ブロックチェーン活用のチャレンジ!!|Blockchain EXE #20

Blockchain EXE#20は、ブロックチェーンが、SDGsで掲げられた目標である持続可能社会の実現をいかに後押しすることができるのか、各領域で活動する事業家と共に、その実態と今後の展望について迫りました。

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ブロックチェーンが生み出した新しい文化 – 平井威充 | ステラエックス株式会社

平井威充 | ステラエックス株式会社 代表取締役CEO
国内金融機関にて企業年金の資産管理・資産運用業務に従事。また、人事部にて新卒・中途採用業務にも携わる。2012年ごろからブロックチェーンとディープラーニングに興味を持ち2015年に退職。退職後ブロックチェーン業務にエンジニアとして携わり、2018年1月ステラエックス株式会社を設立。現在はアプリ名「island」を今夏β版としてローンチしブロックチェーンの実運用を行うとともにトークンを活用した新しいコミュニティ文化経済圏を研究している。

平井:ステラエックス株式会社の平井です。よろしくお願いします。テーマが持続可能な社会ということで、普段私がこのテーマについて考えていることをみなさんと共有したいなと思っております。

簡単に自己紹介をします。私は大学院を卒業してすぐに三菱UFJ信託銀行に勤めました。そこではファンドマネージャーとして、企業年金の株の運用や債券の運用、あとは人事部で新卒・中途採用の担当をしておりました。2010年にブロックチェーンやディープラーニングに出会って、これからそういう時代が来るんだろうなと思い、2016年に三菱UFJ銀行を退職しました。ITに疎かったので、プログラミング学校でディープラーニングとブロックチェーンのプログラミングを勉強しました。それと合わせて、スタートアップ会社でエンジニアの修業をして、昨年会社を立ち上げました。会社では、アイランドというアプリをリリースしております。そして、それに伴う独自のブロックチェーンAPIを提供しています。また、大学院などでブロックチェーンの教育やコンサル業のようなものをしております。

本日お伝えしたいことは、持続可能な社会を考える上で私が大事だなと思っていることと、コミュニティの重要性です。最後に、アイランドの活用事例をお話したいと思います。

持続可能な社会を考える上で大事なこと

持続可能な社会を考える上で大事なキーワードは、文化です。私は、文化を「特定の共通する価値観でつながり、発展すること」と定義しています。つまり、趣味でつながったり職でつながったり生まれた地が一緒だったり、そのような共通の価値観でつながり、後世にスキルや知恵を残すことが文化だと私は考えています。なぜ文化が大事かというと、文化が人を進化させてきたからです。先祖から伝わるスキルや知恵をどんどんアップグレードさせて人間は進化してきました。「サピエンス全史」の中にも、人間は生まれた環境に依存しながら発達を繰り返してきたという記述があります。

人類の進化と文化

もう一つ、コミュニティも大事です。もともと人は一人では生きていけず、いろいろな集団の中で生きてきました。古くは村社会から始まり、国ができて、そして会社というものができて、ずっと人はコミュニティの中で生きてきましたし、今後もその流れは変わりません。今後は個人の時代だと言われていますが、私はコミュニティの時代だと思います。個人のスキルや知恵が、コミュニティの問題解決に役立つような時代が来るということです。そのコミュニティの土台となるものが文化であり、文化をどう形成するかということが今後の課題になってきます。例えば、今日Blockchain EXEのイベントにこうしてみなさんに集まっていただいているわけですが、ブロックチェーンのイベントは他にもたくさんあります。このイベントと他との違いは何かというと、私は文化の違いだと思います。今回のイベントのように、私たちの文化をどんどんアップデートしていくような機会が必要です。

SDGsにもコミュニティや文化が必要です。17番目に「パートナーシップと連携で課題解決をしていきましょう」とありますが、これがコミュニティのことを示しており、コミュニティを形成して他の16個の課題を解決していこうというのがSDGsの基本的なコンセプトだと認識しています。例えば、高齢者コミュニティ。日本は、高齢者の交流が少ないということが大きな課題になっています。ドイツ、スウェーデン、アメリカ、日本の4か国で行われた国際調査で明らかになったことですが、病気などのときに頼れる人がいるか、近所の方と相談し合うことができるかという質問に対し、いる(できる)と答えた人の割合が日本だけ極端に低かったのです。そのような現状を見ると、今さら日本でコミュニティを流行らせる必要はないじゃないかと思われるかもしれませんが、そうではありません。実は、コミュニティに入ることで健康度合が変わってくるそうです。例えば、コミュニティに入っている方と入っていない方で、介護が必要な方の割合が倍ぐらい違うという結果が出ています。コミュニティに入ると、総介護費用が1.3~3.6兆円も削減できるという試算も出ています。いかにコミュニティが重要かというのがこれでわかっていただけると思います。

アイランドについて

私がそういった文化やコミュニティの重要性に気づいたのが3年ぐらい前なのですが、そういった考えを踏まえて開発したのが「アイランド」というアプリです。これは、今年の8月からAndroidとiOSの両方でベータ版として公開しています。無人島に集まってきた人たちが互いに工夫し助け合うことで島を盛り上げていくというコンセプトのもとに作りました。単純にいうとSNS型の独自コイン発行アプリです。要は、コミュニティがたくさんあって、コミュニティの中で独自のトークンが発行されています。そこで行動するとコインが付与されるというものです。コインはチケットと交換することができます。事例については後ほど説明しますが、特徴としては、コインとチケット、ブロックチェーンを使っているということです。コインはERC20、チケットはERC721、ブロックチェーンはAzureのQuorumを使っています。

なぜブロックチェーンを使うのか

やはり大事なのは、なぜブロックチェーンを使うのかというところです。私が思うブロックチェーンの勘所は次の3つだと思っています。

  1. 本当に正しい履歴としてその情報を管理する必要があるか
  2. データ共有する価値があるか
  3. 唯一無二として価値保存する必要があるか

このような3つの観点から、ブロックチェーンを使うかどうかというのを考える必要があると思います。

➀本当に正しい履歴として管理する必要があるか

銀行とブロックチェーンは相性がいいと言われています。ATMを思い浮かべてみてください。ATMはいつ誰にいくら支払ったとか、支払ってもらったとかいうような情報は、マネーロンダリングなどの関係から正しい履歴をもっておく必要があります。しかし、家計簿アプリのようなものならば、必ずしも何日にいくら使ったかを管理しなくてもいいと思います。家計簿のように、正しい履歴よりも結果が重要なものは、ブロックチェーンとあまり相性がよくないと思います。

➁データ共有に価値があるか

企業の人事部で採用を行う際、履歴書は事務所で管理しますが、転籍や転入がある場合は基本的に紙やエクセルデータでやり取りします。しかし、それは結構リスキーで、もしかしたら誰かがそれを見るとか改ざんするとかいうような話にもつながります。そういうときにはブロックチェーンで共有しておけば、使うメリットがあります。

③唯一無二として価値保存する必要があるか

これは小説を書く場合などを思い浮かべていただけるとわかると思いますが、著作権に関連する部分などで使えるかどうかが勘所かなと思います。

アイランドは、トークンやチケットを使っています。データ共有については、今後サービスを拡張していくときに使いたいと思っており、そういう面を考えると、やはりブロックチェーンを使った方がいいという話になりました。

アイランドの活用事例

ここからアイランドの活用事例をお話しさせていただきます。

まずミュージシャンの方に使っていただいています。この方は新規のファンやコアなファンに対してSNSを使って、情報の調整を行っていますが、どうしても新規のファンとコアなファンに同じような情報が流れてしまうということで悩んでいました。やはりコアなファンには彼らに喜んでもらえるような情報を提供してあげたいということで、アイランドのアプリを使っていただいています。例えば、独自コインを発行して、ライブ会場でプレゼントする。グッズを購入したら、コインを付与する。友達を紹介したら、コインを付与するといったような使い方です。コインを貯めると、ライブの割引チケットと交換できます。そして面白いのが、未発表曲をYouTubeの非公開動画としてアップして、コインを貯めてくれた方にその動画のURLをプレゼントするという特典も用意しています。そうすることで、コアファンの方がどんどんついてきているようです。

2つ目の事例は飲食業です。ここも面白い取り組みをしています。これは渋谷にある焼鳥屋さんで、たしか15~20人ぐらいしか入らないお店ですが、今年の8月からスタートしてすでに三百数十人の方がそこに参加しています。売り上げの5%を還元したり、SNSで投稿した人にコインをプレゼントしたりしたところ、リピーターがものすごく増えたそうです。また、交換できるチケットの内容が面白くて、裏メニューが食べられるのです。そうすると、初めて行ったお客さんが、隣の常連さんが食べている裏メニューに魅かれて、アイランドに参加するような流れができます。そうやって、どんどんリピーターが増えていきますので、あまり大きな声では言えませんが、飲食店の口コミサイトが提供しているような食事券のサービスよりも断然効果があるということで、大変ご好評いただいています。

3つ目、これは地域通貨です。ローカルテレビの方からアイランドで地域通貨を作りたいというお話をいただきまして、商店街でのコインの還元であったりボランティアの返礼としてコインを付与したりする取り組みです。コインが貯まったら、地元の方が旅行プランを考えて、そのプランを提供します。

以上が活用事例になりますが、弊社のホームページからアイランドのアプリのLPまで飛ぶようになっていますので、一度ダウンロードしていただき、コミュニティを作りたい、独自コインを作りたいという方がいらっしゃいましたら、無料で使えますので、ぜひ使っていただければと思います。

持続可能な社会を目指すために、私はこの3つのかけ算が大事だと思っています。まずは、文化というものが人を構成している一番大事なものです。どの時代も、人間はコミュニティに入らないといけません。そこに最新のテクノロジーがかけ合わされて、持続可能な社会が形作られると思います。

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