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BlockchainEXE第6回イベント:ブロックチェーンプラットフォームの最新動向と開発コミュニティ

投稿日:2017年11月23日 更新日:

第6回ブロックチェーンイベント

ブロックチェーン関連分野における技術共有、発展、応用に重きをおいたMeetupイベント、Blockchain EXE第6回が、渋谷ヒカリエにて行われました。

EXE#6のイベントレポートをお届けします。

以下、敬称略

▼目次

主要ブロックチェーンプラットフォームの進化 / 石井 敦

石井 敦 | クーガー株式会社 CEO
IBMを経て、楽天やインフォシークの大規模検索エンジン開発。日本・米国・韓国を横断したオンラインゲーム開発プロジェクトの統括や進行。Amazon Robotics Challenge トップレベルのチームへの技術支援や共同開発。ホンダへのAIラーニングシミュレーター提供、NEDO次世代AIプロジェクトでのクラウドロボティクス開発統括などを行う。
現在、AI x ロボティクス x IoT x ブロックチェーンによる応用開発を進めている。

石井氏からは、現在の三大ブロックチェーンについての説明がありました。三大ブロックチェーンとは、ビットコイン・イーサリアム・ハイパーレジャーです。

ビットコイン(bitcoin)のブロックチェーン

一つ目のビットコインは、エンドユーザーとマイナーの2種類のユーザーがブロックチェーンネットワークに存在しています。エンドユーザーの基本思想は、通貨の送金をなるべく速くしてほしい。そしてマイナーの基本思想は、マイニングの収益をなるべく多く得たい。この2種類のユーザーのバランスを保つことが重要となっていきます。

イーサリアム(Ethereum)のブロックチェーン

二つ目のイーサリアムは、通貨以外の汎用用途を見据えたブロックチェーンです。

例えば、非中央集権でのユーザーID認証・共有や、電力の需給バランスに応じて自動的に料金が決まるGRIDというP2Pの電力売買に活用が期待されています。

ハイパーレジャー(Hyperledger)のブロックチェーン

そして三つ目のハイバーレジャーは、パーミッション型を前提としたブロックチェーンです。

ハイパーレジャーはIBMが牽引しており、コンソーシアム型での実証実験が行われています。金融、貿易、サプライチェーン、流通、コミュニケーション、教育などに応用が期待されています。IBM関連だけでも世界で400のブロックチェーンの活用実例があり実用化しやすい技術として注目されています。


Bitcoin次世代技術 Lightning Networkについて / 光田 貴

光田 貴 | コインチェック株式会社 / Bitcoin Core開発者
ヤフー株式会社にて広告の業務システムの開発に従事。
その後、仮想通貨の将来性に感銘を受けCoincheckにジョイン。新しい仮想通貨の取り扱いを始め、サービス全般の機能開発に従事。日経FinTechやCNETで仮想通貨の技術的な解説記事を執筆。

光田氏からはまず、今回のテーマであるライトニングネットワークについての解説がありました。

稲妻のネットワークというその名の通り、ライトニングネットワークは一瞬で送金が完了します。通常のブロックチェーン上の送金は、トランザクション(送金取引)が台帳に記録されるまで数十分かかります。

ビットコインのブロックチェーンでは、ブロックは10分ごとに生成され、詰め込めるデータ量は1MBです。この先、ユーザーが増えて取引量が増えた場合、いつかパンクするということをビットコインが生まれたときから指摘されてきました。この問題に対する解決への現状あるアプローチは、ブロックサイズを大きくするか、ブロックへ記録するデータ量を節約するかの2つです。中央に管理サーバーをおかないという考え方は共通ですが、この2つの意見でハードフォークが起こっています。

ライトニングネットワークによる解決策

今回のライトニングネットワークは後者の手段の一つです。ブロック上に、どこまでのデータを記録するかが重要なポイントとなりますが、いつでもトランザクションをネットワークに流せる状態にしておきつつ、実際には流さなくてもよいという考え方に基づいています。

例えば、企業において毎日のように沢山の契約書が発行されますが、実際に問題が発生し裁判所に行くようなことはほぼ起こりません。そのため特殊な場合だけブロックに書き込んでおけば、事足りるのではないかという理論です。

ブロックチェーンのユースケース

2者間で送金のやり取りが何度が行われたとしても、送金が確定するのはトランザクションを閉じるときです。そのため送金の経緯はブロックチェーンへは流さず、最終的な保有数のみをブロックチェーンに書き込むのです。

ライトニングネットワークによる送金のベースになる技術がペイメントチャンネルです。

ペイメントチャンネルの重要ポイント

  1. チャンネルを2者間で開設
  2. チャンネル内にビットコインをロックして開始(A:5 BTC, B: 5BTC)
  3. ロックした金額の持ち分を入れ替えて送金(A→Bへ1BTC送ると A: 4, B: 6)
  4. 2者間でなら何回移動させてもブロックチェーンに流さないので速い
  5. チャンネルを閉じるまでトランザクションをネットワークに流さない
  6. A→B,B→Cというように複数のチャンネルを跨いで送ることも可能 →2者間のチャンネルを複数繋げると送金のライトニングネットワークが作れる

しかしペイメントチャンネルにも課題が残ります。非中央集権型のブロックチェーンを作る時、ディベロッパー間での合意などが必要になるためルール決めなどの際に問題が起きます。中央集権サーバーがあればルールの決定者は一人(一社)で良いですが、非中央集権ではネットワークに参加するインセンティブの設計が十分でないとインフラが成り立たなくなっています。そのためルール作りが非常に重要です。

質疑応答

Q:ペイメントチャンネルにおける二者間送金では、バルクにしてブロックチェーンに流すという理解で良いですか?

A:二者間で送金を何度しあっても、ブロックチェーンに残すのは最終的にいくらになったかだけです。送金の経緯は残りませんので、データ量を軽くすることはできます。

Q2:どっちかがやり取りの途中でダウンしたらどうなるのでしょうか?

A2:ペイメントチャンネルは相手が信頼できない場合も考慮されています。ここで仕組みの詳細を説明しきれないのですが、どちらかがダウンしてしまっても自分の持っているBTCが失われるようなリスクはありません。

イベントを終えて

Q:本日はいかがでしたか?

A:コンソーシアム型ブロックチェーン派の人が多いと思っていたのでもしかしてアウェイかなと思っていたのですが、そんなことはなく様々な考えの人とお話が出来ました。

Q:そもそもなぜ仮想通貨やブロックチェーンに興味を持ったのでしょうか?

A:人が生活をする上で、SNSに投稿する回数より、お金を使う回数の方がずっと多い。ブロックチェーンや仮想通貨の技術を知り、これは必ず来るし、この市場で何かをやりたいなと思ったのがきっかけです。

Hyperledger Fabric活用によるデータ流通ネットワーク / 今井 悟史

今井 悟史 | 株式会社富士通研究所 ネットワークアーキテクチャプロジェクト シニアリサーチャー
博士(情報科学)
2004年 (株)富士通研究所に入社後、ネットワーク仮想化、情報指向ネットワークなど新世代ネットワークアーキテクチャの研究に従事。現在は、ブロックチェーン技術のネットワーク応用に関する研究開発プロジェクトを主導。

続いて富士通研究所の今井 悟史氏にお話をいただきました。

富士通はスマートコントラクトのプログラマビリティをうまく活用しようとしているそうです。そして今井氏はネットワーク担当なのでネットワークに応用できないか考えていたそう。そこで目をつけたのがデータとネットワークの連携です。企業には様々なデータが溜まっていますが、セキュリティの観点から多くは死蔵データとなっています。

クラウドによるデータ保存など、インターネットを介したデータアクセスはクラッキングをされ、データ漏えいにつながるリスクが少なからずあります。

企業にとって情報漏洩による損害賠償金額は会社が潰れる恐れさえあるため、個人情報などのデータを安全に管理する事は非常に重要です。つまり、お客さんの個人情報データを所有する事自体がリスクになります。

富士通はハイパーレジャーを使って、そのようなリスクを伴うデータの所有者を企業(中央集権)から個人(分散型)にしようとしているそうです。

富士通での取り組みとデモ

今井氏によると現在は、BtoBのデータのやりとりに着目しているとのことです。実際のデモを披露していただきました。社内の部署間でブロックチェーンを活用し、Documentの共有をするデモ動画です。

デモでは、データのやり取りをする個人同士がファイルを共有することに成功しましたが、悪意を持った第三者がデータを盗み見しようとしても、エラーが起こり見られないという目的が達成されました。この技術の応用は、いずれ製品化を予定しているそうです。

イベントを終えて

Q:本日はいかがでしたか?

A:私は企業の中でブロックチェーンを活用しようとしています。Blockchain EXEにはオープン(非中央集権)なものを求めて来ている人が多いのかなと思い少し心配していましたが、質問もいただけ良かったです。

Q:大企業での活用というと壁も多いイメージがありますが。

A:私は研究所に所属しています。意外に思われるかもしれませんが、自由な雰囲気でやれていますよ。

Ethereumプラットフォーム上での開発環境および最新状況 / 西村 祥一

西村 祥一 | Comps ITL Pte. Ltd. CEO / KAULA Inc. Chief Architect
日本オラクルにて DB コンサルティングに従事。その後、独立。自然言語処理・機械学習などの学術系案件の開発・コンサルティングを行うと共に、ブロックチェーン技術を用いた開発に取り組んでいる。Global Blockchain Summit 2016ではブロックチェーン技術による位置情報プラットフォームを提案し、Best Innovation Awardを受賞。著書に「はじめてのブロックチェーンアプリケーション~Ethereumによるスマートコントラクト開発入門」(2017年、翔泳社)がある。

まずはじめに西村氏から、参加者の中でスマートコントラクトの設計や実装に関わっている人はいますか?と質問が。15人ほどの手が上がりました。

今回のスライドで紹介いただいた周辺ツールをフル装備しておくと、現在イーサリアム上でできることの最高峰のことができるのでは?とのことでした。

開発をスピーディーに行うためには、信頼できるライブラリの活用は有効的です。

まとまったツールの情報はあまりないため、開発者にとって非常にわかりやすく役に立つプレゼン資料です。

西村氏の著書「はじめてのブロックチェーン・アプリケーション Ethereumによるスマートコントラクト開発入門」

イーサリアムの開発初心者向けの技術本です。実際に手を動かすことで仕組みをより理解できるので、実装は非常に重要な勉強手法です。

イベントを終えて

Q:本日はいかがでしたか?

A:今回のスライドをまとめながら、自分でも新たな発見をしたりと勉強になりました。

ディスカッション : ブロックチェーン技術とユーザーIDについて

本ディスカッションは、主に石井氏が議題を提起する形で進んで行きました。

インターネットは自らバージョンアップしながらも、ベースは変わっていない。ブロックチェーンは、バージョンアップのコンセンサスがとれない。そしてオンチェーンオフチェーンの問題もあります。私は全部オンチェーンにするのは現実的ではないと思っていますが、みなさんはいかがでしょうか?

アーキテクチャーがドラスティックに変わるのは止めてほしいですね。周辺アプリケーションをつくっていても基盤が変わったら困ります。バージョンアップしても互換性を維持して欲しいと思っています。

バージョンアップの話だと、書籍を書いている間に急に変わるのはやめてほしいですね(笑)。画面のスクショとか全て撮り直しになりますし…。だいぶ整備されててきてはいますが、スタンダードがきちんと固まると、周辺の開発のエコシステムがうまくいくのではと考えています。

ビットコインに関する話でいうと、ハードフォークの存在があります。取引所の中の意見では、実際に起こるか非常に予測しづらいんです。急に起こるので、対応に追われるし、いい思い出がないです。。

台風みたいな存在ですね

そうですね。でも最初の仕様書のままずっと維持されるというのも現実的ではない。進化のために避けて通れないのだと思います。ブロックチェーンは一本と思われがちだけど、BTC、BCHや、ETH、ETCのように今後はチェーンがツリー状になっていくんだろうなと思っています。

そもそも1本のブロックチェーンを維持するモチベーションが誰にもないので、分かれてしかりなのかも知れませんね。

誰しもがハードフォークには不慣れでしたので、異常事態のように思われがちですけど、意見が分かれたら意見の合うものでまとまるということは仕方がない事なのかなと思います。

会場の参加者からは開発スタンスについて

Q:開発するに当たって開発者のコミュニティの性質が違うのではと思っています。開発のスタンス、スピードなどが違うのでしょうか?

A:ビットコインは開発者が一番多いので、進化のスピードが一番速いのでは?と思います。コンセンサスを取るのは非常に慎重ですね。APIが荒削りであったりエンタープライズ向けではないと感じます。例えばリップルなどは比較的整っているかなと。

A:イーサリアムコアの開発者は…どうでしょう、粛々とやっているのでは。エンタープライズ向けの話で言うとEEAがあります。そこではトークンやツールのことを考えようという動きがあるんですが、まだ話し合うだけで、実装まで活発化していない印象です。イーサリアム界隈は、必要なツールがない場合でも、ツールを作らずにICOしちゃう風潮がありますね…。

参加者コメント

仮想通貨関連事業会社の事業開発部門で働いています。私はエンジニアでありませんが、仮想通貨関連の事業では金融的知識のみならず、技術面の理解が必要不可欠であると日々感じていたので、今回初めてイベントに参加させて頂きました。

例えば、ブロックチェーンのスケーラビリティ問題の解決策として、ビッグブロック派とスモールブロック派がいるということは知識としてありましたが、それより一歩踏み込んだライトニングネットワークの技術や考え方があることは知らなかったので非常に勉強になりました。

またブロックチェーンの技術を使った実証実験の様子やイーサリウムのシステムの利用方法等具体的な説明があったので、何となくボヤーっとしていた「ブロックチェーンっていいよね。すごいよね。」から実際にこういう風に使われるのかということが肌身で感じ取れて良かったです。

登壇者の方もブロックチェーンの技術は未だ問題があるとおっしゃっておりましたが、仮想通貨やブロックチェーン周りは変化が激しいので、技術が凄いスピードで進化していき問題は解決されていくと思います。これらの技術が実社会でどんどん使われていき、あらゆるものが効率的になり、どんどん便利な世界になっていくと信じています。またイベントに参加したいと思いました。

懇親会では仮想通貨ブロックチェーン周りの人のみならず、他業界の方も多かったので、色々な立場から、彼らが仮想通貨、ブロックチェーンをどう見ているか、知ることができて面白かったです。

他のブロックチェーンのイベントで会ったことのある知り合いが多く、狭い世界だなと感じました。

ビジネスと知識共有の場 懇親会

スピーカーの方にも参加いただき、懇親会も盛り上がりました。各セクションで抱いた疑問や興味を気兼ねなくスピーカーの方々に聞いていただけるだけでなく、参加者同士の交流で、新たなビジネスが生まれるような様子も散見散見されました。様々なブロックチェーンに関するイベントに参加している方からは、「Blockchain EXEは技術に明るい人が多い」という声がありました。

EXE各回の参加者は、だいたい100人超です。ブロックチェーンに興味を持つ人と一度にこれだけ会えるイベントはなかなかありません。ぜひこれからもご参加ください。

また、運営メンバーも随時募集しています。さらに規模を拡大していく予定ですので、運営メンバーになって共にブロックチェーンを盛り上げていきたいという方がいればご連絡をお願いいたします!

この記事を書いた人
井澤梓

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