はじめに

分散型社会は世の中に浸透しつつあります。イスラム国(IS)は分散型コミュニティの大きな象徴であり、彼らは分散型国家であるが故に、様々な国で突発的にテロを起こし、一つの国家では立ち向かえないほどの影響力を持つようになりました。

しかし、マイナス面だけではなく、プラスの側面でも分散型社会は今後さらに進化していくでしょう。その中で、分散型社会は国家のような中央集権社会と対立する存在になるのでしょうか。それとも、個人が「時間」「場所」「気分」などによって社会を選択できるようになっていくのでしょうか。

使う事で初めて、その機能を果たすはずであった”お金”が、気づけば「貯金」という”使わない事”が美徳とされる世の中に変化しました。その結果、日本ではタンスの中のお金が増え続けています。しかし、この分散型社会の成長期に、日本は大きな変化に直面するかもしれません。

この記事は法定通貨や仮想通貨の本質について考えるために、日本経済から円やビットコインを捉えています。なので、「ビットコインを買うべき」といったような意味はまったくありません。

あなたは、日本という国家をどれだけ信用していますか?

  • ビットコインとは?その1:「希少性のあるリッチな通貨?」
  • ビットコインとは?その2:「ビットコインを持つ2つの理由」
  • ビットコインとは?その3:「非中央集権社会のプラットフォーマー」
  • ビットコインとは?その4:「日本経済の未来から見るビットコインの価値」
  • ビットコインとは?その5:「ビットコインのリスク」
  • ビットコインは未来の分散型社会を加速させるのか

ビットコインとは?その1:「希少性のあるリッチな通貨?」

ビットコインは発行量がプログラム上で決められています。つまり、ビットコインは無限ではありません。

もう少し詳しく説明すると、ビットコインは約4年ごとに発行量が半減し、2033年には99%のBTC、2140年頃には全2,100万BTCが発行することになっています。(厳密にはブロックチェーンネットワークの参加状況で発行スピードは変わり得ます)

ビットコインの希少性について考えてみる

希少性があればあるほど、価値・値段が上がることは、皆さんご存知でしょう。例えば、ダイヤモンドが石ころのように至るところに落ちていたら、全く価値はありません。ダイヤモンドは希少であるが故に高い値段がつきます。

人の場合も同様です。高いエンジニアリングスキルを持つ人が、高い報酬を払われるのも希少性によるものです。つまり希少性の度合いにより、価値や価格が決定され、経済が回っていきます。

そして、ビットコインの発行量は決められている事を考えると、今後も希少性が保たれていく可能性はあります。1年前は1BTCが10万円以下でしたが、今では200万円を超えている事から見ても、希少性と価格の原理が働いていると言えます。(バブル的要素はありますが)

ビットコインとは?その2:「ビットコインを持つ2つの理由」

今、人々がビットコインを買う理由は、大きく分けて「投機目的」と「価値の貯蔵」の2つがあります。

投機手段としてのビットコイン

投機の目的はシンプルにお金儲けがしたいという欲求です。今後ビットコインが欲しいと思う人が増えそうであれば、価値が上がることを期待して早めに取引きする人がいるでしょう。このような動きを通じて価格は変動していきます。

価値を保存するためのビットコイン

価値の貯蔵とは、自国の通貨の価値がどうなるかわからない国がビットコインに資産を移す事を指しています。

例えば、自国通貨の価値が1ドル=100円から1ドル=1万円になったら(円安になったら)、1円の価値が激減します。

一方で、自国通貨に比べてビットコインの価値が減る可能性が低い場合、円ではなくビットコインに価値を移す人が増えるでしょう。むしろ1000円で1BTC買えていたのに、今では200万円払わないと1BTCを買えないほど、ビットコインの価値は高騰しています。(異常かもしれませんが、需要が高まってます)

ここで重要なのは「投機目的」と「価値の貯蔵」という2つの理由が存在するという点です。

ビットコインとは?その3:「非中央集権社会のプラットフォーマー」

ビットコインは中央の管理者がいない通貨であるというのは、多くの方がご存知でしょう。この非中央集権の通貨は中央集権(日銀、FRB)の通貨と、どのような違いがあるのかを見ていきましょう。

ビットコインと国の通貨との決定的違い

日銀が「通貨の番人」と呼ばれている事を小学生の頃に習ったはずですが、日本の中央銀行である日銀は通貨供給量(マネーストック)をコントロールできるため、そのように言われています。

一方でビットコインは、先にも述べた、通貨の発行量がプログラムによって決められています。将来的には、2,100万BTC以上に増える事がないため、市場に出回るビットコインの量が恣意的に決められることはありません。これが中央集権国家の通貨と非中央集権国家型の通貨の大きな違いと言えます。

ビットコインと国の通貨はどちらが優位か

どちらの通貨が良いかは国や人によって異なります。中央の管理者が信頼できない場合には、(将来的に)ビットコインに資産を移した方が良いと考える人もいるでしょう。なぜなら、プログラムによって発行量が決められているため、通貨の希少性が恣意的に失われる可能性が低いからです。ビットコインの売買による価格変動は、ビットコインの経済圏で動いていることであって、一般の市場原理と大きな違いはありません。

それでは、日本の場合はどうなっていくのか、日本経済と日銀政策から考えてみましょう。

ビットコインとは?その4:「日本経済の未来から見るビットコインの価値」

アベノミクスや日銀の大規模金融緩和政策による日経平均株価の上昇など、日本経済は良くなっているという見方がある一方、異次元な政策であるがゆえに世界からは懐疑的な目で見られています。この政策の成功を語るのはまだ先の話だとは思いますが、この先、日本経済はどうなっていくのかは未知数です。

不動産の価値と日本経済

現在、日本の不動産価値は高騰しています。税金対策や東京オリンピックへの期待など理由は様々ですが、空き家が多く、人口減少を続けている日本の将来的な不動産価値には疑問が残ります。

日銀のマイナス金利政策によって市場にじゃぶじゃぶお金が回り、沢山の家を建てても、将来の期待値は非常に低いです。東京オリンピック前に一気に不動産が売りに出されるだろうという予想もあり、今後の先行きは明るいとは言えません。

超高齢化社会の日本

日本は世界の中でも高齢化が進んでいる国です。一方で少子化も深刻で、生産年齢人口が年々減っています。2000年から2060年のたった60年間で、人口は約半分にまで減ってしまう可能性があります。

仕事ができる人(生産年齢人口)が減れば、企業の生産能力が減る、すなわち売上げが減ります。更に、お金を使う人も減るので、世の中で消費される金額も減っていきます。

一人当たりの生産性の低い日本人が、世界で存在力を示していくのは容易なことではありません。その中で、「高齢化による福祉費用の増大」「若者の年金を払う余裕がない」など、多くの問題が将来待ち受けています。

大量の国債とETF購入

現在の一般債務は、対GDP比で既に約240%に達しているという異常事態が起きています。これは先進国で最悪レベルです。アベノミクスによって、ヘッジファンドなどの海外投資家からの投資マネーが増えていますが、それらは短期的利益のための投資です。お金を増やすことが目的である彼らは、「日本人が幸せに暮らし続けて欲しい」などという思いは微塵もありませんし、日本経済に明るい見通しを持っていません。

そもそも金融政策というのは経済が停滞している時に行うものです。このまま物価上昇率2%にこだわって、金融緩和を続け、借金を増やし続ける事で、長期的にますます自分たちの首を絞めていくのでしょうか。将来、日本が抱える大量の借金を返せる見込みはあるのでしょうか。

円安の加速と日本経済の未来

東京オリンピックが終われば、日本経済が一気に減速していく可能性があります。金融リテラシーの高い富裕層の人々は既にドル買いに動いているという話もあります。

ただ、日本人は内国精神が強いため、自分の資産を海外資産に交換する人が少ないと言われています。そのため実際にハイパーインフレのような円の大暴落が起きる可能性は低いです。とはいえ、非中央集権通貨と言われる、ビットコインのようなものが人々の価値観を徐々に変えていき、日本円の価値が相対的に変化していく可能性は十分考えられます。

円安は貿易を強くする?

円安は貿易を伸ばしてくれるからメリットであるという主張は正しいですが、生産工場そのものが人件費の安い海外に移っている現代において、円安によるメリットはあまりないと言えます。産業革命期の「ものづくりの時代」が終わり、情報革命時代にシフトした世界経済の中で、日本経済はこのままいくと貧弱になっていく可能性が高いです。

ビットコインとは?その5:「ビットコインのリスク」

ここまでお話ししてきて、円よりもビットコインを信頼する人もいるかもしれませんが、ビットコインにも当然のようにリスクがあります。

ビットコインは本当に非中央集権と言えるのか?

確かな情報ではありませんが、ブルームバーグのコラム執筆者であるアーロン・ブラウン氏曰く、「ビットコインの40%前後は恐らく1000人程度に保有されており、現在の価格ならその全員が保有枚数の半分程度を売りたくなるかもしれないと」と話しているようです。

当然、そのような事が本当に起きれば、価格の暴落は避けて通れません。

また、技術から成り立つ通貨であるがゆえ、アップデートによるハードフォーク問題などのコミュニティの分裂は避けては通れません。iPhoneを一度もアップデートしないで使っている人は少ないように、使っている中で出てくる不具合は修正されていきます。その代表例の一つがビットコインキャッシュ(BCH)です。(ここではBCHの説明は割愛します。)

ビットコインのハッキングリスク

ビットコインが盗まれたというニュースをみて「だからビットコインを買っているやつはバカだ」という人は、よく中身を理解していない場合がほとんどです。

ハッキングされているのは取引所や、個人のパソコンであり、ビットコインを適切に管理すれば、ハッキングによるリスクは回避できます。銀行が潰れれば預金が1000万円+利子までしか帰ってこないペイオフ制度のように、日本円を銀行に預けているだけでもリスクはあります。カフェなどの公共のwi-fiを使っているだけでも、ハッキングされてクレジットカードの個人情報が盗まれるリスクもあります。

重要なのは、リスクの大きさを比べ、選択する事です。賢い人たちは、リスクはしっかりと分散させています。

実用性が乏しいビットコインの今

ビットコインの利用者が増えた結果、高騰する手数料問題は、今後解決していく可能性が高いです。ビックカメラなどがビットコイン決済を取り入れましたが、まだまだビットコインを実際に買い物などで利用できる機会は多くありません。この価値交換手段としての本来の機能がワーキングすることが、仮想通貨が社会に一般化する上で非常に重要な要素になるでしょう。

お金の本質

お金は持っているだけでは価値がありません。どう使うかによって初めて機能します。

上にあげた、ビットコインの40%前後を保有する人たちがBTCをドルに換金して何がしたいかというと、スポーツカーを買ったり、家を買ったりしたいという事です。つまり表面上ではお金を持ちたいという事かもしれませんが、本質はそこではなく、お金を他の価値に交換したいという事です。しかし現状では、ビットコインで決済できる場所が限られているため、一旦BTCを円やドルに交換するしかありません。

もしビットコインのまま買えるのであれば、わざわざ手数料をかけてドルに変換して車を購入する人はいないでしょう。

価格が高騰している以上、投機的手段としてしかビットコインが見られないのは、仕方のないことですが、今後ビットコインというインフラの上にアプリケーションが乗っていけば、「価値貯蔵の手段」「価値交換手段」として、さらに普及していくでしょう。

ビットコインは未来の分散型社会を加速させるのか

イーサリアムやリップルやモナコインなど、暗号通貨がダイバーシティ化していく中で、将来的に通貨発行が制限されているビットコインの希少価値がどうなるか(どれだけの価格がつくか)はわかりません。

個人的には10年、20年後を見据えて、取引をする人は皆無に等しく、技術的アップデートも今後行われていくため、今のペースでビットコインの価格が上がり続ける事はないのではないかと思います。2140年がくる前に様々な通貨が当たり前のように使われて、ビットコインの投機的魅力が弱まっていき、国家から独立した価値交換手段として機能していくのでないでしょうか。ただ、ICOのように通貨が多様化していく中で、どの取引所にも置いてあるビットコインは暗号通貨のプラットフォーマーとしても価値を発揮していくと言えるでしょう。

だからこそ、目の前の価格の上下だけに一喜一憂せずに、この分散型通貨の将来性にかける事が重要であると言えます。

経済を恣意的に動かす事は不可能になった分散型社会

また、個人やコミュニティが大きな影響力を持ち始めた今、国が規制によって経済をコントロールする事は不可能です。つまり、ビットコインなどの決済手段を完全に防ぐ事も現実的に難しく、円の未来も踏まえると、今の日本政府の動きは経済的にも仮想通貨の姿勢は一つのプラス材料になりえます。

お年玉がビットコインになる日が来る?

上記で説明したように、将来的に円という通貨が安全といえるかはわかりません。相続金を円で残すよりもビットコインで残した方が安心になる日が来るかもしれません。また、円よりビットコインをお年玉にした方が子供が喜ぶ日が来るかもしれません。(子供はお年玉で欲しいものを直ぐに買ってしまうでしょうが笑)

若者の投票率の低さは国家への帰属意識の希薄化なのか

政治家によって、自分の人生が大きく変わる事はほぼないです。自分の時間に投資したほうが将来の投資対効果は圧倒的に高くなります。投票率の低さから、若者はもう国家という枠組みを見ていないのでしょうか。非中央集権社会がそれを、正しい方向に導く世界がくるのかもしれません。

ビットコインを筆頭とするトークンエコノミーから見るコミュニティ社会

人口減少対策のために、多くの外国人を受け入れる事で、日本はどんどん多様化していくかもしれません。「日本人だから」という固定概念がなくなり、「自分の1つの要素としての日本人」、「自分の1つの決済手段としての円、BTC」といった、多様で柔軟な社会になるのではないでしょうか。ビットコインは日本人という枠組みを超えて、自分でコミュニティ(居場所)を作ったり、参加する事で、国家という経済圏を超えて生きていける社会を実現するきっかけになるかもしれません。

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