持続可能社会の実現に迫る!SDGs達成にむけたブロックチェーン活用のチャレンジ!!|Blockchain EXE #20

Blockchain EXE#20は、ブロックチェーンが、SDGsで掲げられた目標である持続可能社会の実現をいかに後押しすることができるのか、各領域で活動する事業家と共に、その実態と今後の展望について迫りました。

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トークンエコノミーにおけるブロックチェーンとトークンの使い分け。個人の信頼を可視化を設計するか – 小林 慎和|株式会社bajji

小林 慎和 | 株式会社bajji ファウンダー兼CEO、ビジネス・ブレークスルー大学 准教授
野村総研、グリーを経てシンガポールにて独立。以来国内外で7社起業。現在のbajjiはブロックチェーンで2社目の起業となる。これまで2社のイグジット経験があり、事業のミッションは一貫して社会変革イノベーターの創出。bajjiでも100万人のイノベーターを創出するべく日々事業を推進中。映画監督が本業(自称)。

小林:こんばんは。私、小林といいまして、株式会社bajjiのCEOをしております。他に、大前研一さんがいらっしゃるビジネス・ブレークスルー大学で2017年からブロックチェーンを教えています。

私はこれまでアジアで5社、東京で2社創業しておりまして、東京で創業したのは両方ともブロックチェーンの会社です。1社目は仮想通貨取引所系の会社で、今やっている2社目はテック系の会社です。今日は、その2つの会社を創ってきた中で得た知見、具体的には、何を大切にしてどう創ったのかというところをみなさんとシェアできたらと思っております。

こういった話でよくあるのが、ブロックチェーンを使う意義です。まずは、bajjiというサービスがどのようなものなのかということを理解していただいてから、仮想通貨やブロックチェーンをどのように使っていくのかをご説明したいと思います。

コミュニティの信頼の繋がりを可視化

bajjiはイノベーターのためのSNSです。イノベーターとは、大なり小なり世の中のためにいろいろなことをしている人全てがイノベーターだと思っていて、ここにいるみなさんも全員イノベーターです。なぜなら、心の中で何か少しでも良いことをしたいと考えているからです。そういうみなさんのような方をターゲットとしたSNSです。なぜこのようなサービスを作ろうと思ったかというと、その原体験はこれまでの創業ストーリーと重なる部分がありますので、最初にご説明したいと思います。

今から10年前、私はインドのハリアナにいました。インドの人口10億人のうち4億人は無電化の家に住んでいます。そこで私はソーラーランタンを一日6円で貸し出すソーシャルビジネスを手伝っていました。ある日、無電化の村に一晩泊めさせてもらい、翌朝に村長さんの奥様からカレーやナンをふるまっていただきました。朝食後に村を散策していると、4人のお孫さんを連れたおじいさんに呼び止められて、「Japan,great!」と言われました。そのとき、このような無電化の村にも、Japan,greatと言ってくれるおじいさんがいるのだ、私たちの先輩方は本当にすごいと思うと同時に、現在の日本は少子高齢化が進み非常に厳しい状況なので、これから社会を変革できる人材やグローバル人材をもっと増やさなければと強く思いました。

Twitterでのダイレクトメッセージ

2010年、私はTwitterにハマりました。Twitterがまだ出始めのころです。当時、Twitterで何をしていたかというと、出張で海外に行くときに、グローバルに働いている日本人と会って話がしたいと思い、現地に住んでいる日本人をTwitterで20人ぐらい探して、「来週、出張でアムステルダムに行くので、会えませんか?」というようなダイレクトメールを送っていました。案の定、ほとんどは無視されましたが、その中で返信してくださった建築家の方がいました。彼女は、アムステルダムでSDGsな建築をして、起業し、地域に根ざした取り組みを行っています。

パリへの出張のときにも同じようにダイレクトメールを送り、2、3人から返信があったうち、日程が合ったのが鈴木さんという方でした。彼は当時26歳で、スタンフォード大学のデザインラボを立ち上げるためにパリに来たと言っていました。彼の何がすごいかというと、10歳からたった一人でハワイに留学し、15歳でサンフランシスコに留学して、スタンフォード大学に合格し、初めての就職先がなぜかパリだったのです。彼は京都出身で、現在は京都に戻っていますが、こんなイノベーターに当時いとも容易く会えたのです。とてもびっくりしました。

彼らに刺激を受けて、2012年に最初に起業した1社目は、Blockchain EXEさんのような「CHAOS ASIA」というイベントなどのコミュニティ事業をアジア5都市で2年ぐらいかけて行いました。その後、ECサイトを作ったり、バリ島でコワーキングスペースを作ったりしました。バリは、いろんなデザイナーでちょっと世の中から外れた面白い人たちが集まっていて、その人たちがサーフラインをする場所を作ったりしました。あとは、シンガポールで飲食店をしたり、ジャカルタで不動産業をしたりして、4年ぐらい前まで海外で事業をしていました。

人との出会いや関係を見える化したいと思った

そうすると、シンガポールで小林っていう面白いことをしている人間がいるらしいっていう話が日本に伝わって、毎週のように「ヒアリングしたいのですが」という連絡が来るようになりました。結局、実際に会ったのが数百回か数千回か数えたことがないのでわからないのですが、1年間で約50社から連絡が来ました。これらは大体が大企業で、物見遊山出張で東京に来て、現地に精通している人に話を聞き、ヒアリングをしてこんなに勉強になりましたという、たったそれだけの出張に、私はこんなに多くの時間を費やしました。しかし、2、3時間コーヒーを飲みながら話をすると、心が洗われて力がみなぎってきましたと言ってくださる相談者がいるのですが、私はそのような方の笑顔にものすごく力を与えられているのです。そのほんの1、2時間、私たちが出会った時間というのは、世界のため、SDGsのためにとても貢献しているのですが、その回数や時間は、実はどこにも計られていないし、データが残っていないのです。それはとても悲しいなと思いました。

他には、若者が「小林さん、海外で起業したリアルな話を聞かせてください」と、どんどん取材に来るのです。最近の若者は、そういうのをTwitterやFacebookやブログで見つけて、どんどん来ます。春休みも夏休みも卒業旅行でもどんどん来ます。何百人と会いに来て、今彼らはこんなにいろいろな国で私に感化されて、というかそそのかされて、起業しています。失敗して日本に帰って来た人もいますが、これは私にとって財産なのです。

仮想通貨事件の煽りを受け

そこから日本に帰り、ラストルーツという会社を2016年に立ち上げました。みなさんもご存じの通り、この2、3年、仮想通貨もいろいろな事件がありました。ラストルーツという会社は、3年前にICOを行い、そのコインをリリースし、上場して、日本で取引され、100億円以上の売買があり、何万人という方が保有して、SBIから合計12億円を調達しました。その裏側で、2016年の9月には仮想通貨に関していろいろな規制ができてきて、2017年には海外で詐欺事件が横行し、その煽りを受けました。そこから立て続けに3件で合計600億円の流出事件があって、かなり厳しい状況を乗り越えながら、どうにか最後までまとめきりました。しかし、それでも批判はありました。例えば、会社の体制強化で人数が2年間で一気に65人にまで増えたため、オフィスを引っ越さなければならなくなったのですが、どこもオフィスを貸してくれないのです。私に限らず、世の中には人生の経験値や貢献の度合いが見えにくい人も相当数いて、けれども光るものをもっている人が世界中にいます。そういう人たちのがんばりの蓄積を可視化することができないだろうかとずっと思っていました。

ブロックチェーンで名刺をアップデートしたい

そして7社目、bajjiというのは、例えば、名刺は名前と住所と電話番号とメールアドレスしか書かれていないので、その人の中身が見えないですよね。しかもこれは100年間進化のないテクノロジーです。名刺を見せたら、その人の歴史や経験値、他人からの信頼の積み重ねが透けて見えるような、そんなものができないだろうか。そこにこそブロックチェーンを使う意義があるのではないかと思いました。

今こういうものがあります。こういうもので代用できませんかという意見もあるですが、確かによりつながりやすくなったものの、これでは先ほどご紹介した鈴木さんのようなイノベーターを見つけられないのです。なぜこのような事態が起こっているのかというと、3つ理由があります。1つ目は、無料無制限だからです。1日に100回でも1000回でもラインできますし、フォローもできる。自由自在です。2つ目、不確かすぎるからです。これは弊社のCEOの浜田ですが、共通の友達が52人います。52人の共通の友達が出てきた中で、浜田の親友もいれば、浜田が忘れ去った人も残念ながらいますし、実は浜田が会っていない人も入っていたりするのです。不確かなのです。3つ目は、これは私が書いているのですが、全部自己主張ですよね。第三者の評価でもかなり読まれるわけです。だから、この人の歴史、経験値、他人からの信頼というものをブロックチェーンで可視化できないかというのを研究してきました。

可視化するためのパラメーターが3つあります。まずbajjiという名前は、胸につけるバッジから来ていまして、名刺を作り変えたいという思いが込められています。また、無料無制限に対するアンチテーゼとして有料有限にしています。そうすることによって、むやみやたらに贈れないようにしています。そして、エンカウント。この場所のことです。3回のタップで、ウーバーイーツがマクドナルドを持って来る時代ですが、リアルという出会いを刻むことで、私たちが確かに出会い、いい話をして、お互いに活力を得たということをブロックチェーンに刻もうじゃないかということです。つまり、人の活動量ですね。親指タップで何でもできる時代になったからこそ、こうやってわざわざ足を運ぶ時間の意味が増すと思うのです。

では、実際のbajjiはどのようなものか。このようなbajjiですね。これをブロックチェーンとトークンで作っています。これを見るだけで、ジョブズみたいな人だなとか、世界中のどこでも生きていけるような人だなとか、よく鍛えていて強い人ですねとか、あなたみたいな天才的な数学者もいないよねとかいうことが一目でわかります。私が海外にいたときに訪ねてきた若者の中に、将来、ソフトバンクの孫さんのような人物になって、そうなるきっかけを与えたのがbajjiでしたという風になれば、私は個人的にとてもうれしいです。

3つのパラメーターを数学のブラック理論で計算し、人生経験を経験値として数値化していきます。出会ったことが事実かどうか、あの人が私にこんな感情をくれたかどうかというデータは、ブロックチェーンに保存されているので、フェアな状態なのです。今、アメリカではデジタル権というのが問題になっていて、Facebookにポストしたデータの権利はFacebookが持っていて、我々は持っていません。それを引き出したくても引き出せません。Facebookが勝手に改ざんする可能性もあるので、非常に問題になっています。おそらく、これは18個目のSDGsになります。それに対して、ブロックチェーンに情報を刻み込むのはフェアな状態になります。弊社bajjiのトップ画面を見ると、このような形でいろいろな人からどのようなbajjiをもらってきた人なのかということが一目でわかりますし、これはどうしてもらったのですかという会話の糸口にもなります。その人の深いところを知るまでに何週間、何か月間かかっていたものを、わずか1回の対面で引き出せるかもしれない。そういうものを作りたいと思っています。

これをWeb上でデジタルコンテンツとして売っています。このようにエンカウントしたりbajjiを贈り合ったりすると、どんどん経験値が溜まって、スコアが上がっていきます。スコアが高い人は、多くの人に出会って、影響を与え、賞賛されている人なのです。つまり、会社の給料以外に、世界のために行動している人なのです。その人たちに我々のbajjiの売り上げの一部をリワードとして還元していく、これがブロックチェーンのインセンティブ設計であり、自ら行動するみなさんのような方がターゲットです。私たちはSDGsについて、イノベーターとの出会いを加速させることで、SDGsの問題解決を加速させたいと思っています。人生の経験値を可視化する新しいサービスを、ブロックチェーンを使って開発しようと思ったのは、創業1社目のときに仮想通貨のブロックチェーンを作った経験があったからこそで、今どのようにしたらブロックチェーンを最も生かせるのかということを、私が誰よりもわかっていると思ったからです。

ブロックチェーンと仮想通貨の使い分けについて

次に、ブロックチェーンと仮想通貨の使い分けという話ですが、私がbajjiの前に創ったラストルーツという会社は、ブロックチェーンを動画広告に応用しようとしていました。広告主が動画広告を配信して、最後まで見た人にお礼としてコインを配るというシステムで、コインは広告主の広告費です。それを直接配ります。視聴者は動画で毎日新しい情報を手に入れて、少しずつお小遣いを稼いでいき、金曜日の夜にはビール1杯をタダで飲めるぐらいのコインがもらえる。これは無駄がない広告費です。しかし、途中で規制ができ、これができなくなってしまいました。

プラットフォームを提供する私たちにとっては、動画が多く見られれば見られるほど売り上げが上がるわけですので、視聴者にできるだけ多く見てもらいたい。そして、広告主は動画広告が本当に見られたかを知りたい。そこで、ブロックチェーンのトランザクションを通して視聴者にコインを付与する形にすると、この三者とは関係のないところで、中立的で、かつ効率的に動画の視聴回数を把握することができます。しかし、途中でKYCの件でできなくなってしまいました。パブリックブロックチェーンを使うとさらにいろいろなしがらみがあります。例えば、スケーラビリティでいろいろな人が使うので、サービスで使おうとすると詰まったりしますし、マイナーがハードコークするとブロックチェーンが勝手にアップデートされてしまい、サービスが予期せぬアップデートをせざるを得なくなります。ユーザーはもっと面白いサービスを提供してほしいと思っていますし、コインのホルダーはコインをもっと発展させてほしいと思っています。この2つは利害が対立していますので、やはり仮想通貨が絡むと難しいのです。

規制の中でのトークン活用

その点、bajjiは仮想通貨もトークンも使っていません。ではどうするのかというと、bajjiを贈るという行動をトランザクションに刻むのです。さらに、bajjiはデジタルコンテンツですので、それをポイントで買います。これを180日で失効するようにすれば、規制の対象外になります。ポイントで買ったものを贈るということは、トークンやトランザクションには関係がないのです。返礼するときは、今度はBRポイントというものを用意して、それも180日失効にすれば仮想通貨交換権は関係がなくなります。このように、いかにブロックチェーンのよさを引き出しながら、規制をケアし、意味のあるサービスを設計できるかというところが今後非常に重要になってくると思います。bajjiの場合は、プライベートのところがパブリックブロックチェーンで、PCベースにカウンターパートを行っています。誰が誰にbajjiを贈ったのかという情報は弊社のデータベースではなくて、ブロックチェーン上のパブリックなところからエクスプローラー経由で見ることができます。

よくアプリを使ったら、インセンティブでコインやトークンがもらえるという話は多いですが、仮想通貨そのものを配ることはできません。それをする際には、KYCや仮想通貨交換権の免許が必要になるからです。また、今話題のPayPayやLINE Payのようなサービスをしようとすると、ポイントの開設資金不足をクリアできません。しかし、180日失効でポイントを付与する形にすれば、ブロックチェーンを使いながらうまい具合にインセンティブを設計することができます。ブロックチェーンの生かし方としては、今お伝えしたように、利害関係が対立するプレイヤーがいる場合に、フェアなデータを扱うのに非常に役立ちます。また、これはブロックチェーンならではのよさですが、マイクロな貢献や活動を可視化するのに非常に役立ちます。インセンティブは、キャッシュレスがポイントという場合でも、規制を考慮しながら組み立てる必要があります。そういった面でも、ブロックチェーンを使う意義があるのが重要なのかなと思います。弊社のさらなるミッションは、このようなbajjiを作って、イノベーターを発掘し、彼らを想定外に出会わせて、このサービスを通じて出会った後のエンゲージメントやコミュニケーションを円滑にすることです。

最後に、浅草橋から徒歩1分で、イノベーターに出会えるコワーキングスペースを持っていますので、ぜひ遊びに来てください。

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