AI業界のパイオニアSingularityNETによるAI×ブロックチェーン ワークショップ | Blockchain EXE Code#8

4月4日にBlockchain EXE Code #8が東京で開催され、AIとブロックチェーンを活用したプロジェクトを進めるSingularityNetによるワークショップを開催しました。人工知能ロボット『ソフィア』など、AIの権威として知られている、CEO Dr. Ben Goertzel氏とチームメンバーが来日しました。

SingularityNetは、分散型ブロックチェーンのプロトコルやサービス、エージェントのグローバルネットワークを構築するためのAIアルゴリズムを提供するプロジェクトです。AI技術へのアクセスを民主化し、イノベーションを妨げる大企業のデータ寡占を避けることを目的としています。

目次

分散型AIの実現に取り組むSingularityNET

Dr. Ben Goertzel, PhD
SingularityNETのCEOであり、Hanson Roboticsのチーフサイエンティストです。また人工知能情報学会、OpenCog財団、分散型AIアライアンスおよび非営利団体の未来Humanity+の会長でもあります。Goertzel氏は、人間を超えた全能知能を生み出すことを目的とした、AGI(Artificial General Intelligence)の世界でも有数の権威です。
また、自然言語処理やデータマイニングからロボット工学、ビデオゲーム、国家安全保障、バイオインフォマティクスに至るまで、AIの社会実装を何十年も進めています。さらに20冊の科学書と140冊以上の科学研究論文を発表しており、OpenCogシステムの主なアーキテクチャーやデザイン設計を行なっております。

SingularityNetのCEOであるBen氏より、AI開発における段階についての話がありました。Ben氏はAIに関する仕事に30年以上従事している経験があります。その中で近年のAIの進歩は革命的だと述べます。

AIの使用目的は軍事や金融のみならず、日常生活にも広がっています。今後数年以内にはAIは自らで学習する能力を持ち、ますます賢くなるでしょう。

AIの概要を話した後、Ben氏は話題をSingularityNetに移しました。今年2月のベータ版のリリースをArtificial General Intelligence(AGI)への道のりとしてプロジェクトを進めているそうです。AIを使用している多数の企業やスタートアップは、SingularityNetを活用してAIのソリューションを改善することが可能です。

ハンズオンワークショップ | SingularityNETマーケットプレイス

最後に、分散型AIについて興味がある人は誰でもコミュニティでサポートを得ることができるとの話がありました。さらに、SingularityNetは日本とのコラボレーションを熱心に進めていきたいそうです。

続いて、Ralg Mayet氏によるハンズオンワークショップに移りました。MetaMaskを用いて、SingularityNetのマーケットプレイスで支払いシステムをどのように扱うか解説しました。その後、自分たちの開発したAIモジュールやデータセットをSingularityNetのサービスにどのようにデプロイするか、実際のプロセスを交え詳細に解説していただきました。

ディスカッション | AI、ブロックチェーンはどこに向かうのか?

Ben Goertzel氏、Cougerの石黒氏とCEO石井敦氏、そしてArayaのCEOである金井氏がパネラーとして参加し、トークテーマ「現代におけるAIの役割や影響とそれが創る未来」について意見が飛び交いました。議論は今後の課題やAGIシステム、多様性、そして各分野が力を合わせてAI開発を行うことの重要性までに及びました。

石黒:AI × ブロックチェーンのプロジェクトはそれほど多くはありませんが、皆さんはどうしてそこに注目するに至ったんでしょうか。

Ben:私は初めからAIとブロックチェーンの組み合わせが世界中を繋ぐようになると高い技術レベルから予想していました。分散型ネットワークはSingularityモデルにとって最適なプラットフォームになりますが、それには政治的、また商業的な問題が付いてきます。例えば政治問題でいうと、私がアメリカ市民としてイランで技術の推進を行おうとするのは難しいですが、分散型プロトコルがあれば世界中のエンジニアがTCP/IPを用いて独自の市場やインターフェースを作ることが可能です。ブロックチェーンの数は常にデータ量とコントロールに依るのでAIを取り入れるだけでは分散化は困難です。しかし各企業のインフラに留まらず、世の中の至る所にAIを埋め込むことにより正確なデータにアクセスできるようになるでしょう。

石井:AIは物事を自動化する役割があり、ブロックチェーンは正確さを証明するのが得意です。しかしエンジニアにとってAIは開発するのが難しくブロックチェーンは理解するのが難しいと言われています。CougerでもAIエンジニアとブロックチェーンエンジニアがそれぞれ分かれていますが、そのような異なる技術を組み合わせることに大きな可能性が秘められていると思います。

石黒:今後数年でAI分野に何が起こるでしょうか?

金井:AIは現在データを取り扱う技術として知られていますが、いずれモデル化してAPIとして使われる時代が来るでしょう。技術を資産とするエンジニアが様々なモデルを組み合わせてプロダクトを開発するようになるとさらに可能性が広がって来るのではないでしょうか。

石井:私はゲーム業界出身ですが、ゲームを開発する上て問題が起きたたときの解決法は技術面とシナリオなどのアイデア面の二種類のアプローチがあることが基本です。なのでAIに関しても技術力だけでなく新しいアイデアの発想も必要になって来ると思います。

Ben:私たちが開発しているAGIが唯一無二である必要はなく、誰かが深層強化学習を用いて例えばCougerのAPIに基づいて独自のAGIを開発することで柔軟性が増します。私はそれが第一歩だと考えています。私が開発したAPIと他のエンジニアが開発したものが組み合わさってコンピュータインターフェースとして共に使われるようになるでしょう。しかしスーパーインテリジェンスの将来を予測するのは不可能に近いです。

金井:SingularityNetはAPIなんですか?

Ben:我々はSingularityNetをAPIのAPIとして捉えています。AIのサービスはたくさんありますが、それは特定のユーザーにサービスを提供するだけなので、全ての技術レベルのエンジニアに対して強固なAPIが必要なのです。

石黒:それは面白いですね。それには何か理由があるんでしょうか。

Ben:私たちは分散型AIの問題についていくらか理解していますが、今の所その知識は広大な海に浮かんでいるようなものです。だからこそ我々の成果を一つにまとめる必要があります。私はAIを使って世界を商業的に支配したいとは思いませんが、SingularityNetが世界中の開発者が生活する支えになれば素晴らしいと考えています。AGIが分散型をとっている理由はそこにあります。

金井:AIに関する倫理的指摘は数多くありますが、私が最も恐れるのはいつかAIの開発が加速するについれてGoogleや中国の大きなIT企業によって世界が支配されるのではないかということです。

Ben:私は技術が人間を支配するようになるより、AIの倫理規則が有名人によって制御されるようになることの方が恐ろしいと思います。

石黒:私がブロックチェーン開発を面白いと思うのはAIの脆弱性に対する処方箋のような役割を担っていると思うからなのですが、金井さんが開発するAIのセキュリティーはどのようにして保たれているのでしょうか。

金井:まず危険性のないAIがあれば嬉しいですよね(笑)。我々も安全性に注意して開発をしていますが、反対にそうしすぎて新しいアイデアが生まれなくなることもあるのでジレンマを抱えています。

Ben:ここでも分散型ネットワークを用いれば日々新しいアルゴリズムが更新されて常に安全なAIが利用できるようになるでしょう。今日ここに集まっているエンジニアの皆さんで世界を救いましょう!(笑)

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