ブロックチェーンの価値観は変わってきているのか

3年半以上前の2016年に公開されたブロックチェーン動画があります。再生数はYoutubeとTEDをあわせて650万回を超え、「Blockchain」というキーワードで最も再生されている動画の一つとも言えます。この3年半あまりで、ブロックチェーンに対する見方で、変わった点と変わっていない点があることを肌で感じている人は多いのではないでしょうか。3年半前から、どのような価値観でブロックチェーン技術が語られていたのかをみていきましょう。

ブロックチェーンはいかにお金と経済を変えるか

インターネットの誕生によって、世界中であらゆる情報が流通するようになりました。今後、ブロックチェーンによって人と人が情報以上の物(金融商品や土地の権利など)を直接やり取りできるようになり、現在の媒介者(国家や銀行等)が不要になります。

  1. 消すことが不可能な記録で権利を守る
  2. 本当のシェアエコノミーを創造出来る
  3. 中間マージンを最小にできる
  4. プライバシーを守りながら人々は自分の情報を持ち換金できる
  5. クリエーターの利益を保証する

1.消すことが不可能な記録で権利を守る

世界中の土地の権利の約7割が非常に脆弱です。国や悪意のある為政者によって、国民の権利が侵害されています。例えばホンジュラスでは、国家の侵害によって、ほとんどの国民が土地を所有することができていません。

ブロックチェーンに土地の権利をのせることで、消すことが不可能かつ、改ざんすることができない権利として国家や悪意のある為政者に対抗しうるでしょう。

2.本当のシェアエコノミーを創造出来る

UberやAirbnbなどはシェアエコノミーを標榜していますが、実際は中間搾取を行っている企業です。

  • 「今タクシーに乗りたい」、「今タクシーに乗せたい」、「位置情報」
  • 「今泊まりたい」、「今部屋が空いているので泊めたい」、「位置情報」

このような情報がブロックチェーンを通じてタグづけされ、マッチングできれば、UberやAirbnbなどによって行われるマッチングとそれに払う対価は必要なくなり、本当のシェアエコノミーが生まれます。

3.中間マージンを最小限に

様々なトランザクションにおいて中間マージンは非常に大きいです。例えば、外国に送金する場合などは、非常に複雑なプロセスを経て、約10%の手数料を取られます。しかし、今後送金は世界中のコンピューターにより認証され、安全性が担保されたブロックチェーンによって、最小限の手数料で可能になります。

その他のトランザクションも企業を介さず、個々人が直接安全に行えるようになり、手数料は最小限に近づいていくことでしょう。

4.プライバシーを守りながら人々は自分の情報を換金できる

今日ではあらゆる企業によってあなたの情報が収集されています。1年前にどこに行ったか?何を言ったか?何を買ったか? などはあなたが覚えていなくても企業によって収集され、データベース化され、”Virtual You(仮想のあなた)”が構成され、それをもとに企業活動がなされています。

ブロックチェーン技術によってあなた自身の情報はあなたのみに帰属します。プライバシーを守りながら、最小限の情報のみを企業に提供し、更に自分自身の情報を利益に変えることができます。

5.クリエーターの利益を保障する

クリエーターたちの利益がインターネットの登場で毀損されています。ブロックチェーンはこれらの損失を無くせます。

グラミー賞受賞したこともあるイモジェン・ヒープは音楽をブロックチェーンに乗せて配信しています。それによって彼女の著作権は保障され、視聴による課金、CM・映画での利用で彼女にお金が入る仕組みが作れます。(訳者注:情報をインターネット上でコピー・再生するとブロックチェーンにコピー・再生したことは記録され、そのたびに課金することが可能になります)

音楽だけではなく、他の著作物や特許などにも応用されれば、使用されるごとに金銭が発生し、クリエイターや特許権者の権利が守られます。

TED動画のブロックチェーンに対する見解について

『1.消すことが不可能な記録で権利を守る』は本当か?

ブロックチェーン技術の大きな特徴として挙げられるのが改ざん耐性です。データの整合性に関わらず、ブロックチェーンに書き込まれたデータを消すことは非常に困難です。そのため、権利証明を必要とする業界での活用が期待されています。一方で、先述したようにインプットしたデータの整合性そのものは担保しません。そのため、インプット側の権利が守られていなければ、正当な権利を証明することは難しいでしょう。日本は民主主義が成熟し、独裁国ではないため、国に権利を奪われるということはありません。これらのブロックチェーンの権利証明事例は発展途上国の環境でのユースケース紹介を多く目にします。そのため、日本で土地の権利証明を改ざんできないと言われてもピンとくる人が少ないのは当然でしょう。

『2.本当のシェアエコノミーを創造出来る』は本当か?

3の論点と重なる点も多いですが、プラットフォームの仲介者がいないサービスは実行可能ですが、ユーザーがつくかは未知数でしょう。実際にAirbnbという中央の管理者がいるからこそ、事件や問題などに対する措置や対応も迅速になります。ブロックチェーンのオープンソース、民主主義的アプローチでエコシステムによる投票などで規則を定めていくことはできるかもしれませんが、企業が対応している問題は莫大であり、純粋なP2Pのシェアリングサービスが機能するかは未知数です。

『3.中間マージンを最小限に』は本当か?

上記で、示したように管理者を排除したプラットフォームが機能するのは相当難しいです。一方で、中抜きと言われるような無駄なマージンが発生していることも事実です。その点で、P2Pサービスの透明化によって中間マージンが最小化していくことは可能性として十分考えられるでしょう。

『4.プライバシーを守りながら人々は自分の情報を換金できる』は本当か?

前提として、ビットコイン取引のプライバシーは守られているのか?という問いに対して『守られている』と回答する人はわずかでしょう。なぜなら、ビットコイン は「いつ・どこから・どこへ・いくら」送ったかという情報が誰にでも確認できるからです。一方で、プライバシーを守ることに特化した仮想通貨が誕生したり、周辺技術としてプライバシーを守るツールが開発されたりもしています。ブロックチェーンという言葉が網羅する技術範囲の定義は非常に難しいです。一方で、GDPRやCCPAの規制に代表されるように、個人情報の権利が企業からユーザーに戻される範囲が広がることは間違いないでしょう。その中で、ブロックチェーンの有無に限らず、プライバシーを守りながら、個人の情報価値を換金できる仕組みは徐々に整っていくでしょう。

『5.クリエーターの利益を保障する』は本当か?

ブロックチェーンのP2P技術によって、正当な権利の上で、価値の移転が行われるため、クリエイターにより多くの利益が保証されることはありえるでしょう。しかし、ブロックチェーン技術を使ったからと言って、YouTubeの不正アップロードや転売がなくなるわけではありません。価値の移転によって、よりベストな選択をとることはありえますが、ブロックチェーンが全てを解決するかのような課題評価は禁物です。

まとめ

ブロックチェーンによって人と人との情報、物、権利などあらゆるものの交換が民主化されることで、これまで中間業者に払っていたお金や労力が極端に少なくなる時代が来るかもしれないという内容でした。

一方、歴史を振り返っても、私たちはあらゆる管理があるからこそ、生活が回っているという点もあります。完全な民主主義は機能しないという事を研究している、ジョージ・メイソン大学のGarett氏は「10% Less Democracy: Why You Should Trust Elites a Little More and the Masses a Little Less」という著書を記しています。

ブロックチェーンによって国家をディスラプトするというよりも、分散と集権のバランス化がテクノロジーによって最適化されていく未来の方が実現性が高いでしょう。

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