【世界最前線!】スケーリング、スピード、セキュリティの技術的課題や失敗を語る | Blockchain EXE#21

Blockchain EXE#21は、外部企業とのブロックチェーンプロジェクトに従事してきた事業家と共に「ブロックチェーンプロジェクトを成功に導く秘訣」あるいは「失敗するプロジェクトはこんな壁に直面する」などのリアルな情報に迫ります。

モデレーターにBlockchain EXE代表の石井氏が加わり、実例を交えながら様々な議論が行われました。

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PoCは上手くいかない

石井 敦 | クーガー CEO
IBMを経て、楽天やインフォシークの大規模検索エンジン開発、日米韓を横断したオンラインゲーム開発プロジェクトの統括、Amazon Robotics Challenge参加チームへの技術支援や共同開発、ホンダへのAIラーニングシミュレーター提供、「NEDO次世代AIプロジェクト」でのクラウドロボティクス開発統括などを務める。2017年に開始したブロックチェーン技術コミュニティ「Blockchain EXE」の代表を務め、世界10都市以上でイベントを開催。これまでにのべ3,000人以上が参加する国内最大規模のブロックチェーンコミュニティを主催している。現在、「AIxARxブロックチェーン」によるテクノロジー「Connectome」の開発を進めている。2018年、スタンフォード大学にて特別講義を実施。電気通信大学 客員研究員。

石井:当初の想定とは異なる問題でプロジェクトがうまくいかなかった経験や、その原因をお伺いしたいと思います。

日崎:Tezosを広げるために日本の企業を回った際に、パブリックではなくて、コンソーシアムのみを想定している企業が意外と多かったというのが、今年1年やってみての感想です。そこには、レギュレーションなどいろいろな問題があると思うのですが、各社が最後に必ずおっしゃるのは、「いずれパブリックの時代が来るとは思うけれども、それを見据えた上で今はコンソーシアムをしている」ということです。そういう意味で、コンソーシアムからパブリックに切り替えるところだけ、セッティングコストがかからなければいいのかなと思います。

真木:「ブロックチェーンって何となくよさそう」という曖昧な理由でブロックチェーンを始めてしまうと失敗するケースが多いと思います。自分がそのプロジェクトを始める時点でやる意義を感じていたのかというところと、失敗することは前提で、やる意義を考えていたのかというところが成功するか失敗するかの分かれ目かなと思います。

片岡:皆さんも経験されているかもしれませんが、PoCから入ったプロジェクトは大体うまく行きませんでした。結局、PoCは危機感が薄くなりやすいです。やれたらやりたいけど、やらなければいけないではない。大事なのは、意思決定者やプロジェクトリーダーが、PoCではなくて事業化すると腹を決めることです。そのためには手段を選ばない。何を使ってでもやろうと腹を決めることが肝心です。

ブロックチェーン単体でのビジネスは難しい

石井:エンドユーザーへの利便性とブロックチェーンの強みのバランスをどのように取っていけばいいでしょうか。

日崎:Cryptoの熱狂は過ぎてしまいましたが、ブロックチェーンに対するエンドユーザー側の理解が深まれば、今後実装はどんどん進んでいくと思います。

真木:ブロックチェーンの利便性やユーザビリティは、今後ますます上がっていくと思っています。だからといって、ブロックチェーンが浸透するとは思いません。私たちに必要なのは、ブロックチェーン技術が便利になることと、コンテンツホルダーやコンテンツをつくる人たちが巻き込まれたいと思うようなスキーマづくり、そしてスキーマを支えるのに必要なところにブロックチェーンを使うことだと捉えています。

片岡:私もブロックチェーン単体でビジネスが成り立つことは難しく、何らかの産業とブロックチェーンをかけ合わせて価値を作る企業が増えていくと考えています。既存の事例ではSSLやhttpsです。SSLがあるからクレジットカードの番号を安全に送ることができます。ブロックチェーンが入っているから、某ペイメントのようにハッキングされません。ブロックチェーンが、ユーザー側もつくっている側も安心できるような裏側の技術として親しまれるようにならなければいけないなと思います。

ブロックチェーンプロジェクトでの良い失敗

質問者A:いい失敗と悪い失敗があったと思いますが、いい失敗の例があれば教えていただきたいです。

真木:自社プロダクトで、ほとんどブロックチェーンを使わなかったのに、仕組みが分散的になったり、スキーマができたりして、発想がきわめてブロックチェーン的なものになりました。それはブロックチェーンのプロジェクトとしては失敗になるかもしれませんが、ブロックチェーンを通して、現行の法律ではうまくいかない部分を分散的にすることによって成立させる仕組みを着想できたので、とても機会になりました。

ブロックチェーンがもたらすビジネス変化とは

質問者B:インターネットのインフラをブロックチェーンで置き換えられるぐらいまでに成熟したとき、ビジネスはどのように変わりますか。

石井:ブロックチェーンは、デジタル化されてしまえば、その中で価値が保証されますが、ブロックチェーンの外に出るとかなり弱いです。そうすると、デジタル化できるものは相当ブロックチェーンで非中央集権化できると思いますが、例えば、ウーバーイーツのように人間が直接介在するサービスはなかなかデジタル化できないので、中間業者のような役割は必要であり続けると思います。

日崎:スマートコントラクトでできるビジネスというと、今まで情報が届いていなかった人に届くようになるというメリットが大きいです。今までは企業が基盤の信頼性が高かったので、この企業であれば安心だからというかたちで契約が成り立っていました。しかし、スマートコントラクトであれば、その文書に従ってさえいれば個人でも大企業と契約ができてしまうかもしれません。そのような入り口が増えたという認識をもつ必要があると思います。

技術の応用範囲と価格

真木:ブロックチェーンが浸透していき、もっといい世界ができたら、いろいろなフェーズ毎に分かれていくのかなと思うのですが、そのうちそういうシステムが要らなくなり、全部がいい感じに回ってくると、毎日本を読んだりダンスを踊ったり、好きなことをして楽しく過ごすことができるようになると思っています。結局は、その時代の中で、個人としてどのように生きていくかという話になってくるので、自分が好きなことを楽しんで生きていける人になっていければいいかなと思います。ですが、それはまだかなり先の話で、時代の転換点にそんなに早く人が対応できるとは思っていません。ブロックチェーンのシステムが要らなくなったときに、自分のできる範囲がより広がると思うので、それをビジネスチャンスにし、新しいテクノロジーをつくっていくと考えると、将来を心配しなくて済むのかなと考えています。

片岡:オープンソースの視点でお話しさせていただくと、例えば、イノベーターがいろいろな企業に属していたり個人で活動していたりしても、皆が保持したい、メンテナンスしたいからオープンソースに参加するので、オープンソースはメンテナンスされていきます。逆に言うと、皆が保持したくない、例えば、その業界のスペシフィックなものや、その業界のその場面でしか使わないカスタマイズされたものとかは価値が下がらない。皆の共有財産は値段が安くなっていくし、下手をしたらオープンソースで全て公開されるかもしれませんが、その人のためだけ、その企業のためだけ、その業界のためだけのものというのは、値段は下がっていかないのではないかなと思っています。

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