プロトコル、トークン、アプリケーションの登場

スマートコントラクトの一体何が、そんなにすごいのでしょう?

プロトコル

スマートコントラクトがEthereumを用いて作れるという事は、誰でも簡単に新しいプロトコルが作れるということです。 プロトコルは、ネットワーク内のノードが情報を送信する際に使用するルールです。 スマートコントラクトを用いると、複数のノード間で、信頼できる自動化されたルールを作成できます。

ブロックチェーンのプロトコルには、それに関連する固有の「トークン」があると前述しました。このトークンは第三者を通さずに、ネットワーク内の2人のユーザー間で転送できるデジタル資産です。 Bitcoinブロックチェーンの固有トークンはBitcoinであり、Ethereumブロックチェーンの固有トークンはEtherです。

しかし、Ethereumブロックチェーンに固有トークンがあるからと言って、スマートコントラクトで規定されたプロトコルが、この固有トークンを使用する必要があるわけではありません。プロトコルは、単にノード間の通信のためのルールを規定するものである事を忘れないでください。

主に2種類のプロトコルがあります。

  1. ネットワークを成長させる、金銭的インセンティブとして機能する固有トークン
  2. 金銭的インセンティブとしてではなく、ノード間のコミュニケーションのために使用されるトークン

これらを区別するために、最初の種類を「暗号トークンプロトコル(Crypto-token Protocol)」、2番目を「暗号プロトコル(Crypto Protocol)」と呼びましょう。

トークン

続いて、トークンに関してお話したいと思います。

Ethereumで新しいプロトコルを作成できるようになったのと同様に、新しいトークンも作成できるようになりました。

トークンのシステムは少し大雑把に言うと、「AからXを減らし、BにXを与える」という、単純な処理を行うデータベースとして考えることができます。ただ、下記の条件を満たしている必要はあります。

  1. Aはトランザクション前に、少なくともXを所有している
  2. トランザクションはAによって承認された

Ethereumは、この様なトークンの実装を簡単にしました。ERC20トークンによりEthereumコミュティで使われる開発ツール、ウォレット、取引所といったサービスの「標準言語」となりました。

さらに、これらの「非固有トークン」は次のように存在します。

  1. Ethereum上に構築された、独立トークン
  2. 「暗号トークンプロトコル」に紐付けられたトークン
  3. 「暗号プロトコル」に紐付けられたトークン

これらはなぜ重要なのか見ていきましょう。

トークンセール(ICO)

新しいブロックチェーンをローンチさせるのは容易ではありません。ローンチさせるにはかなりの労力が必要です。しかしEthereumの場合、まず独自のブロックチェーンを開発する前にEtherを作成してプレセールを行い、資金調達を行なった後にブロックチェーンの開発を始めました。

これを行なったのはEthereumが初めてではありません。Rippleは2013年に決済システムの開発をする際に、これらの開発費に当てるために約1,000億のXRPトークンを作成し販売しました。

トークンセールとは、ある組織が新しい暗号通貨(すなわちトークン)を、あらかじめ決められた価格で投資家に販売する事で、投資家はその後別の暗号通貨に替えることができます。これらのトークンはニーズがあれば、Bitfinex、GDAX、Liquiといった交換所で交換することができます。

過去のトークンセールは、EthereumやRippleのように新しいブロックチェーンを構築するためのものでしたが、スマートコントラクトにより、スタートアップ企業はブロックチェーンを1から作る必要がなくなり、プロトコルやアプリケーションの開発費用を補填するために使われるようになりました。

プロトコルとアプリケーションの違いについて、説明しましょう。

プロトコル vs アプリケーション

アプリケーションは、1つまたは複数のプロトコルの上に構築できます。 例として、「Decentralized Oracle Protocol」と「Exchange Protocol」という2つのプロトコルの上に構築された、分散型未来予想市場のアプリケーションのAugurが挙げられます。

「Decentralized Oracle Protocol」は金銭的インセンティブの機能を含み、現実社会での出来事に対しコンセンサスを得てネットワークを拡大させる「暗号トークンプロトコル」です。そしてこのプロトコルにはレピュテーション用トークン(REP)が紐付けられています。 一方「Exchange Protocol」は「暗号プロトコル」であり、金銭的インセンティブを目的にしたトークンはありませんが、買い手と売り手の間でトークンを移動させる際のルールとして機能します。

これらのプロトコルは、ある1つのアプリケーションのみに利用を限定する必要はありません。 他のアプリケーションにおいても、これらのプロトコルを用いる事は理論上出来ます。

トークンセールにおけるプロトコル vs アプリケーション

先ほどトークンセールが、プロトコルやアプリケーション開発のために有効活用できることを説明しました。

つまりトークンセールは、下記の開発コストを補填するために実施できます。

  • ブローックチェーン本体(例: Ripple)
  • 既存ブロックチェーンの上に構築された暗号トークンプロトコル
  • 既存ブロックチェーンの上に構築された暗号プロトコル
  • 暗号プロトコルの上に構築されたアプリケーション
  • 暗号トークンプロトコルの上に構築されたアプリケーション
  • 複数のプロトコルの上に構築されたアプリケーション
  • その他アプリケーション

特に最後の点は重要です。なぜならトークンセールを行う際、実際にはアプリケーションをプロトコル上に構築する必要すらないのです。例えば非営利団体を設立してプロジェクトを進行させる際、トークンを発行できます。つまり、従来の中央集権型アプリケーションの資金調達手段としても、トークンセールを行うことはできます。

投資家がこれらのトークンを購入すると、何が起こるのでしょう?

トークンが暗号トークンプロトコルに紐付いている場合、BitcoinやEtherの様な固有トークン同様、プロトコルやネットワークの開発に使用されます。そうでない場合、トークンはもっと一般的な指標として使用されます。

たとえば、分散型ストレージサービスを構築したいとします。スマートコントラクトを用いたストレージのプロトコルを作ることにより、ストレージの提供者と利用者間の、データ形式と価格を定義します。

さて私がこのプロトコルを作った後、トークンセールを行なったとします。プロトコルが広く使用されると、プロトコルの価値が高くなり、結果として紐付けられているトークンの価値が上がります。 さらにこのサービスの開発者として、トークンが株のようにアプリケーション上のサービスの引受権として機能するよう、規定することができます。

つまりトークン作成の仕組みは非常に柔軟で、様々なことを行えるのです。

  • 分散型クレジット・メンバーシップ支払い
  • 損益、資産、負債に対する権利
  • プロトコルやプロジェクトに対する持ち分
  • 投票権

Augur、Antshares、Melonport、Gnosis、Antshareなど、トークンセールを通して資金調達に成功したプロジェクトは数多くあります。これらのプロジェクトに関してもっと知りたい場合は、Whitepaperを読むことをお勧めします。

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