏を作り上げてきた同社がブロックチェーン技術をどのように捉え市場に参入しているのか、サービスにどのように組み込んでいるか、​​NFT・仮想通貨取引所・法律的観点から徹底解剖。その後、Blockchain EXEのファシリテーターも交えたパネルディスカッションでは、会場参加者から多数の質問が寄せられ、大いに盛り上がりました。

各セッションの登壇資料は下記よりご覧いただけます。

メルカリにおけるブロックチェーン技術の活用について
伏見慎剛 | 株式会社メルカリ 執行役員 NFT担当 / 株式会社メルコイン 取締役

パ・リーグ Exciting Moments β」とNFT事業について
宮本 祐一 |株式会社メルペイ・メルコイン PRマネージャー/株式会社メルカリ NFTマーケティング担当

※登壇者は中村奎太さん(株式会社メルコイン ディレクター)の予定でしたが、当日に急遽変更となりました。

NFT・ブロックチェーン関連の法律的観点について
永井幸輔 | 株式会社メルカリ 兼 株式会社メルコイン NFT新規事業開発マネージャー

直近ではWeb3もバズワードとなり、Dappsのユースケ―ス、参入の事業的、法的解釈の注目がより高まっています。Blockchain EXEでは引き続き、ブロックチェーンのビジネス活用における最新動向および事例を追っていきます。


✨次回はジャーナリスト湯川鶴章さんによるWeb3座談会!9月6日(火) 19:30開始!会場開催です!✨

EEA Japan主催「インターオペラビリティがもたらすエンタープライズブロックチェーンの進化とは」を共同開催しました

2022年7月1日、EEA Japan(エンタープライズ・イーサリアム・アライアンス・ジャパン)主催による「インターオペラビリティがもたらすエンタープライズブロックチェーンの進化とは」を共同開催しました。

2つのセッションを通じて、異なるブロックチェーンを繋ぐ技術である「インターオペラベリティ」について仕組みや種類、そして具体的なビジネスにおける活用の取り組みについて登壇者から発表があり、QAでは参加者から多くの質問が寄せられました。

また、約2年半ぶりのリアル開催となり、セッション終了後に行われた交流会では、登壇者と参加者の間で活発な意見交換が行われ、大いに盛り上がりました。

各セッションの登壇資料は下記よりご覧いただけます。

デジタル通貨・ステーブルコインが注目される今、インターオペラビリティが必要とされる理由
石川 大紀(株式会社Datachain 事業開発シニアマネージャー)

DVP決済実現に向けた挑戦
世取山 進二(株式会社NTTデータ 金融事業推進部 デジタル戦略推進部 部長)

インターネットの相互接続と同じ役割を担うインターオペラビリティは、今後さらに重要になっていくでしょう。Blockchain EXEでは引き続きこの技術の最新動向および事例を追っていきます。


✨次回は7月29日(金) メルカリ特集!会場開催!✨

価値交換は新しい世界に突入するのか?メルカリが取り組むブロックチェーン事業の全貌に迫る!

不正防止を実現するブロックチェーン活用とは【Blockchain EXE TV #2】

データの活用が進められていくと同時に、取引の透明性や不正防止の仕組みは重要になっています。今回のBlockchain EXEは投票や取引における不正防止やエコシステムを実際にどのように維持しているのかについての具体的なユースケースに焦点を絞り、ディスカッションを行いました。

目次

  1. 『NFTアセットバリューによる投票制度事例』| 小澤 孝太 / CryptoGames Inc.
  2. 『E-voting system utilizing blockchain』| ジョン・オウ / OK BLOCKCHAIN CENTRE SDN. BHD. Manager
  3. 『MakerDAOのガバナンスモデルについて』| キャサリン・チュウ / Maker Foundation 日本地域リーダー
  4. 『ゼロ知識証明を使った投票プロトコル”C.R.E.A.M”』 |  石黒 一明 / クーガー株式会社
  5. 『ディスカッション:不正防止を実現するブロックチェーン活用とは』

1.『NFTアセットバリューによる投票制度事例』| 小澤 孝太 / CryptoGames Inc.

CryptoGamesで制作されたブロックチェーンを使ったトレーディングゲーム「クリプトスペルズ」を例に用いて、ゲームにおけるブロックチェーン技術の使用方法・特性について詳しく解説して頂きました。

1.1 ブロックチェーンゲームとは何か?

・ユーザー同士のトレード・売買が自由にできる。

これまでのソーシャルゲームは運営のサーバー上にデータが存在しましたが、本ゲームではデータをNFTでブロックチェーン上に発行する事で、ユーザーが自由にトレード・売買する事が可能になっています。

・ブロックチェーンゲーム=NFT(Non Fungible Token)

 NFTとはコピーできないシリアルデータの事であり、今までデジタルデータではコピーが簡単にできてしまうという問題点がありました。そのため、ゲームアイテムに代表されるデジタルアセットの二次流通や、トレードや売買といったことができていませんでした。その中で、データのコピーができないNFTの誕生により、今後はアナログと同じようにゲームソフトや書籍を自由に売買できるようになるのではないかと思われます。

・ゲームデータが資産になる

ブロックチェーンでNFTを発行する事でカード一枚一枚に価値が生まれ、アナログと同様にデジタルでも世界に一枚だけのカードというものが作れるようになります。

実際、60万という高額な値段で取引されているカードもあるようです。

今後はキャラクターを個人の所有物とみなし、その個人のキャラクターを別のゲームでも使えるようにする事が可能になっていくのではと予測されます。 

1.2 ブロックチェーンの運営によってゲームがどう変わるか

・ブロックチェーンゲーム=非中央集権的ゲーム

従来のゲーム=中央集権的ゲームであり、運営主体でイベントなどが開かれていましたが、ブロックチェーンゲームではユーザーが主体となってゲームが進行していきます。

理由として、ブロックチェーンゲームではユーザーの所有するキャラクターがストックオプションのような働きをする事で、ゲームの盛り上がり=自身にとっての利益となるため、ユーザーが自発的にイベント等を開いたり、新規のユーザーを招いたりする事でゲームを盛り上げようと動くようになっていくからです。

・運営の一部をユーザーに任せる

ブロックチェーンゲームの場合、キャラクターはユーザーの資産であり、パラメーターは資産の価値であるため、運営側がユーザーの資産に干渉して良いものではないという考えがあります。そのため、キャラクターのパラメーターをユーザー投票で決めているそうです。

ただし現段階では複数アドレスでの投票を防ぐ事が出来ないため、NFTのトータルアセットバリューに応じて投票権を持つという仕組みを採用しています。

2.『E-voting system utilizing blockchain』| ジョン・オウ / OK BLOCKCHAIN CENTRE SDN. BHD. Manager

OBCからはBCvoteという電子投票システムについて紹介して頂きました。

BCvoteの4つの重要点

1.投票行為の追跡と見落としがないという事

2.urlと投票者の固有の有権付与によってなされる透明性があるという事

3.一度投票したものは変えられないという安全性の保障があるという事

4.投票の設定や実際に投票する際に簡単にできるという事

BCvoteとは何か?

BCvoteは第三者の関与を排除できるというブロックチェーンをベースにしたwebアプリケーションです。

本アプリケーションは選挙やフィードバックを受ける事に用いられており、webブラウザやタッチスクリーンなどを通して投票ができるようになっています。

・投票までの仕組みについて

投票者が自分のPCやスマホで投票する際、投票内容はサーバーを通ってブロックチェーンでの承認を経てからデータベースに格納されます。

・ブロックチェーンのノードの仕様

まずプライベートイーサリアムを使い、POAのコンセンサスを経ています。また、スマートコントラクトを実装していて、十分なテストを実施してリリースされています。

・BCvoteでの投票の流れ

投票における全てのデータが暗号化されます。

暗号化されたデータ(ハッシュ)がブロックチェーン上でトランザクション処理されデータベースに格納されていきます。

今後のBCvoteのロードマップについて

現段階で投票から最終的に結果が出るまでの部分が実装されています。

今後は投票途中で状況が表示されるようなシステムを実装していきたいと考えています。

また、不正投票を更に防ぐものとしてシングル・サインオンの実装をしていきます。

サブスクリプションという事でwebから簡単に利用できるようなものを目指していきます。

3. 『MakerDAOのガバナンスモデルについて』| キャサリン・チュウ / Maker Foundation 日本地域リーダー

MakerDAOとは何か、その仕組みやそれを保護する為のセキュリティについて紹介して頂きました。

3.1 MakerDAOとは何か?

・ MakerDAO=世界経済に金融の安定性と透明性をもたらす事を目的とした分散型組織

DAOとは自律分散型組織という意味です。
DAOは組織としてそれぞれの関係者が各役割を担当しており、全ての人がインセンティブを貰えるようにネットワーク全体の位置を実現し機能しています。

・MakerDAOはDAIの生成が可能

MakerDAOは分散化された資産担保型ステーブルコインの代表格であるDAIの生成が可能です。
DAIは価値が安定していて完全にブロックチェーン上にあるため、ボーダーレスで誰でもどこでも利用が可能です。

・ MakerDAO=MakerProtocol+MakerCommunity

MakerProtocolは様々なスマートコントラクト、ステーブルコインが含まれています。MakerCommunityはMakerDAOの参加者のCommunityです。Protocolの変更に関するすべての決定は分散化された方法で行われています。

・MakerDAOの管理者について

管理者はMKR保有者の中で非常に重要なガバナンスを持っています。投票コントラクトのシステムを通してMKR保有者はメーカープロトコルとDAIの金融リスクを管理して安定性・透明性及び効率性を確保しています。だからこそこういうシステムをきちんと機能させる必要があります。

3.2 Makerガバナンスと投票の仕組み

・Makerガバナンスはオフチェーンとオンチェーンの二つ

オフチェーンは毎週ガバナンスコールが開催された後に議論が行われ、コンセンサスが形成され、そのあと投票の提案が行われます。このプロセスをオープンで行うので透明性が高く保たれます。
オンチェーンはセットアップを行いMKR権限を付与します、その後MKRをロックし、投票を行います。投票の裏では約10数個のMakerProtocolモジュールが動いており、各モジュールはそれぞれスマートコントラクトで形成されています。
投票はオンチェーンで行われているため透明で検証が可能です。

3.3 攻撃を防ぐための対策

以下の三つのモジュールがMakerProtocolのメインセキュリティを守っています。

・オラクルセキュリティモジュール
・ガバナンスセキュリティモジュール
・緊急時シャットダウンモジュール 

・オラクルモジュール

MakerProtocolがシステムを維持するために市場価格情報を提供しています。価格フィードは多くの承認をされてから提供されています。

・ガバナンスセキュリティモジュール

悪意あるガバナンスの提案を遅らせます。この遅延によりMKR保有者は必要に応じてシャットダウンを実行することで悪意あるガバナンスの提案からシステムを守る事ができます。

・緊急時シャットダウンモジュール

最後の手段としてMakerProtocolを適切に停止させるモジュールです。

4. 『ゼロ知識証明を使った投票プロトコル”C.R.E.A.M”』 |  石黒 一明 / クーガー株式会社

ゼロ知識証明を使った投票プロトコル(通称 C.R.E.A.M)を使った投票システムに関して、その仕組みと内容・今後の展望についての説明をして頂きました。

4.1 C.R.E.A.M (Confidential Reliable Ethereum Anonymous Mixer) 紹介

・C.R.E.A.Mのプロトコルについて

C.R.E.A.Mは公開検証可能なzk-SNARKを利用した秘匿トランザクションミキサーで投票に特化したプロトコルです。

・なぜ投票とミキサーの関係があるのか

イーサリアムの場合はあらゆるトランザクションの全てに透明性があります。
お金と物を交換した際、その人がお金を何に使ったかを分からなくするために、次の社会ではリアルな生活の中でのミキサーという役割が出てくるのではと予想しています。

・投票方法について

投票には従来の手書きでの投票とデジタルでの投票がありますが新しくミックスネットでの投票というものが提案されており、それぞれに長所・短所があります。

①手書き
・長所:大失敗しにくい、大規模攻撃を受けにくい
・短所:一元管理、改ざん耐性が弱い、無効投票がある(不完全文字、解読不可、マークアップ不備)

②デジタル
・長所:無効票を減らす
・短所:セキュリティ(デバイス乗っ取り、ネットワーク攻撃、プライバシー)、大量採用が難しい

③ミックスネット
・長所:秘匿性の確保、検証が可能
・短所:暗号化時のエラー、攻撃検出難易度が高い

※ミキサートラストモデル
 Ⅰそれぞれのミキサーは正直でなければならない
 Ⅱキャスティング時の脆弱性があってはならない
 Ⅲネットワークが崩壊してはならない
 Ⅳスイスでの実証実験でネットワークアタック

ミックスネットの投票では秘匿性の確保や検証が可能ですが、検証はミキサートラストモデルというものに100%依存しており、ミキサーが信頼できるものでないと全ての投票プロセスが無効になってしいます。

4.2 C.R.E.A.Mオーバービュー

・投票の流れ

例:投票者とコントラクトと候補者がいた場合
①投票者がサインアップ
②トークンをデポジット
③QRコード発行
④発行されたQRコードを使って投票
といった流れで投票が行われます。

・投票後の処理

発行されたQRコードを読み込んだ際に、トークンをコントラクト側に発信します。それによってコントラクト側にデポジットされたトークンを候補者側が引き出せるようになり、トークンの数=候補者の投票数となります。
また、トークンはコントラクトを介しているため誰が投票したかは分からず、秘匿性もあります。

・今後しなければならない対策

正直なオペレーターや大規模な投票に対応できる適切なマークルツリーのサイズが必要です。選挙毎に信頼できるセットアップやハードウェア、適切なスケーラビリティ、ガスステーションやユーザーへの使い方の指導なども必要です。その他、最も大きな問題としては共謀や投票買収への対策もしなければなりません。
MACI(Minimum Anti Collusion Infrastructure)の実装やトラステッドセットアップの不要問題などの課題にも取り組んでいきます。

5. 質疑応答

Q. ゲームユーザーによる運営参加は画期的だと思いますが、ブロックチェーンの必要性に少し疑問を感じます。ブロックチェーンだからこそ実現できたことはあるのでしょうか?

小澤:ブロックチェーンはあくまで手段であって、こだわりを持っている訳ではない。
ゲームのほとんどの開発はオフチェーンで実装しています。所有権の部分だけはオンチェーンで実装した方が色々なメリットがあると思っているのでブロックチェーンで実装しています。目的はあくまでユーザーが自走するトークンエコノミーを作っていくという事です。

Q.投票結果が改竄されないとして本人確認はどうするんでしょうか?

ジョン:投票のページというものがパブリックurlにあり、それに対して投票者一人一人にユニークIDがブロックチェーンを通して発行されます。
選挙名簿というのをどのように管理するかというのが別の問題としてありますが、基本的には選挙名簿からIDが発行されるようになります。

Q.MakerDAOとはそもそも何のために何をする組織なんですか?

キャサリン:MakerDAOは世界のどこに行っても誰でもアクセスできる金融サービスを作ろうとしている分散的組織です。

Q.投票システムのユースケースとしてどのくらいのセキュリティレベルが要求されるとお考えでしょうか?

石黒:どういった投票を実現するかによります。国民選挙の場合はキュリティ関連やスケールの部分をより強化した設計になってくるとは思います。

Q.ゲームユーザーは投票の際にどのような考えでパラメータを決めていくんでしょうか?自分の所有しているカードを強くしたいとかでしょうか?

小澤:ゲームバランスが崩れるとゲームの人口が減ってしまうのでゲーム全体のバランスが取れるように動いているユーザーが多く見られます。

Q.日本では投票の不正というのはあまり聞きませんが、海外では不正投票はそれほど問題になっているのでしょうか?

ジョン:不正投票というものは世の中で常に起こるものです。

Q.MakerDAOは投票でなにを決めるんですか?

キャサリン:MKR保有者が投票で決めるのはリスクパラメータです。リスクパラメータには生産率や財務上限などの様々な要素が含まれています。

6. 「ディスカッション:不正防止を実現するブロックチェーン活用」

石井:皆さんが不正防止として対策している事で犠牲にしているものもあると思いますが、優先度について教えて下さい。

キャサリン:投票を実装するために複雑なステップがあります。それをこれから改善するためにアップデートします。対策として考えているのは投票代理人を持つ事です。これによりMKR保有者の投票を簡単にできます。

石井:ゲームづくりにおいて犠牲にされた事はありましたか?

小澤:世界に一枚しかないカードがあるという時点で手に入らない人がほとんどな為、それが本当に面白いのかというのが大前提としてあります。そういった課題に対してユーザーが楽しめるモードや新しいゲーム性を作る事で解決していいたいです。

石井:別のゲーム間でアセットを共有するという事ですが、その変換部分はどうなっているんですか?

小澤:NFTコンバートというコントラクトを作っており、そこで変換を行っています。

石井:電子投票を行うにあたって何が犠牲になると考えますか?

石黒:ブロックチェーンを使った投票というのは各所で出てきていますが、大勢が一番妥協しているラインというのは完全分散型でも完全中央集権でもない半中央集権の様な形になってしまう事です。

石井:ブロックチェーンで不正防止と言われる事が多いですが、今一番解決できそうな事ってなんでしょうか?

石黒:投票とは離れますが、フェイクニュースなんかはブロックチェーンを使って解決できないかなぁとは思います。

石井:フェイクニュースをわざと流す人もいれば、それを真実だと思って転送する人もいるのでそういった情報のトレースというのはブロックチェーンで重要かと思います。

7.まとめ

 投票に関してブロックチェーンの利用は多くのところで行われてきてはいますが、まだデメリットや課題となる部分もあり、そうした部分が運用していくにあたっての障害となっているようです。今後既存のシステムに対してブロックチェーンの優位性がより強く発揮されれば、そういった課題を超えて新しい投票システムが浸透していくのかもしれません。

マイニングの仕組みとは

マイニングと仕組み

ブロックチェーンと深いかかわりを持つものに、「マイニング」があります。

そもそも、ブロックチェーン技術は、トランザクション(取引記録)をブロックに記録していくことで、ブロックがチェーン状につながることに特徴があります。

この記録は、コンピューターの計算能力を使うことで行なわれています。仮想通貨は、この作業がなければ成り立たないため、この作業にあたる人(多くは事業者)に報酬として仮想通貨を付与しています。

このことから、トランザクションの承認にあたる人をマイナー、それによって報酬を得る行為をマイニングといいます。

マイニングとは①:計算機があれば誰でも参加できる

基本的に、仮想通貨の発行総量には上限があります。例えば、ビットコインの発行は2100万枚を上限としており、新規の発行はマイナーへの付与を通して行なわれます。

このため、ビジネスとしてマイニングに取り組む事業者も存在します。マイニングは誰でも参加できるものですが、実際にはマイニングの多くが大規模なマイニング業者によって行なわれています。

マイニング事業では、マイニングの結果として受け取る新規発行通貨が利益となるため、マイニング事業の収益性は仮想通貨の価格変動に大きく左右されます。

マイニングの仕組み②:価格とマイニングの関係

仮想通貨の価格が低いタイミングでマイニングしていれば、その後の値上がりによって大きな利益を得ることができます。

顕著な例が、クレイグ・ライト氏の例です。クレイグ・ライト氏は、ビットコインの開発者であるナカモト・サトシを自称していることや、ビットコインSVを率いる人物としても知られています。

クレイグ・ライト氏は、ビットコイン黎明期である2009年から2011年にかけて、マイニングによって110万BTCものビットコインを得ています。これは、2020年2月25日現在の時価

(1BTC=105万円)で換算すると、1兆1550億円となります。

クレイグ・ライト氏ほどではなくとも、2017年にビットコイン価格が急上昇する以前にマイニングを実施していれば、かなりの利益を得られていたことでしょう。

このため、仮想通貨市場が活況を呈した2017年後半には、その後もしばらく値上がり益が期待できるとして、多くの事業者がマイニング事業に乗り出しました。

マイニング事業の難しさ

実際には、多くのマイニング事業者が困難に直面することとなりました。なぜならば、上記の通り、マイニング事業の採算性は、マイニングする仮想通貨の価格変動に大きく左右されるためです。

2018年に入るや否や、仮想通貨は軒並み暴落となりました。多くの事業者が、マイニングの対象としてビットコインを選びましたが、ビットコイン価格は2017年末に200万円を突破していたものが、1年後の2018年末には30万円台へと下落しています。

マイニングのためには、膨大な処理能力が必要となります。このため、マイニング事業者はマイニングファームといわれる施設を作り、たくさんのコンピューターを稼働させてマイニングにあたります。つまりマイニングは、多くのコストをかけて、初めて成り立つ事業なのです。

マイニング事業からの撤退

ところが、ビットコイン価格が下落の一途を辿ったことで、コストをかけてマイニングしても、マイニングによって得た仮想通貨がみるみる下落していき、利益が目減りし、採算性が極端に悪化していきました。

日本国内のマイニング事業者も、2018年末に、GMOインターネットやDMM Bitcoinがマイニング事業から撤退することを発表しています。特にGMOインターネットは、マイニング事業により、連結決算で約355億円もの損失を計上しています。

このように、2018年にビットコイン価格が急落したことを受けて、世界中のマイニング事業者に逆風が吹いたのです。

価格変動との関係からマイニング事業を見てみると、マイニングの仕組みが一層分かりやすいかと思います。

ビットコイン取引にプライバシーはないのか?

ビットコインとプライバシー

2017年に大流行して200万円以上の高値をつけたビットコインは、投資の面だけでなく技術的な面からも世界中を沸かせました。

そんなビットコインですが、プライバシーは確保されているのでしょうか?

FacebookのようなSNSで個人情報をオープンにすることは一般的ではありますが、ビットコインに限らずネット上でオープンに情報を晒す/晒される事に対して抵抗を感じる人は少なくないでしょう。

この記事ではビットコインのプライバシー問題が引き金となって引き起こされている問題点についてもご紹介します。

目次

  1. ビットコインの特徴
  2. プライバシーの侵害とその他のデメリット
  3. プライバシーをより守れる通貨
  4. ビットコインのプライバシーのこれから

ビットコインの特徴

中央集権に対するアンチテーゼとして作られたのがビットコインです。そのため、ビットコインには日本の中央銀行のような中央管理者がいません。マイナーと呼ばれる人達により全ての決済の正当性が確認されます。そしてビットコインはトランザクションが全て公開されています。

ですが、トランザクションが公開されていると言っても基本的にはビットコイン取引においてプライバシーは守られています。なぜなら、トランザクションは公開されていますが、取引に関わった人達の名前などは明らかにしていないからです。

つまり、ビットコインによってプライバシーが危うくなることは基本的にはありません。この「基本的に」というのがミソです。それでは詳しく説明します。

プライバシーの侵害とその他のデメリット

前章で説明したように基本的にはプライバシーが危うくなることはありませんが、実際のところはどうなんでしょうか?

実はトランザクションが分かるということは取引が行われた時間、取引回数、そして取引履歴等からお金がいくらくらいあるかも予想できてしまいます。

ただ、このような事を調べられるのはビットコインの取引を調べているようなElliptic、Chainalysisなどの会社に限定されます。

このことから分かることは、「ビットコインは調べようと思えば理論上は個人を特定することが可能である」ということです。(※これはあらゆる匿名ITサービスにおいても同じことが起きえます)

ビットコインの追跡

またプライバシーを侵害するビットコインの特徴として「追跡機能」があります。

コインチェックでのNem流出事件では、仮想通貨の追跡機能を利用して捜査が行われました。

事件で流出したNemはブラックリスト化され取引禁止となりました。

しかし、間違ってそのNemと取引した人は犯行への関与を疑われてしまったのです。

このように過去の通貨の動きを筒抜けにする追跡機能はプライバシーを侵害するだけでなく、通貨の代替可能性を著しく低下させたり、犯罪に巻き込まれる可能性も増やしてしまうデメリットもあるのです。勿論、追跡機能は犯罪の抑止力という良い面もあります。

プライバシーをより守れる通貨

ここまでビットコインを中心に話してきましたが、ビットコイン以上にプライバシー保護ができる通貨はないのでしょうか。実は存在します。それが「匿名仮想通貨」と呼ばれる通貨達です。

有名なものとしてはMonero,Zcash,Dashがあり、これらにはゼロ知識証明、リング署名、コインジョインなどの利用者の特定を防ぐ技術が使用されています。

匿名通貨のマネーロンダリングなどのリスク

匿名仮想通貨はビットコインを含めたその他の通貨と比べて圧倒的にプライバシー保護ができると言われています。匿名仮想通貨はメリットしかないように思えますが、大きなデメリットもあります。それはブラックマーケットで使用されたり、脱税、マネーロンダリングに利用されるリスクが高くなるという点です。

その危険性から海外だけでなく日本でも規制される動きが後を立ちません。日本でもコインチェックでかつて取り扱われていたMonero,Zcash,Dashが消えてしまいました。

ビットコインのプライバシーのこれから

プライバシーを守るためのシステムは前述したもの以外にもすでにいくつかあります。例えばダンデライオン、シュノア署名、カンフィデンシャル・トランザクション 、ミンブルウィンブル、タップルートなどです。ビットコインに関してもプライバシーが強化される計画や案はいくつか出てきています。しかし、その進展はかなり遅いと思われます。理由としてはビットコインが非中央集権的な性格を持つため、意思決定に時間が必要だからです。仮にプライバシー強化が決定されたとしても、ハードフォークによる分裂が行われる可能性もあるでしょう。

まとめ

ビットコインの現状としては基本的にはプライバシーは侵害されないこと、そして例外として高度な技術があれば利用者が特定されてしまう危険性があることが分かりました。ビットコインだけでなく仮想通貨自体がまだ発展途上であり、プライバシーについてはこれから更に強固になる可能性も大きくありますが、その為には時間が必要になるでしょう。

エンタープライズ領域におけるブロックチェーン 最新動向【Blockchain EXE TV #1】

エンタープライズ領域におけるブロックチェーンニュースをピックアップ

目次

  • 最近のブロックチェーン業界の動向
  • 近年のブロックチェーンの定義
  • エンタープライズ領域でのブロックチェーンの動向

Blockchain EXE TVと題して、初のオンライン開催となりました。

ブロックチェーン業界でいま何が起きているのか?エンタープライズ領域で活躍するスピーカーをオンラインに招き、最新のホットトピックを中心にディスカッションを行いました。

1.最近のブロックチェーン業界の動向

  • 平山毅  日本IBM株式会社(以下:平山)
  • 山田宗俊 SRI R3 Japan株式会社(以下:山田)
  • 伊藤佑介 博報堂ブロックチェーン・イニシアティブ (以下:伊藤)
  • 石黒一明 Enterprise Ethereum Alliance Japan Regional Head(以下:石黒)
  • 石井敦  クーガー株式会社(以下:石井)

伊藤:今日はエンタープライズ領域に関して皆さんが感じている雰囲気や意見を聞きたいと思っています。ブロックチェーンは仮想通貨の中から抜けてきていて、企業が今後どういう物として取り組むべきなのか、経営層が理解してその課題にフィットした形でやらないと意思決定されない中で、デジタルトランスフォーメーションのくだりでブロックチェーンに取り組む意義を語ったり、その一環として進めているというのをよく聞きます。そういった企業側の課題としてのDXの解決手段のひとつとして捉えているのか、そのあたりで皆さんはどのように感じられていますか?

石井:ブロックチェーンを前面に出すというよりはデジタル化という文脈で何を使うかとなった時にブロックチェーンに自然に見えてきてるなっていう感じはしますね。

石黒:私がEEAをやり始めたころは「とりあえず他社がやってるからウチもやりたいんだけどどうなってるの?」みたいな探りを入れる感じの人達が多かったんですが、実際に海外などで現実的なアプリケーションが出たり、時流のせいもあってブロックチェーンの必要性はかなり上がってきているように感じます。

新型コロナウィルスの影響

伊藤:時流というとどういった事に時流を感じますか?

石黒:コロナが一番大きいとは思いますけど、国が閉鎖している中で情報が錯綜している状況で、本当に信頼できる情報はどこから出るんだろうとか、本当のものを発信する人へのインセンティブなどを改めて考えるようになったかなと。

石井:それは僕もすごく感じます。コロナってみんなが情報をすごく気にするんですね、気にするんだけど一次情報、二次情報と編集されまくる。専門家もいればコメンテーターやそれらしい事を言う人など、いかに一次情報にアクセスする事が難しいか。情報経由されているうちにその信頼できないデータを皆真に受けているんです。

承認プロセスの改善

伊藤:デジタルの中である程度信頼が担保されなくても、リアルな場–例えば会社などで人と人との対面という形で信頼が担保されていました。ですが、デジタルでの活動が増えたことで、もはやデジタルの中での信頼性というのが必要となってきています。ブロックチェーンの「改ざんされない」「消去されない」というところが、平時ではどういうシーンで活躍するんだと言われてきていたのが、今の状況で変わってきてますね。

山田:今はブロックチェーンは手段の一つと受け止められていて、DXの一部だと認識されている。お客様ももっと現実的な課題などを話すようになってきていて、昔と比べると理解が深まっているのを感じます。

コロナの関係で言いますと、この後景気対策でどう対応していくのかが議論されていますが、これをブロックチェーンの文脈で考えた時にディテール向けのCBDCを、例えば給付金のような形で使うとどのように使われたかが分かり、ちゃんと経済に役に立っているかなどが分析できる。アフターコロナの時期には実装は間に合わないでしょうが、そういった使い途が見えてきている。

伊藤:確かにこういった状況だと、渡したものの価値がちゃんと滑らかに回るというのは非常に重要ですね。

石井:昔は価値をわざわざデジタルで回さなくてもと言われていましたが、今のような状況になってくるとデジタルのみでのやり取りが必要となってきている為、ブロックチェーンの本来のコンセプトである価値の移転と非常に相性が良いと思いますね。

平山:今一番ホットなのはDX絡みが多く、承認プロセスをしっかりしたいというニーズにすごく合っています。実際に印鑑を押しての書類のやり取りができないという事で、その代理でブロックチェーンに置き換えたいとなっています。

パブリックの場合だとグローバル通貨の話になりますが、今はグローバルに行けないのでどうサプライチェーンを回していくか、承認プロセスをどう改善していくかという事になる。

2.近年のブロックチェーンの定義

石黒;皆さんはブロックチェーンに関して印象ではなく定義としてどう変わってきていると思われますか?

伊藤:例えばノードが4万あればパブリック、数十ならプライベートという数字で分けるのは違うと思っていて、何の価値を移送するのかが重要で、仮想通貨に代表される通貨というのは全世界の人が対象で、一方流通などは参加するのはそれに関連する方達であったり、そういった目的とその関連する人というのが重要でパブリック・プライベートの境目は無くなってきていると思う。

石井:ブロックチェーンは3年くらい前は解釈の幅が相当広かった。その時は毎週のように新しいブロックチェーンが出てきていて、それを皆試していた。今は新しいものが出てきても試さなくなってきている。もう大体一周してみんな落ち着いてきていると感じます。

課題設定が大切

伊藤:今は新しいものを試すというよりは、事例が多くあってどういったケースでどのような課題が出るとかここは押さえておくべきだなどの情報が確立されているものが実際のエンタープライズなどで使われている。

山田:定義というよりは現実に発生している課題を解決するプラットフォームなのかどうかが重要なのかなと思います。

石黒:平山さん、IBM・オラクル・WHOのプラットフォームについてお伺いできますか?

平山:あれはコロナに対応して出したサービスで、Hyperledgerベースでコロナ対策をするという事で出しました。実は3年前にパブリックブロックチェーンに対抗して作り始めたものなんです。アプリケーションレイヤーに特化していて例えばSARS級のトレーサビリティをチェックする機能などが入っていたりして、それを今回コロナをきっかけとして出したんです。

上のアプリケーションに関してはどのベンダーとも組める様になっていて、ハイパーレジャーベースを支援しているベンダーならば、どことでもコラボレーション可能です。

山田:アプリケーション部分に関しては色々なベンダーと組んでという事ですが、クラウドに関してはどうなっているんですか?

平山:2018年にRed Hatを買収した時に新しいプラットフォームに変えました。それにより非常にプラットフォームの安定度が増しました。

ハッキング耐性とは

伊藤:ここでオーディエンスの方から質問が来ているので読みますね。「エンタープライズブロックチェーンはハッシュチェーンにより可視化されたRDB等よりも外部攻撃による改ざん耐性が強いと思いますが、ハッキングなどには耐性が無く、企業への信頼コストの問題などは解決できないと思うのですが、そのあたり現状はどう評価されているのでしょうか?」

平山:その通りです。基本的には証明書サーバーをブロックチェーンネットワークに入れていて、管理者をどういった形で置くかという事で信頼が変わっていくと思います。

IBMはどこのプラットフォームでも動かせるので、例えばメインフレームをLinuxで動かしてセキュアーな仕組みにしてしまうといった事が出来ます。

山田:Cordaでは個別のネットワークに上位レイヤーみたいなものがあって、その上位レイヤーで認証等やり取りできるようになっており、また内部で攻撃されてもすぐに分かる仕組みになっています。

石黒:イーサリアム2.0へのアップグレード版になると、コンソーシアムがメインネットに繋げた状態で運用できるというような設計がされています。もしコンソーシアム内部でハッキングみたいなものがあったとしたらメインネットにぶら下がっているチェーン自体が価値が無くなってしまうので、インセンティブをそもそも働かなくさせる思想があったり、インセンティブメカニズムの設計をしてハッキングする気を起こさせないようにしようなど議論しています。

石井:ノードが増えれば特定の人が改ざんするのは難しいという所で耐改ざん性を上げて対応していくという感じですかね。

伊藤:ブロックチェーンは耐改ざん性とかだけではなく、何を目的にするかというのもあるし、ノードの数が多いという信頼度という面もあります。

3. エンタープライズ領域でのブロックチェーンの動向について

伊藤:ここからはブロックチェーン関連のニュースをピックアップして皆さんで読み解いていきたいと思います。

石井:まずはアリババ、テンセントがブロックチェーンをかなり進めているというものです。中国では既に実験どころか実装しているといった感じですね。アリババがアントブロックチェーンを開発したりファーウェイが暗号資産に対応したスマホを開発しています。

主に中国で使われているのは金融・保険・知的財産・物流・貿易・医療といった分野のようですね。

中国ではいろんなものが信用できないという状況で、信用できるものをどう作るかという視点でおそらく作ったんでしょうね。日本は潔癖症なところがあって、「完璧なものでないとなかなか受け入れられない」という部分があるんですが、中国はプラスになるなら受け入れる。まさに巨大エンタープライズと呼べる様な部分にエンタープライズブロックチェーンのヒントがあるんじゃないかと思うんです。

山田:私は中国が・・というよりはデジタルバンクに対して脅威を感じますね。デジタルバンクといえば支店が無い、人件費が無いというのもありますが、我々が意識する部分としてはレガシーシステムが無いという部分ですね。デジタルバンクであればバランスシートマネージメントの様な形で貸し出しを増やす・減らすといった時にそれがトークン化されていれば容易にできる、事業保留を迅速に組み替えて動く事ができる。こういった速さというのが現行の金融機関と比べて圧倒的で脅威だと思いますね。

石井:エンタープライズを考えた際にレガシーとの闘いというものは結構あるなと思います。

石黒:中国だからという訳ではないんですけど、僕は結構楽観的に考えています。

ブロックチェーンが出てきた時はスピードと資金力が重要と言われていたが、それが一変してきていると感じています。スピードよりも信頼を優先しようという感じ…

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ブロックチェーンは使えないと言われている理由について

ブロックチェーンは使えないと言われている理由について

ブロックチェーンの主要キーワードである「分散」。ブロックチェーンに限らず、「分散」は私たちの生活の中で、リスク回避のための場面で多く使われます。分散は、複数の銀行に預金すること、円だけでなくドルを保持すること、投資のポートフォリを分散させることなど、不確実性に対するリスクヘッジに用いられるケースが多いです。当然、これらの分散には「いい点」「悪い点」の両面が存在します。「ブロックチェーンはXXだから使えない」というよりも、自分たちの目的や課題に対して、ブロックチェーンというツールが強みとなるかを考えることがプロジェクトを成功に導く上で重要な要素であると言えます。

ブロックチェーンが使えないと言われている理由を知ることは、ブロックチェーンの強みを生かす上で重要なことです。ブロックチェーンのトリレンマについて解説していきます。

  1. 課題:ブロックチェーンのトリレンマ
  2. スケーラビリティ
  3. セキュリティ
  4. 分散化
  5. まとめ

課題:ブロックチェーンのトリレンマ

トリレンマとは国際金融政策において、3つの政策を同時に進めることができないことを言いますが、ブロックチェーンにもトリレンマは存在します。ブロックチェーン技術は多くの問題を解決してくれるという期待を持たれている点もありますが、完璧な技術ではありません。AIによって何でも自動化できるという幻想が広がっていた事と同様に、ブロックチェーン技術に対しても期待と現実の乖離が存在しています。今回はスケーラビリティ・セキュリティ・効率化の3つの項目からブロックチェーンのトリレンマについて紹介します。

1 スケーラビリティ

ブロックチェーンはスケーラビリティの点で課題を抱えています。その理由は主に3つあります。

1つ目は開発の難易度と時間がかかることです。ブロックチェーンは整合性を重視している技術設計であるがゆえに、運営を開始してからデータベースを修正することは難しいです。データベースを修正するには、ネットワーク内の参加者の合意が必要になります。これはブロックチェーンの分散化による大きなメリットであると同時に、デメリットでもあります。従来の管理システムのように特定の管理者による運営でないがゆえに起こる課題です。途中で修正することのないようなシステムを開発しようとすると、時間がかかります。

2つ目はメンテナンスコストが高いことです。ブロックチェーンはメンテナンス時のデータベースへの書き込みが何千回と必要です。

データベースのチェックの時やバックアップの時にも同じような作業が必要です。この作業を遂行するにはかなりの時間と費用が発生します。メンテナンスにかかる時間がかさむとセキュリティ面に支障をきたします。効率性の観点では、従来のデータベースの方が良いと言えます。

3つ目はスケーリングが困難なことです。情報システムの面で説明するスケーリングの意味はシステムなどの能力を、要求される処理量に合わせて増やしたり減らしたりすることですが、ブロックチェーンの場合、スケーリングが非常に難しいものになります。

理由はデータベースがあまりにも膨大であるからです。これもブロックチェーン特有の分散化システムが生んだもので、転送や検証、保存の処理のオーバーヘッドは大きく、コストも大きすぎます。

2 セキュリティ

ブロックチェーンはセキュリティ面でもマイナスなポイントがあります。

仲介者がいない完全な非中央集権型のブロックチェーンの場合、不正行為をしたユーザーを中央の管理者によって取り締まることはできません。なぜかというと、ブロックチェーンの利用者は、管理者の下についていないため、強制的にユーザーを追い出すという力を持っていないからです。

ブロックチェーンを構築するときに不正行為を抑える規則を作ればいいのですが、少しでも不十分であると抑えることができず、前述の通り、途中で修正をすることが簡単ではありません。なので、不正行為をしたユーザーを取り締まることが容易ではないのです。もしも、ブロックチェーンを構築するとなれば、不正行為が生まれにくいインセンティブを設計しなければサステナブルなエコシステムになることはないでしょう。

2つ目はアップデートを強制することができないということです。アップデート自体はできるのですが、全ユーザーに確認しなければいけません。

これはスケーラビリティを運用したり、不正行為を取り締まろうとしたりするときにも発生することです。システムにとっていい方向に進めようとしても、迅速に進めることができません。

3 分散化

分散化はブロックチェーンの心臓部分で、最大のメリットでもあります。

そもそもここでいう分散化とは、金融機関などの管理者の下につかないで送金や取引などができることです。これが可能になることで、金融機関がつぶれた時のリスクヘッジになり、誰かを信用する必要がなくなります。

しかし、この分散化のメリットを最大限生かすためには、スケーラビリティを著しく低下させ、セキュリティ管理に多大なるコストがかかるというトレードオフが発生します。このことについては前述したとおりです。

まとめ

ブロックチェーンの設計そのものの難しさ、新しい技術であるがゆえの穴など、課題にも様々な側面があることがわかりました。課題が明るみになるほど、その課題を解決する技術は進化していきます。新しい技術を悲観的に捉えることは、何もしないことよりも、技術を前進させることがあります。仮想通貨を契機に、ブロックチェーン技術が注目されていることは市場にとってもチャンスと言えるでしょう。

ブロックチェーンの市場規模はどのぐらい?

ブロックチェーンの市場規模はどのぐらい?

「ブロックチェーンというキーワードはよく聞くけれど、実際に使ったことはない」という人は多いと思いますが、ブロックチェーンの市場は伸びています。今後、ブロックチェーン技術が私たちの社会インフラの一部になるに従って、ブロックチェーンの市場規模も同様に拡大を続けるでしょう。この記事では、現在の市場から今後どのようにブロックチェーン技術が企業や市場に受け入れられていくのかを考えていきます。

ブロックチェーンの市場規模

矢野経済研究所では2019年度の同市場規模は171億5000万円の見込みと予想しています。また、IT調査会社Gartnerは2030までに年間3兆ドルと予想しています。3兆ドルというと、日本国の一般会計100兆円、特別会計200兆円を合わせた日本の国家予算に匹敵します。サトシナカモトによってビットコインホワイトペーパーが公開されたのが2008年であることを考えると、ブロックチェーン市場が急激な成長を続けている事がわかります。

ガートナーのハイプサイクルにおけるブロックチェーンの市場環境の変化

ガートナーのハイプサイクルとは、ある技術が市場に浸透していく際に直面する5つのサイクルです。

  • 黎明期:市場に出た新しい技術に期待が急上昇
  • 過度な期待のピーク期:期待が加熱する
  • 幻滅期:加熱が一気に冷める
  • 啓蒙活動期:技術が世の中に与える影響を再考する時期
  • 生産の安定期:世の中に成熟した技術として迎えられる

2008年にブロックチェーンを用いた仮想通貨が提唱され期待を集めました。そして、2-3年前はバブル的に投機熱が高まり、現在ではそれも一段落した状態です。現在はブロックチェーン技術は幻滅期に入っています。


出典:ガートナー(2019年10月)

これからの「啓蒙活動期」では、上で挙げたような様々な技術が開発され、世の中を変えうる技術として認知され、様々な業界で利用されていきます。その後「生産の安定期」に入り、成熟した技術として世の中に迎えられます。

どのような業界で特に使われている?

現在のブロックチェーンの多くは仮想通貨として使われています。ビットコインは人類史上トップクラスの投機的上昇をみせたことで有名になりました。匹敵するのは17世紀オランダのチューリップバブルだと言われています

ブロックチェーンの活用が期待される市場

特に注力されている分野の一つが、サプライチェーンや権利証明です。ブロックチェーンの秘密保持性・改ざん耐性の特性を生かして、これらの分野での開発が進められています。

B2B、B2C、IoT

秘密保持性・改ざん耐性の性質をいかし、商取引での活用やビットコイン等の仮想通貨を用いた売買を行う事が考えられています。ビッグカメラではビットコイン決済が取り入れられています。

ブロックチェーン補完技術

以下のような仮想通貨の課題を補完する技術開発が進められています。

  • colored coin:取引情報の他に金融資産等の通貨以外の”色”をつけて流通させる。
  • lightning network :ビットコインのトランザクション時間を短縮するために、2nd layerに売買情報を書き込み稲妻(lightning)のように素早く送受信する技術。

アプリケーション開発

決済、海外送金、不動産登記・取引、契約書等の書類の認証などに応用され、それらを一括して行えるアプリケーションの開発が進められています。

例えば、以下のようなユースケースが期待されています。

  • 海外にいる知人に誕生日に20ドル(またはそれ相当の仮想通貨)をスマホから送ったが、手数料は数円だった。
  • 不動産売買の取引情報がブロックチェーンによって担保された安全性の中で、安価な手数料で取引を行うことができる

ブロックチェーン市場に参加する上で重要なことは?

pwcが2018年に公表した、世界15の国・地域における600人の経営幹部を対象に行われた調査によると、回答者の84%がブロックチェーン技術に何らかの関与をしていると回答しています。実ユースケースから考えると、ブロックチェーン技術に非常に多くの関心が寄せされている事がわかります。報告書の中で、これからの企業の戦略で重要になることをpwcは以下のように提案しています。

1.ブロックチェーンのビジネスケースを作る

明確な戦略をもち、ブロックチェーン技術に対する信頼構築からはじめ、ビジネスを進化させていく。

2.業界のエコシステムを作る

現在は金融業界への応用がなされているブロックチェーンですが、その他の業界にも応用されようとしています。その時に重要なのは、業界内の利害関係者のグループを取りまとめることです。例えば航空機ならばメーカー、サプライチェーン、整備、修理などのエコシステム全体でブロックチェーンの機密保持性をいかしたソリューションを構築する必要があります。

3.時間をかけて設計する

システム利用権限の有無や、ハイブリッド型かなど、設計によってブロックチェーンのモデルは変化します。そのため、エコシステムに参加する利害関係者と時間をかけて、サステナブルな基盤を構築していく必要があります。

4.規制の不確実性の回避

例えば、各国中央銀行は仮想通貨に対して通貨発行権の乱用であるとしてブロックチェーンを規制するかもしれません。いつの時代も新技術には国家の将来の規制が不透明です。これらに対して極度にけん制して参入を遅らせるのではなく、ブロックチェーン技術の利用可能性を探りながら、規制当局の動向を注視して予想し柔軟に対応できる体制を整えることが必要です。

上記の4つは、ブロックチェーンに限らず、どのビジネスの企業経営においても、欠かせない要素です。一方で、メンテナンスの難しさがブロックチェーンの課題の一つであるため、時間をかければ良いというものではありませんが、3番の『時間をかけて設計する』という視点から、長期的にスケールできるサービスを構築することはブロックチェーンにおいて特に重要なテーマになるでしょう。

まとめ

日本のGDPは世界で3番目の大きさですが、一人当たりの労働生産性が低いことは周知の事実でしょう。ブロックチェーン技術のようなサプライチェーンの共通プロトコル技術は日本の経済成長に大きく貢献していくことが期待されます。

ブロックチェーンはいかにお金と経済を変えるか【TED人気動画からみる過去と現在】

ブロックチェーンの価値観は変わってきているのか

3年半以上前の2016年に公開されたブロックチェーン動画があります。再生数はYoutubeとTEDをあわせて650万回を超え、「Blockchain」というキーワードで最も再生されている動画の一つとも言えます。この3年半あまりで、ブロックチェーンに対する見方で、変わった点と変わっていない点があることを肌で感じている人は多いのではないでしょうか。3年半前から、どのような価値観でブロックチェーン技術が語られていたのかをみていきましょう。

ブロックチェーンはいかにお金と経済を変えるか

インターネットの誕生によって、世界中であらゆる情報が流通するようになりました。今後、ブロックチェーンによって人と人が情報以上の物(金融商品や土地の権利など)を直接やり取りできるようになり、現在の媒介者(国家や銀行等)が不要になります。

  1. 消すことが不可能な記録で権利を守る
  2. 本当のシェアエコノミーを創造出来る
  3. 中間マージンを最小にできる
  4. プライバシーを守りながら人々は自分の情報を持ち換金できる
  5. クリエーターの利益を保証する

1.消すことが不可能な記録で権利を守る

世界中の土地の権利の約7割が非常に脆弱です。国や悪意のある為政者によって、国民の権利が侵害されています。例えばホンジュラスでは、国家の侵害によって、ほとんどの国民が土地を所有することができていません。

ブロックチェーンに土地の権利をのせることで、消すことが不可能かつ、改ざんすることができない権利として国家や悪意のある為政者に対抗しうるでしょう。

2.本当のシェアエコノミーを創造出来る

UberやAirbnbなどはシェアエコノミーを標榜していますが、実際は中間搾取を行っている企業です。

  • 「今タクシーに乗りたい」、「今タクシーに乗せたい」、「位置情報」
  • 「今泊まりたい」、「今部屋が空いているので泊めたい」、「位置情報」

このような情報がブロックチェーンを通じてタグづけされ、マッチングできれば、UberやAirbnbなどによって行われるマッチングとそれに払う対価は必要なくなり、本当のシェアエコノミーが生まれます。

3.中間マージンを最小限に

様々なトランザクションにおいて中間マージンは非常に大きいです。例えば、外国に送金する場合などは、非常に複雑なプロセスを経て、約10%の手数料を取られます。しかし、今後送金は世界中のコンピューターにより認証され、安全性が担保されたブロックチェーンによって、最小限の手数料で可能になります。

その他のトランザクションも企業を介さず、個々人が直接安全に行えるようになり、手数料は最小限に近づいていくことでしょう。

4.プライバシーを守りながら人々は自分の情報を換金できる

今日ではあらゆる企業によってあなたの情報が収集されています。1年前にどこに行ったか?何を言ったか?何を買ったか? などはあなたが覚えていなくても企業によって収集され、データベース化され、”Virtual You(仮想のあなた)”が構成され、それをもとに企業活動がなされています。

ブロックチェーン技術によってあなた自身の情報はあなたのみに帰属します。プライバシーを守りながら、最小限の情報のみを企業に提供し、更に自分自身の情報を利益に変えることができます。

5.クリエーターの利益を保障する

クリエーターたちの利益がインターネットの登場で毀損されています。ブロックチェーンはこれらの損失を無くせます。

グラミー賞受賞したこともあるイモジェン・ヒープは音楽をブロックチェーンに乗せて配信しています。それによって彼女の著作権は保障され、視聴による課金、CM・映画での利用で彼女にお金が入る仕組みが作れます。(訳者注:情報をインターネット上でコピー・再生するとブロックチェーンにコピー・再生したことは記録され、そのたびに課金することが可能になります)

音楽だけではなく、他の著作物や特許などにも応用されれば、使用されるごとに金銭が発生し、クリエイターや特許権者の権利が守られます。

TED動画のブロックチェーンに対する見解について

『1.消すことが不可能な記録で権利を守る』は本当か?

ブロックチェーン技術の大きな特徴として挙げられるのが改ざん耐性です。データの整合性に関わらず、ブロックチェーンに書き込まれたデータを消すことは非常に困難です。そのため、権利証明を必要とする業界での活用が期待されています。一方で、先述したようにインプットしたデータの整合性そのものは担保しません。そのため、インプット側の権利が守られていなければ、正当な権利を証明することは難しいでしょう。日本は民主主義が成熟し、独裁国ではないため、国に権利を奪われるということはありません。これらのブロックチェーンの権利証明事例は発展途上国の環境でのユースケース紹介を多く目にします。そのため、日本で土地の権利証明を改ざんできないと言われてもピンとくる人が少ないのは当然でしょう。

『2.本当のシェアエコノミーを創造出来る』は本当か?

3の論点と重なる点も多いですが、プラットフォームの仲介者がいないサービスは実行可能ですが、ユーザーがつくかは未知数でしょう。実際にAirbnbという中央の管理者がいるからこそ、事件や問題などに対する措置や対応も迅速になります。ブロックチェーンのオープンソース、民主主義的アプローチでエコシステムによる投票などで規則を定めていくことはできるかもしれませんが、企業が対応している問題は莫大であり、純粋なP2Pのシェアリングサービスが機能するかは未知数です。

『3.中間マージンを最小限に』は本当か?

上記で、示したように管理者を排除したプラットフォームが機能するのは相当難しいです。一方で、中抜きと言われるような無駄なマージンが発生していることも事実です。その点で、P2Pサービスの透明化によって中間マージンが最小化していくことは可能性として十分考えられるでしょう。

『4.プライバシーを守りながら人々は自分の情報を換金できる』は本当か?

前提として、ビットコイン取引のプライバシーは守られているのか?という問いに対して『守られている』と回答する人はわずかでしょう。なぜなら、ビットコイン は「いつ・どこから・どこへ・いくら」送ったかという情報が誰にでも確認できるからです。一方で、プライバシーを守ることに特化した仮想通貨が誕生したり、周辺技術としてプライバシーを守るツールが開発されたりもしています。ブロックチェーンという言葉が網羅する技術範囲の定義は非常に難しいです。一方で、GDPRやCCPAの規制に代表されるように、個人情報の権利が企業からユーザーに戻される範囲が広がることは間違いないでしょう。その中で、ブロックチェーンの有無に限らず、プライバシーを守りながら、個人の情報価値を換金できる仕組みは徐々に整っていくでしょう。

『5.クリエーターの利益を保障する』は本当か?

ブロックチェーンのP2P技術によって、正当な権利の上で、価値の移転が行われるため、クリエイターにより多くの利益が保証されることはありえるでしょう。しかし、ブロックチェーン技術を使ったからと言って、YouTubeの不正アップロードや転売がなくなるわけではありません。価値の移転によって、よりベストな選択をとることはありえますが、ブロックチェーンが全てを解決するかのような課題評価は禁物です。

まとめ

ブロックチェーンによって人と人との情報、物、権利などあらゆるものの交換が民主化されることで、これまで中間業者に払っていたお金や労力が極端に少なくなる時代が来るかもしれないという内容でした。

一方、歴史を振り返っても、私たちはあらゆる管理があるからこそ、生活が回っているという点もあります。完全な民主主義は機能しないという事を研究している、ジョージ・メイソン大学のGarett氏は「10% Less Democracy: Why You Should Trust Elites a Little More and the Masses a Little Less」という著書を記しています。

ブロックチェーンによって国家をディスラプトするというよりも、分散と集権のバランス化がテクノロジーによって最適化されていく未来の方が実現性が高いでしょう。

51%攻撃とは:ブロックチェーンの脆弱性について

51%攻撃とは:ブロックチェーンの脆弱性について

ビットコインを代表とするパブリックブロックチェーンの大きな特徴は中央に特定の管理者を持たないことです。

パブリックブロックチェーンの一つの大きなキーワードである『分散』は、私たちの生活においても、リスクヘッジのために使われていたりします。例えば、ドルなどの円以外の通貨を銀行口座に預けて分散管理したり、様々な業界に投資することはリスク分散のような文脈で語られます。一方、分散という言葉が完全なリスクヘッジを達成するわけではもちろんありません。

今回はブロックチェーンに対する攻撃手法の一つである「51%攻撃」を取り上げ、パブリックブロックチェーンの管理のあり方を一つ考えていきます。

51%攻撃とは?

51%攻撃とは、あるマイナーが過半数のマイニングを行った場合、以下が可能になることです。

  • 不正な取引の正当化
  • 正当な取引の拒否
  • マイニングの独占

マイナーが過半数を超えると?

マイニングとは、コンピュータである問題を解き、それによって新たなブロックを生成することで新規の通貨を手に入れる行為です。これを行う人および集団をマイナーと言います。

このときに正当性を互いにコンピュータで監視しあって多数決で正当だと言っている状態を想像してください(PoWで解説)。もしも、悪意あるマイナーがマイニングを独占した場合、多数決で不正なブロックも正当といい、正当なブロックも不正だと言い出せます。

PoWとは

Proof of the work(以下PoW) と言うのは、マイニングにおいて計算量に応じて発言権があることをいいます。計算量を保有株式と置き換えた株主総会を想像して下さい。ビットコインがこの方式を採用しているので、ビットコインや仮想通貨の危険性・脆弱性の一つとして広く知られています(広く知られるきっかけは後述)。

対策

PoWへの対応として生まれたのがPoS(Proof of Stake)です。仮想通貨を持っている(Stake)割合に応じてブロックの認証割合を決めることです。たくさん仮想通貨を持っているとマイニングできる可能性が上がるしくみです。多くの場合、コインをウォレットに保有しておく必要があり、貯めれば貯めるほど有利になるので、そのコインの成長に賭けるという意味合いもあります。ただし、この方式には流動性の低下や富める者が更に豊かになるという弊害もあります。

その他、Pol(Proof of Importance)、PoC(Proof of concensus)といった方式も用いられています。

過去のブロックチェーンへの攻撃

2013年にGheish.ioというマイナープール(マイナー達が計算用量を出し合っている集団)が過半数を超えそうになりビットコインの価値が暴落するということが生じました。また、ビットコインゴールドが標的になり、二重支払いによって約20億円の被害が生じました。

現実問題として計算容量が増えすぎて攻撃障壁は大きい

では、今後も51%攻撃は起こりうるのでしょうか。結論としてはメジャーコインではかなり可能性が低いといえます。現在、ビットコインで51%攻撃を行うには一時間当たり約5000万円、イーサリアムで約4000万円かかるといわれています。そこまでのコストを払ってまで攻撃したいと考える人間はほとんどいいないでしょう。前述したブロックチェーン攻撃は2013年というビットコイン初期段階の事例なので、規模の拡大しているメジャーコインで攻撃が発生するリスクは減っているとも考えられます。

ただ、マイナー(少数派)なコインの場合、初期のビットコインのように、攻撃が生じるリスクは高いでしょう。また、ビットコインは半減期があり、2140年頃にはマイニング報酬がもらえなくなるため、マイナーが減少していくことが考えられます。その際、また51%問題が浮上してくる可能性があります。

まとめ

駆け足でブロックチェーンの脆弱性である51%問題について解説してきましたが、現在のメジャーコインでは、ブロックの書き換えが起きる可能性は極めて少ないと言えます。また、PoWの脆弱性に対する対応も進んできています。テクノロジーは課題への直面を通じて、アップデートのスピードが速いところが面白さの一つでもあります。今後、ブロックチェーンや仮想通貨の広がりの期待が高まります。

ビットコインとビットコインキャッシュの違いとは?

ビットコインとビットコインキャッシュは名前も似ていて、どちらも仮想通貨であることから、両方の違いがあやふやになることがあります。そこで、今回はビットコインとビットコインキャッシュとはどういうものなのか、違いは何なのかについて紹介します。

ビットコインとは

ビットコインは仮想通貨の種類の1つです。ビットコインの単位は、BTCと表記されます。1円や1ドルのように、1BTC(1ビットコイン)と、数えることができます。

ビットコイン は仮想通貨の筆頭格であり、仮想通貨の中で最も時価総額が高いです。金融機関を仲介することなく、個人間で取引でき、24時間どこにいても制限なしに送金を行うことが出来ます。

また、金融機関などの管理者がいらないデジタル資産であるビットコインは資産の避難先としても注目されています。そのため、ビットコインを用いたマネーロンダリングに対する懸念もあります。

ビットコインキャッシュとは?

ビットコインキャッシュは2017年8月1日、ビットコインから分岐(ハードフォーク)して誕生した仮想通貨です。発行以来、時価総額上位に継続してランクインする人気の仮想通貨のひとつであり、2020年2月時点での時価総額は4番目の大きさとなっています。

なぜビットコインキャッシュが誕生したのか?

前述のとおり、数々の問題を解決するために誕生したものです。ビットコインは様々な問題を抱えていましたが、この問題のメインはビットコインが抱えていたスケーラビリティの問題です。

スケーラビリティ問題とは、仮想通貨に欠かせないブロックチェーン技術において、1つのブロック内に記録できるデータ(トランザクション)の容量が限られていることから引き起こされるトラブルのことです。

データ容量が限界を超えるとサービス内の処理速度が低下し、送金が遅延してしまいます。ビットコインのブロックサイズ内トランザクションは1MBです。

1MBではすぐにデータ容量が限界に達してしまいます。そこでビットコインキャッシュでは、ブロック内のトランザクションを32MBにしてサービス内の処理速度をスムーズにしました。また、手数料も安くしてビットコインよりも使い勝手のいい仮想通貨になることを目指しています。

ビットコインキャッシュとビットコインの違い

ビットコインとビットコインキャッシュの違いは様々ありますが、今回紹介する違いはブロックサイズのことと取引内容の記録様式のことです。

  • ブロックサイズのトランザクションの大きさ

前述のとおり、ビットコインキャッシュはビットコインが抱えるスケーラビリティ問題を解決するためにブロックサイズを1MBから32MBに拡大しました。

ビットコインは1MBのままです。これにはそれぞれわけがあります。

ビットコインが1MBにしている理由はブロックサイズを拡大することによって起こりうる問題を危惧しているからです。

ブロックサイズのトランザクションを拡大することは、必要なハッシュパワーが増えてデータ処理の時間がかかることにつながります。

この問題によって、規模が大きく融通の利いたマイナーが優位な立場になり、一部のマイナーの取引承認と仮想通貨の新規発行が急速に多くなります。

そして起こりうる問題が採掘(マイニング)の寡占化です。また、ブロックサイズを拡大することは、情報セキュリティの継続力を損なう攻撃(DDoS攻撃)などのセキュリティリスクもついてきます。

このような問題を危惧してビットコインは1MBのトランザクションに抑えています。

  • オンチェーンとオフチェーン

オンチェーンとは、送金や取引などのデータをブロックチェーン上に記録させるものです。一方、オフチェーンとは、一定数の送金や取引のデータを1つにまとめて、その直前と直後の状態だけをブロックチェーン上に記録するものです。

ビットコインはオンチェーンを導入していて、ビットコインキャッシュはオフチェーンを導入しています。この取引データの記録方法にそれぞれ違いが出ていますが、これにもわけがあるのです。

オフチェーンはオンチェーンの問題点を解決するために開発・導入されました。ビットコインのスケーラビリティ問題を解決し、送金の遅延をなくし手数料が安くなります。

しかし、オフチェーンは取引の結果のみを記録するので、匿名性が高まりオンチェーンに比べてセキュリティ面で懸念があります。

独自に取引履歴の管理やハッキング・改ざん対策をしないと安全性は担保されません。一方、ビットコインのオンチェーンは取引の結果だけではなく、途中経過も記録するので、安全性が高いのです。

ビットコインとビットコインキャッシュの時価総額の違い

ビットコインキャッシュ 時価総額 709,270 BTC 6,865,922,370USD

ビットコイン 時価総額 18,227,759 BTC、176,449,668,586USD

(2020年2月23日時点)

ビットコインキャッシュとビットコインの時価総額から市場規模がわかり、過去の値動きを読み取ることができます。

現在、仮想通貨の時価総額ランキングではビットコインがダントツの1位となっており、ビットコインキャッシュは4位です。しかし、ビットコインキャッシュは2017年からサービスが始まったもので、急速に伸びてきたと捉える事もできます。今後、技術的な課題がアップデートを繰り返していくに従って、仮想通貨取引が一般化されていく事が期待されます。

まとめ

  • ビットコインとビットコインキャッシュの違いはブロックサイズのトランザクションとオンチェーン・オフチェーン
  • ビットコインキャッシュはビットコインの弱点を埋めるために開発された
  • ビットコインの時価総額は仮想通貨の中で1位でビットコインキャッシュの時価総額は4位と両方とも仮想通貨の中では巨大プロジェクトとなっている

Facebookが取り組むブロックチェーンプロジェクトとは?【Libra/リブラ】

リブラとは?

2017年以降、徐々に仮想通貨関連の話題が増えてきましたが、中でも2019年6月以降、新聞紙上でも盛んに取り上げられている話題があります。Facebookが手掛けるブロックチェーンプロジェクト「リブラ」についてです。

Facebookがリブラのホワイトペーパーを公表したのは、2019年6月18日のことでした。それまでも、Facebookがブロックチェーンプロジェクトを計画していることは知られていましたが、このホワイトペーパーによってプロジェクトの全貌が明らかとなりました。

ホワイトペーパーによると、Facebookのリブラ・プロジェクトでは、最終的に数十億人が利用できるスケールとセキュリティ性、そしてガバナンスの具備を目指して進められるとしています。

また、リブラの目玉の一つは、スマートフォンによって簡単に送金や決済ができることです。具体的には、Facebookが運営するメッセンジャーやワッツアップを使って、手軽にリブラをやり取りできる仕組みを想定しています。

Facebookの時価総額は世界トップクラスであり、SNSとしてのFacebookは全世界に27億人ものユーザーを抱えています。Facebookの運営するプラットフォーム上でリブラが使えるようになれば、Facebookユーザーがリブラの潜在的な顧客になると考えられます。

それだけに、リブラがローンチされた暁には、数十億人の人々にとって仮想通貨が身近なものになるでしょう。これが、他の仮想通貨にもプラスになると考える人も多く、仮想通貨業界は基本的に歓迎しています。

世界的にはリブラNGの風潮

しかし、ホワイトペーパーが公表されて以降、Facebookとリブラに批判の声が集中しており、プロジェクトは前途多難な状況です。

否定的な意見を知ると、ブロックチェーン技術を用いて通貨を発行する際に、何が問題視されるかが良く分かります。

ユーザー保護の観点から

まず、ユーザー保護の観点から、強い懸念が持たれています。

Facebookはこれまで、ユーザー保護における様々な問題を引き起こしてきました。数千万人分の個人情報を流出させたことで米公聴会に召喚された過去がありますし、広告主の企業にユーザーの個人情報を提供している疑いも持たれています。過去の問題に対して、Facebookが、社会から信用を回復するまでにはまだ時間がかかるでしょう。その中で、Facebook社がリブラ構想を打ち上げたことに対し、米国議会が強い懸念を示すのは当然と言えます。

AppleのCEOであるティム・クック氏はフランスのインタビューで「企業は通貨を発行するべきではない」という主張をしています。

「通貨は国家の管理下に置くべきである。企業によって競合する通貨を作り出すというアイデアには反対である。民間企業はこのような方法でパワーを得るべきではない」

2019年7月に開かれた米公聴会も、ほとんどFacebookへの批判・非難一色の状況となり、米国政府がFacebookとリブラに不信感を抱いていることが浮き彫りとなりました。Facebook社が持つ社会への影響力が大きいからこそ、反発も大きくなっています。

金融政策に支障をきたす

リブラは、世界各国から批判を受けています。その最大の理由は、各国の金融政策に支障をきたす懸念があるためです。

それぞれの国では、中央銀行が金融政策を担っており、経済の安定を図っています。そして、全ての金融政策は、各国政府が独自の裁量で発行する銀行券、すなわち法定通貨を前提として設計されています。

もし、中央銀行ではなく民間企業が管理する独自通貨が普及した場合、各国の中央政府が金融政策によって経済をコントロールできなくなり、世界経済に混乱を招く危険があります。

ビットコインは仮想通貨の先代として象徴的ですが、仮想通貨は元来、政府や中央銀行が金融と経済を支配していることへのアンチテーゼとして生まれた側面があり、基本的に政府・中央銀行と対立する立場にあります。

とはいえ、リブラ構想の公表以前は、仮想通貨が短期間のうちに普及するとは考えにくく、すぐさま政府や中央銀行の脅威になるとは考えられていませんでした。

一方、リブラはFacebookが抱える数十億人という顧客に、すみやかに普及・浸透していく可能性があるため、各国政府・中央銀行は強い懸念を示し、非難しているのです。

2019年12月に日本銀行総裁の黒田氏が発表したレポートでは、リブラに対する金融リスクが述べられています。仮想通貨のような存在は一国の制御が効かないからこそ、グローバル間での協力が重要であるという旨が述べられています。そのような懸念は日本政府だけでなく、アメリカ政府にとっても同様です。

米ドルの覇権を崩す可能性

リブラへの批判が特に強いのはアメリカですが、これは米ドルの覇権を覆す可能性があるためです。

現在、世界の基軸通貨は米ドルであり、「国際的な資金の流れ≒米ドルの流れ」となっています。このためアメリカは、国際銀行間通信協会(SWIFT)と米銀を通じて、世界の資金の流れを独占的に把握しているとされます。当然、これが国家戦略にも活用されています。

もし、リブラが普及することで、「国際的な資金の流れ≠米ドルの流れ」となれば、アメリカが米ドルによって握ってきた金融覇権が崩れかねません。

これも、リブラが否定される大きな理由となっています。

リブラは前途多難

デジタル通貨やブロックチェーンの普及・発展を考えると、リブラを好ましいものと捉える意見もあります。

しかし、金融・経済への悪影響も強く懸念されており、各国政府・中央銀行は容易に認めないでしょう。今後も、リブラには逆風が吹き続けると考えられます。

ブロックチェーンの今を知る上では重要なテーマですので、今後も注視しておくべきでしょう。