新たな経済圏の衝撃!~ブロックチェーンによって立ち上がり始めた Web3の実現やトークンエコノミーを支える技術とは~ | Blockchain EXE #17
ブロックチェーン関連分野における技術共有、発展、応用に重きをおいたMeetupイベント、第17回のBlockchainEXEが2019年6月12日に都内で開催されました。このイベントのレポートをお届けします。
テーマは「Web3とトークンエコノミー」について
伊藤 佑介 Ito Yusuke|博報堂ブロックチェーン・イニシアティブ 2008年にシステムインテグレーション企業を退職後、博報堂にて営業としてデジタルマーケティングを担当。 2013年からは博報堂DYホールディングスに出向し、マーケティング・テクノロジー・センターにて、デジタルマーケティング領域のシステムの開発~運用に従事。 2016年から広告・マーケティング・コミュニケーション領域のブロックチェーン活用の研究に取り組み、2018年9月より博報堂ブロックチェーン・イニシアティブとして活動を開始。その後、次々とマーケティング・コミュニケーション領域のブロックチェーンサービスを開発し、2018年11月5日にトークンコミュニティ解析サービス「トークンコミュニティ・アナライザー」、2019年1月31日に生活者参加型プロモーションサービス「CollectableAD」、2019年2月6日にデジタルアセットリアルタイム配布メディアサービス「TokenCastMedia」をリリース。現在は、さまざまなブロックチェーンベンチャーとコラボレーションしてブロックチェーンの社会実装に取り組んでいる。 |
オープニングを務めた博報堂ブロックチェーン・イニシアティブの伊藤佑介氏は、スマートシティとトークンエコノミーを掛け合わせた”クリプトシティ”の構想について話しました。
博報堂ブロックチェーン・イニシアティブの伊藤氏
ライゾマティクス社と共同で街の建築情報のデータ化およびオープン化をブロックチェーンを活用しながら進めています。#bcexe pic.twitter.com/dzdtsVMeXO
— Blockchain EXE (@BlockchainEXE) 2019年6月12日
「ブロックチェーンとサーバレスのおいしい関係」石井壮太|株式会社ALIS CTO
石井 壮太 Souta Ishii|株式会社ALIS ALISファウンダー CTO。業界歴13年超のエンジニア。新技術や未経験の業務を好み、役割や技術を問わず意識的にゼネラリストを指向。 暗号通貨、ブロックチェーンの技術動向は2013年より追っておりWEBの「次」を作る中核技術であると確信している。 その流れを推し進めることに強い関心があり、安・水澤と共にALISをスタートした。 |
ALISの石井壮太氏は技術的な話を軸に、非中央集権化によって運用管理が面倒なサーバーをなくすサーバーレス構想を披露されました。イーサリアムを選んだ理由、セキュリティやコスト面でのメリットや肌感、サーバレスブロックチェーンの現状などについて語りました。
"実際にブロックチェーンを使っているとRDBでお金を扱う時代は終わったと感じている"#bcexe #ブロックチェーン pic.twitter.com/YOAzrEsvAR
— Blockchain EXE (@BlockchainEXE) 2019年6月12日
Q 既に動いているシステムをサーバーレスに移行することは現実解になるのか?
A かなりアーキテクチャを変える必要があるので、かなり大変になると思う。サーバーレスにすることで楽ができるところをピンポイントで変えるのがいいと思う
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「ブロックチェーンとサーバレスのおいしい関係」#bcexe— Blockchain EXE (@BlockchainEXE) 2019年6月12日
「Gaudiyに関するブロックチェーン技術とUXと戦略」後藤卓哉|株式会社Gaudiy 共同代表
後藤卓哉 Takuya Gotoh|株式会社Gaudiy 共同代表 1995年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、デザインスクールにて、人工知能や先端テクノロジーを使った新しいサービスデザインについて実践する傍ら、AI系スタートアップへ創業メンバーとして参画する。2018年、現共同代表の石川らと株式会社Gaudiyを創業。 Gaudiyでは、経済学的な知見をもとにエンジニアとして、トークン設計や、ブロックチェーンの実装などプロダクトの仕様策定から開発全般までを行う。 |
”イノベーションの民主化”を目指し、ユーザーの活動に応じてトークンを分配するGaudiyの後藤卓哉 氏。Zilliqa(ジリカ)の採用や、多くの企業がブロックチェーンを断念する理由の分析、Dapps(自律分散型アプリケーション)の価値、UXとしての自立分散性、報酬設計とインセンティブ、トークンの価値のつけ方など多岐にわたる内容でした。
自己決定理論と内発的動機からみるインセンティブ設計のためのUXとDEXの関係
・自律性
・有能感
・関係性
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「Gaudiyに関するブロックチェーン技術とUXと戦略」 後藤卓哉|株式会社Gaudiy 共同代表#bcexe #ブロックチェーン pic.twitter.com/kQZ4T4m9Td— Blockchain EXE (@BlockchainEXE) 2019年6月12日
「My Crypto Heroes エコシステムを支える技術」上野広伸|double jump.tokyo株式会社 CEO
上野 広伸 Hironobu Ueno|double jump.tokyo株式会社 株式会社野村総合研究所にて数々の金融システムの基盤構築に参画。 前職の株式会社モブキャストにて執行役員、 技術フェローを歴任し、 プラットフォーム及びゲームサーバーの設計・開発、 スマートフォンゲームの開発基盤の構築を指揮。 |
”ゲームにかけた時間が資産になる”世界一のブロックチェーンゲーム「My Crypto Heroes」を手がけたdouble jump.tokyo株式会社の上野広伸氏。MMORPGとの違いや、オフチェーンプロトコル、開発の苦労話、インフラコスト、マイクロサービスなどについて語り、ゲームアセットの自由な流通によってブロックチェーンが熱狂を生み出し始めていると力説されました。
ブロックチェーンを使ったゲームを作るのはかなり大変
一方Dappsはユーザーの自由な発想や熱狂を生み出しやすいというのを感じた
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「My Crypto Heroes エコシステムを支える技術」 上野 広伸|double jump. tokyo#bcexe #ブロッックチェーン pic.twitter.com/5Pe0JPqG9f— Blockchain EXE (@BlockchainEXE) 2019年6月12日
ディスカッション「ブロックチェーンによって立ち上がり始めた Web3の実現やトークンエコノミーを支える技術とは」
講演終了後、エンジニアの人材不足やWeb3の本質などのテーマについて、登壇者四名によるディスカッションが行われました。(以下、敬称略)
伊藤(司会):基礎的な質問ですがブロックチェーンエンジニアが少ない中で、採用とか、集めるのが大変とか、チームを率いているエンジニアとしてそれぞれ苦労されていることは?
上野:正直、エンジニアはそんなに集めにくくない。おそらくBlockchain EXEみたいなカンファレンスも同じと思うが、こういう勉強会はビジネス層とかエンジニア層しかいない。「仮想通貨で儲けまっせ」みたいなお金にまつわるカンファレンスとか技術エンジニアはいるけど、ゲームに関してはプランナー(企画する人)がいない。企画するための勉強会がなくて、そこが一番課題。
後藤:採用はそんなに難しくない。語弊はあるが、ブロックチェーンよりもっと普通のエンジニアがいない。スマートコントラクト設計でのデータの保存・処理とか、一般的なエンジニアリングができればそんなにキャッチアップは難しくない。
石井:僕も同じで、基本的に基礎技術の考え方はわりと通用する部分があって、かつ興味と熱意があって、採用のイメージはあまりなく、熱意があれば出来る。もちろん独特の部分はあるが、そこがそんなにハードルにはならない。どちらかというとまだまだ怪しさとか、「ブロックチェーンどこいくんだ?」みたいな、そういうそもそもの分かりにくさが人がいない原因。増えてきてはいる。
伊藤:ときどき「イーサじゃなくて〇〇だ!」という横文字のいろんなプラットホームの方に会う。フラットな気持ちで聞くと「イーサリアムあるならそれでいいじゃないか」と思ったりもする。けれど、プラットホーム作っている人は足りない所を解決するとか、今のプラットホームに固執せず、作りやすいとかセキュリティとか、分散を上手く実現できるかどうか(が大事に見える)。新しいものがイーサに取って代わるかどうか?
石井:イーサしか信じないわけではなく、むしろいろんなものが繋がるだろう。相互運用性がより強くなるだろう。実際にそうなりつつあり、用途かなと。イーサは(コストが)高いのでもっと別のがあっていいし、柔軟にやればいいのでは。
後藤:基本的に新しいプロトコルは話題になるが、今話題のものがすぐ実用的になるのはほぼあり得ない。機械学習やAIも技術に興味ある人が話題にして、その後2、3年経ってからようやくまともに使えるくらい。だから今新しくプラットホームとか、もっと性能良いのが出て、それにキャッチアップする必要は全然ない。後で実用化したらいい。どっちにしろ価値あるプロトコルができたら全部繋がるはずで、今どこを選ぶかは正直関係ない。
上野:ブロックチェーン自体に興味があって始めたので、最終的には自分でブロックチェーンを作りたい。この方がビジネスとしてどう、とかじゃない。単純にエンジニアとして「面白いじゃん!」としか。プライベート、パブリックとかは後付け。それまではイーサリアムに乗っかろう、くらいの発想でいる。
質疑応答
質問①:Web3は定義が定まっていない。ざっくりWeb3がどんなものかそれぞれ伺いたい。それから、Web3を標榜するプロジェクトの中でデータベース、ファイルシェアポイント、データ格納などの機能をブロックチェーンで実現して他にマイクロサービス的に提供するものをWeb3の概念に含めるかどうか?
上野:マイクロサービスはビジネス的に成立するかという視点が重要。それ一個では成り立たないが、ブロックチェーンにインセンティブをすごく細かく配れる仕組みで、単体でもビジネスで成立する可能性がある。
マイクロサービスがずらっと並ぶ世界が現れるとしたら?今でもGoogleとかAmazonとかグローバル企業がすごい資本力とシステムをかけていて、それはそれで便利。ただ自社で全てのサービスを作るのが最適でも高速でもない。図体でかいので。
Web3の可能性は、それぞれのマイクロサービスがそれぞれの最適解を見つけ、同時進行型で最終的にどれだけ巨大なサービスになるかわからないが、皆が切磋琢磨してどんどん良くしていくこと。大資本のグローバル企業に最終的に勝つ源泉になる、その動きこそがWeb3。
後藤:簡潔に言うと、Web3自体はステートの共有、価値のあるアセット発行、それらの権利や技術。既存のものと置き換える話は、使い道次第。将来は分散的でWeb3的な、全てのネットワークが繋がるという話になる。直近で大きいのは、自律分散的なものの導入によってユーザーの満足度が非常に高くなること。プロダクト同士連携したり、おそらくゲームやSNSが出てくるが、新しいDappsが興味を持って連携していく。この連携が進むときにアセットなり、共通の仕組みを使うことでいわゆるWeb3的な世界観が来るのでは。
石井:核になるのは非中央集権化。サイトでユーザー登録や住所やクレジットカード情報を入力するのは無駄。食べログでレビューを1000回やっても、Rettyでは価値を転用できない。レピュテーションや情報は全てユーザーに帰するものにしたい。友人の情報もFacebookではなく自分のものなので、フォローしなくても勝手に繋がっている方が便利だし、そうあるべき。その方向がWeb3で、将来は今より良いUXになるだろう。
質問②:Web3では全てのデータがユーザーの手元に戻るというが、今の世の中で広告はなるべくユーザーにお金を払わせずに多くの人にサービスを届ける役割を果たしている。”より良いサービスを供給する”企業のインセンティブは今後どこから生まれる?
石井:今はそんなに意識せずにデータを取っている。一つの案として、価値があるものに料金を支払うようになるともっとディープなデータが取れる。友人関係もゼロイチでなくて、この人はどういう人でどういう感じで、というのにきっちり対価を取る。広告自体も変わっていて、今はテレビのCMとかも全然効かなくなっている。違う形の広告が必要では。
後藤:(ご質問の)前提として今の広告は無料で、トークンを使うと価値を還元しなければならないという主旨ですか?
質問②:ちょっと違う。AirDrop的なことではなく、企業がより良いサービスをより多くの人に知ってもらうというインセンティブが広告収入源に依拠している状況をWeb3が壊すとき、事業者が世界を良くしようとするメリットが生まれるのか、見失うのではないか。
後藤:それはすごく簡単な話。既存の広告よりWeb3的なものを使うほうが収益が上がるから。今、世界に一番人気のアプリはAdBlock。企業がそもそもFacebookにお金を払って広告を出している。トークンをユーザーに配る場合、基本的にお金を払わない。なぜかというと、元手がなくても経済インセンティブを与えられるから。Facebookが仮にトークン発行したら、現金を殆ど使わずに価値ある通貨を生み出せる。これを代わりにユーザーに配れば元手なしで熱狂が高まり、どう考えてもお金を払って広告を出すより良い。実際の効果によってWeb3的なものが広がる。
上野:広告は無くならない。今のWebは広告でしか稼げないからそれが減るだけ。お金を稼ぐ仕組みが確立されていないインターネットの中では一番やりやすかった。ドットコムバブルの頃から視聴率ビジネスだと。とりあえずユーザーを確保して、広告やれば儲かるだろうみたいな。これまで広告一点集中というか偏っていたが、(Web3は)いろんなビジネスモデルが成立する世界になるのでは。
マイクロビジネスとオープンサービスという言葉を考えている。マイクロサービスで成立するマイクロビジネスがいっぱい出来る。オープンサービスはオープンソースのことで、イーサリアムはまさにそのもの。今後はこの2つがキーワードになる。
伊藤:御三方、ありがとうございました。
まとめ
ユーザーのデータを企業が独占的に保有することはメリットとデメリットの両面があります。今後、ブロックチェーン技術が一般社会に浸透していく事で、次なるデータ・ドリブン社会が達成することができるかもしれません。