Blockchain EXE スペイン | Industry 4.0: ブロックチェーンとAIは未来をどのように変えるのか?

【Blockchain EXE主催】スペイン・マドリードで初のイベントを開催

2019年3月5日、Blockchain EXEはマドリードのGoogle Campusにて、ヨーロッパで初となるミートアップを行いました。ドイツの”Industry 4.0”を筆頭にIoTやスマートシティを積極的に進めているヨーロッパということもあり、ブロックチェーンやAI技術への関心は増しています。

本イベントはTelefonica R&Dのブロックチェーン専門家Alfonso de la Rocha氏、日本のAI&ブロックチェーン技術会社CougerのCEOである石井敦氏、Social Media Fidelity ManagementのCLOのJorge de los Reyes Martínez氏、IEビジネススクールでブロックチェーンの講義を行う教授などの技術的な専門家が一堂に会しました。

急速な経済成長の渦中にあるスペインは南アフリカ諸国との関係も強く、多様性に溢れる国です。BlockchainEXEは日本に限定せず、世界中の人のネットワークを創出するコミュニティプラットフォームの役割をになっていきます。

Alexandre Bussutil — CEO of B-SCALED, IE Business School Professor

社会に置けるエネルギーと電気の役割、そして分散化された技術がグローバルな課題を解決するのにどう役立つのかについて話しました。

「電気の場合46年、スマートフォンの場合は12年、2000年代初頭のiPodは4年かかりました。そしてPokémon Go(2016年リリース)はたった19日でした。」

Alexandre氏は第4次産業革命がいかに社会に根本的な変化をもたらしているかに焦点を当て、最新技術が最初の5000万ユーザーに到達するまでに要する時間について、驚異的な統計を発表しました。

このようにあらゆる産業の発展スピードが速まっていることは、企業同士のビジネスだけでなく、直接ユーザーに訴えかけるビジネス例も多いことを事例を交えて紹介していただきました。

Atsushi Ishii — CEO of Couger, Leader of Connectome Project, creating Virtual Human Agent

石井氏はConnectomeプロジェクトにおけるAI、AR、およびブロックチェーンを組み合わせた次世代のヒューマンインターフェイスについて語りました。

信頼できるAIを作るというビジョンのもと、Connectomeは人型AIアシスタントを開発しています。

これまでのインタフェースは、コンピュータからスマートフォン、そしてスマートスピーカーに変わってきました。次なるインターフェースとして人型のインターフェースになるのではないかという点を研究結果などをもとに話しました。

Jorge de los Reyes Martínez, Asesor jurídico — Chief Legal Officer (CLO) of the Social Media Fidelity Management

Jorge氏は持続可能な経済発展のために、ブロックチェーンによる解決策に焦点を当てています。

ブロックチェーンによる影響範囲:特に住む場所、仕事の場所、持続可能な開発目標(SDG)について解説しました。

『ブロックチェーンで人々に付加価値を与える方法』をキャッチフレーズにし、公共と民間の両者が直面するいくつかの課題について話しました。

Alfonso de la Rocha — Blockchain Expert at Telefonica R&D

Alfonso氏は自主的なデジタルアイデンティティについて取り上げました。今の時代は誰でもインターネットを通じて自分とは違う人になりすますことが可能です。

「インターネットはすでに壊れている」と彼は言います。

データやプライバシーといったインターネット上でのアイデンティティに関する問題を取り上げ、ユーザー自身がデータ主権を持ったIDモデルを持つことを解決策として使うことを提唱しました。

皆の個人情報がウェブや様々なアプリに散らばっているためブロックチェーンが必要なのです。Alfonso氏は、信頼性が高く集中管理されたブロックチェーンがデータをより安全に保存するのに役立つと信じています。

ディスカッション

司会:今回は国際色豊かな講演者のみなさんが集まっているので、第4次産業革命に関して自分の国が取り組んでいることについて教えてください。

Alexandre:シンガポールほどではないですが各企業がブロックチェーンを用いたICOをビジネスに取り入れています。そして今日では、国として、多くの資金と期待をAIにかけています。ソフトバンクに売られたAldebaranというロボットの開発者は現在新しい会社を立ち上げ、人間の神経細胞を模したチップの開発に取り組んでいます。仮想通貨の秘密鍵を保管するハードウェアウォレットで知られるLedger社とチップが組み合わさることで何か新しいことが起きると考えています。

石井:日本ではブロックチェーンとAIが全く別のものとして扱われていますが、私はAIは自動化するもの、ブロックチェーンは物事を証明するものだと解釈しています。そのためお互い相性はとてもいいと考えています。例えば我々は利便性を求めて何でも自動化する事を好みますが、同時にデータが正しくやりとりされているか確認する必要があります。私がこうして世界中で講演会を開いているのもハードウェアとブロックチェーン、AIの組み合わせの可能性がまだまだあると思うからです。

Jorge:スペインでブロックチェーンを始める人が初めに直面する不安は、プロダクトが規制にかかって国を追い出されるのではないかということです。国が技術に対して友好的でなく、ブロックチェーンに厳格な規制を設けているためです。その中でもスペインでブロックチェーンなどに興味のある人は小さなコミュニティを作って仮想通貨を開発するプロジェクトをいくつも立ち上げています。

Alfonso:ビジネスの観点からすると暗号通貨のバブルは2019年に終わりを迎えて、いよいよ能率的な産業システムを構築し始めるスペインの企業が増えてくると考えられます。

司会:ありがとうございました。各国が最新技術のイノベーターとして特色のある個性を持っていて大変興味深いです。それでは二つ目のトピックに移りましょう。AIやブロックチェーンが発達するにつれて自分の仕事がなくなるのではないかと不安な人も多いと思います。そこで新しい時代に向けて我々や次の世代が準備しておくべきことに関して意見があればお願いします。

Jorge:韓国ではAIが人間よりも生徒をうまく教える成功例があります。このような結果をみると、確かに人間がするべき仕事はますます減っていくでしょう。一方で新しい仕事が生まれるだけでなく、空いた時間で人間らしい有意義な生活を楽しめるはずです。

Alfonso:これは決まり文句ですが”学び方を学ぶ”ことが大切です。次に何が起こるかは誰にも分からないし、私自身も4年前はブロックチェーンや仮想通貨について知りませんでした。しかしエンジニアなので常に情報をアップデートしなければいけません。つまり”学び方を学ぶ”ことが全ての備えになるはずです。

石井:AIはゲームのようにルールに従うこと関しては非常に強いですが、一方で人間のように新しい新規的な発想を産むことは得意ではありません。したがって今も次の時代も人間の強みが消えることはないと考えます。

Alexandre:社会的には一部の富裕層だけでなく全員が十分な教育を受けることがまず必要です。第1次産業革命で職を失った人たちが都市に行っても仕事が見つからず途方にくれた過去があるように、今回も同じことが起こると言えます。加えて我々は自らで慎重に判断することを怠ってはいけません。中国やアメリカの大企業に祖先のデータを管理されてもいいのでしょうか?個人データの管理には気をつけて欲しいと思います。

【リアルタイム処理は“価値のインターネット“を実現するのか?】ブロックチェーンのスピード最前線からみえる実用化への現在地 | Blockchain EXE#18イベント

ブロックチェーンの”スピード”をテーマに実用化までの現在地を議論 | イベントレポ

「Bitcoinは使えない」

そのように言われてきた大きな原因の一つがスピード問題です。しかし、インターネット技術がアップデートを続け、今ではクラウド技術が当たり前になったように、ブロックチェーンも複数のレイヤーが相互作用しながら技術的進化を続けています。

今回、ブロックチェーン技術のコアテーマの一つ”スピード”に焦点を当て、”スピード”において特徴的なプロジェクトに従事しているスピーカーが集まりました。

目次

ブロックチェーンスピード編①:Ethereum PoAの高速化 コンソーシアムブロックチェーンのチューニングと管理 G.U. Labs | 西村祥一

西村 祥一 Yoshikazu Nishimura | コンプス情報技術研究社代表取締役
自然言語処理・機械学習などの学術系案件の開発・コンサルティングを行うと共に、ブロックチェーン技術を用いた開発に取り組んでいる。Global Blockchain Summit2016ではブロックチェーン技術による位置情報プラットフォームを提案し、Best Innovation Awardを受賞。共著に「はじめてのブロックチェーンアプリケーション~Ethereumによるスマートコントラクト開発入門」(2017年、翔泳社)がある。

ブロックチェーンのトリレンマ

ブロックチェーンのトリレンマとは、以下の3要素を全て満たすことは非常に難しい、または不可能に近いことを言います。

  • Decentralization(分散性)ー 分散化したい
  • Security(安全性)ー 改ざん耐性が欲しい
  • Scalability(スケーラビリティ)ー 速く、多く処理したい

Public Ethereumもその例外ではなく、秒間15トランザクション、レスポンス10-19秒とスケーラビリティだけが満たせないのが現状です。一方でConsortium/Private Ethereumは分散性は劣るものの、秒間1,000〜トランザクションとレスポンス1-5秒と高速な処理と安全性が実現できます。今回はEthereumの高速化におけるパフォーマンスについてお話します。

ブロックチェーンの高速とは?

高速とは何かを定義する上でレスポンスとキャパシティの2つの側面があると考えられます。

まずレスポンスにかかる時間は以下の3段階に分けられます。

  1. ある人がtx(トランザクション)を投げてからtxHashが帰ってくるまでの時間
  2. txが最初のブロックに取り込まれるまでの時間
  3. txがブロックに取り込まれた後、十分な数の連続ブロックが生成されるまでの時間

このうちのどれを高速化するのか見極める必要があります。

高速化というとまずキャパシティを考える人が多いのではないでしょうか。これは単位時間あたりに処理したtx数(tps)を増やせばいいので単純です。

しかし同じ4tpsでも1秒間に4tx処理するブロックチェーンと15秒間に60tx処理するものでは体感時間が大きく異なるのが問題視されています。

コンセンサスアルゴリズム

ブロックチェーンにはノード間の合意を取るためのアルゴリズムがいくつかあります。

  1. PoW(Proof of Work):現行のEthereumが採用している方式で計算力(hash計算)によりブロックを生成する
  2. PoS(Proof of Stake):次期Ethereumが採用する方式で保有ETH量によりブロックを生成する
  3. PoA(Proof of Authority):信頼できるノード(サーバ)だけでネットワークを構成する方式
  4. RAFT/PBFT:許可されたノード(サーバ)だけでネットワークを構成する方式

この中でもPoAによる高速化は将来性があります。高速化を図るためのチューニングパラメータは以下の通りです。これらをうまく調節すれば1,200tpsぐらいまで上げることは可能になります。

  • Block Interval(ブロックインターバル):ブロックが何秒間に一回生成されるのか
  • Block Size(ブロックサイズ):各ブロックにいくつのトランザクションを入れられるのか
  • ノード数:少なければ合意を取る回数が減るので高速化が図れる
  • CPU性能/ディスク性能/ネットワーク性能

話題となっているFacebookのLibra は100ノード立てて、1,000TPSを超えています。 ブロックチェーン業界のスピードの目安としては1,000TPSを超えるかが一つの基準と考えられているように感じます。

ブロックチェーンスピード編②:高速トランザクションEOSのDPoSとは BlockBase株式会社 | 山本大貴

山本大貴 Daiki Yamamoto| BlockBase株式会社
大学卒業後、サプライチェーンのERPパッケージのシステムエンジニアとして従事。
2017年からブロックチェーン技術に興味を持ち、ブロックチェーンエンジニアとして実証実験や自社プロダクト開発の中で基盤構築からアプリケーション開発までの開発全般に取り組む。
2018年からBlockBase株式会社にテックリードとして参画し、主にインフラ周りでの環境構築やスマートコントラクトの開発を担当している。

EOSのエコシステム

ノード数が約18,000あるEthereumが直接民主制で全員の合意を取るのに対して、EOSは21と少ない投票によって選ばれたノードがブロックを生成する間接民主制が取られています。この方式をDPoS(Delighted Proof of Stake)と言います。

そのため代表者になるためにはコミュニティに貢献する必要があり、結果として中央集権性の高い仕組みになるのです。ブロックチェーンのトリレンマを用いるとBitcoinやEthereumはスケーラビリティ以外は強いのに対して、EOSは分散性や安全性が弱い分、少ないノードで高速処理を得意としています。

手数料モデルから考えるEOSのビジネス活用

EOSはギャンブルと相性のいいように設計されているという特徴があります。ギャンブルでなくなったお金を借金するように、EOSはリソースを打ち出すモデルがいくつか用意されています。これらのリソースモデルを他のビジネスにも応用することが試されています。

  • RAM:スマートコントラクト、アカウントなどのデータ保存に利用(保存量に比例して必要)
  • CPU:トランザクションの送信、スマートコントラクトの実行処理に利用(処理量に比例して必要)
  • NET:トランザクションの送信、スマートコントラクトの実行処理に利用(転送量に比例して必要)

RAMは保存する領域が増えるほどコストが高くなるため、掲示板のような使用領域が増えていくようなモデルとは相性が悪いです。CPUやNETは使用した分が3日でリセットされるため使用領域内でデータが更新されるギャンブルやゲームのモデルだとRAMの支払いを気にする必要がないので実質無料で実行可能になります。

EOSはホワイトリスト外の通貨ですが、法的に問題とされるのは仮想通貨の転売なので、ビジネスに活用することは問題ないと考えられます。

最後にEOSによるトランザクションの様子のデモの紹介をしました。

ブロックチェーンスピード編③:ZilliqaのShardingについて 株式会社Gaudiy | 永井翔

永井翔 Sho Nagai|株式会社Gaudiy
ブロックチェーンエンジニア。
約8年ほどCRMパッケージのエンジニアとして従事した後、ブロックチェーンに興味を持ち独学を始める。
2019年Gaudiyへジョイン。フロントエンド開発やマネジメント、リサーチ等を担当している。

Gaudiyとは

GaudiyはSlackのようなチャットツールで自立分散的なトークンコミュニティでプロダクトを共創することを目的として運営されており、以下の特徴があります。

  1. RAM:スマートコントラクト、アカウントなどのデータ保存に利用(保存量に比例して必要)
  2. CPU:トランザクションの送信、スマートコントラクトの実行処理に利用(処理量に比例して必要)
  3. NET:トランザクションの送信、スマートコントラクトの実行処理に利用(転送量に比例して必要)
  1. 独自のトークンの発行:コミュニティ内外で使えるトークンを発行
  2. 貢献を分散的に評価:コミュニティへの貢献に繋がる書き込みや活動をユーザが相互に評価し合う
  3. 評価をトークンとして還元:評価に応じてトークンが自動付与され、ギフト購入や他トークンと交換可能

Zilliqaについて

Zilliqaはパブリックブロックチェーンとして初めてシャーディング(Sharding)実装したスケーラブルでセキュアなプラットフォームです。EthereumでいうSolidityのような独自のスマートコントラクト言語(Scilla)やエコフレンドリーなコンセンサス(PoW, PBFT)を備えています。

Shardingとは

Shardingはデータベース分野で昔から使われてきた手法で、データを複数のデータベースに分散することで負荷の偏りを減らすという考えをブロックチェーンに応用しています。

データを分散させることのデメリットとして以下の3つが問題視されています。

⒈シビルアタック(51%攻撃を受けやすくなる)

・悪意のあるノードが特定のシャードに集中した場合

・1シャードあたりのノード数が少なかった場合

⒉二重支払い

・データが複数のシャードに分かれてしまった場合

⒊コントラクト間の状態の参照可否

・シャード毎にState(状態)が発生する場合

Zilliqaにおいては、Network Shardingでグループ(シャード)に分割して並列に処理を行うので、ネットワークの参加者が増えるごとに処理性能が向上する仕組みになっています。

BitcoinやEthereumなど既存のPoWブロックチェーンの処理速度はそれぞれ7tps, 15tpsと言われており、クレジットカード決済と比較するとVISAは8,000tps(最大20,000tps)とされています。一方でZilliqaは3,600ノードのテストネット内で2,828tpsという報告があるので10,000ノードあればVISAに匹敵すると期待されています。

Zilliqaのデメリットへの解決策

⒈シビルアタック(51%攻撃を受けやすくなる)

  • 参加ノードに対するPoWによる検証
  • シャードへの割り振りにコストとランダム性を持たせる
  • 1シャードあたりのノード数を600に

⒉二重支払い

  • トランザクションをシャードに取り込む際にGlobal Stateを更新
  • シャードへの割当はアカウントアドレスに基づいて割り振られるので、同じシャードで処理されると検知されて二重支払いを阻止

⒊コントラクト間の状態の参照可否

  • スマートコントラクト実行にシャーディング未使用
  • アカウントをロックし、UTXOの様な解決策で検討中

Zilliqaの現状と課題

Zilliqaはtpsを増やすことには成功したものの体感時間は30-40秒と長く、遅延時間は約1分というのが現状です。またデータ(ZIL)の転送代として0.001ZILあたり1.88円かかるため、送信量が増えるほど料金がかさみます。現在のノード数は2,400と報告されていますがノード数の拡大も今後の課題とされています。

さらにブロックチェーンは上記であげたトリレンマに加え、UI/UX的観点の検討が社会実装する上で重要になっていくでしょう。

ブロックチェーンスピード編④:Lightning Networkについて 株式会社Nayuta | 栗元憲一

栗元憲一 Kenichi Kurimoto| 株式会社Nayuta
Nayutaファウンダー CEO 十数年間SoC設計に取り組んだ後、IoT関連の開発に従事。IoTとブロックチェーンの組み合わせによる可能性を感じ、研究開発開始。2015年Nayuta創業。Bitcoinの2nd Layer技術Lightning Networkの開発。

Bitcoinは定義が曖昧になっていきながら、分散性と誰でも参加できる事にこだわりを持ったコミュニティとして発展してきました。しかし実際の決済で使われることが少ないのは取引が確定するまでに平均約10分かかる事や手数料の値上げなどが理由としてあげられます。7tpsという処理速度の遅さは、大規模なIoTや社会インフラには不向きです。

そこでLightning Networkという技術が解決策として考えられています。これはBitcoin 1st Layerの性質を保ったまま、高いtpsを達成し、リアルタイムな送受金を可能にする技術です。

ライトニングネットワーク(Lightning Network)

Lightning NetworkはBitcoinにおいてブロックチェーン層の上のペイメント層の役割を果たします。ペイメント層では任意の参加者がバケツリレーの様に通貨を取引するため改ざんが起きにくい設計になっています。

Micropayment channel, HTLCs, Routingの3つがネットワークを構成する特徴的な技術です。

Micropayment channel

取引きをしたい2者間で、ネットワーク上で一時的にチャネルと呼ばれる共有口座を開き、そこでリアルタイムに直接通貨の交換を行なった結果をどちらかがブロックチェーンに書き込むとチャネルが閉じる仕組みです。仮想的な場所での取引きをなかったことにしないために複雑なアルゴリズムを採用しています。

HTLCs

2者間の取引きの間に誰かを挟んで、盗み取られることなく通貨を渡す技術です。これも安全性を保つために非常に複雑な暗号が設計されています。Micropayment channelと組み合わせることで、ある2者が新しく共有口座を開設しなくても共通して開設している誰かを中継して取引きができるためネットワーク上に膨大な量のチャネルが増えずにすむメリットがあります。

Routing

Micropayment channelとHTLCsを組み合わせた時に誰と誰を繋げるかを考える技術として重要な役割を果たします。

Lightning Networkを用いた取引きの流れとしては、まずチャネルを作るために1stレイヤーで共有口座に送金をします。これがブロックに取り込まれることで2ndレイヤーであるLightning Networkのノード間にチャネルが開きます。そして各ノードがチャネル情報を拡散してレイヤーの構造を把握します。送金者はどのルートで取引きするかを決めることができますが、中継者として使われた人は自分に関係する一部ルートのみ知り得て、全体を知ることはできません。このやりとりが2ndレイヤー上で複数同時に行われているためブロックチェーン層でマイニングやトランザクションといった段階を経て送金するよりも遥かに高速な処理が実現しています。

ディスカッション:リアルタイム処理への挑戦-社会実装を見据えたブロックチェーン技術のスピード”最前線”

石井氏(司会):皆さん違ったブロックチェーン技術を専門とされてますがお互いに参考になった技術や今後取り入れたい技術などがあれば教えてください。

西村氏:ネットワークの高速化を図る上で、一つのノードで処理するのではなくデータを分散させるShardingの技術は非常に参考になりました。

山本氏:私もShardingの技術がとても興味深く、汎用的な技術だと思うのでZilliqaに限らず全てのプロジェクトを推進するものなので勉強したいと感じています。

永井氏:Zillqaが抱えているスマートコントラクトの課題を解決するに当たってPoS(Proof of Sake)を使いたいなと思いました。ある程度権限を持ったノードを回す仕組みが必要だと思うのでそこを勉強したいです。

栗元氏:Lightning Networkは概念が特殊なので、他のプロジェクトを直接取り入れることはないが、PoWやPoSの仕組みの理解を深めていきたいと思っています。

伊藤氏:様々な種類のブロックチェーン技術がある中で皆さんどういった経緯や熱意を持ってそれぞれの技術開発に取り組んでいらっしゃるんでしょうか。

西村氏:Ethereumはブロックチェーンの中でも歴史が長いので文献が多いのとコミュニティが大きいのが理由ですね。

山本氏:私がEOSを触り始めたきっかけとしては日本ではEthereumが推進されている一方、海外で始まったばかりのEOSに新しさを感じたからですね。EOSの発信をしていくうちに講演者として呼ばれるようになり、だんだん深く勉強するようになりました。ブロックチェーンの分散性を重視する思想から一度スイッチを切り替えて別の視点からフォーカスしている点にEOSの面白さを感じますね。

永井氏:私はメンバーも含めて元々Ethereumを使っていたのでアプリを作っている段階でスケーラブルが出ないことが分かり、解決手段としてZilliqaを使い始めたという経緯があります。Shardingという技術自体に分散性があるので適正があるのではないかという賭けもありました。

栗元氏:私が始めた時は今のように沢山プロジェクトはなかったので、初期からあるBitcoinとEthereumを好きで触っていたぐらいです。その中で、安全面を理由としてBitcoinを使っています。

石井氏:栗元さんのプレゼンの中で、IoTへの対応という話がありましたが、専用のハードウェアやIoTの用途、達成するまでの時間など具体的なイメージはありますか?

栗元氏:まずはペイメントを通じた価値を移転するところが固まらないと、IoTは始まらないのではないかと思っている。人からモノへの価値移転はそこまで時間がかからないと思うが、M2Mのようなモノからモノへの価値移転にはまだ時間が必要だと思います。

永井氏:シャーディング自体もまずペイメントが先という感じです。ハードウェアでいうと、専用というよりもまずはスマートフォンが先にくると思います。

山本氏:データストアの点がEOSは特にネックになるのではないかと思う。データベースと組み合わせるなど方法論は色々あると思う。

西村氏:ハードの話の時によくでるのは鍵管理。今後、そういった文脈でハードウェアとブロックチェーンが語られることは増えていくと思う。

会場Q:数多くあるプロジェクトはお互いどのように関わっていくと思いますか?

栗元氏:Bitcoinは他のプロジェクトと共存していくと思う。内部でまずは技術を磨いていくという段階で、競争みたいな感覚は持っていない。

永井氏:インターオペラビリティーということが言われることが増えているように、最終的には共存すると思う。

山本氏:10年後にどのブロックチェーンが残っているかわからないが、それぞれが特徴を持つ中で、補完できるところは補完していくと思う。

西村氏:残っているブロックチェーンは共存しようとしていると感じる。レイヤーごとの組み合わせは普通に起きると思う。

石井氏:技術が複雑化していく上で、説明も高度化していくと思う。その中で人間にわかる形で本当に整合性を証明できたりすることなどは非常に重要だと思う。

栗元氏:そのアプローチの一つとして、視覚化していくなどのサービスは今後出てくると思う。

まとめ

ブロックチェーンの解決したいトリレンマの一つ、スケーラビリティ(高速化)は様々なアプローチで取り組まれています。その中で同時に3つの要件を満たすことは難しいからこそ、レイヤーごとの相互サポートは必然に起きると言えるかもしれません。

今後、ブロックチェーンが価値の移転を実現するために、IoTデバイスなどに搭載されると、より処理速度が求められてくるでしょう。

一つのプロジェクトに偏ることなく、あらゆる視点からブロックチェーンのテーマを扱うBlockchain EXEだからこそ、新しいアイデアが生まれる、そういう場になることを願っています。

AI業界のパイオニアSingularityNETによる AI×ブロックチェーン ワークショップ | Blockchain EXE Code #8イベント

AI業界のパイオニアSingularityNETによるAI×ブロックチェーン ワークショップ | Blockchain EXE Code#8

4月4日にBlockchain EXE Code #8が東京で開催され、AIとブロックチェーンを活用したプロジェクトを進めるSingularityNetによるワークショップを開催しました。人工知能ロボット『ソフィア』など、AIの権威として知られている、CEO Dr. Ben Goertzel氏とチームメンバーが来日しました。

SingularityNetは、分散型ブロックチェーンのプロトコルやサービス、エージェントのグローバルネットワークを構築するためのAIアルゴリズムを提供するプロジェクトです。AI技術へのアクセスを民主化し、イノベーションを妨げる大企業のデータ寡占を避けることを目的としています。

目次

分散型AIの実現に取り組むSingularityNET

Dr. Ben Goertzel, PhD
SingularityNETのCEOであり、Hanson Roboticsのチーフサイエンティストです。また人工知能情報学会、OpenCog財団、分散型AIアライアンスおよび非営利団体の未来Humanity+の会長でもあります。Goertzel氏は、人間を超えた全能知能を生み出すことを目的とした、AGI(Artificial General Intelligence)の世界でも有数の権威です。
また、自然言語処理やデータマイニングからロボット工学、ビデオゲーム、国家安全保障、バイオインフォマティクスに至るまで、AIの社会実装を何十年も進めています。さらに20冊の科学書と140冊以上の科学研究論文を発表しており、OpenCogシステムの主なアーキテクチャーやデザイン設計を行なっております。

SingularityNetのCEOであるBen氏より、AI開発における段階についての話がありました。Ben氏はAIに関する仕事に30年以上従事している経験があります。その中で近年のAIの進歩は革命的だと述べます。

AIの使用目的は軍事や金融のみならず、日常生活にも広がっています。今後数年以内にはAIは自らで学習する能力を持ち、ますます賢くなるでしょう。

AIの概要を話した後、Ben氏は話題をSingularityNetに移しました。今年2月のベータ版のリリースをArtificial General Intelligence(AGI)への道のりとしてプロジェクトを進めているそうです。AIを使用している多数の企業やスタートアップは、SingularityNetを活用してAIのソリューションを改善することが可能です。

ハンズオンワークショップ | SingularityNETマーケットプレイス

最後に、分散型AIについて興味がある人は誰でもコミュニティでサポートを得ることができるとの話がありました。さらに、SingularityNetは日本とのコラボレーションを熱心に進めていきたいそうです。

続いて、Ralg Mayet氏によるハンズオンワークショップに移りました。MetaMaskを用いて、SingularityNetのマーケットプレイスで支払いシステムをどのように扱うか解説しました。その後、自分たちの開発したAIモジュールやデータセットをSingularityNetのサービスにどのようにデプロイするか、実際のプロセスを交え詳細に解説していただきました。

ディスカッション | AI、ブロックチェーンはどこに向かうのか?

Ben Goertzel氏、Cougerの石黒氏とCEO石井敦氏、そしてArayaのCEOである金井氏がパネラーとして参加し、トークテーマ「現代におけるAIの役割や影響とそれが創る未来」について意見が飛び交いました。議論は今後の課題やAGIシステム、多様性、そして各分野が力を合わせてAI開発を行うことの重要性までに及びました。

石黒:AI × ブロックチェーンのプロジェクトはそれほど多くはありませんが、皆さんはどうしてそこに注目するに至ったんでしょうか。

Ben:私は初めからAIとブロックチェーンの組み合わせが世界中を繋ぐようになると高い技術レベルから予想していました。分散型ネットワークはSingularityモデルにとって最適なプラットフォームになりますが、それには政治的、また商業的な問題が付いてきます。例えば政治問題でいうと、私がアメリカ市民としてイランで技術の推進を行おうとするのは難しいですが、分散型プロトコルがあれば世界中のエンジニアがTCP/IPを用いて独自の市場やインターフェースを作ることが可能です。ブロックチェーンの数は常にデータ量とコントロールに依るのでAIを取り入れるだけでは分散化は困難です。しかし各企業のインフラに留まらず、世の中の至る所にAIを埋め込むことにより正確なデータにアクセスできるようになるでしょう。

石井:AIは物事を自動化する役割があり、ブロックチェーンは正確さを証明するのが得意です。しかしエンジニアにとってAIは開発するのが難しくブロックチェーンは理解するのが難しいと言われています。CougerでもAIエンジニアとブロックチェーンエンジニアがそれぞれ分かれていますが、そのような異なる技術を組み合わせることに大きな可能性が秘められていると思います。

石黒:今後数年でAI分野に何が起こるでしょうか?

金井:AIは現在データを取り扱う技術として知られていますが、いずれモデル化してAPIとして使われる時代が来るでしょう。技術を資産とするエンジニアが様々なモデルを組み合わせてプロダクトを開発するようになるとさらに可能性が広がって来るのではないでしょうか。

石井:私はゲーム業界出身ですが、ゲームを開発する上て問題が起きたたときの解決法は技術面とシナリオなどのアイデア面の二種類のアプローチがあることが基本です。なのでAIに関しても技術力だけでなく新しいアイデアの発想も必要になって来ると思います。

Ben:私たちが開発しているAGIが唯一無二である必要はなく、誰かが深層強化学習を用いて例えばCougerのAPIに基づいて独自のAGIを開発することで柔軟性が増します。私はそれが第一歩だと考えています。私が開発したAPIと他のエンジニアが開発したものが組み合わさってコンピュータインターフェースとして共に使われるようになるでしょう。しかしスーパーインテリジェンスの将来を予測するのは不可能に近いです。

金井:SingularityNetはAPIなんですか?

Ben:我々はSingularityNetをAPIのAPIとして捉えています。AIのサービスはたくさんありますが、それは特定のユーザーにサービスを提供するだけなので、全ての技術レベルのエンジニアに対して強固なAPIが必要なのです。

石黒:それは面白いですね。それには何か理由があるんでしょうか。

Ben:私たちは分散型AIの問題についていくらか理解していますが、今の所その知識は広大な海に浮かんでいるようなものです。だからこそ我々の成果を一つにまとめる必要があります。私はAIを使って世界を商業的に支配したいとは思いませんが、SingularityNetが世界中の開発者が生活する支えになれば素晴らしいと考えています。AGIが分散型をとっている理由はそこにあります。

金井:AIに関する倫理的指摘は数多くありますが、私が最も恐れるのはいつかAIの開発が加速するについれてGoogleや中国の大きなIT企業によって世界が支配されるのではないかということです。

Ben:私は技術が人間を支配するようになるより、AIの倫理規則が有名人によって制御されるようになることの方が恐ろしいと思います。

石黒:私がブロックチェーン開発を面白いと思うのはAIの脆弱性に対する処方箋のような役割を担っていると思うからなのですが、金井さんが開発するAIのセキュリティーはどのようにして保たれているのでしょうか。

金井:まず危険性のないAIがあれば嬉しいですよね(笑)。我々も安全性に注意して開発をしていますが、反対にそうしすぎて新しいアイデアが生まれなくなることもあるのでジレンマを抱えています。

Ben:ここでも分散型ネットワークを用いれば日々新しいアルゴリズムが更新されて常に安全なAIが利用できるようになるでしょう。今日ここに集まっているエンジニアの皆さんで世界を救いましょう!(笑)

ブロックチェーンの脆弱性 Fake Stake攻撃とは

ブロックチェーンの脆弱性

Fake Stake攻撃という言葉を聞いたことがあるでしょうか?Fake Stake攻撃は2019年に新たに発表されたブロックチェーンへの攻撃手法で、UXTO型PoS系の仮想通貨が対象となります。攻撃に必要な資金が少ないという特徴があり、今後、対象通貨に被害が生じる恐れもあるため、ぜひチェックしていただければと思います。

Fake Stake攻撃とは

Fake Stake攻撃とは、ある仮想通貨ネットワークのP2Pで接続されたノードに対し、大量のブロック情報を送り付けることで、リソース枯渇を引き起こす攻撃のことです。2019年1月23日に、アメリカのオンラインメディアであるMediumで投稿されました。この脆弱性は、米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校 電気・コンピュータ工学科のDecentralized Systems Labで発見されたものです。

UTXO型PoS系の仮想通貨が攻撃対象

この脆弱性は、PoS(Proof of Stake)を採用している仮想通貨のうち、ビットコインで用いられるUTXO(Unspent Transaction Output)という管理方法を採用している仮想通貨が対象となります。

UTXOは日本語では「未使用トランザクションアウトプット」などと呼ばれています。UTXOを用いた管理方法は、アカウントの残高をそのままデータとして管理・記録するのではなく、取引データのみをもとに残高を計算する仕組みです。

UTXOは、ブロックチェーンに記録されている未使用のトランザクションのことを指します。トランザクションには仮想通貨の着金と送金を記録する箇所がありますが、UXTOは着金のみ記録されます。UXTOは、UXTOの正当性を検証する仕組みが不十分な場合があり、Fake Stake攻撃はその点を利用した攻撃です。

Fake Stake攻撃はわずかな資金で攻撃が可能

Fake Stake攻撃の特徴は、わずかな資金で攻撃が可能となってしまう点です。攻撃を成立させるためには、大量のトランザクションが必要となりますが、攻撃者が所有するウォレット間で送金を繰り返すことで、大量のトランザクションを作成することができます。これは少量の資金で可能となるため、悪意のある攻撃者にとって、攻撃のハードルが低いという危険性があります。

ブロックチェーン取引に対する攻撃として、51%攻撃というものが知られています。これは悪意を持った集団や個人が、ネットワーク全体の採掘速度の51%以上を支配して、不正ブロックを作成し、トランザクションの二重送金をする攻撃方法です。このような攻撃の場合、50%以上の採掘速度を確保するには非常に大きな資金が必要となります。

Fake Stake攻撃は、トランザクションを操作して不正な取引を行うといったやり方ではなく、マイニングに参加しているネットワークノードをクラッシュさせてしまうため、コインを大量に保有する必要がなく、資金面でのハードルは大きく下がります。

ブロックチェーンの堅牢性を語る上で脆弱性を知ることは必須

本記事執筆時点で、Fake Stake攻撃の具体的な被害は報告されていません。しかし、これまでご説明した通り、少ない資金で、かつ比較的シンプルな方法で攻撃が可能であるため、注意が必要です。Fake Stake攻撃に影響がある仮想通貨を利用している方は、各通貨の今後の動向を注意深く見守る必要がありそうです。

新たな経済圏の衝撃!~ブロックチェーンによって立ち上がり始めた Web3の実現やトークンエコノミーを支える技術とは~ | Blockchain EXE #17イベント

新たな経済圏の衝撃!~ブロックチェーンによって立ち上がり始めた Web3の実現やトークンエコノミーを支える技術とは~ | Blockchain EXE #17

ブロックチェーン関連分野における技術共有、発展、応用に重きをおいたMeetupイベント、第17回のBlockchainEXEが2019年6月12日に都内で開催されました。このイベントのレポートをお届けします。

テーマは「Web3とトークンエコノミー」について

伊藤 佑介  Ito Yusuke|博報堂ブロックチェーン・イニシアティブ
2008年にシステムインテグレーション企業を退職後、博報堂にて営業としてデジタルマーケティングを担当。
2013年からは博報堂DYホールディングスに出向し、マーケティング・テクノロジー・センターにて、デジタルマーケティング領域のシステムの開発~運用に従事。
2016年から広告・マーケティング・コミュニケーション領域のブロックチェーン活用の研究に取り組み、2018年9月より博報堂ブロックチェーン・イニシアティブとして活動を開始。その後、次々とマーケティング・コミュニケーション領域のブロックチェーンサービスを開発し、2018年11月5日にトークンコミュニティ解析サービス「トークンコミュニティ・アナライザー」、2019年1月31日に生活者参加型プロモーションサービス「CollectableAD」、2019年2月6日にデジタルアセットリアルタイム配布メディアサービス「TokenCastMedia」をリリース。現在は、さまざまなブロックチェーンベンチャーとコラボレーションしてブロックチェーンの社会実装に取り組んでいる。

オープニングを務めた博報堂ブロックチェーン・イニシアティブの伊藤佑介氏は、スマートシティとトークンエコノミーを掛け合わせた”クリプトシティ”の構想について話しました。

「ブロックチェーンとサーバレスのおいしい関係」石井壮太|株式会社ALIS CTO

石井 壮太 Souta Ishii|株式会社ALIS
ALISファウンダー CTO。業界歴13年超のエンジニア。新技術や未経験の業務を好み、役割や技術を問わず意識的にゼネラリストを指向。 暗号通貨、ブロックチェーンの技術動向は2013年より追っておりWEBの「次」を作る中核技術であると確信している。 その流れを推し進めることに強い関心があり、安・水澤と共にALISをスタートした。

ALISの石井壮太氏は技術的な話を軸に、非中央集権化によって運用管理が面倒なサーバーをなくすサーバーレス構想を披露されました。イーサリアムを選んだ理由、セキュリティやコスト面でのメリットや肌感、サーバレスブロックチェーンの現状などについて語りました。

「Gaudiyに関するブロックチェーン技術とUXと戦略」後藤卓哉|株式会社Gaudiy 共同代表

後藤卓哉 Takuya Gotoh|株式会社Gaudiy 共同代表
1995年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、デザインスクールにて、人工知能や先端テクノロジーを使った新しいサービスデザインについて実践する傍ら、AI系スタートアップへ創業メンバーとして参画する。2018年、現共同代表の石川らと株式会社Gaudiyを創業。
Gaudiyでは、経済学的な知見をもとにエンジニアとして、トークン設計や、ブロックチェーンの実装などプロダクトの仕様策定から開発全般までを行う。

”イノベーションの民主化”を目指し、ユーザーの活動に応じてトークンを分配するGaudiyの後藤卓哉 氏。Zilliqa(ジリカ)の採用や、多くの企業がブロックチェーンを断念する理由の分析、Dapps(自律分散型アプリケーション)の価値、UXとしての自立分散性、報酬設計とインセンティブ、トークンの価値のつけ方など多岐にわたる内容でした。

「My Crypto Heroes エコシステムを支える技術」上野広伸|double jump.tokyo株式会社 CEO

上野 広伸 Hironobu Ueno|double jump.tokyo株式会社
株式会社野村総合研究所にて数々の金融システムの基盤構築に参画。 前職の株式会社モブキャストにて執行役員、 技術フェローを歴任し、 プラットフォーム及びゲームサーバーの設計・開発、 スマートフォンゲームの開発基盤の構築を指揮。

”ゲームにかけた時間が資産になる”世界一のブロックチェーンゲーム「My Crypto Heroes」を手がけたdouble jump.tokyo株式会社の上野広伸氏。MMORPGとの違いや、オフチェーンプロトコル、開発の苦労話、インフラコスト、マイクロサービスなどについて語り、ゲームアセットの自由な流通によってブロックチェーンが熱狂を生み出し始めていると力説されました。

ディスカッション「ブロックチェーンによって立ち上がり始めた Web3の実現やトークンエコノミーを支える技術とは」

講演終了後、エンジニアの人材不足やWeb3の本質などのテーマについて、登壇者四名によるディスカッションが行われました。(以下、敬称略)

伊藤(司会):基礎的な質問ですがブロックチェーンエンジニアが少ない中で、採用とか、集めるのが大変とか、チームを率いているエンジニアとしてそれぞれ苦労されていることは?

上野:正直、エンジニアはそんなに集めにくくない。おそらくBlockchain EXEみたいなカンファレンスも同じと思うが、こういう勉強会はビジネス層とかエンジニア層しかいない。「仮想通貨で儲けまっせ」みたいなお金にまつわるカンファレンスとか技術エンジニアはいるけど、ゲームに関してはプランナー(企画する人)がいない。企画するための勉強会がなくて、そこが一番課題。

後藤:採用はそんなに難しくない。語弊はあるが、ブロックチェーンよりもっと普通のエンジニアがいない。スマートコントラクト設計でのデータの保存・処理とか、一般的なエンジニアリングができればそんなにキャッチアップは難しくない。

石井:僕も同じで、基本的に基礎技術の考え方はわりと通用する部分があって、かつ興味と熱意があって、採用のイメージはあまりなく、熱意があれば出来る。もちろん独特の部分はあるが、そこがそんなにハードルにはならない。どちらかというとまだまだ怪しさとか、「ブロックチェーンどこいくんだ?」みたいな、そういうそもそもの分かりにくさが人がいない原因。増えてきてはいる。

伊藤:ときどき「イーサじゃなくて〇〇だ!」という横文字のいろんなプラットホームの方に会う。フラットな気持ちで聞くと「イーサリアムあるならそれでいいじゃないか」と思ったりもする。けれど、プラットホーム作っている人は足りない所を解決するとか、今のプラットホームに固執せず、作りやすいとかセキュリティとか、分散を上手く実現できるかどうか(が大事に見える)。新しいものがイーサに取って代わるかどうか?

石井:イーサしか信じないわけではなく、むしろいろんなものが繋がるだろう。相互運用性がより強くなるだろう。実際にそうなりつつあり、用途かなと。イーサは(コストが)高いのでもっと別のがあっていいし、柔軟にやればいいのでは。

後藤:基本的に新しいプロトコルは話題になるが、今話題のものがすぐ実用的になるのはほぼあり得ない。機械学習やAIも技術に興味ある人が話題にして、その後2、3年経ってからようやくまともに使えるくらい。だから今新しくプラットホームとか、もっと性能良いのが出て、それにキャッチアップする必要は全然ない。後で実用化したらいい。どっちにしろ価値あるプロトコルができたら全部繋がるはずで、今どこを選ぶかは正直関係ない。

上野:ブロックチェーン自体に興味があって始めたので、最終的には自分でブロックチェーンを作りたい。この方がビジネスとしてどう、とかじゃない。単純にエンジニアとして「面白いじゃん!」としか。プライベート、パブリックとかは後付け。それまではイーサリアムに乗っかろう、くらいの発想でいる。

質疑応答

質問①:Web3は定義が定まっていない。ざっくりWeb3がどんなものかそれぞれ伺いたい。それから、Web3を標榜するプロジェクトの中でデータベース、ファイルシェアポイント、データ格納などの機能をブロックチェーンで実現して他にマイクロサービス的に提供するものをWeb3の概念に含めるかどうか?

上野:マイクロサービスはビジネス的に成立するかという視点が重要。それ一個では成り立たないが、ブロックチェーンにインセンティブをすごく細かく配れる仕組みで、単体でもビジネスで成立する可能性がある。

マイクロサービスがずらっと並ぶ世界が現れるとしたら?今でもGoogleとかAmazonとかグローバル企業がすごい資本力とシステムをかけていて、それはそれで便利。ただ自社で全てのサービスを作るのが最適でも高速でもない。図体でかいので。

Web3の可能性は、それぞれのマイクロサービスがそれぞれの最適解を見つけ、同時進行型で最終的にどれだけ巨大なサービスになるかわからないが、皆が切磋琢磨してどんどん良くしていくこと。大資本のグローバル企業に最終的に勝つ源泉になる、その動きこそがWeb3。

後藤:簡潔に言うと、Web3自体はステートの共有、価値のあるアセット発行、それらの権利や技術。既存のものと置き換える話は、使い道次第。将来は分散的でWeb3的な、全てのネットワークが繋がるという話になる。直近で大きいのは、自律分散的なものの導入によってユーザーの満足度が非常に高くなること。プロダクト同士連携したり、おそらくゲームやSNSが出てくるが、新しいDappsが興味を持って連携していく。この連携が進むときにアセットなり、共通の仕組みを使うことでいわゆるWeb3的な世界観が来るのでは。

石井:核になるのは非中央集権化。サイトでユーザー登録や住所やクレジットカード情報を入力するのは無駄。食べログでレビューを1000回やっても、Rettyでは価値を転用できない。レピュテーションや情報は全てユーザーに帰するものにしたい。友人の情報もFacebookではなく自分のものなので、フォローしなくても勝手に繋がっている方が便利だし、そうあるべき。その方向がWeb3で、将来は今より良いUXになるだろう。

質問②:Web3では全てのデータがユーザーの手元に戻るというが、今の世の中で広告はなるべくユーザーにお金を払わせずに多くの人にサービスを届ける役割を果たしている。”より良いサービスを供給する”企業のインセンティブは今後どこから生まれる?

石井:今はそんなに意識せずにデータを取っている。一つの案として、価値があるものに料金を支払うようになるともっとディープなデータが取れる。友人関係もゼロイチでなくて、この人はどういう人でどういう感じで、というのにきっちり対価を取る。広告自体も変わっていて、今はテレビのCMとかも全然効かなくなっている。違う形の広告が必要では。

後藤:(ご質問の)前提として今の広告は無料で、トークンを使うと価値を還元しなければならないという主旨ですか?

質問②:ちょっと違う。AirDrop的なことではなく、企業がより良いサービスをより多くの人に知ってもらうというインセンティブが広告収入源に依拠している状況をWeb3が壊すとき、事業者が世界を良くしようとするメリットが生まれるのか、見失うのではないか。

後藤:それはすごく簡単な話。既存の広告よりWeb3的なものを使うほうが収益が上がるから。今、世界に一番人気のアプリはAdBlock。企業がそもそもFacebookにお金を払って広告を出している。トークンをユーザーに配る場合、基本的にお金を払わない。なぜかというと、元手がなくても経済インセンティブを与えられるから。Facebookが仮にトークン発行したら、現金を殆ど使わずに価値ある通貨を生み出せる。これを代わりにユーザーに配れば元手なしで熱狂が高まり、どう考えてもお金を払って広告を出すより良い。実際の効果によってWeb3的なものが広がる。

上野:広告は無くならない。今のWebは広告でしか稼げないからそれが減るだけ。お金を稼ぐ仕組みが確立されていないインターネットの中では一番やりやすかった。ドットコムバブルの頃から視聴率ビジネスだと。とりあえずユーザーを確保して、広告やれば儲かるだろうみたいな。これまで広告一点集中というか偏っていたが、(Web3は)いろんなビジネスモデルが成立する世界になるのでは。

マイクロビジネスとオープンサービスという言葉を考えている。マイクロサービスで成立するマイクロビジネスがいっぱい出来る。オープンサービスはオープンソースのことで、イーサリアムはまさにそのもの。今後はこの2つがキーワードになる。

伊藤:御三方、ありがとうございました。

まとめ

ユーザーのデータを企業が独占的に保有することはメリットとデメリットの両面があります。今後、ブロックチェーン技術が一般社会に浸透していく事で、次なるデータ・ドリブン社会が達成することができるかもしれません。

爆速で莫大な利益を生み出す仮想通貨取引所。取引所の仕組みと仮想通貨の価格の決まり方とは?

莫大な利益を生み出す仮想通貨取引所の仕組みと仮想通貨の価格の決まり方

仮想通貨の知名度が向上していく中、取引所のハッキング問題から大手企業が取引所を買収するなど、市場の成熟化に向けて大手企業の参入も増えています。取引所のハッキングによる消費者への返済スピードや返済能力から取引所の生み出す莫大な利益にも注目が集まりました。

仮想通貨の取引所はどのような仕組みで、どのように価格が決まっているのでしょうか。

仮想通貨取引所とは

取引所は、仮想通貨の売買が行われる場所です。仮想通貨自体は、取引所などを通さずに個人同士で売買することも可能なのですが、売買できる相手を自分で探すのは、実際にはとても難しいことです。そのため、取引所を利用することで、簡単に売買ができるようになっています。

仮想通貨の取引所は、2017年10月から登録制となり、「仮想通貨交換業者」に登録しないと新しく開設することができません。代表的な取引所には、bitbank(ビットバンク)、bitFlyer(ビットフライヤー)などがあります。取引所によって扱っている通貨の数は異なってきます。

仮想通貨の価格の決まり方

取引所では、「オークション方式」という方法で、仮想通貨の価格が決まります。オークション方式とは、通貨を売りたい人と買いたい人の注文の中から、双方の条件が合う注文同士で売買が成立していきます。売り注文に対して、より高い買い注文がマッチングされます。これは価格優先の原則と呼ばれます。同じ価格で注文が行われた場合には、取引所が受け付けた時間のより早い注文が優先して売買が成立します。これは時間優先の原則と呼ばれます。

仮想通貨を買うことのできる場所として、取引所の他に「販売所」があります。販売所の場合は、販売所が提示した価格に対して、買いたい人が注文を行います。これは「マーケットメイク方式」と呼ばれています。bitFlyerやCoincheckのように、取引所と販売所のサービスを同時に行っている業者もあります。

仮想通貨取引所の収益構造

取引所では、通貨を売りたい人と買いたい人同士で取引を行うため、取引所はそれを仲介するだけです。取引所は仲介する対価として、ユーザから取引手数料を受け取ります。

売買取引が成立した場合に支払う「売買手数料」のほか、仮想通貨を現金に換えたい場合には、日本円に交換してもらい銀行口座に入金してもらうための「入出金手数料」などがあります。

取引所は、このように主に手数料ビジネスで利益を生んでいるのです。手数料の価格は、取引所によって異なります。

販売所も同時に行っている業者の場合は、自ら仮想通貨の売買を行い、顧客からの買い注文が入ったら自分の持っている通貨を販売し、売り注文が入ったら自己資金で購入します。ここで利ざやを取ることで、利益を生み出すことができます。

bitflyer社の業績

コインチェック社の業績

まとめ

いかがでしょうか?バブルで一過性の盛り上がりはありましたが、取引所のビジネスモデルは非常に高い利益率を生み出している特徴があります。取引所に参入する企業が多い理由も見えてきたのではないでしょうか。

一方、法律の不安定さやセキュリティ対策など、仮想通貨取引所にはリスクはつきものです。今後も取引所へのハッキングはつづていくと同時に取引所が一般消費者の信頼をどのように得ることができるのかに注目していきたいです。

【Blockchain EXE Presents #2イベント】データ活用とIoT×ブロックチェーンの役割

【Blockchain EXE Presents】FinTech Economy Summit:金融領域を超えたブロックチェーン技術の応用#2

ブロックチェーン業界は、主に資金調達を目的とする「黎明期」を経て、さまざまな金融サービスを提供する企業の成長が著しい「発展期」を迎えました。今後のFinTech業界の更なる成長が見込まれる中、公正な成長を後押しする規制や法的環境の整備が望まれます。

ブロックチェーンの技術や応用に焦点をあてるBlockchain EXEより、FinTech Economy Summitの特別講演として、金融以外のブロックチェーンの発展に関してディスカッションを行いました。

データ活用とIoT×ブロックチェーンの役割 | Blockchain EXE #2

目次

石井:Blockchain EXE代表の石井と申します。今日は、『データ活用とIoT ブロックチェーンの役割』ということで、パネルディスカッションを行います。

石井:今日集まっている皆さんはそれぞれ特徴があることをされています。まず平山さんは、日本アイ・ビー・エム株式会社において、王道とも呼ばれるエンタープライズのブロックチェーンを。株式会社ケンタウロスワークスの河崎さんは、弁護士でもあるので、法律面とブロックチェーンの関わり方を。ZEROBILLBANKの堀口さんは、スタートアップ的な観点で、アイ・ビー・エムさんとはまた違うユニークな形で事業を進められています。

石井:私はBlockchain EXE代表で、クーガー株式会社のCEOの石井と申します。ご存知の方も多いと思うんですけれども、Blockchain EXEは、約2年前に設立したコミュニティです。世界で起きているユースケースであったり、実際にブロックチェーンがどう使われているかであったり、そういうコンセプトで技術の内容であったり可能性をディスカッションしたり、共有するコミュニティです。グローバルに展開していて、世界主要10カ国でも開催しています。ニューヨーク、サンフランシスコ、中国であれば上海であったり北京であったり、シンガポール、ベルリン、ルワンダ、トロントなど。来週はマドリッド、パリなどでもやる予定です。クーガーの方では、どうやってAIやデータの信頼性を作り出すかなど、そういう視点でブロックチェーンを活用していて。そういう意味で、今日のテーマであるIoTとかデータというのは、僕も取り組んでいるテーマでもあります。では、それぞれ自己紹介をお願いします。

堀口:ZEROBILLBANKの堀口です。私は、今ブロックチェーンをエンタープライズ向け、日本の大企業様向けのスタートアップを経営しております。ZEROBILLBANKの立ち上げはすごくユニークで、イスラエルのテルアビブで法人登記をしておりまして。ちょうど今月で設立から4年ですが、最初の2年くらいは私自身がテルアビブに住んでいました。ユダヤ人って、フィンテックとか金融サービスの文明化でいうと、世界でも勝っているんですね。例えばイギリスの上場企業で見ても、トップ20%くらいがユダヤ系だったりしますので。ユダヤの方たちってどんな人材で、どんなテクノロジーを使っていて、どんな世界で戦っているのかっていうのが分かれば、それを日本に持って帰ってきて、いろんなことが出来るのかなと。

堀口:僕自身、色んなITのバックグラウンドもある中で、かつそのイノベーションを取るっていうことを学んでみたくて。現地に混ざって、今のサービスの原型を作ってきて、それから日本でのサービス提供を始めております。今日は具体的に、本当に『IoT×ブロックチェーン』の文脈で、日本の大企業であったり、どんな形でサービスの提供を作っていけるのかとか、そういった未来について、皆さんと一緒に話ができればなと思っています。今日はよろしくお願いします。

平山:同じくアイ・ビー・エムになるんですけども、私がアイ・ビー・エムに入ったのが2016年の2月で、ちょうどアイ・ビー・エムがHyperledger Fabricという形でオープンソース化したタイミングで入っています。当時はまだブロックチェーンが黎明期で、認知度もない時代だったんですけれど、非常に可能性を感じて。特にイーサリアムが出たのが2015年あたりですね。そこからスマートコントラクトの考え方が出てきて、フィンテックブームも起きたタイミングで、アイ・ビー・エムがそれをやるということで。最初の一年は、元々ブロックチェーンっていうとやっぱりビットコインのイメージがものすごく強くて。金融機関でいうと、ちょうどあの時期がマイナス金利の発動のタイミングとかと被って、金融機関は非常に危機感を持っていました。どちらかというと、アイ・ビー・エムが得意な金融機関を中心にした実証研究が多かったんですけれども、ここ1~2年は製造や流通などの実証が増えてきていまして、これがIoTとの相性がすごくいいということで。IoTとブロックチェーンの連動プロジェクトを実験的にやっています。

河崎:はい、河崎と申します。私は今、弁護士が本業で、それと同時にケンタウロスワークスというリーガルテックの会社の代表もしています。石井さんから順に、アイ・ビー・エム出身が続いているんですが、私はアクセンチュアという会社に元々おりました。ただまあ、それも10年以上、15年くらい前の話で。その後、法科大学院というところを経由して、弁護士になって10年です。半分弁護士、半分コンサルタント・IT業界というところで。で、Blockchain EXEさんと一緒にに、Blockchain EXE Legalという取り組みを続けています。ブロックチェーンをいよいよ社会実装するという段階になったときに、色々な法律であったり、社会制度と衝突する。そこをどのように解決していくか、というテーマに取り組んでおります。

石井:先ほど河崎さんがおっしゃられたように、法律面とか個人情報面とか、地域での規則とかですね。あとは技術的な、データをどう保存していくかみたいな話とか。まあ、あとは実際に人間の心理的な、ちょっと気持ち悪いな、とか。今まさに、そういった問題点がすべて混ざり合っているような状態だと思っています。ブロックチェーンは業界としては、全体的に下がり気味というか、ダウントレンドになっている状態だとは思います。この原因のひとつになったと僕が思っているのが、やはり2017~18年ぐらいにかけて、様々な実証実験のニュースが世界中で毎日毎週発表されていて、『通貨の次のブロックチェーンの用途は何だろう?』ということで、いろいろやっていたと。ただその結果がどうなったかっていうのは、あまり報告されていない、という傾向がありまして。

”通貨”の次の役割は?

石井:通貨の次のブロックチェーンの用途として、保存するデータは何なのか、ということになるかと思いますも。IoTがデータを保存していく、ということになったときに、現場ですね。ブロックチェーンにどういうデータが保存されていくべきかと。そういう視点について、先ずは皆さんのご意見を伺って生きたいと思っています。では、堀口さん。

堀口:そうですね。これもまだまだ黎明期なので、今すぐ『これだ!』っていう答えはたぶんないと思うんですけど。まず、ブロックチェーンに書くべきなのかどうか、っていう議論が結構重要かなと思います。例えば、IoTがここまで広がってくると、今は単純な、IoTのセンサーで掴んだテキストデータが送られてきていると思います。これが個人情報となって、例えばFitbitで、自分が歩いた際の心拍だったり活動量だったりまあもろもろデータは取れますけれども、このデータをはたして、価値があるものと認めてブロックチェーンに記録して、アセットとして流通しますか、しませんか、と。で、ここでまあ色んな問題が起きてきます。ブロックチェーンの良い面でも悪い面でもあるのは、一度でも記録すると消せないっていう問題がどうしても出てきます。ついにはGDPRの観点で消さなくちゃいけないっていう要素をどこまで踏まえるかというのも考えて、色々な議論をしていかなくちゃいけないのかな、と。

石井:今後、ブロックチェーンの通貨以外のユースケースで、人々に期待されていて、かつ特にGDPRとかそういう流れがある中で、『こういうデータであればこう使えるんじゃないか』『保存に向いているんじゃないか』とか、その点、河崎さん、いかがですかね。

河崎:GDPRってすごくインパクトのある4文字の英字なので使われますけども、普通に日本の個人情報保護法でも、訂正しなきゃいけないものは訂正しなきゃいけないので。ブロックチェーンってただのデータベースではあるので、特徴を踏まえた使い方を、っていうことだと思うんですね。私の理解する限り、ブロックチェーンが一番向いているのは、まあ改ざん防止といいますか、完全性確保っていうところではすごく向いていると思います。

ブロックチェーン活用の現実解

河崎:しかし、一方でそのために、例えばパフォーマンスとかですね。そういったところを犠牲にするという、ある種のトレードオフというか、そういうものがあると思いますので。なんでもかんでもブロックチェーンに乗せるっていうのは、およそ非現実的だろうと考えています。特にその、個人情報保護法の対象になるような個人データのようなものを、生のままでブロックチェーンに書き込むっていうのは、ちょっと社会実装という視点からは想定しがたいものかなって思います。

石井:そうですね。例えば、みなさんご存知かと思いますが、Amazon GOとかですね。人がいないときに、Amazonが提供しているカメラを部屋の中に置いておいて、その様子を写真や映像として撮る。その状態で、ハウスクリーニングであるとか、宅配物の受け取りなどを自動でやってしまうっていう。これはAmazonが強烈に信用されているということに基づいてのサービスなんですが、これはこれで結構恐ろしいといいますか。そういうデータをパブリックで公開していいものから次に行こうとするけれども、実際そのほかのユースケースになった瞬間に、企業であっても個人手あっても、非常にデータの秘匿性があって、前に進みにくい状況っていうのがあると思います。その中で、ブロックチェーンで一番ユースケースをどんどん積み上げているのはアイ・ビー・エムのHyperledgerだと思うんですけれども、通貨以外のユースケースで今非常に伸びているものはありますか?

広がるブロックチェーンのユースケース

平山:結構みなさんにブロックチェーン界全体が縮小しているのでは、っていう誤解をされているところもあるかと思うんですけれども。ブロックチェーンでパブリックとプライベート、その両方がありますよね。。パブリックの方は色々と課題が出てきたというところで。その一方で、プライベートはまだまだ歴史が浅くて、今色々と進んでいるところです。GDPRは、アイ・ビー・エムとしてはすごく追い風になっていますね。パブリックだと、正直言うと誰が入ってくるか分からないんですね。なので、本当にセキュリティとか、個人情報を担保出来るのか、っていうのは、意識上難しいところではあります。プライベートであれば、コミュニティ型で作ることができるので、より対応はしやすいということになります。もうひとつ、IoTに関しても、特にヨーロッパ、ドイツとかでは色々進んでいて、IoTを使ってデータを格納する話はグローバルでも起きています。IoT自体でいうと、どっちかというとはじめはビッグデータですよね。なので、いわゆるその中のほんの一部だけ価値があればいい、とりあえずデータをどんどん取っていきましょう、その中で一部、アナリティクスで価値があればラッキーだ、というようなプロジェクトなので。Hyperledgerの場合、基本的にアーキテクチャー上は台帳なので、一番目には、改ざんできないっていうコンセプト。その中で、かつ重要なものだけを覚えているっていう。なのでいわゆるアナリティクスだとか、データ分析だとか、リレーショナルデータベースが得意としている分析だと、システムとして作るのは、あまりまだ成熟していない、と。一番大きなのは、トレーサビリティですよね。実際にあったものをきちんと担保するっていうところで、ユースケースが非常に増えてきています。

石井:貿易とか、サプライチェーンとか。

平山:そこの流通は今すごく増えてきて、成長しています。

石井:元々不特定多数の人が関与していて、台帳的なものが不完全な状態である、そういうところを置き換えるみたいな話ですかね。

ブロックチェーンと個人情報のあり方

平山:その中で、個人情報をどうするかっていうのが、ディスカッションのポイントですかね。

堀口:僕らもプライベートでブロックチェーンを提供しているんですが、事業として、儲けの仕組みを作らなくちゃいけないっていうことを考えますとスタートアップの立場から見ても、マネタイズポイントってやっぱり重要ですよね。ひとつの出口としては、保険とは相性が結構がいいですよね。先ほど、石井さんのAmazon GOの話で、ビデオカメラで撮影をしていて、その人がその場所にいたっていう証明をするときに、ビデオというか動画のデータそのものをブロックチェーンに書き込むって、ちょっとナンセンスなんですね。Amazonさんの持っているデータベースの中に、その型番のカメラが撮ったこの動画が、このアドレス情報にあります、っていうことをブロックチェーンに書いて、そこは改ざんできない状態です、それを証明書として保険会社に提出します。そうすると保険会社は、ブロックチェーンに書いているアドレスはAmazonのを見て情報を共有できるので、そこにいたという証明を作るときに、データベースとしては分散でいいでしょう、と。だけど、台帳の技術で改ざんされていないものをエビデンスに、保険を何かしら適用していくっていうモデルを考えています。

堀口:まず、価値としては、そのIoTのエンドポイントが発したセンシング情報を、改ざんされない状態でそこから担保いただけるっていう前提ですが、それがブロックチェーンで、そのアドレス情報を記録したものをみんなでシェアするっていうことができればいい。例えばいま色んな保険が出てきていますけれども、頑張って歩けば歩いたほど保険料が安くなる、というのが、今の仕組みでは改ざんできてしまうかもしれない。けれども、そういう情報をもし改ざんできない状態で、証明書としてみなさんが使用できれば、個人情報はローカルでハンドルします、けれどもそのエビデンスはみんなで共有します、というものが作れると、ひとつ価値あるデータになるかな、と思います。

ブロックチェーンの役割は”エビデンス”

石井:まさにその通りで、結局ブロックチェーンのやっていることって、一言でいうならエビデンスだと思うんですよね。今までは、みなさんが完全に納得しているエビデンスっていうのは物理法則だったと思うんです。例えば、先ほどの保険の例でいうと、何かにぶつかった、ぶつかった壁が実際にへこんでいる、そしたら絶対にこれとこれがぶつかったということで保証されて、保険が適用される、みたいな話で。これがデジタルだと、物理法則みたいに、一度起きた物事が戻らないというのは難しくて、保険のエビデンスになりにくかった。だからこそ、個別に話を聞きに言ったり、このデータは本当なのかとか、場合によっては巨大な中央集権企業が代わりにエビデンスとしてやっていく、みたいな話があると思っています。そのエビデンスという観点では、河崎さんの法律のところと被っていくのかなと。

河崎:まさに私の領域でして、先ほど私がケンタウロスワークスというリーガルテックの会社に所属している話をした時、その中身は申し上げなかったんですが、まさにその証拠というものですね、デジタル社会の中で、確かな記録っていうのがブロックチェーンを使ったら作れると。それが、此処にいる人たちの共通認識でもあると思います。それを実際に人々のところに届けて、かつそれが我々弁護士のところに、裁判の時や契約の時に持ってこれる状態を作ろうとていうことで、ブロックレコードっていうアプリを作っています。

河崎:この手元のスマートフォンに、例えば契約書であったり、文章であったり、音声や画像であったり、そういうものを事実として記録すると、このスマホの指紋認証やSMS認証を通っている特定された個人が、『そのときに、そのようなデータを書き込んだ』っていうのが簡単に証明できます。AndroidならGoogle Playストア、iPhoneならAppleストアで見ていただくと、もう使えるようになってます。

河崎:先ほどの証拠の話なんですが、このブロックレコードがやろうとしていた話っていうのはまさにそれで、簡単な形でかつ無料で一般の方にそれを提供する。例えば裁判の時に、セクハラとかパワハラがあったといっても、その証拠はどう提供するのか。あるいは、取引先とトラブルになったときに、契約書を作るっていうのはすごくハードルが高いわけですけれども、いつまでに、いくらくらいでこれをやってくれ、っていうのをそのまま音声で録音するとか、簡単なメッセージでやり取りしたものをブロックレコードを使って保存することで契約書の代わりにするとか。そういう形で、現実の世界の情報をブロックチェーン化された状態で、ブロックチェーンに乗せていくっていうことをどんどんやるべきで、僕らはそのお手伝いをしています。皆さんは、今は同時並行でおそらく取り組まれていて、そういった確かな情報というのが、ある一定のティッピングポイントを超えたときに、ブロックチェーン由来の世界が来ると思うんですね。

ユースケースを作り出すことでブロックチェーン活用は広がる

堀口:もうちょっと具体的なユースケースでいくと、僕らもちょうど2年位前に、地震対策ハッカソンっていうので何をやったかというと、例えばここに部屋があるとします。天井と床の四隅で立方体になりますよね。スマートコントラクトで、『この家の地震保険は、この立方体の面積で契約します』と。仮にその契約した時点で、保険会社や不動産会社、家のオーナー、賃貸の利用者が、その情報を共有します。実際に地震が起こったら、この立方体がどれくらいずれたとか、どれくらい捩れたとか、今地震はそれによって4段階で判定します。。全壊だったら全額出るんですけど、小~半壊や一部壊だとちょっとしか出ないんですよ。規模に応じて払う金額を事前に合意をして、その状態になったらスマートコントラクトで、銀行のAPIを叩いて直接払う、みたいな実装をしました。そういうユースケースがどんどん出てくると、手触り感があっていいかなと思ってますね。

河崎:それは本当に先進的な発想だと思いますし、そういうのがこれからどんどん出てくると、先ほど銀行のAPIを直接叩くとおっしゃいましたけど、そこがクリプトと繋がっていくと、ブロックチェーンの世界として完結しますよね。だから今、ステーブルコインを待ち望んでいて。ステーブルコインの決済と、ブロックチェーンのエビデンス性っていうので組み合わさったときに、スマートコントラクトというものがようやく本格化して動くのかなと思います。

石井:先ほどの堀口さんの例で言うと、保護の対象となる状態の検知は、画像とかですかね?

堀口:そうですね。例えば今、建設業界などはものすごく進んでいて、柱の中にセンサーを埋め込めるんですね。そのセンサー同士の幅や距離を常に測っていして、当然経年劣化があれば揺れたりもしますけど、例えばそこそのものをIoT化する。そうすると、例えば定期的なチェックなども未来には、当たり前になるんじゃないかなと。当時の距離センサーは、部屋の四隅に置いて、その状態をブロックチェーンで記録していました。

なぜビットコインがブロックチェーンの可能性を提示できたのか?

石井:結局はビットコインとか通貨型のブロックチェーンが、はじめにブロックチェーンの可能性を証明できた理由は、ブロック化というか、デジタル化できている情報が大多数であると。換金と入金以外は、全部そこでできてしまう。逆に言うと、IoT化で課題となるのはやっぱりデジタル化していない、ブロックチェーン化していないエリアがどうしても多くなる。そうするとブロックチェーンでよく言われるインプット問題ですね。ゴミデータやフェイクデータが入ると、そのままゴミやフェイクになってしまう。このインプット問題の解決はやはり、センサーの普及になりますかね。特にHyperledgerで色々事例が増えていくとそういう話になるかと思います。

平山:そうですね、アイ・ビー・エムのクラウドプラットフォームでは、実はIoTとブロックチェーンが連動するフレームワークで提供しています。なので、アイ・ビー・エムのIoTプラットフォームを使えば、そのままブロックチェーンに多投させることが出来るので、インプット問題の難しさはひとつ解決できるかなと思っています。

平山:もうひとつ、ちょっとテクニカルなところでいうと、先ほど銀行のAPIの話が出ましたが、色んなオペレーションすべてAPIでできるのかなと。一番の違いはスマートコントラクトと台帳がひとつになっているというアーキテクチャですよね。従来、IoTも含めてなんですが、IoTはメッセージングなので、この先がある。その前だとファイルシステムですよね。データベースなのでSQLがあって、EDL、テーブル構造がある。こういう形でそれぞれ独立しているんですけど、ブロックチェーンってそこが一体になるっていう。スマートコントラクトの契約内容が、そのまま台帳に入る。これが、非常にアーキテクチャとしては優れていると思うんですね。

平山:で、今IoTでは2つパターンがあります。とりあえず色んなセンサーデータを入れておいて、その中でもしかしたらバックバリューが出るかもしれない。コレは完全にビッグデータですよね。オブジェクトストレージとかに入れておいて、もしくはメッセージングを使って条件分岐で入れるとか、そういうアプリケーションをやっておいて、その結果を最終的に台帳に入れるっていう、ワンステップ入るっていう感じですね。IoTのデバイスの中で、そのコミュニティの中に、同じスマートコントラクトというか、合意形成がされるものであれば、直接ブロックチェーンに書き込む。そこはもう、合意形成されたデータしか来ない。という2パターンになると思うんです。

石井:なるほど。それに関連して、今世の中にAIとかブロックチェーンっていうのが最先端の技術としてあって、実際の法律っていうのはその後追いで、結構遅れているケースが多いと思います。その中で昔の例でいうとYouTubeとかで、みんなが動画をアップロードしていて、ではその違法性がどこにあるのか。そういう問題提起というのは常にされていて、それに対して『時代が後から追いつく』って言うのはあると思うんですけど。先ほどの平山さんの話の流れでいうと、そういうスマートコントラクトとか、一体化して処理されることで価値の移転が起きるっていうのは画期的だとは思うんですが、この価値の移転って、すなわち契約上でお互いの所有権を合意したっていうことになるわけで、AIとか他の先端技術よりも、よりその実際の契約・法律面とほぼ一対、みたいなことが起きると思っています。

【Blockchain EXE Presents #1イベント】ブロックチェーンが築く経済圏:社会実装と課題

【Blockchain EXE Presents】FinTech Economy Summit:金融領域を超えたブロックチェーン技術の応用#1

ブロックチェーン業界は、主に資金調達を目的とする「黎明期」を経て、さまざまな金融サービスを提供する企業の成長が著しい「発展期」を迎えました。今後のFinTech業界の更なる成長が見込まれる中、公正な成長を後押しする規制や法的環境の整備が望まれます。

ブロックチェーンの技術や応用に焦点をあてるBlockchain EXEより、FinTech Economy Summitの特別講演として、金融以外のブロックチェーンの発展に関してディスカッションを行いました。

ブロックチェーンが築く経済圏 | Blockchain EXE スペシャル#1

目次

伊藤:このセッションは『ブロックチェーンが築く経済学』ということで、主にその社会実装に取り組まれている方や、実際にそれをやって課題を持っている方にご登壇いただきます。

伊藤:私の方からご紹介しますが、先ず日本のEnterprise Ethereum Allianceの代表をされています石黒さん。続きまして、株式会社Gaudiyの石川さん。次に、株式会社日立製作所の齊藤さん。最後に、トライデントアーツ株式会社の町さん。

伊藤:石黒さんは、みなさんご存知のEnterprise のEthereum Japanということで、イーサリアムというとパブリックの印象がありますが、『企業がイーサリアムを使う』という活動の中心を日本でやっている方でして、私個人も普段から親交を深めさせていただいております。

伊藤:石川さんは企業と生活者の共創のプラットフォームのサービスを提供しているGaudiyの方です。私も共同研究を一緒にやっていて、普段からやり取りさせていただいております。齊藤さんは日立製作所というエンタープライズのど真ん中のところで、主に通信とかエネルギーとかそういった領域で、ブロックチェーンの社会実装をされている方になります。町さんは、タレントさんとファンの交流のプラットフォームのサービスをされています。

伊藤:順不同に色々とお話を聞いていければと思うんですが、実は今日、僕が個人的に楽しみにしていたことがあって。町さんとは2年くらい前、町さんがアクセンチュアから独立されて、トライデントアーツを立ち上げられた当初から付き合いがあります。ブロックチェーンに関するアツい議論を最後に交わしてから、久しぶりにお会いしました。そこからかなり時間が経っているので、今エンタメ領域でどういったサービスを、どういう経緯で行っているかというのを聞かせていただければと。

町:お久しぶりです。私はトライデントアーツという、ブロックチェーンを専業で行っているところの代表をやっているんですが。2年前にお会いした時には、まだコンセプトがしっかりしていなくて、『ブロックチェーンを使って何かをやりたい』って言っているくらいだったと思うんですね。

デジタルコンテンツとブロックチェーン技術

町:今は、『ブロックチェーン=権利を保全するシステム』として、10~20年経った頃には世界を変えているだろうと思っています。その中でも、今の日本の業界でどんどん伸びているのが、エンターテインメントの業界です。エンターテインメントの世界における権利は二つ、著作権や発明などの『作り手側の権利』と、それを持っている『オーナーの権利』。この両面の権利を、デジタルコンテンツの世界でしっかりと保全することで、この世界が今とは別の次元で発展していくだろうという考えの元に、アイドルにフォーカスしてやっているというか。そういう理由です。

伊藤:ちょっと意外だったのが、2年前にお会いした時は『既存の業界をディスラプト(破壊)する』という非常にアツい思いがあったのが、現在では保全する側に回ったというのは、何か経緯があったんですか?

町:えーと、まあ根底は変わっていないんですね。『ディスラプト(破壊)したいなぁ』っていう気持ちは今もあって、やろうとも思っているんですが。実は、この2年間で歴史をもっと学んだんですね。インターネットのこともそうなんですけど、新しいものを生むときに、わざわざ既存の業界で何かをやって、うまくいくとは到底思えない。そんな中で、今社会的な課題を抱えていて、もしくはビジネスの課題を抱えていて、そのために作り手側ができないことや、コンシューマーがまだそのよさに気付けていないことって何かな、と。そういうことにフォーカスした2年だったんです。

伊藤:じゃあアクセンチュアを飛び出して、まさにそういうことをやっていたわけですね。

日本から世界に通用する技術を作る

町:そうですね。あとは『やりたいことをやるほうが、失敗しても成功しても面白い』と思ったんで。エンターテインメントが好きなので、そこに行った、という方が大きいかもしれません。

伊藤:ちなみに、なぜアクセンチュアを離れて独立されたんですか?

町:あまりアクセンチュアを出すとアレなんですが……。ITコンサルをやっていたんですが、自分で日本から……いや、日本にこだわっているわけではないのですが、世界に通用する何かを作って、自分の子どもたちなんかに『父ちゃんたちがすごかったから、こんなに楽しい世界があるんだ』って言えるようにするためにですね。自分で事業を作っていかないと、心から言えないかな、と思って。

伊藤:すばらしいですね。で、大企業を離れられて、自ら社会実装のために立ち上げたっていうのとコントラストで、齊藤さん。

伊藤:私が一番素晴らしいと思っているのが、昨年日立製作所とKDDIさんと一緒に開発された、『静脈から秘密鍵を作る』という素晴らしいUXがありまして。その実証実験で、KDDIの職人として登録するとポイントがもらえて、ミスタードーナツにいくとその静脈認証で、ポイントで割引が受けられる、といったような。齊藤さんはそういった実験をされています。

ブロックチェーンを企業が活用する上での課題

伊藤:大企業にいらっしゃる齊藤さんが、そういった社会にインパクトを与える実験にも臨まれていると。大企業でそういったものに取り組まれるのは大変だと思うんですが、企業に所属する人間として、ブロックチェーンに取り組むときの課題とか、そういったものはありますか?

齊藤:えーと、エンタープライズのお客さんって結構固くてですね。『これってどうやって収益性を確保するんだっけ?』という話が先ずひとつ。あとは『今やっている事業との整合性は?』っていうのを、すごく気にされるんですね。やっぱりブロックチェーンってこう破壊的な、中抜きであったりとか、今までと違う考え方でビジネスを組み立てなきゃいけないので、そこを経営層の方にどうやって理解してもらえるかというのが、一番苦労する要因かと。

伊藤:なるほど。例えば『お客様に対して』はそういう形であったりとか、あとは社会からの理解を得るって言うのも、やっぱり理解のある仲間に囲まれてとか、そういう形でやってるんですか?

齊藤:やっぱり、好きこそものの上手なれというか、技術が好きな人間が私の会社には多かったので。『どうしてもブロックチェーンをやりたい!』って人を集めて、業務外の活動でチーミングして進めてきたっていうのはありますね。

伊藤:ちなみに私も、昨年日立製作所さんの研究所にお伺いしたんですが、そこにブロックチェーンを研究している方が複数名いらっしゃって、3~4時間にわたってブロックチェーンのディスカッションをしていて。だいぶアツい方がたくさんいらっしゃるっていう印象を受けています。

齊藤:ありがとうございます。

伊藤:その流れで行くと、企業を飛び出して独立された町さんと、大企業でそういうことをされている齊藤さん。その繋がりでいけば、石川さんは『企業と一般の生活者』に対するサービス、企業と生活者が共創するというものに取り組まれています。石川さんが、そういったサービスに取り組もうと思った経緯とか、あとはサービスの内容についてもお話しいただければ。

石川:Gaudiyというサービスというか会社は半年くらい前に立ち上げたもので、僕はその前にはAIの会社に勤めていたんです。今は、先ほどお話にあった共同研究とか、毎日新聞さんと一緒に共同研究でブロックチェーンラボっていうのを立ち上げて、そこの技術顧問などもやっているっていう。

石川:それで、どういう人たちと関わっていくかっていう話なんですけど。クライアントさんとしては、ここではあまり言えないんですが、誰でも知っているようなハードウェアの会社さんであったり、アプリケーションの会社さんとかもクライアントで、そこでコミュニティを作ったりするんですが、どういう風にやっていくかって、基本はアレですね、パッション。どれだけブロックチェーンが流行っているかっていう。それに、どれだけロジックが通るか、シナリオが作れるか、ってところです。それで、一緒にやりたいことを考えていく、ってやり方ですね。

ユーザーを価値化するブロックチェーンプラットフォーム

伊藤:ちなみに、石川さんも私の知る限り、色んな大きな会社さんと一緒にお仕事をされていますよね。それは、どういう感じの経緯で? なかなか大企業の方って新しい、それこそブロックチェーンを使った共創プラットフォームというものを理解したり、それに取り組む勇気とか、難しいものがあると思うんですけれど。

石川:Gaudiyっていうサービスは『ユーザーを価値化する』っていうもので、例えばユーザーの人たちにシェアしてもらったり、人を紹介してもらったり、そこからフィードバックを得るっていう感じです。ユーザーさんが、『実はこういう知り合いがいるんですけど』っていって繋がっていく、みたいな。そういう、表には出ないけどブロックチェーンが好きで、ブロックチェーンで何かを変えたいっていう人って、実は大手企業の中でもいると思うので。そういう人たちに、『一緒に何かやらないか』『どうやって実現するのか』っていうのをディスカッションしていって、僕たち自身も一緒に親身になって考えていきます。

伊藤:そうですよね、実際に僕と石川さんが知り合ったのが、Gaudiyのコミュニティの中で、とある方が「お二人は知り合ったほうがいい」っていうことで。まさにGaudiyの共創コミュニティに参加されている方が引き合わせてくださって、一緒にやるようになったんですよね。

ユーザーの魅力を最大限に生かす

石川:そうですね。ユーザーってだいたいマーケティングだとペルソナでしか見ないんですけど、ユーザーさんも一人の人間として、たくさん出来ることがあって、魅力を持っているので。それをどう活かすのかと。

伊藤:最後に、石黒さん。石黒さんはエンタープライズ領域のイーサリアムの事例を作るということで取り組まれています。今日のテーマでいくと、『ブロックチェーンが築く経済圏・トークンエコノミー』って話がありますが、たぶん立場上、一番広くブロックチェーンのプラットフォームで先進的な事例が多い、イーサリアムの部分をグローバルで把握されていますよね。何か気になっている、イーサリアムを使ったトークンエコノミー系のサービスっていうのがあれば教えてください。

ネットワークエフェクトが重要なブロックチェーン世界

石黒:普段はクーガー株式会社っていうスタートアップの会社にいるんですけれども、立場上はEnterprise Ehereum っていう会社に所属していて。何をやっているのかっていうと、企業がブロックチェーンを使う、さらにはイーサリアムを使うときに、どういう実数報告があるかって言うのを議論している場なんですね。そのときに『どうしてイーサリアムを使うか』っていうところになると、トークンを作ってみたりとか。ちょっとICOしないかっていうのもあるんですけれども、『トークンを使って何が出来るのか?』っていうところまでは、あまり一般的には出ていなかったりするんですね。

石黒:その中で、世界で割りと例としてあるのは、最初はペイメントトークンみたいな話が出てきて、コレを使うと何かサービスを受けられますよ、と。それがどんどん発展していって、例えば契約を自動化できるっていうところから、ボーティングに使われるようになったり。あとは、自分の書類を証明したりとか、そのトークンの商品としての価値を決めるための価格形成みたいなことをコントラクトしてやりますよ、と。その代わりに、中央管理者が物の価値を決めるんじゃなくて、ユーザーの数とか、ユーザーの評判とか、ユーザーの行いによって制限できますよ、ということがあったり。すごい重要だな、と思ったのが、価値というのもそうなんですけど、ガバナンスですよね。人の制限、人の行動をどうやって制限していくか。『こういう風にすると、どんどん参加する人たちが増えるよ』みたいな。ブロックチェーン界では『ネットワークエフェクト』っていうんですけど。人が参加することによって、サービスが成り立つ。そこまでいくと、経済圏っぽい志向になっていくのかな、というところで。日本でPoCやりましたっていう事例とか、プレスリリースって山ほど出てくるんですけど、そこまでやっているってところはあんまり見ないので。そういうのが出てくると、日本の企業から世界に、っていうのも増えるのかなと。

伊藤:ちなみに、立場的には答えがなんとなく分かっている質問なんですけれど、DAppsとかそういうトークンエコノミー系のものを作るとなったときに、イーサリアムが適しているだろう、とか、そういった見解はありますか?

【特別企画!Blockchain EXE #Special Public Listening Event 】ブロックチェーンの社会実装最前線「Dappsゲーム」の未来

【特別企画!Blockchain EXE #Special Public Listening Event 】ブロックチェーンの社会実装最前線「Dappsゲーム」の未来

ブロックチェーン関連分野における技術共有、発展、応用に重きをおいたMeetupイベント、BlockchainEXEのスペシャルイベントが2019年3月18日に都内で開催されました。このイベントのレポートをお届けします。

SKE48の須田さんも本日の企画に関するツイートをしていただきました。

「Dappsゲーム:Cipher Cascade(サイファー ・カスケード)の開発の背景と今後の展開について」

呂相吾|株式会社フランジア Blockchain Div Manager
株式会社フランジアにてブロックチェーン事業部の立ち上げを行い、現在、ブロックチェーン技術を使ったゲームなどのプロダクトの開発を行う。11月30日より開催される東南アジア最大のブロックチェーンハッカソン・ミートアップのState of Chainを主催。

Dappsゲームの開発を手がけるフランジアの呂相吾氏は、Cipher Cascade の目指すコンセプトや今後のリリース予定などについて語りました。

「Dappsゲームのプレーヤーを支えるtokenPoketが打ち出すWallet as a service戦略とは」

中村 昂平|トークンポケット株式会社共同創業者 兼 Dapps CryptoCrystal Product Lead
ブラウザ&ウォレットアプリ「tokenPocket」とDapps「CryptoCrystal」を創業。最近では「マイクリApp」といったWaaS(Walle As A Service) サービスも手がける。幻冬社「あたらしい経済」で連載中。慶應義塾大学経済学部卒。

トークンポケットの中村昂平氏はDappsの定義や意義、Dappsプラウザ、ウォレットシステムの仕組みや現状、ブロックチェーンをユーザーに意識させないことの大切さ、などについて話されました。

「HAKUHODO Blockchain InitiativeのDappsゲーム業界における取り組み」

伊藤 佑介|博報堂ブロックチェーン・イニシアティブ
2008年にシステムインテグレーション企業を退職後、博報堂にて営業としてデジタルマーケティングを担当。
2013年からは博報堂DYホールディングスに出向し、マーケティング・テクノロジー・センターにて、デジタルマーケティング領域のシステムの開発~運用に従事。
2016年から広告・マーケティング・コミュニケーション領域のブロックチェーン活用の研究に取り組み、2018年9月より博報堂ブロックチェーン・イニシアティブとして活動を開始。その後、次々とマーケティング・コミュニケーション領域のブロックチェーンサービスを開発し、2018年11月5日にトークンコミュニティ解析サービス「トークンコミュニティ・アナライザー」、2019年1月31日に生活者参加型プロモーションサービス「CollectableAD」、2019年2月6日にデジタルアセットリアルタイム配布メディアサービス「TokenCastMedia」をリリース。現在は、さまざまなブロックチェーンベンチャーとコラボレーションしてブロックチェーンの社会実装に取り組んでいる。

”ブロックチェーンを活かした生活者のコミュニティ”を目指す博報堂ブロックチェーンの伊藤佑介氏は、トークンコミュニティの普及活動、広告とブロックチェーンの関係性、コミュニティの分析方法、Dappsゲームの取り組み、さらにこの直後のアセット配布イベントの詳細について説明されました。

講演終了後、TokenCastRadioパブリック・リスニング「ラジオ番組(オレたちやってマンデー)から放送中にリアルタイムで配布されるDappsゲームのキャラクターを受け取ることができる毎日放送の試験放送の体験会」と題して、会場にラジオの生放送が流れました。スマートフォンアプリを通して、番組のオリジナルキャラクターのアセット配布が会場全体で行われました。

ディスカッション:ブロックチェーンの社会実装最前線「Dappsゲーム」の未来

デジタルアセットの配布が無事に終わり、会場の興奮が冷めやらぬなか、ブロックチェーンのDappsゲームにおける今後の展開について登壇者四名による和気藹々としたディスカッションが行われました。(以下、敬称略)

伊藤(司会):皆さんありがとうございました。後世に語り継がれる歴史的瞬間だったと思います。この瞬間を一番緊張して見守っていた、開発されたお二人それぞれにまず率直な感想を。

呂:ホッとしました。直前までDAUベースで4、500人くらいガッと急に増えていて、どこまで行けるものなのだろうと。この配布のところはフルブロックチェーンでやっていて、うまく処理できてまず嬉しいです。ここからキャラクターをどういう風に使って頂けるか、こういう所がDappsは面白いよね、とかの経験をもっと作っていけると嬉しいなと。

中村:ドキドキして楽しかった。皆さんがスマホをこちらに向けてくれたのが個人的に嬉しくて、こういう瞬間が増えていけば世の中もっと楽しくなるんじゃないかと。VRやARとかで全然別の感じになって、もっと表現力が上がっていけばすごく楽しみだなと。

伊藤:石井さん、ご感想を。

石井:やはりブロックチェーンがもともと価値のインターネットというか、それを実現するビジョンがあって。はじめにビットコイン、次は何だろうと。今回はデジタルアセットを配布することを楽しみながらやることだった。広告の元々の目的は何かをシナジーのあるユーザーに知ってもらうこと。しかもそれを楽しみながら、存在を知りつつ、かつ価値として受け取れるのは本当に一歩進んだと思う。それによって、いわゆる従来の広告がいらなくなって、自分の行動自体が結果的に価値を生んでいることも実際にある。自分らしく行動するだけで価値が貯まっていくベースになるという片鱗が垣間見えた。

伊藤:嬉しいのは、企業のマーケティングを支援する立場で、一般の方に意味のある有益な情報やサービスを提供するところを私もやっている。こういう仕組みでブロックチェーンを使って配ると、皆さんも受け取ったという形で楽しめるし、企業もこれをきっかけに使って頂けるというところ。お互いにとってWin-Winでいいなというところと、デジタルアセットを所有できるので、今回の配布が1回限りのコミュニケーションでなくて、交換とかのコミュニケーションでさらに楽しめる。そういう広がりがある形でやっていきたい。

石井:最近はストリートアーティストの方が壁に落書きすることにも価値がつく。デジタル空間に落書きするアセット、落書きアセットなんかが皆でまたもらえると。当然デジタルだけれど、いわゆる絵画みたいにコピーが出ずにちゃんと本物が所有できるようになる。

伊藤:今回、呂さんはどんな苦労や心配がありましたか?無事成功しましたが、その思いを。

呂:僕らはもともと本業がブロックチェーンの会社ではないが、ブロックチェーンで世の中を良くしていきたいな、エンパワーメントをしていきたいと。伊藤さんから話をもらったとき、作ってはいたがゴールがまだ設定されていなくて、皆でじゃあ頑張ろうと。他に皆プロジェクトを持っていたので、ブーストするところが一番最初に辛かった。自分がブロックチェーン大好きなので皆サポートしてくれたが、ゲームを作る難しさもあった。先週の金曜にリリースが出来た段階でトークンポケットと仕様が合わず、ログインできないという大問題が発生した。中村さんに連絡したらトークンポケットで入れないと。夜中半泣きになりながら、どうしよう、伊藤さんに怒られると(笑)。

伊藤:僕も一心同体でドキドキしながら。

呂:仕様をちょっと変更して、ログインできるようにして、ギリギリ中村さんにサポートしてもらって何とかここまで来れた。

伊藤:BlockchainEXEのイベントの価値がとてもあった。話があったとき頭に浮かんだのは、自分はあまりDappsゲーム業界に詳しくない。どの会社とやればよいのか。フランジアさんの会社でやるイベントに誘ってもらい、ご縁がった。

石井:こういうイベントで喚起されて開発される方もいるだろう。月曜の24時過ぎにこの状態でこれだけ盛り上がったのは素晴らしい。

呂:来て下さった皆様に本当に感謝申し上げます。ありがとうございます。

伊藤:まだ終わりじゃないですけど。

呂:とりあえず言いたかった。僕らはテクノロジーで良くしていくことに対しては全力で取り組んでいく。ブロックチェーンという文脈はお金関係なくやることで、これが実現している。何かやりたいときがあれば、ぜひ僕らに声をかけて頂きたい。

伊藤:実はリリースしたときにいろんな形の反響を頂いた。嬉しかったのは、社会実装にそれほど興味がない人たちからも問い合わせがあったこと。2019年はいろいろ入ってきて頂きたい。広がりがあるのが嬉しいし、今年はそれが必要。

石井:ラジオに出演していたタレントの方々も、結局ブロックチェーンが何かさっぱり分かっていない(笑)そのきっかけというか、ただでさえブロックチェーンは下支えのシステムなので非常に分かりにくいので(このようなイベントは)重要。

伊藤:普通は”ブロックチェーン?”となってしまうところを出演者もご理解があって、関係者でない方やファンの方からも反響があった。ブロックチェーン界隈にとって良いことだった。中村さんにとって振り返ってここまで苦労した点は?

中村:とても楽しかったが、(先ほどの話で)まさに仕様が合わなかったとき、これはまずいと緊急で作成した。あと、アップデートが特定期間出来なかったので、申請が通ったのが今日の夕方でギリギリでヒヤヒヤだった。

伊藤:関係各位や、出演者、ラジオの向こう側のファンの皆様に謝らなければならないところだった。

石井:ブロックチェーンは通貨というイメージが強かった。仮想通貨怪しいとか、あまりいいイメージをもたれていなかった。今回、通貨ではなく、デジタルアセットというところを目に見える形でやったのはすごく大きい。初めて触った人は、ブロックチェーンはこういうデジタルデータを扱えるんだ、という印象を持った。それは本当に素晴らしいと思う。

伊藤:実際にブロックチェーンでゲームにするときにDapps業界とつながりがないので、BlockchainEXEで親交を深めた知ってる限りの関係者に年末の最終週に連絡して、(人を)ご紹介頂いた。コネクションの賜物。今回の取組みを通してブロックチェーンの社会実装で一般の方と繋がることと、いろんなブロックチェーンのベンチャーと一般の直接関係ないベンチャーと、毎日放送のようなメディアの皆さんとか。2019年度はいろんな所とのコラボが社会実装のために必要。
最後になるが、今回のまとめとしてはDappsゲームの業界にフォーカスしたが、社会実装は仮想通貨の次にDapps、デジタルのアセットが最先端を走っていくのは間違いない。BlockchainEXEやベンチャーなどのチームでいろんなことに取り組みたい。TokenCastRadio自体も試験放送を行えたので、今後は本サービスでいろんな形で展開できる。まさに今日の試験放送を経て、社会実装の本格スタートでどんどん声をかけて頂きたい。

石井:ひとつのキーワードとして、デジタル化されているデータで不特定多数が関与するもの、この2つをクリアしているものは非常にブロックチェーンに向いているといえる。ゲームはまさにそうで、広告もそう。このキーワードで皆さんも考えてみると、ブロックチェーンは非常に使えるところがあるのかなと。

伊藤:本日は遅い時間にもかかわらずイベントにご参加頂き、ありがとうございました。

ブロックチェーン基礎技術『DPoS(Delegated Proof of Stake)の仕組みとは?』

コンセンサスアルゴリズム『DPoSとは』

DPoSとは、ブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズムの一つです。

DPoSという言葉は、Delegated Proof of Stakeの略で、「Delegate」は「権限を委任する」、「Proof」は「証明」、「Stake」は「関与」という意味です。

つまり、DPoSは日本語でいうと「委任型の関与の証明」といえます。

ブロックチェーン取引において、ブロックに格納されている取引情報は何かしらの形で公開されています。次のブロックが持っているハッシュ値が、その前のブロックの正当性を保証する仕組みになっているため、取引情報を改ざんするためには過去の取引情報も書き換えないといけません。そのため、ブロックチェーン上の取引記録は実質的に改ざん不可能となっています。

DPoSは、トークンの保有者に対して、トークンの保有量に応じた投票権を割り当て、その投票により取引の承認者を委任します。

取引を承認するまでの流れには多くのトークンの保有者が関わっていますが、実際に取引をするのは投票で選出されたごく少数の承認者のみです。

単語を整理すると…

  1. 承認者=ブロック生成するユーザー
  2. 投票者=承認者を投票するユーザー

DPoSのコンセンサスアルゴリズムを採用しているプロジェクトの中には、自分が投票した承認者が正常にブロック生成を完了した場合、配当金を受け取ることができるというインセンティブを与えているものもあります。

投票者となるユーザーは自分の保有しているトークンの価値を担保するために、正当な承認者のみに投票しようとします。選挙で承認者を決めるという仕組みであることから、より民主的であるといわれています。

DPoSはビットコインが採用するなど代表的な承認方式であるPoW(Proof of Work)の改善策として開発されました。PoWの場合、多くの計算処理を行って承認者が決められるため、膨大な計算が必要で大量の電力を消費するというデメリットがあります。

一方、DPoSはブロック生成を行う承認者を限定することで、取引の承認数を抑えることができるため、PoWに比べ電力を多く消費しないというメリットがあります。地球環境にもより優しい仕組みといえます。

DPoSとPoSとの違い

DPoSはPoSの発展系として誕生したものです。

PoS(Proof of Stake)はトークンの保有量に応じて承認権を与える仕組みです。

PoSの場合、トークンの保有量が多いほど優位になりやすいという傾向がありますが、DPoSの場合は、トークン保有者が承認者を選出するため、より民主主義的な仕組みといえます。

DPoSが採用されているプロジェクト

BitShares:DPoSが採用されているプロジェクト①

DPoSを採用している代表的なプロジェクトが「Bitshares」です。

初めてDPoSを実装したプロジェクトでもあります。

その処理速度は約10万件/1秒ともいわれています。

OpenLedgerという分散型取引所(DEX)を運営しており、特定主体の仲介を必要としません。

Lisk:DPoSが採用されているプロジェクト②

同様にDPoSを採用しているプロジェクトである「Lisk」は、分散型アプリケーションのプラットフォームを持っています。

サイドチェーンを活用している点が特徴的であり、より高度なセキュリティとスピーディーな処理を実現しています。

EOS:DPoSが採用されているプロジェクト③

EOSは将来的に企業によって導入されることを目的として開発されたプロジェクトです。現在は4000~6000TPS程度ですが、将来的には毎秒数百万のトランザクションを可能にすることを目標にしています。EOSは処理速度の速さに加え、取引手数料が無料という点でユーザーからの人気を集めています。手数料無料というのは他を犠牲にするトレードオフもありますが、企業の導入時に大きなコスト削減が期待されると言われています。

DPoSデメリット(批判を受けている点)

DPoSのデメリットは、承認作業を行う人たちが結託し、不正を行う可能性がある点です。

複数の人々が大量の通貨を保有し、団結して独裁的に承認者を選出すると、不正な取引を承認できてしまいます。

不正作業者が多いほど、被害規模も大きくなるというリスクもはらんでいます。

まとめ

いかがだったでしょうか。DPoSはPowのような大量の処理能力や消費電力を必要としないため、資金や時間のコストを大幅にカットできる画期的な仕組みです。

しかしその一方、中央集権的に承認をコントロールできてしまう危険性があるなど、不正対策面では課題が残っており、今後のさらなる技術革新に要注目です。

ブロックチェーンでできている取引所”DEX”とは?分散型取引所が注目されているわけ

ブロックチェーンでできている取引所”DEX”とは?

DEX(Decentralized EXchange)とは、分散型暗号通貨取引所のことです。

仮想通貨の取引所には、中央集権型取引所と、分散型取引所(DEX)のふたつがあります。

中央集権型取引所の場合は、取引所の管理者がおり、代表的な取引所としては、bitFlyer(ビットフライヤー)やbitbank(ビットバンク)などがあります。

これに対し、分散型取引所(DEX)とは、取引所に管理者がいなくても仮想通貨の取引が可能な取引所です。代表的な取引所として、0x(ゼロエックス)、AirSwap(エアスワップ)、Kyber Network(カイバーネットワーク)、Bancor(バンコール)、EtherDelta(イーサデルタ)やOpenledger(オープンレジャー)などが挙げられます。

DEXの役割とは?

DEXでは取引所に管理者がいないため、顧客同士が直接取引を行います。顧客が自分で秘密鍵の管理をし、ブロックチェーン上に資産のやり取りが記録されていきます。DEXではブロックチェーンにスマートコントラクトを使用することにより、自動的に取引が行われる、P2P取引を実現しています。

なぜDEX(分散型取引所)が注目されているわけ

DEXが注目されている大きな理由が、セキュリティのあり方です。顧客は中央集権型取引所のように資産を取引所に預けるのではなく、自分の秘密鍵を用いて直接取引を行います。このため、自分の秘密鍵を紛失したり盗まれたりしない限り、取引所がハッキングされても、自分のウォレットから資産が消えるということはありません。また、取引所の管理者が資産を持ち逃げするということもありません。DEXをシンプルに表現するなら「自己責任/自己完結型」と言えるかもしれません。

また、ブロックチェーン上に資産のやり取りが記録されるため、資産を盗もうとすると、ブロックチェーンの記録を改ざんしなくてはなりません。つまりブロックチェーンそのもののセキュリティの堅牢性が、高いセキュリティにつながります。

中央集権型取引所に比べ、セキュリティ対策や管理の人件費などの費用がかかりにくいため、ユーザの手数料が安く済むというメリットもあります。

日本でDEXは流行るのか?

日本では、coincheckの資金流出事件などを受け、仮想通貨取引に対する規制をさらに厳格化していくというような動きもありました。2019年3月15日には、仮想通貨の交換業者や取引に関する規制強化策を盛った資金決済法と金融商品取引法の改正案が閣議決定されました。

DEXの場合は、取引所の管理者が存在しないことや、それに伴うKYCの登録など様々な要素が複雑に絡んでいきます。今後、日本でDEXがどのように普及していくか、さらに、DEXに対し日本の金融庁はどのような示していくのか注目です。

進展か後退か、エンタープライズ領域における世界のブロックチェーン技術動向 | BlockchainEXEイベント#16

進展か後退か、エンタープライズ領域における世界のブロックチェーン技術動向 | BlockchainEXEイベント#16

ブロックチェーン関連分野における技術共有、発展、応用に重きをおいたMeetupイベント、第16回のブロックチェーン BlockchainEXEが開催されました。このイベントのレポートをお届けします。(以下、敬称略)

世界のブロックチェーン技術動向と実際のユースケース クーガーCEO | 石井敦

石井 敦 Atsushi Ishii | クーガー CEO
IBMを経て、楽天やインフォシークの大規模検索エンジン開発。日本・米国・韓国を横断したオンラインゲーム開発プロジェクトの統括や進行。Amazon Robotics Challenge トップレベルのチームへの技術支援や共同開発。ホンダへのAIラーニングシミュレーター提供、NEDO次世代AIプロジェクトでのクラウドロボティクス開発統括などを行う。現在、AI x ロボティクス x IoT x ブロックチェーンによる応用開発を進めている。

ブロックチェーンが実際にどのような場所で使われているのかの説明も交えて、現在のブロックチェーンが抱える課題についてのお話がありました。

ブロックチェーンについて

ブロックチェーンのビジョンとしては、「価値のインターネット」です。それを実現させるのは、変更されないデータが積み上がることによって生まれる信頼性となります。インターネットの最初のキラーアプリがEメールで、ブロックチェーンの最初のキラーアプリはビットコインだと言われます。ビットコインが最初のキラーアプリになり得たのは、3つの理由があります。

1つめが、「通貨」。誰もが重視する、わかりやすい価値であったこと。2つめが、データが数値のみで技術的に扱いやすかったこと。3つめが通貨は人から人へと移動するニーズが高く、頻繁に移動する物であるということです。これらの特徴が、ブロックチェーンの特性と合わさったことで、キラーアプリとなり得たのだと思います。

ブロックチェーンとデータの課題と方向性

ブロックチェーンの特徴として、透明性、公明性、トレーサビリティの3つがあります。これらは、データを公開しているからこそ実現していることですが、限られたデータだからこそ成立しているともいえます。逆に、その透明性から、対象データが個人情報や企業の機密情報などになると、リスクが大きいのではないかという懸念もあります。

ブロックチェーンでデータを扱う方向性としては、On chainとOff chainの2種類があります。On chainはブロックチェーン自体にデータを記録するシステムで、データの履歴が確約され、確認の容易さなどがメリットですが、ブロックチェーン内部にデータが残ってしまうため、そのデータが将来的にどうなるのかがわからないというデメリットもあります。

Off chainはブロックチェーン自体にはデータを記録せず、データとの紐付けデータのみを記録するシステムです。紐付けデータのみを残すので、記録データの扱いについての心配がない反面、外部に保存されたデータの信頼性をどう確保するのか、という課題もあります。現在ブロックチェーンでは、On chainとOff chainの使い分けが課題となっています。

既存技術とブロックチェーンの進化

既存技術と比較したときのブロックチェーンの特徴としては、3つあります。

  1. 管理者がいないこと:命令や指令がなく、ユーザーの要望で動くこと
  2. 起きた事の取り消しができないこと:ブロックチェーン上では、物理法則のように起きたことは事実として残ります。それにより信頼性が確保されます。
  3. 改ざんがきわめて難しい:これまでできなかった複雑な関係のデータ共有が可能になったことにより、データを改ざんすることがほぼ不可能になりました。

この特徴を踏まえて、現時点でブロックチェーンに向いている物としては、スピードよりも信頼性が重視されるような物が挙げられます。例えば、ビットコインなどの通貨の処理やサプライチェーン貿易など、多数のユーザーが複雑に関与するトレーサビリティの証明などです。逆に、リアルタイム性が高く、更新頻度が多い物には向きません。

ブロックチェーンと既存システムとの本格的な融合を見据えたときに生まれてくるニーズとしては、主に3つあります。

1.スピード

世の中のリアルタイム化に伴い、処理スピードもそれに近い速度が求められてきます。

2.スケール

データの規模、ユーザー規模の拡大とスピードの両立が課題となってきます。

3.データの保存と機密性

そのデータの特性に応じて、On chainとOff chainの使い分けが求められてきます。

ブロックチェーンとユーザー認証

現状、ユーザーIDを管理する際は、そのデータはそれぞれのサービスやサイトに分散して存在しています。ここでは、そのIDを自分で管理しなければならないため、鍵の問題が発生してきます。要するに、自分の記憶に依存しているためにIDやパスワードを忘れてしまうという事態が起きるのです。ここに、ブロックチェーンが適用してそこにデータを保存することができれば、特定の組織を経由する方法がなくなり、相手が信用できるかどうかを気にせず取引が可能になります。すなわち、ブロックチェーンの仕組みそのものが信用を生み出すことができればシェアリングエコノミーそのものを形成できるかもしれないのです。

シェアリングエコノミーをブロックチェーンで行う場合の課題は、2つあります。1つがスピードの問題で、リアルタイム性への対応が求められること。2つめが、データ以外の部分での問題です。データはブロックチェーン上に残りますが、物自体の管理をすることができないという課題があります。

また、ブロックチェーンとAIやIotとの関連性についても議論されています。ブロックチェーンの抱えるリアルタイム性やデータサイズの問題が解決できれば、数多くの可能性が示唆されています。また、AI成長履歴を残す方法としてもブロックチェーンは注目されています。今後あらゆるシステムがAIを介して動くことが予想され、その仕組みがわからないことは社会にとって大きなリスクとなります。なので、ブロックチェーンでそのデータを管理することによって、透明性を担保することが期待されています。

ブロックチェーンの開発コミュニティの最新動向

現在BitcoinCoreでは、2種類のユーザーバランスの問題が起きています。エンドユーザーおよびその開発者は通貨の送金速度をなるべく上げるというのが基本思想ですが、マイナーとしてはマイニングによる利益をなるべく大きくしたいという考えがあります。このバランスをどうとっていくかが課題となります。

イーサリアムでは、通貨以外の汎用用途の可能性も見据えています。ユーザー認証や、電力会社の自動決済などのシステムを手がけています。

Hyperledger Fabricは、最も多くの事業を手がけている会社です。パーミッション型のブロックチェーンを前提としたシステムで、コンソーシアム型での実用実験を行なっています。

モビリティとブロックチェーン

現在、トヨタが自動運転のデータ共有のためにブロックチェーンを導入していくことを発表しています。改ざんが困難なことや、IDと情報の紐付けなどの特徴は、モビリティに活かしていけるでしょう。

ゲームとブロックチェーン

ゲームはデジタルアセットの集合体です。ゲームにブロックチェーンを導入してデータ管理をすることによって、ゲームソフトを横断したアセットの共有が可能になります。また、また、運営の非中央集権化により、運営会社によらないゲーム運営が可能になり、不正なアイテムやユーザーなども対策することができます。

世界のブロックチェーン動向

BMWやポルシェなどは、ブロックチェーンを使って車の生産履歴、走行履歴などのデータを共有することで、新たな車を開発しようとしています。

ドバイなどでは、ブロックチェーンベース決済プラットフォームの導入が開始されています。

注目の技術動向

メインのチェーンとサブのチェーンを分けることで、費用やリスクの低減を図っています。また、イーサリアムとHyperledger Fabricが提携し、情報共有を行なうようになりました。

分散型ネットワークを最大限活用するためのパブリックとエンタープライズイーサリアムの動向 EEA Japan代表 | 石黒 一明

石黒 一明 Kazuaki Ishiguro | Enterprise Ethereum Alliance – Regional Head
高校卒業後、映画監督を目指してロサンゼルスへ留学。大学へ通いながらLAのクラブやバーでDJを始め、ハリウッドのクラブでレギュラーDJとして本格的に活動。DJ活動の中で音楽・映像用のプログラム言語をライブで使用したのをキッカケにプログラミングを始める。
日本に帰国後、現在はクーガーのチーフブロックチェーンアーキテクトとしてコネクトームの開発を進めている。開発を担当したデモがトロントで開催されたEthereumの技術カンファレンスEdConのトップ10スーパーデモに選定される。2018年10月には米国スタンフォード大学にてコネクトームでの開発技術について講義を行った。
また、世界で最初のEnterprise Ethereum Alliance(EEA)の地域オフィスを設立し、EEAのRegional Headを務め、日本のエンタープライズのEthereum導入を支援している。

エンタープライズイーサリアムのこれからの需要と、実際のユースケースについてのお話を頂きました。

ブロックチェーンの種類

ブロックチェーンは、主に3つのタイプがあります。1つめが、パブリック型。すべてが均一につながっていて、誰でも見ることのできる形です。完全な非中央集権で、相互運用が可能です。2つめが、プライベート型。誰でも見られるような物ではなく、承認された人しか入れないようになっています。これは、中央集権の形をとっており、メインの物がスピードやサイズを調整できるようになっています。3つめが、コンソーシアム型。先の2つを組み合わせたような形で、部分的にプライバシー化、中央集権化を行なっています。

なぜデータベースをシェアする必要があるのか?

シェアデータベースの場合は、1つの会社の中でデータを管理するという形だが、ブロックチェーンの場合は、それぞれの会社がデータを共有管理することができます。そのため、誰がデータを共有するのか?改ざん不可能性を強制するのか?データの変更、削除権限を持つのか?という問題を解決することができます。

エンタープライズブロックチェーンの需要

エンタープライズのP2Pシステムには、4つの需要があります。

1.パーミッション

認可された組織のみが入れるように、権限の制限をするべき。

2.プライバシー

個人情報や企業機密など、秘匿されるべき情報もあるので、どこまで公開するのか、設定をカスタムしていくことが大事。

3.パフォーマンス

1つのトランザクションから、多くの情報を引き出せるように設計する必要がある。

4.ファイナリティ

ファイナリティがないと、送金したけどいつ届くかわからないという問題が起こりかねないので、確実性が求められる。

WFPでのユースケース | シリア難民キャンプ

WFPとの共同プロジェクトです。食料を送ってもきちんと届いているのか、地域による偏りはないかということが確認しづらいという問題がありました。そこで、ブロックチェーンを導入し、送金を行なうことでローカルのスーパーマーケットの経済圏を活性化させることができました。ブロックチェーンにより、お金の流れも適切に管理することができます。また、安全なID認証、顔認識のみでの支払いも可能となりました。

南アフリカ中央銀行での実証実験

7つの銀行によるコンソーシアム型のブロックチェーン。プライバシー保護を優先した国際送金の実験です。この実験では、99%のトランザクションを2秒以内に完結することが可能になりました。

Blockchain Hype Cycle

ブロックチェーンの動向は、コンピューターの流れに似ています。コンピューターの普及のスピードから考えて、今後ブロックチェーンが普及し、定着して行くには20年くらいかかるのではないかという見方もあります。しかし、現状様々なブロックチェーンのサービスが登場してきているので、そのスピードはもう少し速まるのではないかと思います。

Hyperledger Fabricの技術動向とファイナンシャルエンジニアリング視点でのトークンエコノミー 日本アイ・ビー・エム | 平山 毅

平山 毅 Tsuyoshi Hirayama | 日本アイ・ビー・エム株式会社 部長 / コンサルティング・アーキテクト
東京都立日比谷高等学校卒業。東京理科大学理工学部卒業。SunSiteユーザーで電子商取引を研究。 早稲田大学MBAファイナンス。GMOインターネット、サイバーエージェント、東京証券取引所、野村総合研究所を経て、アマゾンウェブサービスにて、アーキテクト及びコンサルタントとして、大規模グローバル案件の多くを手掛けた後、 IBM技術部門で、ブロックチェーン、AI、アナリティクス、クラウドを担当。 著作「ブロックチェーンの革新技術〜Hyperledger Fabricによるアプリケーション開発」「絵で見てわかるクラウドインフラとAPIの仕組み」「RDB技術者のためのNoSQLガイド」「絵で見てわかるシステムパフォーマンスの仕組み」「サーバ/インフラ徹底攻略」等 講演多数。東京理科大学ブロックチェーンハッカソン2018優勝。早稲田大学大学院ブロックチェーンクラブオーナー。
Blockchain EXE Meetup #1 ブロックチェーン技術の可能性について解説 Blockchain EXE Code #2 Hyperledger Fabric Composerを使ったブロックチェーンアプリケーションの実装 にも登壇。IBMのBlockchain技術コミュニティのメンバー。Twitter ID : @t3hirayama

Hyperledger Fabricのシステムとそのユースケースについてのお話を頂きました。

ブロックチェーンにおけるHyperledger Fabric

Hyperledger Fabricは仮想通貨がメインではなく、分散台帳とスマートコントラクトがメインとなっています。一番大きなポイントはパブリック型なのか、プライベート型なのかということですが、Hyperledger Fabricは中央集権型のプライベート型となっています。

Fintechブームとは

個人的な意見ですが、Fintechはビットコインのことではないと思っています。Fintechとは、スマートコントラクトによって構成されたアプリケーション(DApps等)によるトークンエコノミーの実現のことだと思っています。

Hyperledger Fabricの特徴

Hyperledger Fabricの特徴は5つあります。

  1. コンソーシアム型の参加方式
  2. 軽量かつ迅速なコンセンサス方式
  3. 様々な複雑な事務処理の実現
  4. トランザクション続行後の最新状態を保持
  5. チャネルによるブロックチェーンネットワークの論理的な分割

Hyperledger Fabricは仮想通貨やICOの観点ではなく、コンソーシアム内で分散台帳を改ざんできないとう点に重きが置かれています

Hyperledger Fabricの構成要素

  1. Organization:Hyperledger Fabricのネットワークに参画する組織を表す倫理学的な単位。
  2. ビア:Organization内のノードを表す倫理学的な単位であり、チェーンコードを保有。
  3. オーダラー:Endorsementされたトランザクションの結果をブロックチェーンとStateDBに書き込む順番を制限する。
  4. チェーンコード:スマートコントラクトを実現するためのプログラムで、専用のコンテンツで実行される。
  5. 分散台帳:Hyperledger Fabricネットワーク内の参加者間で同一の情報を共有するための台帳。
  6. MSP:Hyperledger Fabricが標準で提供するCA(認証局)、または外部のCAと連携して主にユーザーの登録およびEcertの発行を行なう。
  7. チャネル:1つのHyperledger Fabricネットワークを論理的に分割したネットワーク

Hyperledger Fabricのユースケース

Hyperledger Fabricのネットワークは幅広く使われています。

1.KYC認証

ブロックチェーンによって、銀行が顧客のKYC情報を集め、検証し、共有し、更新するための安全で非集中的な仕組みを提供しています。

2.ダイヤモンドのトレーサビリティ

ダイヤモンドのシリアル番号を40個以上の属性情報を記録します。

3.食品トレーサビリティ

産地から市場までの道筋を、ブロックチェーンによって管理します。

4.SCM

国際貿易最適化プラットフォームが、2018年の8月に発表されました。

Hyperledger Fabricに対する疑問

Hyperledger Fabricには仮想通貨もスマートコントラクトはあっても、トークン的に役割は少なく単なる台帳管理システムなのではないか?という疑問がわくと思いますが、トークン対応(デジタルアセット機能)はV2で予定されています。そのため、もし実現されれば、複雑な金融商品開発が可能になる予定です。(その後に機能取り込みのスケジュールが延期)

Hyperledger Fabricの設計思想

Hyperledger Fabricでは、場所を選ばず様々な場所で動かせるように、簡単な仕組みで同じフレームワークとすることを目標としています。

ディスカッション:進展か後退か。エンタープライズ領域における世界のブロックチェーン技術動向|Blockchain EXE #16

ディスカッションでは博報堂ブロックチェーン・イニシアティブであり、Blockchain EXEのコアメンバーでもある伊藤氏がモデレータとして加わりました。

伊藤 佑介  Ito Yusuke|株式会社博報堂ブロックチェーン・イニシアティブ
2008年にシステムインテグレーション企業を退職後、博報堂にて営業としてデジタルマーケティングを担当。
2013年からは博報堂DYホールディングスに出向し、マーケティング・テクノロジー・センターにて、デジタルマーケティング領域のシステムの開発~運用に従事。
2016年から広告・マーケティング・コミュニケーション領域のブロックチェーン活用の研究に取り組み、2018年9月より博報堂ブロックチェーン・イニシアティブとして活動を開始。その後、次々とマーケティング・コミュニケーション領域のブロックチェーンサービスを開発し、2018年11月5日にトークンコミュニティ解析サービス「トークンコミュニティ・アナライザー」、2019年1月31日に生活者参加型プロモーションサービス「CollectableAD」、2019年2月6日にデジタルアセットリアルタイム配布メディアサービス「TokenCastMedia」をリリース。現在は、さまざまなブロックチェーンベンチャーとコラボレーションしてブロックチェーンの社会実装に取り組んでいる。

ブロックチェーンの社会実装の流れ

伊藤氏(司会):ここまでのブロックチェーンの動向を見ていると、適応の幅が狭まっているような気がするのですが実際どうなのでしょうか?

石黒氏:海外では実証実験が増えていますが、幅が狭まっているのは事実です。というのは、法律面から現実的に考えると手をつけられる範囲が限られてきたと言うことではないでしょうか

平山氏:地味で堅い案件が着実に伸びている印象はあります。Hyperledger Fabricは改ざんできないことに力を入れて進めています。そこが評価されれば、法整備や既存システムがないアフリカなどでも実証実験が進む。Hyperledger Fabricの評価ポイントを集中することで社会実装に近づいていくような気がしています。

石井氏:事実、領域が狭まっているのはあります。インターネットと同じ流れですね。ブロックチェーンには様々な機能がある中で1つにしぼったことで、着実に進んでいるのはありますね。

ブロックチェーン思想→ブロックチェーン活用


伊藤氏(司会):2017年では、論文はほぼホワイトペーパーで、ほぼ詩の世界のような印象を受けたのですが、現在の状況はどうなのでしょうか?

石井氏:以前は思想としてのブロックチェーン。それが混ざっていて、今ようやく自由になったという感じですね。僕はゼロ、イチの発想から解き放たれる必要があると思っています。情報を共有して、使えるところを探していくことが大事だと思います。

伊藤氏(司会):以前はパブリックvsプライベートのような感じがしましたが、両方が近づいてきたのかなという印象は受けますね。

平山氏:確かにそのような過去はありました。今はようやく両方の意味がわかってきたので、その中間のモデルが必要なのかなという気がしています。

”とりあえず作る”が評価される

伊藤氏(司会):直近に入ってきた人たちは、自由な発想があるような気がします。途中から入ってきた人は固定概念がない分自由な発想があって面白いような気がしているのですが、いかがでしょうか?

石井氏:新しいブロックチェーンを理解するのにはコストがかかりますからね。元からいる人たちはそれを嫌っているような感じは受けますね。

石黒氏:イーサリアムはとりあえず作ってみようという姿勢を維持しています。ブロックチェーンを議論していく前にとりあえず作ってみようというのがイーサリアムの考え方ですね。

伊藤氏(司会):ブロックチェーンの現状としては、後退しつつも、それが新たなチャンスにつながって行くような感じがしている状況ですかね。

まとめ

ブロックチェーンの有用性が社会に受け入れられはじめ、様々な実証実験、運用計画が行なわれていく一方で、課題も浮き彫りになってきているのが現状です。特に、これからのIoT時代に適応していくために、データサイズやスピードの問題の解決は必要不可欠になってくると思います。テーマにある、「進展か、後退か」という問いに対しては、やや後退していると言わざるを得ませんが、ブロックチェーンを実際に適用できそうな分野や、解決すべき課題が明確になりつつあるので、これからまた新たなチャンスが生まれてくるかもしれません。

Blockchain EXE、スペインに続きフランス・パリでも大規模なブロックチェーンイベントを開催。パリで開催する意味とは?

Blockchain EXE、スペインに続きフランス・パリでも大規模なブロックチェーンイベントを開催

Blockchain EXEは3月7日(木)にフランス、パリのConsenSysパリオフィスを拠点にブロックチェーンや人口知能など、「第4産業革命」と言われるテクノロジーが作る新しい未来について協議する『Blockchain and AI: How will the 4th Industrial Revolution change the world?』を開催します。2018年にアジア、米国へその活動範囲を広げたBlockchain EXEは、2019年にスペイン・マドリードとフランス・パリで大規模なネットワーキングイベントを開催することとなりました。

なぜBlockchain EXEはフランスでブロックチェーンイベントを開催するのか?

多くの優秀なエンジニアが集まるパリ

3月5日に開催されるBlockchain EXE@スペインに続き、欧州ツアー2番目の開催地となるのは、イーサリアムカンファレンス(3月4日~10日)で世界中からブロックチェーンのキーパーソンが集結しているフランスのパリが舞台となります。世界最大手のブロックチェーンソリューション企業ConsenSysのパリ支部とタッグを組み、同社の有するイベント会場で実施されます。申込者は定員80名の2倍となる160名に達しており、満員御礼の状況です。

パリはFrance is AI というスローガンを掲げ、都市が一丸となって大学や企業でAI関連のエコシステムを作り上げているユニークな市場でもあります。世界最大手のAIテクノロジーを有するGoogleやFacebookがAIリサーチセンターをパリに設立したことで、パリに世界のAI専門家が集中しつつあります。世界中からブロックチェーンとAIのエキスパートが集結する3月のパリでBlockchain EXEを開催し、大きな注目を集めたことは欧州進出の成功を意味しています。

Blockchain EXE|Industry 4.0:How Blockchain and AI shape our future?

Blockchain EXE@パリでは、ブロックチェーンxAIをテーマに『ブロックチェーン&AI:第4産業革命は世界をどう変えるか?』というテーマに基づき、ConsenSysとクーガーからスピーカーが登壇しました。

イベント概要

テーマ 『Blockchain and AI: How will the 4th Industrial Revolution change the world?』
主催 Blockchain EXE(https://blockchainexe.com)< /br>
ConsenSys
日時 2019年 3月7日(火)18:30~22:00
会場 SonsenSys Paris Auditorium 10 rue de Vauvilliers, 75001 Paris
参加費 無料

イベントスケジュール

6:30pm-7:00pm 開場
7:00pm-7:20pm Nicolas Maurice – Lead Developer at ConsenSys
7:20pm-7:40pm Amira Bouguera – Cryptographer & Blockchain Engineer at ConsenSys
7:40pm-8:00pm 石井敦氏 – クーガー株式会社 CEO | “CONNECTOME” – the next generation interface combining AI x AR x Blockchain
8:00pm-8:20pm 石黒 一明 – クーガー株式会社 チーフブロックチェーンアーキテクト
8:20pm-8:40pm パネルディスカッション – モデレーター:因京子-CONNECTOME社スペインコミュニティーマネジャー
8:40pm-10:00pm 懇親会

スピーカープロフィール

Nicolas Maurice | ConsenSys リードデベロッパー
Nicolas Maurice氏はパリのConsenSys Solutions社のテクニカルリードである。 同氏はフルスタックのソフトウェアエンジニアであり、ブロックチェーンのエキスパートとして、Ethereum、Back-End、Front-End&DevOpsを含む広範な技術に卓越している。
社内ではエンジニアリングチームの成長と指導に積極的に関わってきた。現在は、主に金融業界向けのアーキテクチャ設計および分散型プラットフォームの構築に取り組んでいる。同氏はフランスのエコール ポリテクニークを卒業後、シンガポール国立大学で数学とコンピュータサイエンスを専攻。機械学習と人工知能の学術的研究を通じて新たな技術を習得。ConsenSys入社前、彼はパリのEY Innovation Labの一員でイーサリアムを発見し、その可能性の虜になった。
Amira Bouguera | Cryptographer & Blockchain Engineer at ConsenSys
HellHoundプロジェクトが目指すゴールは、分散型アプリケーション(dapps)開発者が意図的にプライバシーを実装できるようにするために、分散型のコンピューティング環境と一連の暗号化ツールを提供することである。設計上のプライバシーは、エンジニアリングプロセス全体を通してプライバシーが考慮されることである。HellHoundは、AI製品によって送信されたデータに対してプライバシーを提供しながら、相互に通信したり、人間と通信したり、その個人情報が製品を製造またはモニターしている会社によって閲覧されることを防止する。Amira Bouguera女史は、数学者及びクリプトグラファーであり、Hellhoundのブロックチェーンプロトコルエンジニア兼クリプトグラファーとして従事。同氏はHellfoundに参加する以前もブロックチェーン分野で経験を積んでおり、Stratumn社(トレーサビリティブロックチェーンのスタートアップ)のセキュリティーエンジニアおよびスマートコントラクトセキュリティ監査人として勤務した経験を持つ。
石井 敦 Atsushi Ishii | クーガー CEO
IBMを経て、楽天やインフォシークの大規模検索エンジン開発。日本・米国・韓国を横断したオンラインゲーム開発プロジェクトの統括や進行。Amazon Robotics Challenge トップレベルのチームへの技術支援や共同開発。ホンダへのAIラーニングシミュレーター提供、NEDO次世代AIプロジェクトでのクラウドロボティクス開発統括などを行う。現在、AI x ロボティクス x IoT x ブロックチェーンによる応用開発を進めている。
石黒 一明 |クーガー リードブロックチェーンエンジニア、EEA日本支部代表
高校卒業後、映画監督を目指してロサンゼルスへ留学。大学へ通いながらLAのクラブやバーでDJを始め、ハリウッドのクラブでレギュラーDJとして本格的に活動。DJ活動の中で音楽・映像用のプログラム言語をライブで使用したのをキッカケにプログラミングを始める。 日本に帰国後、CTI関連のベンチャー企業で技術統括を務める傍ら、ブロックチェーン関連の技術開発を独学する。現在、クーガーにて「Connectome」の開発を進めている。サンフランシスコで開催されたBlockchain EXEでの登壇、Ethereum技術者の世界大会「EDCON」への登壇など、海外でも活動。ドイツ発のブロックチェーン「BigchainDB」のコントリビューターでもある。

取材に関するお問い合わせ

取材に関するお問い合わせはこちらより、フォームを記入の上、ご連絡ください。

【Blockchain EXE初の欧州イベント in スペイン】Industry 4.0: How Blockchain and AI shape our future?

Blockchain EXE、3月にスペイン・マドリードのGoogle Campusにて欧州初となるブロックチェーンイベントを開催

Blockchain EXEは現地時間3月5日(火)、スペイン、マドリードのGoogle Campus for Startupsを会場に、第4産業革命をテーマにした『Industry 4.0: How Blockchain and AI shape our future?』を開催します。2018年にアジア、米国へその活動範囲を広げたBlockchain EXEは、2019年についに欧州に進出しました。

なぜBlockchain EXEはスペインでブロックチェーンイベントを開催するのか?

スペインのスタートアップカルチャー

Googleが世界7箇所(ロンドン、サンパウロ、ソウル、テルアビブ、ワルシャワ、マドリード)に有する起業家のためのGoogleキャンパスのひとつはマドリードにあります。

スペインにトップビジネススクールと言われるIEがマドリードにあり、ビジネスのエコシステムが構築されていることが人の流動性を高めていると言えるでしょう。

国内にとどまらないスペインマーケット

スペインの企業は銀行などをはじめ、ラテンアメリカにも影響力を受けております。そのため、スペインのマーケットは国内だけに留まらずラテンアメリカという巨大なマーケットへのアクセスが可能となっており、高いポテンシャルがあると言われています。

ブレクジットで揺れるロンドンにかわる市場として、スペインには欧州から多くの投資が集まっています。

Blockchain EXE|Industry 4.0:How Blockchain and AI shape our future?

イベント概要

テーマ Industry 4.0: How Blockchain and AI shape our future?
主催 Blockchain EXE(https://blockchainexe.com)
日時 2019年 3月5日(火)18:30~22:00
会場 Google Campus for Startup Madrid
参加費 無料

イベントスケジュール

6:30pm-7:00pm 開場
7:00pm-7:20pm Alexandre Bussutil氏 – B-SCALED社- CEO、IEビジネススクールMBA大学教授
7:20pm-7:40pm 石井敦氏 – クーガー株式会社 CEO | “CONNECTOME” – the next generation interface combining AI x AR x Blockchain
7:40pm-8:00pm Jorge de los Reyes Martínez氏 – Social Media Fidelity Management社、CLO
8:00pm-8:20pm Alfonso de la Rocha氏 – Telefonica R&D ブロックチェーン専門家
8:20pm-8:40pm パネルディスカッション – モデレーター:因京子-CONNECTOME社スペインコミュニティーマネジャー
8:40pm-10:00pm 懇親会

スピーカープロフィール

石井 敦 | クーガー株式会社 CEO
IBMを経て、楽天やインフォシークの大規模検索エンジン開発。日本・米国・韓国を横断したオンラインゲーム開発プロジェクトの統括や進行。Amazon Robotics Challenge トップレベルのチームへの技術支援や共同開発。ホンダへのAIラーニングシミュレーター提供、NEDO次世代AIプロジェクトでのクラウドロボティクス開発統括などを行う。現在、AI x ロボティクス x IoT x ブロックチェーンによる応用開発を進めている。
Alexandre Bussutil | CEO at B-SCALED, Visiting Professor at IE Business School for Blockchain Technologies
Alexandre Bussutil氏はテック系スタートアップが成長するためにビズデブや技術面、ストラテジー分野をサポートするコンサルティング会社、B-SCALEDのCEOである。また、IE ビジネススクールでブロックチェーンテクノロジーを指導する教授でもある。同氏は会社を設立する前、アジア、ヨーロッパ、アフリカにおいて大手の産業・エネルギー系企業で14年間業務に従事した。
2016年からVCファンドやスタートアップへの関わりを得て現在ブロックチェーンのグローバルコミュニティーへアクセスする機会を得た。同氏が運営に関わっているスペインの大手ブロックチェーンコミュニティーBlockchain Españaとの共著『Comunidad Blockchain』を執筆。IE Business School でエンジニアリング及びIMBAの修士号を取得。

今回のBlockchain EXEでは、社会におけるエネルギー・特に電気の役割について触れ、分散型の技術がどのようにグローバルのエネルギー問題を解決するのに貢献できるかについて議論する。

Jorge de los Reyes Martínez | Chief Legal Officer (CLO) of the Social Media Fidelity Management
法学の学士号及びビジネス法の修士号を取得し、州の弁護士になるための2年間の経験を経て、現在はビジネスコンサルタンティングおよび技術分野のリーガルアドバイザーとして従事。
また、マドリード、CEUサンパブロ大学、金融市場法学部の研究員として、現在は博士号取得のためにリサーチおよびトレーニングコースを実施。国連のSDG(持続可能な開発目標)の解決に関する、商法、新技術、ブロックチェーン、暗号通貨を専門とする法と経済学の分野を研究。
同氏は、メディアや企業、大学、ビジネススクールや教育センターに対してブランディングやコーポレートアイデンティティーの構築、オンライン上の評判の向上、「オン/オフメディア」におけるポジショニングのための戦略的マーケティングプランの設計サービスを提供するソーシャルメディアフィデリティマネジメントの法律顧問である。
Alfonso de la Rocha | Telefonica R&D ブロックチェーン専門家
Alfonso de la Rocha氏は現在スペインの大手テレコミュニケーション企業TelefonicaのR&D部門においてブロックチェーンの技術的専門家として従事しており、イノベーティブかつ破壊的な技術を使ったデジタル変革プロジェクトに携わっている。同氏はこれまでにPython、Go、イーサリアム、スマートコントラクト、自然言語処理技術、複数のオープンソースプロジェクトに関わる主要な技術チームでの経験を積んでいる。また、Alastria National Blockchainエコシステムのプラットフォームの開発に貢献している。

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ブロックチェーンを拡張する応用技術『サイドチェーンとは?』

サイドチェーンとは

サイドチェーンという言葉を聞いたことがあるでしょうか?サイドチェーンとは、ブロックチェーンをカスタマイズして拡張性を持たせる目的で作られており、複数のブロックチェーン間で双方向のやりとり行うことができます。サイドチェーンは2014年に米国のBlockStream社によって初めて実装に関するホワイトペーパーが発表されました。

なぜサイドチェーンが注目されているのか

ビットコインは世界的な注目を集め、多くの人に利用されてきましたが、デメリットとして、送金手数料が高くなってきている、トランザクション速度が追いつかず、取引のための処理に時間がかかるなどの問題がありました。

一方で、これらの問題を解決するために、ビットコインの仕様自体を変更することは、コンセンサスを得ることが非常に難しいです。また、独自のブロックチェーンを別で作ることも、十分なマイニングパワーを確保することが難しいという問題がありました。これらの問題を解決するために開発されたのがサイドチェーンです。

メインチェーンとの違いはなにか

サイドチェーンは、メインチェーンとは別のブロックチェーンを作り、メインチェーンとサイドチェーンをPegという方法で結びつけます。このPegを通じて、デジタルアセットのやり取りを可能にします。

サイドチェーンのメリット

メインチェーンとサイドチェーンの両方で、トランザクションの並列処理を行うことで、トランザクション処理の高速化を実現できます。また、イーサリアムのようにスマートコントラクトのコードを全てメインチェーンに記述していると、ハッキングされた際に被害が甚大となるリスクがあります。しかしサイドチェーンの場合、スマートコントラクトのコードを記述しておくことで、ハッキングされてもサイドチェーンを切り離し、被害を最小限にすることができます。

サイドチェーンのデメリット

メインチェーンだけでなく、サイドチェーンとメインチェーンの間の取引も承認しなければならないため、承認作業量の増加が懸念されます。必要な処理量を確保できる仕組みを持つサイドチェーンを開発する必要があります。また、メインチェーンとサイドチェーンの間のやり取りの脆弱性を指摘されることがあり、セキュリティ面が懸念されています。

サイドチェーンプロジェクト

Liquid

Liquidは、Blockstream社によって開発されたサイドチェーンです。世界中の取引所、ブローカー、金融機関などのニーズに対応するために、高速処理を実現します。

Rootstock

Rootstockは、ビットコインのネットワークにサイドチェーンを実装し、スマートコントラクトを導入しようとするプロジェクトです。

Lisk

Liskは前述のRootstockと同様、スマートコントラクトを導入するものですが、dApps(分散型アプリケーション)のプラットフォームを介して運用されることが特徴的です。

サイドチェーンの課題を解決する企業の誕生

また、サイドチェーンはキュリティの面で課題があります。その課題を解決するために世界から注目されている日本企業があります。

まとめ

サイドチェーンは、ブロックチェーンの機能を拡大し、これまでブロックチェーンが抱えていた問題を解決できる新たな技術です。一方で、さまざまなプロジェクトの開発が進められている途上であり、セキュリティ面などではまだ課題が残ります。今後の展開から目が離せません。