はじめに

「ビットコイン(Bitcoin)」という仮想通貨のために作られたブロックチェーンですが、ブロックチェーンの技術は、仮想通貨だけではなく、様々な業務・業界に応用できる可能性があると言われています。今回は、ブロックチェーンの技術を使って、どのようなことができるようになるのか分かりやすく説明します。

▼目次

  1. 高い信頼性と可用性で契約の自動化を実現
  2. トレース機能を使って食料品のトレーサビリティを実現
  3. 著作権の保護に活用
  4. 生産量や交通量の調整に活用
  5. まとめ

ブロックチェーンでできること1:高い信頼性と可用性で契約の自動化を実現

Facebookアプリの利用データはFacebook社が持つデータベースに蓄積されていきます。一方ブロックチェーンの場合、情報が一ヶ所(1社)に集約されて保存されるのではなく、マイナーと呼ばれる『ブロックチェーンネットワークの管理者たち』の元に、同じ情報が保存されます。そしてマイナー達は取引情報の整合性を確認し、そこで50%以上のメンバーの同意を得る事ができれば、その情報はブロックチェーンの台帳に記入されます。さらに、それらの更新情報はチェーンのように時系列的に並んでいきます。そのため、情報を改ざんしたいときは過去の台帳のデータも変更しなくてはならなくなるため、ブロックチェーンのデータ改ざんは実質的に不可能であるとされています。

分散した情報保存と情報の公開という特徴を活用したスマートコントラクト

情報の改ざんが難しいというブロックチェーンの特徴を活かして、ブロックチェーンはスマートコントラクトと呼ばれる『契約の自動化』への活用が期待されています。パブリックブロックチェーンの技術を使って契約の自動化が行われると、いつ・どのような処理が実行されたかという情報が公開されます。そしてマイナーたちの承認を必要とするため、改ざんが難しく、信頼性の高い契約となります。

先述したように、ブロックチェーンは複数の参加者に分散して情報が保存されるため、どこか一ヶ所の機械が壊れたとしても、システムダウンしないという点でも期待されているのです。FacebookやGoogleのような巨大企業も地震やハッキングリスクに備えてデータベースを複数の場所で管理している点では、一つの分散型企業と言えますが、ブロックチェーンは”設計そのものが分散型”であるというのが大きな魅力です。

ブロックチェーンでできること2:トレース機能を使って食料品のトレーサビリティを実現

ブロックチェーンには、自動で取引履歴が残り改ざんできない、信頼性の高い情報のトレース(追跡)機能があります。このトレース機能を使って、食料品のトレーサビリティ(追跡可能性)をより高い次元で実現しようという試みがあります。

改ざんできない信頼性の高い食品情報を提供

既存システムの仕組みでトレーサビリティを実現しようとすると、食料品の生産工程それぞれに、個別に各品物へ施した作業履歴を残す必要がありました。その過程にて、連結を誤る、改ざんできるといった課題が残っています。

ブロックチェーンのトレース機能は、意識することなく、生産工程を通過する毎に自動で履歴が残ります。また、作業履歴は必ず前後の作業とつながっている(チェーンしている)ことから改ざんすることができません。

ブロックチェーンを用いた有機農法

このトレース機能を使った食料品のトレーサビリティについて、現在実証されているものとして、電通国際情報サービスが、有機農法に積極的に取り組んでいる宮崎県綾町と提携し生み出したサービスがあります。このサービスは、トレース機能により、綾町から出荷された野菜の包装についているNFCタグかQRコードにスマホをかざすだけで、その野菜がどのような土壌で栽培されたかといった生産情報を把握できるものです。

トレース機能は、改ざんが不可能であるため、消費者はより信頼性の高い情報を得た上で商品を購入できるのです。また、生産者にとっても、出荷した商品の品質を保証できるメリットがあります。

トレース機能を使ったサービスが普及すれば、生産地を偽装するといった問題はなくなり、各地のブランド品を守ることにもつながります。

ブロックチェーンでできること3:著作権保護への活用

現在、国境を越えた著作権の侵害が問題になっていますが、ブロックチェーンの技術を使えば、より精度の高い状態で著作権保護を実現できるようになります。

著作権を守るのは難しい

現在のシステムでは、情報を一ヶ所に集めて管理する形態であることと、各著作物に対しての認可管理が難しいという課題があります。ブロックチェーンの特徴である「分散型台帳」を使えばこれらの課題を解決することができます。「分散型台帳」であれば、情報の管理が分散しているため、近くの情報にアクセスすることができます。また、各著作物に対してのトークン(証明書)を付与することで著作物の権利を保護できるようになると言われています。

ブロックチェーンが著作権を守る

「分散型台帳」を使えば、個人や中小企業が作成した著作物に関わる各種権利 (利用, 頒布, 複製, 改変など) についての許可をインセンティブ設計を通じたブロックチェーン管理によって、著作物使用の認可や課金の仕組みを作ることもできるようになるのです。

»ブロックチェーンが著作権を守る理由

ブロックチェーンでできること4:生産量や交通量の調整に活用

ブロックチェーンの技術が浸透すれば、これまで個々のシステムに委ねられていたデータを統合して管理・分析し最適化できると言われています。

現在は、個々のシステムによるバラバラな管理体系。それぞれのデータを利用するためには、各システムを連携させ、異なるデータ管理方法を統一させる必要があります。

データを統合して管理・分析することで最適化を実現

各システム間にブロックチェーンの技術を採用することで、情報の不統一や連携問題を解消し、データを統合して管理・分析できるようになります。

このように管理・分析できるようになると、例えば、家庭の冷蔵庫の中身やスーパーの在庫データを分析し、生産量を調整して最適化を図れるようになり、食品ロスを減らせます。

また、ブロックチェーンにより自動車の走行データを活用し分析することで、最適な交通量を算出し、交通渋滞を減少したり、排気ガスの削減にもつなげられるのです。

まとめ

いかがでしたか。ブロックチェーンには、分散型・情報トレースなどの特徴があることから、その応用範囲は様々です。今回ご紹介した例は、あくまでも一部にすぎません。今後、ブロックチェーンを活用したサービスは、様々な業界で展開されていくでしょう。

»どれくらい知っていますか?世界のブロックチェーンサービス例まとめ(2017年度版)

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