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Legal#1 ディスカッション 『ブロックチェーンの社会実装と法規制』

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ディスカッション『ブロックチェーンの社会実装と法規制』

ディスカッションには片岡総合法律事務所から高松氏、クーガー株式会社から石井氏が加わりました。

高松志直 | 片岡総合法律事務所 / パートナー弁護士
金融機関、信託、流動化取引等の金融法務を中心とする企業法務全般のほか、決済法務(クレジット・電子マネー・送金取引等)、情報関連法務(個人情報・マイナンバー)を手がけている。これらの業務の流れを受け、直近では、ブロックチェーン及び仮想通貨に関するアドバイスも多数実施している。
石井敦 | クーガー株式会社 CEO
IBMを経て、楽天やインフォシークの大規模検索エンジン開発。日本・米国・韓国を横断したオンラインゲーム開発プロジェクトの統括や進行。Amazon Robotics Challenge トップレベルのチームへの技術支援や共同開発。ホンダへのAIラーニングシミュレーター提供、NEDO次世代AIプロジェクトでのクラウドロボティクス開発統括などを行う。現在、AI x ロボティクス x IoT x ブロックチェーンによる応用開発を進めている。

仮想通貨の「権利者」は誰?

河﨑:さきほどちょっと出たICOコントラクト、スマートコントラクトの中で、エンジニアの世界で見ている仮想通貨の所有者というのは秘密鍵を持っている人のことを言うという話がありました。例えば、ICOコントラクトを作る、スマートコントラクトを実施するという時も、どのアドレスから送られたかさえわかれば、そのアドレスが権利者であるということで進んでいくわけです。しかし我々の一般の社会はそうではないわけですよね。やはり誰の財貨かというのがまず有って、その人がどういうふうにそのトークンを購入するのかということになります。そのふたつの世界の価値観というか、その世界観の衝突が起きていると思うのです。

そんな中で、仮想通貨の権利者は誰なのか、取引の相手方は、どのような点に注意すれば、仮想通貨の受取りを安心して行えるのかということで、具体的な設例を考えてみました。

【設例1】仮想通貨の価値移転

  • AがBに商品を売って、BがAに仮想通貨で支払いを行うケース。
    具体的には、Aが指定するA´アドレスにB´アドレスから仮想通貨の移転がなされたとして、これをBによる弁済と扱ってよいのかどうか。

河﨑:この場合B´アドレスがBのものだという特定が必要なのかどうか。代金が送られてきたのだから、それでいいじゃないか、秘密鍵を持っていないと送れないわけだから、なんの問題も無いのではないかと、おそらくは今までの仮想通貨の世界ではそれで良いのではないかという発想で基本的に成立していたと思うのですが、しかし実社会はそうではないわけで、ここら辺をどういうふうに考えるかという点なのですが、片岡先生はどのようにお考えですか。

片岡:とても根源的で哲学的な難しい問題ですね。法律上或る人を特定する場合、どうやって特定しますかというと、例えば刑事事件などでは、まず住所、氏名、それでも同じ人がいる場合本籍地、年齢、性別、生年月日などを加えた識別子で特定します。仮想通貨のアドレスの場合、それらは天文学的な確率で一致するということから、例外は有り得るとしても、概ね一致していると言えるというところでしょう。

三枝:ブロックチェーンの世界で起こっていることというのは、この事例でいうと、振り込みをされたということはトランザクションを辿ればわかるのですが、AとBの契約に対して、B´アドレスから仮想通貨が支払われたとしても、B´アドレスの秘密鍵を現実世界のBが所有しているというかというと、それについてはブロックチェーン上には何の情報もありません。

B´アドレスからの送金が本当にBからのものなのかどうか。確かに入金はあっても、それがBが支払ったという証拠にはならないという問題が現実世界の中で起きた場合どうすればいいのか。そういう事態を防ぐためにはどうすればいいのか。あるいは、そういう争いになってしまった場合、債権の準占有者による弁済のような法律的な救済手段が使えるのかどうか。何かの法律の適用は使えるのかどうかどなたかご意見はありますか。

高松:BとB´アドレスのつながりがはっきりしていない、領収書も無いということでいくと、違う人が間違って弁済していたのだとしたら、民法の救済法理などによって救われるかもしれないが、個人的な感覚では、BとB´のつながりは、一応秘密鍵で架橋されているのではないかと思います。デジタルの世界になってきているので、領収書を逐一出さなくても、ある程度架橋されているというように運用がいくと良いなとは思いますが、理論上ははっきりしなくて、BとB´は違うこともあり得るという前提で動かなくてはいけないと思います。

三枝:AB間で売買契約を締結するときに、Bも自分はこのアドレスから振り込みますということを、きちんとAに対して明示することになるでしょうね。

高松:手堅くやるんであればそうですね。

三枝:そのアドレスから振り込まれたということになれば、そのアドレスの秘密鍵を持っているのはBだから、おそらくBが移動させたんだろうという推理が働くということでしょうね。

高松:その契約が領収書代わりになるということです。

西村:オンラインゲームの中でリアルマネートレードやられた方がいる場合わかると思いますが、例えば、ファイナルファンタジーでAさんがギルというお金を換金する場合、私はAさんから1万ギルを買うために、1ビットコインで1万ギルを買うという口約束をしたとします。オンラインなので相手が誰だかわかりません。その時に私は同時にBさんに2万ギルを1ビットコインで売るよと約束してAさんのビットコインのアドレスを渡したとします。そうすると私は1万ギルを受け取って逃げることができてしまい、怒られるのはAさんになってしまいます。銀行口座でやるとAさんの銀行口座で詐欺を働いたということになって捕まえに行けるんですが、ビットコインでやった場合どうなるのか疑問です。

片岡:所有とは何か、本当に所有しているのかという問題も絡んでくるが、法のリアルな世界では本当に権限を持っているかどうかというのがポイントになってきますので、本当に正当な権限かどうかを究極において判断することになってきますね。法律の根拠には判例もあるし、いろんなものがあるんですが、究極的には「条理」、言い換えれば「常識」ですね、これが法源、法の根拠になっていまして、それで判断するしかないということになってきます。仮想通貨とか観念の世界で起きたこと、虚数の世界で起きたことも、本当に関わった人がどう思っているか、どういう約定の趣旨でやったか、リアルの世界で考えざるを得ません。

法律の世界から見ると、「虚」「虚数」だけの部分でいく分には、アルゴリズムで動いた通りのデファクト(事実)でしかないんですね。事実がそれに沿っているかどうかという観点から、法律としては調整をする法理を働かせざるを得ないということになります。リアルの世界の法規制と組み立てられたアルゴリズムの世界が概ね一致するから、もし不一致があった場合は、リアルの世界を類推する形で是正しないといけない。

【設例2】日本国内でトークンを扱ってビジネスがしたい場合

  • トークンを用いてインセンティブ設計したビジネススキームを構築したい。
    日本国内でこれを適法に行うためには、どのような点に注意する必要があるか。

河﨑:昨今規制強化の中で、日本ではICOは難しいのではないかということで、シンガポールやスイスなどに法人を立てるようになってきている。日本でICO、クラウドセールするというのは難しいんでしょうか。

片岡:はっきり金商法にひっかかる世界、前払式支払手段や仮想通貨交換業に該当する世界がある反面、何にも該当しない世界もあるはずなんですね。今の金融当局は、少なくとも何かで登録しないといけない、何も登録してない場合であって、仮想通貨の払い込みでトークンを発行している場合は、仮想通貨交換業の登録をしろと、去年からそういう方針になっています。監督官庁から見た時に、法を順守している「あるべき姿・インサイダー」として見られるのか、けしからんアウトサイダーとして見られるのかの違いかなと思います。よほどひどいリアルの被害者が出れば、刑事罰で追いかけられるようなことも有り得るということです。

高松:金融庁の文書などにも何も書いてはいないのだが、ポイントとしては、将来のトークンの売買に蓋然性が有る場合、すべてそれは仮想通貨に当たるのではないかという説明がされることがあります。蓋然性ということで言われてしまうと、譲渡禁止を最初につけていても、解除できる蓋然性があるとすると、将来売買の蓋然性があるとみなされることもある。いろいろな騒動があった関連で、広めに網をかけているので、真面目にやろうとすると日本ではなかなか苦しいという実態ではあります。

河﨑:払い込みと換金とではまた違うと思うんですけど、最近よく相談を受ける話で、あるサービスに利用できるトークンを発行したとして、そのうちの例えば1/3の分量をAirDropで無料で配ってしまう。無料で配るのだからトークンセールは行わない。その後、そのサービスが育っていくと、当初無料で配られたトークンがだんだん価値を持っていく。そうして価値が出た時に残りの2/3を売って資金調達をするのはどうか、というものです。このやり方だといわゆるICOのようなトークンに対する払い込みは無いようにも見えます。これはどうなのでしょう。先ほどのお話だと、そのトークンに将来的に交換の蓋然性があるのであれば、この方式でもダメ、ということになってしまいますかね?

高松:時間軸の関係で、微妙な話ですね、ちょっと前までは、有償か無償かのところがすごく重要で、無償発行であれば、さすがにそれは仮想通貨交換業ではないという声色で言われていたが、そうすると皆無償でそのスキームに行くので、ちょっと気になると言われ始めている状況です。

河﨑:なるほど、ここは大事なところですね。

【設例3】国境とICOの法律の適用範囲

  • A国で設立された法人が、ICOの告知サイトを運営。ICOコントラクトの秘密鍵の管理者はB国に国籍を有している。ICOコントラクトはパブリック・イーサリアムにデプロイされている。対象者はD国民に限られると書かれているが、このとき、このICOは、どの国で行われ、誰が行っていると言えるのか。

高松:これも決まった何かがあるわけではく、すごく複雑な話ではあるのですが、日本でのいろんなビジネスを考えていただく時の目線としては、D国民=利用者がどこにいるかといういのがかなり強く見られるというのが出発点になります。どうしても技術の感覚でいくと、サーバーの場所がどこかとか、法人としてのエンティティーの所在地などに着眼点が行きがちだが、何を守るかと言えば利用者を守ろうとしているので。発行という概念自体は難しくていろんな考え方があり得るが、規制というところでいうと、国民を気にしたほうが出発点としては有利かと思います。

河﨑:他の国でやったとしても、日本国民相手にやったら該当してくるのでしょうね。

西村:ICOコントラクトの秘密鍵と書いてあるのは、そのICOコントラクトをデプロイした元のアドレスという意味と、ICOコントラクトに対するコントロール・キーを持つように設定されたアドレスと、ふたつあると思うのですが、例えばICOコントラクトの秘密鍵を捨ててしまった、つまりICOコントラクトに秘密鍵を持っている人がいなくなってしまった場合はどうなるのでしょう。罰しようとしても罰せられる人がいないという状況になるのでしょうか。

片岡:それはそうはならない、お金を集める行為をしたことが規制の対象になるのであって、集めたお金を持っている状態が罰せられるわけではありません。

西村:告知サイト運営というところもやってしまったら、罰せられるということですか?誰も告知をせずに、誰がデプロイしたのかもわからないICOコントラクトがあって、誰かが偶然見つけて魅力を感じて、トークンを買ってEtherを。。。

石井:それは、一番初めに「ここよさそうだ」と言ったひとが、実は裏切るとか、そういう話もあるんですよね。関連して僕が思うのは、当事者間にある程度納得感があるかどうかが、すごい重要だと思っていまして、リアルな世界で、コンビニで買い物をしたとき対面でお金を渡して、「お金をもらってないですよね?」みたいな話にならないのは、初対面だけど周囲の目があるからという効果かと思うんです。通貨は数値として扱いやすいので価値の移転がうまくできている場面もありますが、今回の例でいうと、設例の1も2も厳密に言うと、現実に(お金が)渡ったかどうかというのはわからない。そういう意味でいうと、物理法則の場合は後戻りはできないけれども間の過程はわからない。デジタルは間の過程はトレースできる、ブロックチェーンはトレースができる上に後戻りできないので、証拠を増やす。結果的にブロックチェーンだけでは確定はできないかもしれないけれども、状況証拠や変えられない証拠が増えるという点は、リアル・ワールドに適応する時に非常に役に立つのではないかと思っています。

三枝:どこの国の法律で規制対象となるかは、その利用者が誰か、ICOに参加するのが誰かという視点がとても重要だということは確かにそう思いますが、例えば私が日本の企業経営者として、日本人は禁止、海外の人だけを対象にして日本でICOプロジェクトをスタートしたときに、利用者が全員外国人だという理由で本当にお咎め無しなのか、利用者保護の視点からの(規制の)対象にはならないと金融庁が判断するのかというところは、すごく疑問です。

片岡:国籍、国際公法的に法の適用領域の問題があって、属地主義で「行為をした場所」を罰する法律も有れば、域外適応というか、対象が国外であっても適応される法律も有ります。ケース・バイ・ケースで見なければならないのです。行政規制法はそこまで域外適応することはないので難しいですが、外国でやった有価証券の発行を日本人が日本国内でやれば罰するというようになってればアウトということになるんですよね。

三枝:資金決済法は、その規定は私が見る限り無いと思うのですが?

高松:明文ではないんです。ですので、結局お咎めということでいくと、及んでくる可能性は有り、何も書いていないということは逆に解釈に幅があるということなので、当局が怒りはじめるとそれはそれで可能性はあることになります。目線として、利用者がどこかというところからまず手をつけようとしたかというのが、どちらかというと今の考えか方ではありますので、一応その趣旨で「国民」ということでご紹介させていただきました。

河﨑:議論は尽きないのですが、時間の関係でここまでとさせていただきます。みなさん、ありがとうございました。

法律とブロックチェーン

これから金融庁の対応が変わっていく可能性も高く、仮想通貨やブロックチェーン業界でビジネスを考えている人にとっては非常に貴重な時間・ディスカッションの場になったと思います。次回開催もお楽しみに!

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