博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター 上席研究員
伊藤佑介

BLOCKSTACKとは?

BLOCKSTACKは、ブロックチェーン技術を使った新たなウェブブラウザです。

ユーザーはこのブラウザを使って、BLOCKSTACK向けに開発されたアプリを利用することができます。

BLOCKSTACKが解決しようとしていること

現在のインターネットは、クライアント/サーバ方式となっているため、Webサイトを表示すると、ユーザーのデータがWebサーバに送信されます。

そして、インターネット企業は、それらのユーザーから受信したデータを活用して、様々なサービスを提供しています。

具体的には、データを利用したターゲティング広告サービスや商品レコメンドサービスなどがあります。

多くの人は、このようなサービスは、ユーザーのニーズにあった広告や商品を提示するのに役立っていると考えていることでしょう。

しかし、BLOCKSTACKは、同意を得た利用規約の範囲内とはいえ、ユーザーのデータを企業が所有して利用できる現在のインターネットは問題があると考えているようです。

BLOCKSTACKが実現しようとしていること

では、BLOCKSTACKが目指す新しいインターネットは、現在とはどのように異なるものでしょうか。

それは、インターネット上のサービスを利用しても、ユーザーのデータはユーザー自身が所有でき、必要に応じてユーザーが自らの判断で企業にデータを開示することができる新しい分散型インターネットです。

これによって、一部のグローバルプラットフォーマーにユーザーのデータが一極集中している現状を変え、ユーザーがデータを自分の下に取り戻すことを目指しています。

それを実現するためにBLOCKSTACKのブラウザでは、ユーザーのデータは、そのユーザーのPCのハードディスクに保存されるようになっています。

そして、ユーザーがBLOCKSTACK向けのアプリを利用する際は、アプリのデータがPCにダウンロードされ、PC上で実行されます。そのため、ユーザーのデータが、企業側のサーバに送信されない仕組みとなっています。

一つの企業が管理運営するサーバ上でプログラムが実行される現在のインターネットを「中央集権的なインターネット」と捉えると、世界中に散らばっている個々のユーザーのPC上でプログラムが実行されるBLOCKSTACKのブラウザが実現するインターネットは、まさに「分散型インターネット」と言えます。

BLOCKSTACKは、そんな分散型インターネットを実現しようとしているのです。

BLOCKSTACKの今後の課題

BLOCKSTACKは、自分のデータをユーザーが所有、管理できる新しい分散型インターネットを構築し、それをインターネットのデファクトスタンダードになることを目指しています。

これは、今ある既存のクライアント/サーバ方式のインターネットを置き換えることを意味します。ユーザーにとって自分のデータは確かに重要なものです。

ですが、豊富なコンテンツと便利なサービスを利用できる既存のインターネットを今すぐに捨ててまで、ユーザーがそれを求めるかは分かりません。

また、BLOCKSTACKのブラウザ上で使えるアプリもまだ多くはありません。使えるアプリが少なければ、ユーザーが今すぐ劇的に増えることはないでしょう。

ただし、BLOCKSTACKもただ手をこまねいているだけではありません。ICOやベンチャーキャピタルから得た潤沢な資金を使って、BLOCKSTACK上で動くアプリを開発した企業に報奨金を出すなど、対策を講じているようです。いずれにしても、このブロックチェーンを活用した非常に野心的な取り組みには、今後も注目していきたいと思います。

おすすめの記事