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【Blockchain EXE #21 失敗から学ぶ】「パブリックブロックチェーンのスケーリングの実現の成功について」片岡 拓/株式会社 Crypto economics Lab CEO

投稿日:2020年2月2日 更新日:

【世界最前線!】スケーリング、スピード、セキュリティの技術的課題や失敗を語る | Blockchain EXE#21

Blockchain EXE#21は、外部企業とのブロックチェーンプロジェクトに従事してきた事業家と共に「ブロックチェーンプロジェクトを成功に導く秘訣」あるいは「失敗するプロジェクトはこんな壁に直面する」などのリアルな情報に迫ります。

目次

「パブリックブロックチェーンのスケーリングの実現の成功について」片岡 拓/株式会社 Crypto economics Lab CEO

片岡拓 | 株主会社Cryptoeconomics Lab CEO
2015年、慶應義塾大学商学部卒業。ネット型賃貸仲介会社、ジャカルタにおける焼肉店の展開などの起業を経験し、2018年、Cryptoeconomics Labを創業。

片岡:皆さん、初めまして。Crypto economics Labの片岡といいます。どうぞよろしくお願いいたします。本日は、パブリックブロックチェーンのスケーリングの実現の成功と失敗についてお話ししたいと思います。

私はCrypto economics Labという会社でCEOをやっているのですが、もし弊社の名前を聞いたことがあるという方がいたら、この落合渉悟という者を知っていらっしゃるのかなと思います。私は、この業界に入ってから初めてのプレゼンテーションで、大変緊張しておりますので、お手柔らかにお願いいたします。

ブロックチェーンのスケーラビリティを解決するプロジェクト

私たちは、Plasma Chamberという、誰もがスケーラブルなブロックチェーンアプリを、ブロックチェーンの長所を失うことなく構築できるサービスをつくっています。ブロックチェーンにおける既存の課題として、データを処理する速度(TPS)がきわめて遅いこと、大量のデータを扱うことができないこと、EthereumではGAS負担がかかってしまうこと、規制がかかってしまいユーザビリティが損なわれることが挙げられます。ブロックチェーンの利点であるセキュリティなどを維持しながら、これらの問題を解決するのが課題だと思っています。

それに対する解決策として提案されたのが、Plasmaです。これは、Ethereumやライトニングネットワークの開発者であるジョセフ・プーンと、Ethereumの創設者であるヴィタリック・ブテリンが2017年に提案した技術です。彼らの提案に対して、2017年10月に私と落合でこれを翻訳し、以来2年間、この技術の開発の実装に努めてまいりました。

Plasmaの特長

Plasmaには、いろいろな特長があります。1番大事なところで言うと、ハイセキュリティです。ブロックチェーンにはトリレンマがあります。例えば、ディセントラリゼーションを少し失わせれば、スケーラビリティもセキュリティも上げることができます。逆に、セキュリティを失ったら、ブロックチェーンの価値がなくなってしまいます。スケーラビリティを少しだけ失わせたのがビットコインやEthereumですね。スケーラビリティは失われますが、ディセントラリゼーションとセキュリティは高い位置にある。このように、ブロックチェーンには3つを同時に取ることができないという特徴があります。

ブロックチェーンのトリレンマを解消する

Plasmaならば、この3つを同時に取ることができるのではないかというのが、先ほど紹介した提案です。実際にPlasmaを実装するとどうなるかというと、ハイセキュリティになります。Ethereumと同等のセキュリティレベルになり、秒間数十万/TPSの処理速度になります。また、エンドユーザーがGASを払うことなく利用できますし、FastFinalityという機能があり、0.2秒で着金できたり、DAIやLCJPY、USDTのようなステーブルコインを使ったりすることもできます。あとは、スマートフォンの様々なデバイスに対応しています。

ブロックチェーン技術の実用化へ

このあたりまで来ると、これまで騒がれるわりには使えないものであったブロックチェーンが、大分使えるものになってきたということがお分かりいただけると思います。これがPlasmaの技術的な要素です。弊社の場合は、TezosやEthereum、Polkadotに対応しており、この3社のテストネットで皆さんがデフロイできるように実装しています。今まで研究成果を発表したり、登壇してお話をさせていただいたりして、グラント(助成金、付与)などもいただいています。代表的なものでいうと、今年大阪で開かれたDevcon5でも、日本から出場したのは3チームだったと思いますが、そのうちの1チームとして出させていただきました。Tezosからもファンデーショングランプリをいただき、公式の開発助成金をいただいていますので、TezosのデファクトスタンダードとしてのPlasmaをつくらせていただいています。あとは、Ethereum Foundationからもグラントをいただいています。グローバルなファンデーションとしっかりコミュニケーションを取っていきながら、私たちの独自仕様にならない、グローバルな標準としてのPlasmaを広げていきたいと思っています。

世界レベルの技術へ

プロダクトのデモをお見せします。これはウォレットでペイメントのアップを実行しています。一般的なブロックチェーンならばこのぐらいできて当然のように見えるのですが、Plasmaはこれを秒間50万トランザクションさばき切ります。このレベルのものが世界に出るのは初めてで、これが、弊社がDevcon5で発表した内容になります。もしかしたら皆さんの頭の中では、Plasmaの開発が全く進んでいないように思われていたかもしれませんが、実はテストネット環境ではこのようにペイメントを行えるようになっていますし、来年の頭にはエンジニアの方々がPlasmaのノードを立てて、その上でアプリケーションを実行、デフロイできるものが出てきますので、ぜひ楽しみにしていてください。

Plasmaのユースケース

この技術を使って、日本や海外企業といくつかのユースケースを作っていますので、少しだけ紹介させていただきます。

今、日本でずっとやらせていただいているのが、中部電力と一緒にP2Pの電力プラットフォームです。これは何かというと、もともと太陽光パネルを設置して、発電した電気を政府が買い取ってくれたんですね。ですが、政府が買い取ってくれる制度が終わるため、自分でつくった電気が余ってしまいます。それを友達や近隣の住民に売りたいというときに、中部電力のベースローンにもう1回戻してしまうと送電のロスがあるので、P2Pで取り引きできないかと考えました。しかし、電力を渡したけれどお金が支払われないという問題が起こると困るので、スマート決済でお金と電力が同時に動くようにしました。そうすると、顔も知らない第三者との間で電力の取り引きすることができます。こういったプラットフォームを作っています。

また、分散型のデータ保存に関しては、IoTや医療、不動産関係などたくさんの企業と事業をやらせていただいています。ブロックチェーンの基本の使い方ですが、データをきちんと記録していって、改ざんのないようにするということです。その上で、改ざんのないデータを使って、不動産の証券化をしたり、不動産の担保ローンをしたり、保険で言えば、自動車保険をそれで使ったりと、いろいろなスマートコントラクトを実行する基盤をつくっています。

ブロックチェーンプロジェクトでの失敗や難しかったこと

※非公開情報があるため、片岡氏のプレゼンのポイントをまとめます。

1.パブリックブロックチェーンとプライベートブロックチェーンのバランスとフォーカス

iOSやAndroidといったOSが100個あっては困るように、徐々に1つや2つに収斂されていく。その中で、長期的視点は持ちながらも、現在の市場ニーズに合わせてコンソーシアムのようなプライベートチェーンを取り入れたりしている。コンソーシアムチェーンからパブリックへの移行もできるので、二元論で語る必要はない。

2.研究開発とビジネスのバランスとフォーカス

グローバルでみても研究開発に投資できている会社である自負を持っているが、それはビジネスもやっているからこそ成り立っている。ICOをやるという選択肢もあり、多額のお金を集めていた他のプロジェクトもあったが、スケーリング技術にトークンは必要ないと判断してICOはしなかった。事業をやる上で本質を捉え、サステナブルな研究開発の実現を意識している。

3.フレームワークとドメインのバランスとフォーカス

多くの人に利用されるために、スタンダードとなるフレームワークを開発しながらも、特定のドメイン内で使い、他のドメインで転用するなど、ドメインを行き来しながらの開発が必要。フレームワークによりすぎても、ドメインによりすぎてもダメ。経営資源とのバランスの中で優先順位をつける必要がある。

4.安定性と開発スピードのバランスとフォーカス

Rustで開発を進めていたが、開発が難しく、ユーザーニーズを検証する事を優先するためにTypeScriptで開発スピードを上げた。短期と長期の視点をバランス持つことが重要。

二元論で語らず、バランスとフォーカス、そして優先順位をつけて事業を行ってきたことが今の競争優位性につながっている。

質疑応答

質問者A:研究開発などでいろいろなトラブルがあったと思いますが、どのぐらいの期間で成果が出なかったら止めるとか、そのような判断基準はありましたか。

片岡:それは結構難しい問題です。Plasmaに関しては、「開発はものすごく難しいけれども、不可能ではない」というのが当時の一般論だったので、いつかできると思っていましたし、できたときにそれがブロックチェーン業界に与える功績は大きいと信じていたので、完成するまで10年は待つと決めました。ですが、やってみると、意外に3年で行けたという感じです。

質問者A:なるほど。腹の座りようがポイントですね。

片岡:そうですね。多分研究開発分野は全部そうだと思います。意思決定者がどこまで腹を据えられるか。とは言え、撤退ラインがあるわけですから、その撤退ラインをできるだけ長くするために、ビジネスでお金稼ぎをきっちりやることが大事です。そうやって、10年でも20年でも長く研究開発を続け、その間に成果が出るのを待つというのが研究開発ベンチャーのあるべき姿だと私は考えています。

質問者B:私もブロックチェーンの会社を経営しているのですが、実際にプロジェクトを動かすことができるリテラシーのある企業と巡り合うにはどうすればいいでしょうか。

片岡:私たちの何がよかったかというと、研究開発をし続けたことが全てでした。今の強みはここにしかありません。研究開発をして、いいものをつくっていくと、EDCONやDevconに出ることができます。EDCONやDevconに出ると、見てくださるお客様がたくさんいます。そこに来るお客様は志の高い人ばかりですから、それいいねと言って仕事を発注してくださる方もいます。ですから、結果的に、研究開発にフォーカスし続けていくことがマーケティングにもなりますし、人材採用がうまくいく要因にもなります。コミュニティの人たちが勝手に私たちのところにアプライしてくれます。そのほとんどがとても優秀な外国人で、あなたたちの技術は分かっているから一緒にやらせてほしい、最悪OSSで、給料もいらないよと言ってくださる方々が来てくださっているというのが現状です。

質問者B:ポイントとしては、リテラシーが高い人が集まる場所に行くということですね。

片岡:そうだと思います。そのときには、何か1つ強みやこの会社に頼む理由をつくることが大事です。私たちの場合はそれがスケールでした。スケーリングをやりたかったら、頼める会社は世界に5社ぐらいしかありません。そのうち、Plasmaに関しては、わが社ともう1社しかありませんので、自然に問い合わせが来るという環境になっています。

質問者B:グローバルマーケットの中で、両手や片手に収まることのできる分野を狙って勝っていくということですね。

片岡:そうですね。本当にいいものをつくって、登壇の機会などがあれば、私はチャンスが来るものだと思っていますので、ブロックチェーンのイベントが世界中で行われているので、そこでブロックチェーンのインフルエンサーのような人たちが1回でも見つけてくれれば、彼らが大々的に広げてくれて、結果的にクライアントが増えるのではないかなと思います。

質問者A:片岡さんはユーザーニーズに近い分野を研究開発されていますが、ユーザーニーズから遠くて、今後どうなるか分からない分野をあえて狙うことはありますか?

片岡:先ほど10年といったが、できれば2、3年後に来そうなもので、コアテクノロジーに行き過ぎない分野がいいと思います。面白い技術は実際にありますが、ビジネスモデルが正直作れないというものもあります。Plasmaの場合はノードを立てる必要があるので、私たちがサーバーを提供する必要があって、そこがビジネスになり得ます。同時に、トラストレスにできる。だから、ブロックチェーンカンパニーやエンタープライズカンパニーの方々に私たちのサービスを使っていただけています。ビジネスと研究開発のギリギリのところを攻める。そして、2、3年後の未来に張るというのが私たちの意思決定の基準になっています。ありがとうございました。

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