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ルワンダで泣いた

恥を忍んで素直に記すと、5日間に及ぶワークショップの最終日、自然と涙が出て止まらなかった。

地味にバタバタし続けた日々を無事に終えられた安堵ではなく、参加者の顔を見ていたらとても嬉しくて嬉しくて。

目次(後編)

  1. 最終日はアイデアソン
  2. ルワンダ大学の粋な計らい
  3. その後のはなし

最終日はアイデアソン

5日間の最終日は朝からアイデアソン。数名ずつの全7グループに分かれ、これまで学んだことをふまえ「どんな問題を、どのようにブロックチェーンの仕組みを使って解決するのか」を考えて発表してもらった。

話し合いの様子を見ていて面白かったのは、その場で組まれたグループにも関わらず、場を仕切る人、ネットで丹念にリサーチする人、資料を作る人などなど、早い段階で役割が自然とハッキリ分かれていたこと。

我の強い人同士で収拾がつかなくなるような様子も無く、どのグループも限られた時間を有効的に使い、丁寧にアイデアをまとめていた。

概念が掴みにくい先端技術を理解してもらうために重要なこと

およそ2時間半のシンキングタイムを経て、いよいよワークショップ最後のプログラム「アイデア発表会」がスタート。各グループの代表者が順番に前に出て、練りに練ったアイデアをプレゼン。

この発表会にはルワンダ大学の教授も参加し、各プレゼンを興味深そうに見ていた。

印象的だったのは、全7グループ中、5グループが「農業」に関するサプライチェーンやトレーサビリティのアイデアだったこと。

品質に信用性が無い問題を改善する。入札システムを分散化させて入札する側にもデータコントロールできるような仕組みを作る。コーヒー豆の生産者を明確にしたり中間業者を省略させたりすることでブランド価値を上げつつも消費者が手に取りやすい仕組みを作る、などなど。

着眼点は異なれど、ルワンダの主要産業である「農業」にアイデアが集中したのは、とても興味深い結果だ。

ちなみに、残り2グループは「農業に限定しないサプライチェーン」と「ヘルスケアに繋がる個人情報管理」のアイデア。ブロックチェーンの仕組みをしっかり理解してくれていると感じられる素晴らしいプレゼンだった。

質疑応答の時間も設けたのだが、他グループの参加者からはもちろん、来賓や大学教授からも次々と質問が出るほど、どのプレゼンも大いに盛り上がった。

やはり「農業」関連のアイデアには特に多くの質問が寄せられた。この状況を考慮すると、ブロックチェーンという「概念が掴みにくい先端技術」を理解してもらうためには「その国・その土地で最も身近な産業に絡めてイメージしてもらうこと」が重要なんだなと強く感じる。

今回の場合、サンフランシスコから駆けつけてくれたConsenSysのマッドサイエンティスト「Shraddha Chaplot」さんによるAgriculture(農業)をテーマにした講義が、参加者の理解を大きく加速させたのではないだろうか。(もちろん全ての講義が、参加者の理解を深め、発表されたアイデアを考える材料として機能したことは間違いないという前提での話である)

真面目さが伝わるプレゼン資料

アイデア発表会の際に驚いたのは、全チームがスライドを用意してプロジェクターで映しながら説明したこと。

しかも、この短時間で見栄えよく整えた資料を用意したグループが多いという、事前に聞いていた「PC普及率5%」からは予想できなかった状況。


※実際に参加者が発表で使用したスライドの一部。このように図まで入ったスライドが用意されるとは正直思っていなかった。

これらのプレゼン資料から伝わるのは、ブロックチェーンをしっかり理解しようと全員がワークショップに真剣に取り組んでくれていたということ。

最終日はアイデアソンと発表会だけで講義は用意されていないため「もう学ぶことがないなら行かなくてもいいかな」と、出席率が低くなることを心配していたが、完全に取り越し苦労。

的を射たブロックチェーン活用案を考え、相手に伝えようという意識で作った資料を使って発表する。そんな様子を目の当たりにし、本当に「勤勉で真面目な国民性」なんだなとシミジミ感じた。

ルワンダ大学の粋な計らい

発表会を経て、5日間に及ぶワークショップのプログラムは全て終了。

ここで、ルワンダ大学から素敵なプレゼントが!

今回のワークショップに参加し、ブロックチェーンについてアイデアを考えて発表できるレベルの知見を身につけたということで、全員分の「修了証書」が用意されており、突如「修了証書授与式」を開催する流れに。

ルワンダ大学の教授が1人ずつ名前を読み上げ、ルワンダ開発庁(Rwanda Development Board)投資部門のトップで現地の有名人「Steve Mutabazi」氏の手から修了証書が手渡された。

名前を呼ばれた時のリアクションは様々で、照れくさそうにゆっくり席を立つ人もいれば、元気の良い挨拶と共に勢い良く席を立つ人も。

全員に共通していたのは「とても嬉しそう」という点。

どうやらルワンダでは、修了証書など「自分が何かを成し遂げた証」を手にするのは、とても誇らしいことだそう。そんなお国柄なので、むしろ大学としては「用意するのが当たり前」という感覚だった御様子。

1人として例外なく嬉しそうで満足げな表情。その喜びをみんなで分かち合っている教室内の様子は、大袈裟ではなく、まるで映画に出てくる卒業シーンのよう。そんな感動のシーンをたっぷり堪能でき、思わずこちらも同じ涙がキラリ。

最後は、主催であるルワンダ大学とBlockchain EXE、そしてSteve Mutabazi氏から一言ずつ挨拶があり、今度こそ本当に全プログラムが終了。

考えてみると、初めて訪れた国で、現地の人50名近くと5日間も毎日のように朝から夕方までガッツリと顔を合わせる機会ってなかなか無いだろう。

日を追う毎に明らかに打ち解けてきてるなと感じられ、コーヒーブレイクやランチタイムなど、休憩時間の交流も日増しに盛んになり、終了証書授与式後には、次から次へと参加者に囲まれて一緒に記念写真を撮ったり、「絶対また来いよな」と言って当たり前のように連絡先(名刺・SNS)を交換してくれたり。

人柄の良い参加者に恵まれて感謝しかない。

というわけで、いろいろありつつも(本当にいろいろありつつも)無事にワークショップを終えることができた。参加頂いた方々、関係者の方々、本当にありがとうございました。

パッと見の印象ではわからないことだらけ

「アフリカ以外に住んでる人たちは、アフリカ大陸全体を一括りにして、暑い・貧困・危険というイメージを持つ人が多いけど、まぁ情報が少ないから仕方ないよね」

これは、ワークショップ登壇者がしみじみ語った言葉。

事実、今回アフリカのルワンダへ行ってきますと伝えた家族や友人からは「暑いだろうから気をつけてね」「野生動物に襲われないようにね」「ネットとか繋がるの?」「疫病とか恐いから予防接種とか忘れずにね」等々、先に挙げたようなイメージで心配する声をたくさん頂戴した。

たしかに日本で得られる情報は、北米やヨーロッパの先進国や身近なアジアと比較すると、アフリカは少ないので偏った認識に陥りがちだが、ルワンダを訪れると、多くの人が抱いているであろうアフリカのイメージが覆される。

「暑い・貧困・危険」

どころか

「涼しい・近代的・安全」

実際に行ってみて、気づいて知って驚いて。更に現地の人から直接話を聞いたり実際にサービスを利用してみて、気づいて知って驚いて。そんな2段階の発見に溢れるルワンダ滞在だった。

実際に行ってみて驚いた最たるものは、やはりルワンダ、特に首都キガリの近代的発展。

道は整っているし。キレイなビルが立っているし。大型ショッピングモールもあるし。夜歩いていてもトラブルは起こらないし。涼しくて快適だし。レストランやカフェにいると「あれ、今アフリカにいるんだっけ?」と真面目に忘れてしまうレベル。

いかに自分がまだまだ勉強不足でステレオタイプなアフリカイメージを抱いていたかということを痛感。こんなに居心地の良い都市だとは思わなかった。キガリすごいぞ。ルワンダすごいぞ。

キガリにいる限りでは想像していたような不便さは無く、予想を遥かに上回る安全・便利さに感動。

とはいえ「近代化が顕著=自分たちと同じ感覚」という解釈になるのは傲慢だし危険。こちらが当たり前だと思っている感覚が通じないことがむしろ多い。

パッと見た印象と、現地の人の話を聞いての実際が大きく異なることもしばしば。事前にいろいろ調べて理解した上で訪れたつもりでいたが、やはり「つもり」程度な理解度だったんだなと現地で思い知らされた。

例えばテレビ。

空港やショッピングモールや飲食店など、街中のアチコチに大型の液晶テレビが設置されているので「ブラウン管ではなく、大画面の液晶テレビまで普及してるレベルなんだなー」と最初は驚いたが、現地の人の話を聞くと、実はテレビが置いてある家庭は少数派。液晶テレビどころか、テレビの普及自体がまだまだこれから。

そんな状況で、いきなり大画面のテレビが街に現れ始めたので、街中のテレビでサッカー中継が流れてたりすると人だかりができる。テレビの設置が集客に繋がる文化ということ。最初の印象と大きく異なり、驚かされた。

例えばタクシー。

キガリの街には車だけではなくバイクのタクシーも有り余るほど走り回っているので「移動したい時にすぐタクシーがつかまる便利な街」というのがパッと見の印象。

しかし、実際に利用してみると、すぐつかまるけど「すぐに移動」できない。

空港や大学などの目立つ施設なら言えばすぐ解ってくれるが、レストランやショップ、最近できた会社や施設などは「利用するこちらが運転手に理解してもらえるように場所を伝える」必要がある。

スマホで地図を見せれば大丈夫かと思いきや、そもそも地図の見方がわからない運転手が多いという衝撃の事実。

より正しく理解するためには、表向きの情報や印象で決めつけず、やはり現地の人に話を聞いたり、実際にサービスに触れてみることが大事だなと、改めて身に沁みた

今回、ルワンダでブロックチェーンのワークショップを開催したわけだが「新しい知見を共有する際には、現地の人たちの視点に合わせる」のが本当に重要。こちらの常識そのままで知見を共有してはダメ。ゼッタイ。

これは以前読んだ本の受け売りだが「人間は本当に新しいものは欲しがらない。馴染みのあるものをこれまでと違うやり方で提供するほうがいい」という言葉。

まさにこれ!

その後のはなし

実は今回の目的は「ルワンダでワークショップを開催すること」ではなく、ワークショップを開催した上で「今後の発展に繋がるブロックチェーンのコミュニティをルワンダに作ること」が真の目的だった。

ワークショップでブロックチェーンの興味を深めてもらい、フォローしながら今年中には現地にコミュニティができるといいなくらいのペースを想定していた。

ところが、今回参加してくれた現地の40名ちょっとの方々。我々が日本に戻るよりも前に早速WhatsAppのグループを作って意見交換を始める勢いの良さ。

中には「Blockchain EXEの運営メンバーになりたい」と名乗り出てくれた方が数名いて、その現地メンバー主導でルワンダにてBlockchain EXEを定期開催する準備を進めている。

また、ワークショップ期間中の夜、登壇者の方々を中心とした会食の場が設けられたのだが、その際に話した「現地にコミュニティを作りたい」という意見に全員が同意。早速その内の1名が主催となり、ワークショップの翌週である8月23日に現地のコワーキングスペースでブロックチェーンのミートアップが開催された。

真の目的は「想定以上のペースで」無事に果たせたようだ。

現地の政府関係者、大学教授などにも「現地でのフィジカルなコミュニティ作りは重要だ」と、とても前向きに捉えて頂き、こちらも既に次のステップへ向けたやり取りが始まっている。

新しいことをどんどん受け入れる積極性、勤勉な国民性、そしてスピード感にはただただ驚かされる。近代化がめまぐるしいルワンダ。ここからの数年で利便性が更に格段に高まっていくことは間違いないだろう。

手前味噌だが、このタイミングで、ルワンダでブロックチェーンのワークショップを開催した意義はとても大きいと思う。

平手氏の思いつきによって「たった5日間のワークショップで、アフリカのルワンダに、ブロックチェーンコミュニティを作った」という素晴らしい結果を得られた。

先の展開として、コミュニティを通して知見共有→ラボを作って開発力を強化→実際にプロジェクトをルワンダで進めるといった流れを考えている。

それらが実現できるよう、引き続き良い関係性を築き、ルワンダ、延いてはアフリカ発展の一助となれるように動いていければと思う。

写真はルワンダ大学で毎日食べていたランチ。ビュッフェ形式なので、気になるものを次々選ぶとあっという間にてんこ盛り。思い出深い一皿だ。

この記事を書いた人
鈴木祥文 / 株式会社クーガー
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