ブロックチェーンのユースケースとして医療は外せない

▼目次

  1. プライベートブロックチェーンって結局ユースケースある?という疑問
  2. パブリックチェーンとプライベートチェーン
  3. ITベンダーとしてのブロックチェーンの存在
  4. 意味のあるプライベートチェーン活用とは?
  5. 医療×ブロックチェーン

1.プライベートブロックチェーンって結局ユースケースある?という疑問

皆さん、こんにちは!Blockchain EXE運営スタッフの藤本と申します。富士通に勤めながら、革新的な技術であるブロックチェーンをどこかに活かせないか日々機を伺っているのですが、その一環で今週開催される「Blockchain EXE #14 人生100年時代!今、流行りのMedi Techから求められる”医療×ブロックチェーン”の真実とは?」の企画を行いました。

Blockchain EXEのmeet upを振り返ると、「仮想通貨」「IoT」「AI」「マーケティング」といったブロックチェーン界隈の中でも有名なテーマで来ましたが、今回は「医療」がテーマとなっており、今までと比べると範囲を狭めた感じは否めません。ですが、私個人の考えでは、ブロックチェーンのユースケースとして、医療は外せないどころか最も重要なテーマの一つだと考えています。

私がブロックチェーンを知って2年ほどになりますが、どのような過程でその考えに至ったかお話しさせていただきます。医療業界に携わる人は勿論のこと、「ブロックチェーンって結局ユースケース無いよね」とお悩みの方も、ぜひ読み進めていただき、ご意見いただければと思います。

2.パブリックチェーンとプライベートチェーン

ブロックチェーンには、大きく2つの方向性があるという事は聞いたことがあるかもしれません。BitcoinやEthereumに代表される「パブリックチェーン」と、富士通も参画しているHyperledger Fabricのような「プライベートチェーン」があります(上図参照)。両者の決定的な違いは、マイナーと言われるブロックチェーンネットワークを構成するユーザーが不特定か特定かです。それにより、処理性能等が異なってくるのですが、それ以上に管理者が不在かそうでないかによって、サービスの方向性が大きく異なってきます。

例えば、海外送金を例にすると、プライベートチェーンは既存の銀行間が連携した業務効率化(共創)が期待できますが、パブリックチェーンにおいて銀行は不要となり、いわゆるディスラプトが起きます。(下図参照)

3.ITベンダーとしてのブロックチェーンの存在

実はここらへんが個人的にジレンマを抱える点になっています。元々Bitcoinに端を発する(パブリック)ブロックチェーンの思想に触れて、

「なんと革新的な技術・考え方だ!」

「こんなサービスを自分でも作ってみたい!」

と飛び込んでみたものの、よく考えれば(よく考えなくても^^;)、企業にシステムを売っているITベンダーとして、中間業者を排除した真にP2P(ピア・ツー・ピア)のサービスが出来てしまっては、色々まずい事が分かりました。

なので、パブリックチェーンではなく、プライベートチェーンでなんとかビジネス出来ないかと試行錯誤していたのですが、そこで待ち受けているのは「それってブロックチェーンでやる意味あるの?」です。(この一連の流れは、ITベンダーの企画担当あるあるなのではと個人的に思っています。)

「地域通貨やポイントをブロックチェーンで」というニュースはよく聞きますが、実証レベルではなく、本当のサービスとして実施したという話は私の知る限り聞いたこと無いです。以前、地域通貨をブロックチェーンで実証した方に話を聞きましたが、ブロックチェーンを用いずに作った方が、低コストで作れるのが現状とのことです。長期的にはアリかと思いますが、直近のビジネスでは、コスト以外の技術的な優位性を示さないと実証止まりから脱却出来ないと考えています。

4.意味のあるプライベートチェーン活用とは?

プライベートチェーンの技術的な優位性はどこにあるのか、社内外のブロックチェーン有識者にご意見を伺っていましたが、腑に落ちたのは、富士通の「メガバンク3行とブロックチェーン技術を活用した個人間送金サービスの実証実験」という取り組みです。どのような取り組みかと言うと、X銀行の口座を持つAさんとY銀行の口座を持つBさんとで個人間送金を実現するというもので、ブロックチェーン基盤を用いる事で、シームレスかつ正確で安全な取引が出来るものです。

この事例を紐解くと、プライベートチェーン活用を意味のあるものにするためには、3つの要素が必要だと考えています。

①複数の団体・企業が連携する

メガバンク3行のように、複数の団体・企業が、ノードを保有する必要があります。地域通貨の実証は、得てして1社単独で実施するケースが多いですが、そうなってしまうと、本当に既存システムの方が、低コストで早期に実現出来ます。

②複数の団体・企業がそれぞれ独自データを持つ

ブロックチェーンはあくまで「分散台帳」なので、台帳に格納するデータ(送金履歴、アクセス履歴など)が何かしら必要になります。メガバンク3行の実証のケースで言えば、「各銀行口座データ」および「送金履歴」になります。複数の団体・企業のうち1社しか持っていなかったり、各社全く同じデータ(オープンデータ等)を持っていれば、やはり既存システムで実現した方が効率的です。

③複数の団体・企業に共通の目的がある

独自のデータを持つだけでなく、複数社間でデータのやり取りが発生しないと連携する意味が無いです。

これらの要素を前提にすると、必然的にプライベートチェーンを適用出来る業界が絞れると考えました。その一つが「医療」です。(他には、上記事例のように「金融」。また、「不動産」についても、国内でコンソーシアムを組んで不動産情報を共有しようという動き等があります。

5.医療×ブロックチェーン

医療分野を見てみると、カルテ情報が病院ごとに分断されており、一個人が幼児期から現在に至るまでどのような病気にかかったか、処方をうけたか、本人だけでなく、病院ですら把握していない事が問題になっています。逆に言えば、「各医療機関」が「異なる医療データを持っている」「個人の一連の病歴/処方歴を確認したい」という3つの条件を満たしていると言えます。

医療業界でも、PHR(個人が自身の健康情報を管理する基盤)やEHR(病院間でカルテ情報を共有する基盤)といったテーマが盛んに研究されていますが、コストやセキュリティ等の問題で、特に国内では浸透出来ていないようです。そこで、実用化に向けてブロックチェーン技術が期待されているわけです。

今回の14回目のEXE登壇者ですが、

PHRアプリ「健康銀行」を提供しているArteryex株式会社の李氏

J-DOMEと呼ばれる糖尿病患者の診療データを共有するEHR事業の開発に携わるラブロック株式会社の長瀬氏

ITヘルスケア学会代表理事、医療ブロックチェーン研究会会長も併任されている国立保健医療科学院の水島氏にご登壇いただく予定です。まさに、医療×ブロックチェーンの最前線に立つ方々に結集いただく回となります。

  1. PHRやEHRの実現性とブロックチェーンの意義
  2. パブリックチェーン的な試みは医療分野に無いのか?
  3. AppleWatch等IoT連携の将来展望

等など、ブロックチェーン全体の将来性を語ると言っても過言ではないので、ご興味をお持ちの方はぜひご参加いただければと思います。

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