EXEイベント#12 海外遠征を含む最新事情共有 | KDDI 茂谷 保伯

茂谷 保伯 | KDDI ブロックチェーンプロジェクトリード
KDDI コンシューマ事業企画本部 兼 KDDI総合研究所。日立製作所にて管理会計・経営管理に従事後、モバイルサービスのスタートアップを創業。その後LINEにて「LINE Pay」の立ち上げ及び事業戦略・サービス企画を行う。現在はKDDIにて「IoT×AI×ブロックチェーン」関連のプロジェクトを推進している。

先月トロントのEdconというイベントとニューヨークでのConsenSys主催のイベントに出席しました。

日本企業ではパブリックブロックチェーンよりもコンソーシアム型のプライベートブロックチェーンに関するプロジェクトの話をする機会が多いと思います。しかし海外ではパブリックブロックチェーンで展開される分散型アプリケーションの話が中心です。

ConsenSysから多くの非中央集権型アプリが生まれていました

現在、Ethereumを用いて展開されているプロジェクトの多くがパブリックである点から、世界の潮流は非中央集権に重きをおいたブロックチェーンであるということがわかりました。ConsenSysで進められているサービスをいくつか紹介していただきました。

EXEイベント#12 海外遠征を含む最新事情共有 | ConsenSys Jim Maricondo

ジム・マリコンド|ConsenSys
スタンフォード大学のコンピュータサイエンス部門卒業。ソフトウェアエンジニアとして東京で9年間生活。帰国後、サンフランシスコを拠点とするISIDのイノラボにて、新技術のソーシング、トレンド調査、現地のR&Dプロジェクトを担当。 日本、新技術、ブロックチェーンに対する情熱を結集し、2018年、日本市場参入と東京オフィスの計画のためにConsenSysにジョイン

ConsenSysとは?

ConsenSysの使命は、 Ethereumワールドコンピューターを使って、発展途上国でも先進国でも誰もが自由に使える新しい分散型のアプリを開発できるようにすることです。そのために様々なユースケースを作り、それらのプロジェクトをスピンアウトしていく予定です。

また企業向けのエンタープライズの立場から、それぞれのグループが、AIやエネルギーや認知症などをテーマに、他社と協力しながら、どのようにブロックチェーンを活用していくかディスカッションをしています。それらを通じて、各業界のブロックチェーン活用事例やベストプラクティスを定義しています。

現在は900人を超えるメンバーが世界各地で分散的に働いています。Infrastructure,Products/startup studio,Solutions,Education,Capitalの5つの部署があります。またブロックチェーンファンドも持っており、150億円の資金でベンチャー投資もしています。

分散型組織として成功しているConsenSysの凄さがわかりました

世界で最もブロックチェーンコミュニティの運営が成功しているとも言えるConsenSysがどのようにして、数多くの企業のエコシステムを構築し、運営しているのかが詳しく理解できる時間となりました。

EXEイベント#12 AI学習履歴に関するブロックチェーン活用 | 石黒 一明

石黒 一明 |クーガー リードブロックチェーンエンジニア
高校卒業後、映画監督を目指してロサンゼルスへ留学。大学へ通いながらLAのクラブやバーでDJを始め、ハリウッドのクラブでレギュラーDJとして本格的に活動。DJ活動の中で音楽・映像用のプログラム言語をライブで使用したのをキッカケにプログラミングを始める。 日本に帰国後、CTI関連のベンチャー企業で技術統括を務める傍ら、ブロックチェーン関連の技術開発を独学する。現在、クーガーにて「Connectome」の開発を進めている。サンフランシスコで開催されたBlockchain EXEでの登壇、Ethereum技術者の世界大会「EDCON」への登壇など、海外でも活動。ドイツ発のブロックチェーン「BigchainDB」のコントリビューターでもある。

増大するデータ

2025年には750億個のIoTデバイスが接続されると統計的に予想されており、2017年に生成されたデータは過去5000年の総データ以上にもなります。そうなると従来のサーバ・クライアント方式ではなくて、クーガー社内ではM2Mコミュニケーションと呼んだりしていますが、Machine同士が自動的にコミュニケーションをとるような時代になっていきます。

データの権利

その莫大なデータは誰が持っているんでしょうか。ここを一回立ちかえってみる必要があるのではないかなと思っています。

さきほど(Gunosy)松本さんの説明にもあったように、現状のAIはデータがすべてです。データが無かったらAIを作るのはかなり難しい、作れるけれども精度の高いものはなかなか作れない、かつ、これだけデータを大企業が保有しているにもかかわらず、99%のデータは使われずにいるというような状況があります。そうすると、これからAI系のスタートアップをやろうと考えている人たちからすると、どこに向かっていいかわからない、かつツールも無い。これがかなり問題なのではないかと多方面から言われています。

「今なんとなくうまくいっているから、別にブロックチェーンと合わせる必要はない」という意見もかなりあるとは思いますが、ここで近年起こった事件を紹介したいと思います。

データ管理のセーフティーネット

Google Homeでは24時間録音を続け、サーバーに音声を転送し続けるバグが発生。さらにその止め方もわからないという事件がありました。Uberでは、自動運転テスト中に歩行者と衝突する死亡事故。Amazonでは、Alexaが突然笑い出したり、Echoがプラーベートな会話を録音して電話帳の友人に勝手に転送するというバグが発生しました。

なぜこのような問題が起きるのか。Web2.0のような問題、これは企業が使えるだけのデータを既に超えてしまっていて、解決策が無いままになってしまっている点が挙げられます。また、データ自身が価値を持ちすぎてしまって、保有企業がその価値を他に売ってしまう事が一つの原因であると思っています。ヨーロッパなどではGoogleを使うのをやめようというような運動がIT系やBlockchain系の人たちの中でわりと多いようです。

クーガーで安全への挑戦を何かできないかと思い、研究を続けていました。AIというのを繙いてみると、3つの要素があります。Toolと Training DataとComputation。これを各レイヤーごとにどうやって安全にやっていくかというのを考えました。

  1. Tool
    オープンソース化によりアルゴリズムを公開する取り組みや、ニューヨークの市議会ではアルゴリズムを公開しなければいけないみたいな、法律的な動きもあります。
  2. Training Data
    学習データ、ブロックチェーンに保存されたデータを公開して機械学習に利用するという動きがあります
  3. Computation
    分散コンピューティング golem,iEsac,Numerai

AIとブロックチェーンの相互作用

AIとブロックチェーンは性質は全く違うが、うまく正しく使えば、陰と陽の関係のようにぴったり使うことができます。まずAIは確率的でブロックチェーンの方は決定的。AIは可変的で、ブロックチェーンは永久的。AIは現実を推論するアルゴリズム、それに対してブロックチェーンは現実を記録するためのアルゴリズムと暗号、という形でやっています。これをうまく利用することはできるのではないでしょうか。

ブロックチェーンベースの機械学習市場については、Web2.0から3.0へのプレーヤーの交代、報酬インセンティブ、プライバシーについてはデータ自体はパブリックなので誰でも見られてしまう。それだとどうしようもないので、準同型記号、セキュアなマルチパーティコンピューテ―ションを使ったり、ゼロ知識証明を使ったり、いろんなプロジェクトが取り組んでいます。

これからのブロックチェーン×AI

データのサイロ化が進んでいて、このままいくともっと悪化します。AIとブロックチェーンを正しく利用することで問題解決の糸口になる可能性が高い。トークンのインセンティブ設計などガバナンスを含めてアプリケーションもしくはAIを作っていくことで、安全にAIと共存していける可能性が高いのではないでしょうか。特にブロックチェーンサイドからのアプローチ方法はまだ確立されていなくて、今後いろんな手法でAIのガバナンスがなされていくのではないかと思っています。ただし悪用がスマートコントラクトで自動化されないように注意が必要です。

技術の得意・不得意領域を見極める重要性を学びました

技術だけでなく組織についても言えることですが、それぞれの得意・不得意領域を知り、補う事が重要であると感じました。

後編

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