iExecはDevcon5でEEA、Intel、Consensys、MicrosoftとともにTCF:秘匿計算アプリケーションのデモを実施

TCF(Trusted Computing Framework):秘匿アプリケーションの次の波を構築




当記事は、iExecの配信コンテンツを翻訳したものです。オリジナル英語ソースはこちら。

初期のブロックチェーンは、大量のトランザクションデータの複製をつうじて、計算の信頼性を実現していましたが、プライバシーと秘匿性の点で不完全でした。

信頼されたオフチェーン上でのタスク実行をブロックチェーンに追加することによって、プライバシーと秘匿性における課題を改善することができます。

共有台帳のデータ負荷を軽減しながら、ブロックチェーンは単一の権限のあるオブジェクトのレジストリを維持し、実行のポリシーを強制する事で、監査可能性を保証しています。

2019年10月には、EEA Trusted Execution Task Forceの一部としてのiExecは、EEA Off-Chain Trusted Compute Spec V1.1を発表しました。この仕様は、メインネット上のスマートコントラクトが、UXとセキュリティを損なうことなく、計算負荷の高いワークロードをオフチェーンネットワークに移行させています。

EEAリリース『エンタープライズイーサリアムアライアンス、Devcon 5でのトークン対応ブロックチェーンの実演を発表』

Intelブログ:Hyperledger Avalon Trusted Compute Frameworkに新たな機密コンピューティングソリューションが登場

Devcon5での発表プレゼンテーションのライブ録音

この仕様はHyperledger Avalonの開発に使用されてきました。最新のHyperledgerプロジェクトであるHyperledger AvalonもまたTrusted Compute Framework(TCF)として知られており、開発者が次の波となる秘匿計算アプリケーションを構築するのに役立つ独立した台帳として実装となっています。

Hyperledger Avalonは、Intel、iExec、Alibaba Cloud、Baidu、BGI、Chainlink、Consensys、EEA、Espeo、IBM、Kaleido、Microsoft、Banco Santander、WiPro、Oracle、およびMonaxからのスポンサーシップを集めたユニークな共同プロジェクトです。

TCFを使用すると、開発者はIntel®Software Guard Extensions(Intel®SGX)を利用して、オフチェーントランザクションリソースにアクセスできます。これにより、さまざまなユースケースへの道が開かれます。例えば、ローンシステムや信頼されたトークン、または証明されたオラクルは、オンチェーンとオフチェーン間における信頼された連携作用から恩恵を受けるアプリケーションの例です。

Devcon5期間中のユニークなワークショップ:EEA Trusted Compute Specificationに準拠した報酬トークン

これらの仕様が机上の空論でなく実装へと移行したことを証明するために、ConsenSys(PegasysおよびKaleido)、Envision Blockchain、iExec、Intel、Microsoftの5人のEEAメンバーが協力して、EEA Trusted Compute Specificationに準拠する実用的なプロトタイプアプリケーションを構築しました。

このアプリケーションは、EEAメンバーシップの企業がEEA活動に参加するインセンティブとなるように作れらたトークンです。 2019年10月9日に大阪で、イーサリアム財団の主力開発者カンファレンスであるDevcon 5で初めてデモが行われました。

達成結果は、最新のEEAクライアント仕様に準拠したエンタープライズイーサリアムクライアントであるBesuで実行されているTTF(Token Taxonomy Framework)準拠のアプリケーションであり、オフチェーンEEA準拠のTrusted Computeプール上でホストされています。このプールは、iExec側でMicrosoft Azure SGX対応の仮想マシンを使ってデプロイされます。

このユースケースは、最新のEEA仕様作業とメインネット イニシアチブによって推進され、エンタープライズイーサリアムアプリケーションの意味のあるデプロイと、エコシステム内でiExecが果たす積極的な貢献の役割を示しています。

【Blockchain EXE #21 失敗から学ぶ】ディスカッション「ブロックチェーン実装を成功させるには?企業が知っておくべき技術とビジネス課題」

【世界最前線!】スケーリング、スピード、セキュリティの技術的課題や失敗を語る | Blockchain EXE#21

Blockchain EXE#21は、外部企業とのブロックチェーンプロジェクトに従事してきた事業家と共に「ブロックチェーンプロジェクトを成功に導く秘訣」あるいは「失敗するプロジェクトはこんな壁に直面する」などのリアルな情報に迫ります。

モデレーターにBlockchain EXE代表の石井氏が加わり、実例を交えながら様々な議論が行われました。

目次

PoCは上手くいかない

石井 敦 | クーガー CEO
IBMを経て、楽天やインフォシークの大規模検索エンジン開発、日米韓を横断したオンラインゲーム開発プロジェクトの統括、Amazon Robotics Challenge参加チームへの技術支援や共同開発、ホンダへのAIラーニングシミュレーター提供、「NEDO次世代AIプロジェクト」でのクラウドロボティクス開発統括などを務める。2017年に開始したブロックチェーン技術コミュニティ「Blockchain EXE」の代表を務め、世界10都市以上でイベントを開催。これまでにのべ3,000人以上が参加する国内最大規模のブロックチェーンコミュニティを主催している。現在、「AIxARxブロックチェーン」によるテクノロジー「Connectome」の開発を進めている。2018年、スタンフォード大学にて特別講義を実施。電気通信大学 客員研究員。

石井:当初の想定とは異なる問題でプロジェクトがうまくいかなかった経験や、その原因をお伺いしたいと思います。

日崎:Tezosを広げるために日本の企業を回った際に、パブリックではなくて、コンソーシアムのみを想定している企業が意外と多かったというのが、今年1年やってみての感想です。そこには、レギュレーションなどいろいろな問題があると思うのですが、各社が最後に必ずおっしゃるのは、「いずれパブリックの時代が来るとは思うけれども、それを見据えた上で今はコンソーシアムをしている」ということです。そういう意味で、コンソーシアムからパブリックに切り替えるところだけ、セッティングコストがかからなければいいのかなと思います。

真木:「ブロックチェーンって何となくよさそう」という曖昧な理由でブロックチェーンを始めてしまうと失敗するケースが多いと思います。自分がそのプロジェクトを始める時点でやる意義を感じていたのかというところと、失敗することは前提で、やる意義を考えていたのかというところが成功するか失敗するかの分かれ目かなと思います。

片岡:皆さんも経験されているかもしれませんが、PoCから入ったプロジェクトは大体うまく行きませんでした。結局、PoCは危機感が薄くなりやすいです。やれたらやりたいけど、やらなければいけないではない。大事なのは、意思決定者やプロジェクトリーダーが、PoCではなくて事業化すると腹を決めることです。そのためには手段を選ばない。何を使ってでもやろうと腹を決めることが肝心です。

ブロックチェーン単体でのビジネスは難しい

石井:エンドユーザーへの利便性とブロックチェーンの強みのバランスをどのように取っていけばいいでしょうか。

日崎:Cryptoの熱狂は過ぎてしまいましたが、ブロックチェーンに対するエンドユーザー側の理解が深まれば、今後実装はどんどん進んでいくと思います。

真木:ブロックチェーンの利便性やユーザビリティは、今後ますます上がっていくと思っています。だからといって、ブロックチェーンが浸透するとは思いません。私たちに必要なのは、ブロックチェーン技術が便利になることと、コンテンツホルダーやコンテンツをつくる人たちが巻き込まれたいと思うようなスキーマづくり、そしてスキーマを支えるのに必要なところにブロックチェーンを使うことだと捉えています。

片岡:私もブロックチェーン単体でビジネスが成り立つことは難しく、何らかの産業とブロックチェーンをかけ合わせて価値を作る企業が増えていくと考えています。既存の事例ではSSLやhttpsです。SSLがあるからクレジットカードの番号を安全に送ることができます。ブロックチェーンが入っているから、某ペイメントのようにハッキングされません。ブロックチェーンが、ユーザー側もつくっている側も安心できるような裏側の技術として親しまれるようにならなければいけないなと思います。

ブロックチェーンプロジェクトでの良い失敗

質問者A:いい失敗と悪い失敗があったと思いますが、いい失敗の例があれば教えていただきたいです。

真木:自社プロダクトで、ほとんどブロックチェーンを使わなかったのに、仕組みが分散的になったり、スキーマができたりして、発想がきわめてブロックチェーン的なものになりました。それはブロックチェーンのプロジェクトとしては失敗になるかもしれませんが、ブロックチェーンを通して、現行の法律ではうまくいかない部分を分散的にすることによって成立させる仕組みを着想できたので、とても機会になりました。

ブロックチェーンがもたらすビジネス変化とは

質問者B:インターネットのインフラをブロックチェーンで置き換えられるぐらいまでに成熟したとき、ビジネスはどのように変わりますか。

石井:ブロックチェーンは、デジタル化されてしまえば、その中で価値が保証されますが、ブロックチェーンの外に出るとかなり弱いです。そうすると、デジタル化できるものは相当ブロックチェーンで非中央集権化できると思いますが、例えば、ウーバーイーツのように人間が直接介在するサービスはなかなかデジタル化できないので、中間業者のような役割は必要であり続けると思います。

日崎:スマートコントラクトでできるビジネスというと、今まで情報が届いていなかった人に届くようになるというメリットが大きいです。今までは企業が基盤の信頼性が高かったので、この企業であれば安心だからというかたちで契約が成り立っていました。しかし、スマートコントラクトであれば、その文書に従ってさえいれば個人でも大企業と契約ができてしまうかもしれません。そのような入り口が増えたという認識をもつ必要があると思います。

技術の応用範囲と価格

真木:ブロックチェーンが浸透していき、もっといい世界ができたら、いろいろなフェーズ毎に分かれていくのかなと思うのですが、そのうちそういうシステムが要らなくなり、全部がいい感じに回ってくると、毎日本を読んだりダンスを踊ったり、好きなことをして楽しく過ごすことができるようになると思っています。結局は、その時代の中で、個人としてどのように生きていくかという話になってくるので、自分が好きなことを楽しんで生きていける人になっていければいいかなと思います。ですが、それはまだかなり先の話で、時代の転換点にそんなに早く人が対応できるとは思っていません。ブロックチェーンのシステムが要らなくなったときに、自分のできる範囲がより広がると思うので、それをビジネスチャンスにし、新しいテクノロジーをつくっていくと考えると、将来を心配しなくて済むのかなと考えています。

片岡:オープンソースの視点でお話しさせていただくと、例えば、イノベーターがいろいろな企業に属していたり個人で活動していたりしても、皆が保持したい、メンテナンスしたいからオープンソースに参加するので、オープンソースはメンテナンスされていきます。逆に言うと、皆が保持したくない、例えば、その業界のスペシフィックなものや、その業界のその場面でしか使わないカスタマイズされたものとかは価値が下がらない。皆の共有財産は値段が安くなっていくし、下手をしたらオープンソースで全て公開されるかもしれませんが、その人のためだけ、その企業のためだけ、その業界のためだけのものというのは、値段は下がっていかないのではないかなと思っています。

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【Blockchain EXE #21 失敗から学ぶ】「Tezosが社会実験を進めていく中での技術的課題」日崎皓太/Tezos Japan

【世界最前線!】スケーリング、スピード、セキュリティの技術的課題や失敗を語る | Blockchain EXE#21

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「Tezosが社会実験を進めていく中での技術的課題」日崎 皓太/Tezos Japan

日崎 皓太 | Tezos Japan
高校時代から趣味でプログラミングを始め、大学卒業後組み込み系エンジニアとして大手物流業向け在庫管理・決済システム開発。その後工場にてライン改善及びFA化推進、システム開発の傍らTezos技術の社会実装に興味を持ち、2018年よりTezosJapanシニアエンジニアとして啓蒙活動を行う。

日崎: Tezos Japanは創設1年目のNPO法人で、スイスのTezos財団から助成金をいただいて活動しています。Tezosという技術を、日本国内でスマートコントラクトを通じて企業向けのインフラとして使っていただき、競争力の向上を目指しています。Tezosとは暗号資産のことで、ファーストレイヤーの1つです。パブリックなスマートコントラクトの基盤で、ポジションとしてはEthereumと同じです。

Tezosの創業者は、アーサー・ブライトマンというフランス人です。ニューヨーク大学卒で、応用数学やコンピュータサイエンスの学位をもっています。国際情報オリンピックでフランスに初めて銅メダルをもたらしたプログラマーです。元々ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーにいたそうです。この方は、フランスでも注目されているようで、経済・財務大臣のブリュノ・ル・メール氏がTezosのプロジェクトに太鼓判を押しています。

ブロックチェーンのセキュリティ

セキュリティが死亡事故につながりかねない状況になり、Tezosはそれを非常に懸念しています。Tezosではセキュリティ対策として、システムをOCamlという言語でつくっています。これはフランスの国立情報学研究所が開発した言語で、関数型言語だという特長と、形式認証が適用しやすいという特長をもっています。これは非常に信頼性が高い言語で、エアバスのように人命がかかる場所でも使われています。

バグを8割削減

OCamlは言語の副作用がほとんどなく、メモリが後から書き換わり、TrueがFalseになってエラーが起きてしまうというような事態を防ぐことができます。これだけでバグを約8割減らすことができます。また、OCamlには、形式検証という特長があります。形式検証とは、プログラムに数学的なバグがないと言い切るための手法です。形式検証できちんと証明することができれば、安全性を担保することができます。ただし、証明が非常に難しいため、私たちは、ライブラリーとして証明済みのものを増やしていくことで社会的な安全を保っていこうと考えています。なぜここまでするのかというと、数百億円分のEthereumがハッキングによってロックされてしまうというDAO事件が起きたからです。パブリックチェーンは、1度書いてしまうと誰でも攻撃できてしまいますし、消すことができません。その問題を解決するために、パブリックチェーンに書くスマートコントラクト自体を完全にバグがない状態にしようというのがTezosの発想です。

PoSが一般的に使われる事を目指す

Tezosでは、Proof-of-Stakeを使っています。Proof-of-Workはご存じだと思いますが、Nonceを計算して、誰かが最初に見つけたら総取りできるというものです。マシンパワーがより高い人が報酬を得やすいという特長があります。一方、Proof-of-Stakeは競争ではなくて、年間数%という一定確率でトークンがもらえます。トークンの時価総額がそのままセキュリティになります。Proof-of-Workにはビットコインというパブリックチェーンがありますが、Proof-of-Stakeにはまだそこまで分散しているチェーンはありませんので、Tezosはここを本気で狙っているという状態です。Tezosのアルゴリズムは、Liquid Proof-of-Stakeと呼ばれています。これは間接民主主義と直接民主主義を合わせたような考え方で、面倒くさい人は誰かに投票を任せてガバナンスし、面倒くさくない人は自分でも直接投票できるというものです。Tezosはこのガバナンスでこれまで2回アップグレードしたのですが、問題なく合意形成が行われました。Tezosはチェーンが自分で更新していく仕組みになっており、投票でプロトコルが書き換わって、どんどんアップグレードされます。この業界の技術革新の速さに対応しています。Tezosは、財団が30%ほど保有し、活動に助成金を出して支援しているという状況です。現状は約35万のアカウントがあり、6大陸にまたがって約450人のバイデーターがいます。確実にProof-of-Stake世代のパブリックチェーンになっているということです。

質疑応答➀:証明コストについて

質問者D:形式検証で、証明にかかるコストが高いと思うのですがいかがですか。

日崎:一般的なテストの2~3倍はコストがかかると言われています。ただ、1回やってしまえばそのライブラリーとして使えますので、われわれの方針としては証明済みライブラリーを増やしていき、ユーザー側は結合テストだけで済むようにしようとしています。

質問者D:ファンドラップの一部で機能を改修するときに運営するコードは部分的な変更で済みますか。それとも、まるごと改修しなければなりませんか。改修コストを知りたいです。

日崎:基本的には、ブロックチェーンに書き込まれものを取り消すことはできません。ただ、取り消すことができる仕組みをスマートコントラクトでつくることはできます。それはEthereumでもできると思いますが、結構大変だと思います。

Tezosのユースケースについて

最近Elevated Returnsという会社がTezosでSTOをするという話がありました。これが1000億円ぐらいです。最近は高額のSTOでも、大事なトークンが逃げない、セキュリティの棄損でハッキングされてなくならないような、そういったケースで使われることが多いです。なぜかというと、Ethereumでは形式検証がないので不安だからです。実際、Ethereumでも形式検証ツールが出てきていますが、ネイティブ化に対応していないのでコストも時間もかかります。また、CoinbaseがCustodyを600億円、ブラジルのBTG Pactual & Dalma Capitalがセキュリティトークンを1000億円、Alliance Investments & tZEROがイギリスのRIVER PLAZAという不動産のトークン化に600億円、Tezosを利用するなど、着実にユースケースが増えています。これだけで3300億円ぐらいTezos上でトークンがロックされてくるだろうと思います。国内ではStirやSankaがTezosのステーキングの事業をしています。今はStirしかできませんが、ステーキングできるので興味のある方はやってみてください。

Tezosの社会実装での課題について

次に、Tezosの社会実装での課題についてです。課題としてまず、クリプトHypeが終わってしまったということです。リリースがちょうどHypeが終わった後ぐらいで、2018年初頭にローンチしたので、1番おいしいところを経験していません。ただ、私たちとしては淡々とコードを書き続けて、いいものをつくっていくだけです。2つ目として、Tezosはセキュリティや分散性をより重視しているので、どうしてもスピードが遅いです。40TPSぐらいで、スケーリングしていません。私たちは最初からPlasmaのようなセカンドレイヤーに頼って、もっとスピードを出していこうと思い、Crypto economics Labに助成金をお出ししているというかたちです。3つ目は、ツールやチュートリアルが不足しているということです。これも徐々に拡充していきます。今後、簡単な投票アプリを出す予定です。4つ目は、マニュアルが全部英語だということです。私たちがどんなプロジェクトをしているか分からないという方も多くいらっしゃると思います。こちらも拡充予定です。5つ目は、ユースケースが少ないということです。定期的にニュースミートアップなどを行う計画をしており、1年経ったので、財団からもある程度評価を受けています。6つ目は、国内のリスティングです。ホワイトリストに載らないと日本にあまり興味をもつ人はいないだろうということもあるので、現在その取り組みもしているところです。

質疑応答➁:国内における民間企業の取り組みについて

質問者E:Stir以外の国内の民間企業の取り組みについて知りたいです。

日崎:まだStirとSankaの2社しか、ステーキングサービス事業の事例がありません。レギュレーションの問題がネックになっています。具体的には、STOは海外では規制なくできるのですが、日本では4月の法改正で規制ができたからという理由もあります。そのため、日本ではSTOをやりづらいという話を事業者側からも聞いています。

質問者E:つまり、法改正されれば動きやすくなるということですか。

日崎:おっしゃる通りで、パブリックなところでSTOをするということです。私たちはパブリックチェーンであり、プライベートやコンソーシアムではないということです。日本はコンソーシアム型が多いのですが、やはりより多くの方に価値を認めてもらったほうが価格は上がりやすいと思うので、そちらのほうに移っていくと思います。

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【Blockchain EXE #21 失敗から学ぶ】「ビジネスへのブロックチェーン適用の応用事例とヒント」真木 大樹/Block Base株式会社 代表取締役

【世界最前線!】スケーリング、スピード、セキュリティの技術的課題や失敗を語る | Blockchain EXE#21

Blockchain EXE#21は、外部企業とのブロックチェーンプロジェクトに従事してきた事業家と共に「ブロックチェーンプロジェクトを成功に導く秘訣」あるいは「失敗するプロジェクトはこんな壁に直面する」などのリアルな情報に迫ります。

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「ビジネスへのブロックチェーン適用の応用事例とヒント」真木 大樹/Block Base株式会社 代表取締役

真木大樹 | BlockBase株式会社 代表取締役
2015年から外資系SIerにて貿易管理システムのグローバル展開、化学品総合管理システムの導入に関するコンサルティング業務を担当。2018年からブロックチェーン技術に関心を持ち、2000以上の作品が投稿された分散型デジタルアートプラットフォームのDigital Art Chainを始め、数多くのdAppsを開発する。より高速かつ大量のプロトタイピングを通じブロックチェーンの本当に有用なユースケースを見つけるため、9月にBlockBase株式会社を創業し、代表取締役に就任。

真木:私がブロックチェーンに興味をもち始めたのは、2018年4月です。ちょうどCoinCheckのNEM流出事件があり、仮想通貨の価格が暴落した時期でした。私もその煽りを受け、自分がもっているEthereumの価値を上げるために、「クリプトゾンビ」を使って、サービス開発を始めました。翌5月に「S Digital Art Chain」という、ブロックチェーン上にデジタル作品を投稿するサービスをリリースしたところ、海外の方々に受け入れられ、約3200のトークンが発行されるまでになりました。私は、ブロックチェーンサービスの開発者の方々とコミュニティをつくり勉強会を開くうちに、もっと多くの人にとって価値あるサービスをつくるためには、個人で開発するよりも会社をつくったほうがいいという考えに至り、2018年9月にBlock Base株式会社を立ち上げました。

受託開発やコンサルティング業務での失敗について

ブロックチェーン受託開発の難しさ

事業を行っていくと、ブロックチェーンの受託開発にニーズがあることが分かりました。ハッカソンなどのイベントで優勝したりすると、「こんなサービスを開発できませんか」というお話をたくさんいただきます。特に、ブロックチェーンゲームの実装やブロックチェーンでの証明書発行の実装、会社のトランザクション情報をブロックチェーン上にプールして改ざんできないようにする仕組みづくりやスマートコントラクトを使ったサービスのチェックなどが多いです。しかし、受託されたことだけをしていると自分たちが使っている技術がだんだん陳腐化してしまいます。また、受託開発になると、つくるものが決まっているので、それをつくる意義を考えずに、ブロックチェーンを使って実装することに価値が生じてしまい、その結果、ブロックチェーンを使ってみただけということになるリスクもあります。受託開発は、工夫していかないと案件を続けていくだけで消耗してしまうので、クライアントの期待値を外してしまうリスクを避けるためにも、一緒に何をつくるかというところから考えられる、目線合わせができるクライアントとだけ仕事をするのがいいと思います。

ブロックチェーンだけで会社の課題を解決できることはない

最近では、ブロックチェーンをサプライチェーンのマネジメントで使いたいという話が増えており、私たちもコンサルティング会社とタッグを組んで鉄鋼商社のSCMマネジメントの部分をブロックチェーンで構築しました。サプライチェーンにはいろいろなステークホルダーがいるので、その業界の知識やコネクション、慣例も重要になります。しかし、ブロックチェーンだけで会社の課題を解決できることはほとんどありません。コンサルティングの場合、従業員が事業に参加する場合が多いのですが、彼らのニーズは自分たちが行っている業務が楽になることなので、ブロックチェーンで何かをするよりも、紙を電子化するなど、SIerがシステムを構築するようなかたちで改善したほうが、価値ある仕事を提供できるケースが多いです。コンサルティングは、その部分がすごく難しいと思います。

Block Baseが開発した自社プロダクトと失敗について

受託開発やコンサルティングをすると、少しずつキャッシュが貯まってくるので、自社プロダクトをつくることができるようになります。自社プロダクトは、受託開発と違い、自由にいろいろなものをつくることができます。例えば、「bazaaar」というデジタルアセットの取引マッチングサービスです。Crypto KitteisやCrypton、My Crypto Heroesなどのデジタルアセットを取引することができます。また、「オタクコイン」といって、オタクコミュニティでクリエイターを応援するためのコインを使って、ゲームを交換することができるサービスもつくりました。さらに、物と物との流通をトークンや仮想通貨、ブロックチェーンを介して行う、「イレカエ」というサービスを開発しました。これは2020年1月にリリースする予定です。PS4などのゲームを共同で管理できるライブラリーで、自分がもっているゲームを入れると、他の人がもっているゲームも遊べるようになるというものです。

ブロックチェーンを使う意義を忘れない

自社プロダクトは、自分たちがつくりたいものをつくることができます。しかし、つくっているものがクライアントのニーズに合っているとは限りません。BazaaarもNFTの取引は少しずつ増えていましたが、途中で開発作業が思わしくなくなり、オープンソース化してしまいました。ブロックチェーンを前提にして仕組みをつくってしまうと、ブロックチェーンを使っているユーザーには便利だけれども、ブロックチェーンを使っていないユーザーには使う必要のないツールになってしまいます。ブロックチェーンを使ったからではなく、ブロックチェーンを使う意義を見出だすから価値が生まれるのです。

実証実験での失敗について

最近では、音楽の原盤権をブロックチェーンで配布する実証実験をMaltine Recordsとコバルト爆弾αΩと共同で行っています。また、3Dモデルの権利をブロックチェーンで証明する取り組みも行いました。実証実験は、自社プロダクトと違い、社会にインパクトを与えないまま終わってしまうことがほとんどです。音楽の原盤権の実証実験は現在でも続いていますが、3Dモデルのほうは自然消滅してしまいました。実証実験なのに保守や運用が必要なスキームを選んでしまうと、マネタイズもしないのにデータベースやサーバーのメンテナンスをしなければならなくなり、コストがかかってしまうので、自然消滅しやすくなります。

ブロックチェーンは失敗がいっぱいできる

ブロックチェーンのいいところは失敗がたくさんできるところです。一般的に受託開発をすると、失敗前提でプロジェクトを組めないことがあります。どれだけユーザーが満足してくれるか、どれだけ業務が効率的になるかを追究しなければなりません。しかし、ブロックチェーンは、ビジネスモデルやロードマップを並べて、どのような価値を提供することができるかをクライアントと一緒に話し合うことができます。ブロックチェーンは確かに失敗も多いですが、それだけいろいろな学びがあります。会社としては、マネタイズと自分たちが興味のある取り組みの両方のバランスを見極めながら活動していき、ブロックチェーンに関する経験則や、こういうプロジェクトには意味がある、意味がないといった判断基準が少しずつ明確になってきたので、今後その精度をさらに上げて、ブロックチェーン業界で世界に貢献していけたらと思っています。

質疑応答

質問者C:ブロックチェーンありきで考えてしまうと、ただの便利ツールになってしまうというお話がありましたが、それはどういう意味ですか。

真木:今ブロックチェーンに親しみがあるユーザーをターゲットにサービス開発をしてしまうと、結局、その人たちが使うツールになってしまうので、スケーリングする必要もなくなりますし、ユーザー評価がある程度のところで頭打ちになってしまって、その後の展開が難しいということです。

質問者C:運用が大変でプロジェクトが消滅してしまうというお話がありましたが、具体的に運用のどのようなところが大変ですか。

真木:運用が大変というよりも、良くない実証実験のシステムが生き続けてしまうことが問題です。システムが生きているということは、データベースの管理コストやサーバーの運用コストが毎月課金されますし、そのサービスに問い合わせをする方への対応コストもあるので、そのサービスを運用するのに多くのコストがかかってしまって大変だということです。

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【Blockchain EXE #21 失敗から学ぶ】「パブリックブロックチェーンのスケーリングの実現の成功について」片岡 拓/株式会社 Crypto economics Lab CEO

【世界最前線!】スケーリング、スピード、セキュリティの技術的課題や失敗を語る | Blockchain EXE#21

Blockchain EXE#21は、外部企業とのブロックチェーンプロジェクトに従事してきた事業家と共に「ブロックチェーンプロジェクトを成功に導く秘訣」あるいは「失敗するプロジェクトはこんな壁に直面する」などのリアルな情報に迫ります。

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「パブリックブロックチェーンのスケーリングの実現の成功について」片岡 拓/株式会社 Crypto economics Lab CEO

片岡拓 | 株主会社Cryptoeconomics Lab CEO
2015年、慶應義塾大学商学部卒業。ネット型賃貸仲介会社、ジャカルタにおける焼肉店の展開などの起業を経験し、2018年、Cryptoeconomics Labを創業。

片岡:皆さん、初めまして。Crypto economics Labの片岡といいます。どうぞよろしくお願いいたします。本日は、パブリックブロックチェーンのスケーリングの実現の成功と失敗についてお話ししたいと思います。

私はCrypto economics Labという会社でCEOをやっているのですが、もし弊社の名前を聞いたことがあるという方がいたら、この落合渉悟という者を知っていらっしゃるのかなと思います。私は、この業界に入ってから初めてのプレゼンテーションで、大変緊張しておりますので、お手柔らかにお願いいたします。

ブロックチェーンのスケーラビリティを解決するプロジェクト

私たちは、Plasma Chamberという、誰もがスケーラブルなブロックチェーンアプリを、ブロックチェーンの長所を失うことなく構築できるサービスをつくっています。ブロックチェーンにおける既存の課題として、データを処理する速度(TPS)がきわめて遅いこと、大量のデータを扱うことができないこと、EthereumではGAS負担がかかってしまうこと、規制がかかってしまいユーザビリティが損なわれることが挙げられます。ブロックチェーンの利点であるセキュリティなどを維持しながら、これらの問題を解決するのが課題だと思っています。

それに対する解決策として提案されたのが、Plasmaです。これは、Ethereumやライトニングネットワークの開発者であるジョセフ・プーンと、Ethereumの創設者であるヴィタリック・ブテリンが2017年に提案した技術です。彼らの提案に対して、2017年10月に私と落合でこれを翻訳し、以来2年間、この技術の開発の実装に努めてまいりました。

Plasmaの特長

Plasmaには、いろいろな特長があります。1番大事なところで言うと、ハイセキュリティです。ブロックチェーンにはトリレンマがあります。例えば、ディセントラリゼーションを少し失わせれば、スケーラビリティもセキュリティも上げることができます。逆に、セキュリティを失ったら、ブロックチェーンの価値がなくなってしまいます。スケーラビリティを少しだけ失わせたのがビットコインやEthereumですね。スケーラビリティは失われますが、ディセントラリゼーションとセキュリティは高い位置にある。このように、ブロックチェーンには3つを同時に取ることができないという特徴があります。

ブロックチェーンのトリレンマを解消する

Plasmaならば、この3つを同時に取ることができるのではないかというのが、先ほど紹介した提案です。実際にPlasmaを実装するとどうなるかというと、ハイセキュリティになります。Ethereumと同等のセキュリティレベルになり、秒間数十万/TPSの処理速度になります。また、エンドユーザーがGASを払うことなく利用できますし、FastFinalityという機能があり、0.2秒で着金できたり、DAIやLCJPY、USDTのようなステーブルコインを使ったりすることもできます。あとは、スマートフォンの様々なデバイスに対応しています。

ブロックチェーン技術の実用化へ

このあたりまで来ると、これまで騒がれるわりには使えないものであったブロックチェーンが、大分使えるものになってきたということがお分かりいただけると思います。これがPlasmaの技術的な要素です。弊社の場合は、TezosやEthereum、Polkadotに対応しており、この3社のテストネットで皆さんがデフロイできるように実装しています。今まで研究成果を発表したり、登壇してお話をさせていただいたりして、グラント(助成金、付与)などもいただいています。代表的なものでいうと、今年大阪で開かれたDevcon5でも、日本から出場したのは3チームだったと思いますが、そのうちの1チームとして出させていただきました。Tezosからもファンデーショングランプリをいただき、公式の開発助成金をいただいていますので、TezosのデファクトスタンダードとしてのPlasmaをつくらせていただいています。あとは、Ethereum Foundationからもグラントをいただいています。グローバルなファンデーションとしっかりコミュニケーションを取っていきながら、私たちの独自仕様にならない、グローバルな標準としてのPlasmaを広げていきたいと思っています。

世界レベルの技術へ

プロダクトのデモをお見せします。これはウォレットでペイメントのアップを実行しています。一般的なブロックチェーンならばこのぐらいできて当然のように見えるのですが、Plasmaはこれを秒間50万トランザクションさばき切ります。このレベルのものが世界に出るのは初めてで、これが、弊社がDevcon5で発表した内容になります。もしかしたら皆さんの頭の中では、Plasmaの開発が全く進んでいないように思われていたかもしれませんが、実はテストネット環境ではこのようにペイメントを行えるようになっていますし、来年の頭にはエンジニアの方々がPlasmaのノードを立てて、その上でアプリケーションを実行、デフロイできるものが出てきますので、ぜひ楽しみにしていてください。

Plasmaのユースケース

この技術を使って、日本や海外企業といくつかのユースケースを作っていますので、少しだけ紹介させていただきます。

今、日本でずっとやらせていただいているのが、中部電力と一緒にP2Pの電力プラットフォームです。これは何かというと、もともと太陽光パネルを設置して、発電した電気を政府が買い取ってくれたんですね。ですが、政府が買い取ってくれる制度が終わるため、自分でつくった電気が余ってしまいます。それを友達や近隣の住民に売りたいというときに、中部電力のベースローンにもう1回戻してしまうと送電のロスがあるので、P2Pで取り引きできないかと考えました。しかし、電力を渡したけれどお金が支払われないという問題が起こると困るので、スマート決済でお金と電力が同時に動くようにしました。そうすると、顔も知らない第三者との間で電力の取り引きすることができます。こういったプラットフォームを作っています。

また、分散型のデータ保存に関しては、IoTや医療、不動産関係などたくさんの企業と事業をやらせていただいています。ブロックチェーンの基本の使い方ですが、データをきちんと記録していって、改ざんのないようにするということです。その上で、改ざんのないデータを使って、不動産の証券化をしたり、不動産の担保ローンをしたり、保険で言えば、自動車保険をそれで使ったりと、いろいろなスマートコントラクトを実行する基盤をつくっています。

ブロックチェーンプロジェクトでの失敗や難しかったこと

※非公開情報があるため、片岡氏のプレゼンのポイントをまとめます。

1.パブリックブロックチェーンとプライベートブロックチェーンのバランスとフォーカス

iOSやAndroidといったOSが100個あっては困るように、徐々に1つや2つに収斂されていく。その中で、長期的視点は持ちながらも、現在の市場ニーズに合わせてコンソーシアムのようなプライベートチェーンを取り入れたりしている。コンソーシアムチェーンからパブリックへの移行もできるので、二元論で語る必要はない。

2.研究開発とビジネスのバランスとフォーカス

グローバルでみても研究開発に投資できている会社である自負を持っているが、それはビジネスもやっているからこそ成り立っている。ICOをやるという選択肢もあり、多額のお金を集めていた他のプロジェクトもあったが、スケーリング技術にトークンは必要ないと判断してICOはしなかった。事業をやる上で本質を捉え、サステナブルな研究開発の実現を意識している。

3.フレームワークとドメインのバランスとフォーカス

多くの人に利用されるために、スタンダードとなるフレームワークを開発しながらも、特定のドメイン内で使い、他のドメインで転用するなど、ドメインを行き来しながらの開発が必要。フレームワークによりすぎても、ドメインによりすぎてもダメ。経営資源とのバランスの中で優先順位をつける必要がある。

4.安定性と開発スピードのバランスとフォーカス

Rustで開発を進めていたが、開発が難しく、ユーザーニーズを検証する事を優先するためにTypeScriptで開発スピードを上げた。短期と長期の視点をバランス持つことが重要。

二元論で語らず、バランスとフォーカス、そして優先順位をつけて事業を行ってきたことが今の競争優位性につながっている。

質疑応答

質問者A:研究開発などでいろいろなトラブルがあったと思いますが、どのぐらいの期間で成果が出なかったら止めるとか、そのような判断基準はありましたか。

片岡:それは結構難しい問題です。Plasmaに関しては、「開発はものすごく難しいけれども、不可能ではない」というのが当時の一般論だったので、いつかできると思っていましたし、できたときにそれがブロックチェーン業界に与える功績は大きいと信じていたので、完成するまで10年は待つと決めました。ですが、やってみると、意外に3年で行けたという感じです。

質問者A:なるほど。腹の座りようがポイントですね。

片岡:そうですね。多分研究開発分野は全部そうだと思います。意思決定者がどこまで腹を据えられるか。とは言え、撤退ラインがあるわけですから、その撤退ラインをできるだけ長くするために、ビジネスでお金稼ぎをきっちりやることが大事です。そうやって、10年でも20年でも長く研究開発を続け、その間に成果が出るのを待つというのが研究開発ベンチャーのあるべき姿だと私は考えています。

質問者B:私もブロックチェーンの会社を経営しているのですが、実際にプロジェクトを動かすことができるリテラシーのある企業と巡り合うにはどうすればいいでしょうか。

片岡:私たちの何がよかったかというと、研究開発をし続けたことが全てでした。今の強みはここにしかありません。研究開発をして、いいものをつくっていくと、EDCONやDevconに出ることができます。EDCONやDevconに出ると、見てくださるお客様がたくさんいます。そこに来るお客様は志の高い人ばかりですから、それいいねと言って仕事を発注してくださる方もいます。ですから、結果的に、研究開発にフォーカスし続けていくことがマーケティングにもなりますし、人材採用がうまくいく要因にもなります。コミュニティの人たちが勝手に私たちのところにアプライしてくれます。そのほとんどがとても優秀な外国人で、あなたたちの技術は分かっているから一緒にやらせてほしい、最悪OSSで、給料もいらないよと言ってくださる方々が来てくださっているというのが現状です。

質問者B:ポイントとしては、リテラシーが高い人が集まる場所に行くということですね。

片岡:そうだと思います。そのときには、何か1つ強みやこの会社に頼む理由をつくることが大事です。私たちの場合はそれがスケールでした。スケーリングをやりたかったら、頼める会社は世界に5社ぐらいしかありません。そのうち、Plasmaに関しては、わが社ともう1社しかありませんので、自然に問い合わせが来るという環境になっています。

質問者B:グローバルマーケットの中で、両手や片手に収まることのできる分野を狙って勝っていくということですね。

片岡:そうですね。本当にいいものをつくって、登壇の機会などがあれば、私はチャンスが来るものだと思っていますので、ブロックチェーンのイベントが世界中で行われているので、そこでブロックチェーンのインフルエンサーのような人たちが1回でも見つけてくれれば、彼らが大々的に広げてくれて、結果的にクライアントが増えるのではないかなと思います。

質問者A:片岡さんはユーザーニーズに近い分野を研究開発されていますが、ユーザーニーズから遠くて、今後どうなるか分からない分野をあえて狙うことはありますか?

片岡:先ほど10年といったが、できれば2、3年後に来そうなもので、コアテクノロジーに行き過ぎない分野がいいと思います。面白い技術は実際にありますが、ビジネスモデルが正直作れないというものもあります。Plasmaの場合はノードを立てる必要があるので、私たちがサーバーを提供する必要があって、そこがビジネスになり得ます。同時に、トラストレスにできる。だから、ブロックチェーンカンパニーやエンタープライズカンパニーの方々に私たちのサービスを使っていただけています。ビジネスと研究開発のギリギリのところを攻める。そして、2、3年後の未来に張るというのが私たちの意思決定の基準になっています。ありがとうございました。

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【Blockchain EXE #20 SDGsへのブロックチェーン活用⑤】ディスカッション:持続可能社会の実現に必要な事とは?

持続可能社会の実現に迫る!SDGs達成にむけたブロックチェーン活用のチャレンジ!!|Blockchain EXE #20

Blockchain EXE#20は、ブロックチェーンが、SDGsで掲げられた目標である持続可能社会の実現をいかに後押しすることができるのか、各領域で活動する事業家と共に、その実態と今後の展望について迫りました。

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ディスカッション:持続可能社会の実現に迫る!SDGs達成にむけたブロックチェーン活用のチャレンジ

石井:今日のプレゼンテーションの共通項は、ブロックチェーンが自動で持続される仕組みを作っているということでした。SDGsを実現し、持続可能なものにする上で、ブロックチェーンの活用が難しい部分はありますか。

小林:ブロックチェーンとは全然関係ありませんが、いわゆる社会課題解決のためのサステイナブルな活動が続くように、12年ぐらい前にワークした事例に、水を買うとアフリカの途上国に井戸を掘れるというプロジェクトがあります。井戸を掘ると何がいいかというと、水を汲んだり、飲んだりすることがコモディティ化することです。日常生活で無意識に行う動作のうち、どれか一つがSDGsに紐づいていると、持続可能というか、無意識に続けることができると思います。

安田:今の話を聞いて、特化することかなと思いました。プラットフォームも大事ですし、アイデンティティもある意味インフラストラクチャ―なので、井戸を掘ることがアイデンティティと分散しがちなのですが、SDGsには17の項目があります。これは女性平等、これは貧困、水、森、平和、労働環境などのように、かなり細かくきれいに整理されています。それを1つずつつぶしていかないと駄目だなと思います。プラットフォームでSDGsの項目毎の達成度がわかるものがあると、もっと解決につながるのではないかと思いました。

SDGsの枠組みは大きすぎる

平井:私が思うに、SDGsという枠組み自体が大きすぎるので、もっと細分化する必要があると思います。すでに、SDGsの中でも百何十個に細分化されているのですが、どんどん細分化してピンポイントに取り組んでいく必要があるかなと思っています。例えば、弊社で今、教育関連のプロジェクトを行っていますが、難民の方も含めて、平等な教育が受けられない子ども達がやはり多いです。そういった問題をブロックチェーンで解決できないかということで、教育関連の方と一緒に取り組もうとしているのが、ブロックチェーン上に学歴などの情報を保存でき、その人に足りないようなスキルや本来ならば身につけておかなければならないスキルを無料で世界中の人から教えてもらえるというサービスです。教えてくれた人にはトークンのようなものを発行し、勉強した子にはご褒美をあげようというようなことをしています。実行しようとしているのですが、やはり規模感が大きいので非常に苦戦しています。そこをどう小さくして、どこからスタートしていくかというところをきちんと考えていく必要があるなと思っています。

長期的利益をユーザーが享受するために

石井:ブロックチェーンに書き込むという部分で、先ほど安田さんから話してもらいましたが、デジタルIDを取得するメリットすらわからない、手続きに時間がかかるといった点で目先の利益を考えると導入が進みにくいのではないかという課題もありますが、その中でインセンティブ設計を技術的なもので解決する仕組みが重要だと思います。それに関してどう思いますか。

平井:インセンティブ設計というところでいくと、基本的には、企業側がとりあえず原資を持ち出す形になります。そして、ある程度トークンに価値が出てきたところでリターンを得るような設計を考えています。というのは、10数年前にCSR活動というのが流行ってきたのですが、中々うまくいきませんでした。その原因は、利益を取るということが当時の日本に馴染まなかったからで、その後にCSVKやUSG投資などいろいろと出てきましたが、ようやく今は利益を取っても大丈夫という話になってきています。なので、ある程度最初は原資の持ち出しにして、トークンが循環できたところでリターンを得るような設計を考えているところです。

伊藤:1つ前の話に戻りますが、私は実はSDGsについてあまり詳しくなかったのですが、勉強してすばらしいと思ったのは、世の中に世界共通の目標がなかったところにSDGsを打ち出し、世界の人たちが一緒に何かを達成する土台を作ったことです。言語が違う人たちが一緒になってSDGsに取り組んでいくためには、今のデジタルな世界をデジタルな仕組みに落とし込み、それを管理するシステムを作ることが必要です。SDGsの考え自体にはブロックチェーンは関係ありませんが、そういった考えをシステムに落とし込むときに、自律的にワークさせるような仕組みだと親和性が高いかなと思います。

安田:ブロックチェーンはいろいろな要素や技術の集まりです。トークンの話をされていましたが、ブロックチェーンを利用する時に、そもそもブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズムを変えると、トークンを発生させなくても使えます。トークンはその上に作るもので、トークンでなくてもいいです。何をどう使って解決していくのかというところの見極めはもう少し必要だと感じています。政府の改ざんがないところの証明だけでいうと、電子署名だけでいいかもしれません。もう1つは、先ほどの話と近いのですが、理想的なブロックチェーンの使い方は、ビットコインであると思っていて、Peer to Peerで運営しているLibraが出てきたときにつぶされたのは、やろうとしていることはビットコインと変わらないけれども、Facebookという攻撃対象があったじゃないですか。でも、ビットコインは絶対に消えない仕組みなのです。アイデンティティもそういう仕組みを作りたい。人が運営していて、この人たちがバリデートしたら、このアイデンティティは絶対登録されるという仕組みを作りたいです。一方で、それを大企業が使おうとしているという矛盾もあって、大企業を不必要とするためにできた技術のはずなのに何だっけという部分もあります。彼らが使うべきではないという意味ではなく、いろんなアプリケーションがある中で様々な定義はもっとあってもいいと思っています。

結局ブロックチェーンとはなんなのか?

小林:とても深遠な議論になりそうなのですが、結局ブロックチェーンとは何か、非中央集権とは何かとなった時に、おっしゃったように、ビットコインに刻まれた情報は消えない、改ざんできないというのは確かです。100%そうなのですが、そこに今、問題が2つあって、ブロックチェーンに情報が刻まれているのは確かなのですが、誰がインプットしたのか、誰が読むのかというのは、まったく違います。ここはある種、脆弱というか。これはあの国のあの子のIDだとインプットしたというのは誰でも言えてしまう部分で、ブロックチェーンは保存された後は万能で、これに代わるものはないという気がしますけれども、インとアウトがまだまだ課題です。

安田:昨日お会いしたスタートアップが、トランザクションをトレースバックして、無理やりこじつけるというのをやっていて、全員分はわからないと思いますが、児童ポルノサイトから来たという人は大体わかっているらしくて、私もびっくりしました。ビットコインのトランザクションのうち、そういったポルノ系、AMLによく引っかかっているものは8%しかないらしくて、思っているより少ないし、思ったよりブロックチェーンユーザーはホワイトだということに結構びっくりしました。本当かどうかわからないですけどね。

標準化と中央集権化のジレンマ

石井:みなさんの話と共通して、ぼくが思うことですが、標準化してなるべくみなさんが納得できるようなデジタルアイデンティティを作るという、サステイナブルな部分はあるのですが、この話とそれぞれの個人の主張がなかなか合致しません。ブロックチェーンで起きているハードフォークの連続というのは、収拾がつかない場合があります。こういう状態でどうやってプロジェクト化するのでしょう。結果的にコミュニティが力をもっている形になります。新しくできたブロックチェーンが技術的に優れているとか、パフォーマンスが高いと必死に言っても、あまりみんな試そうともしません。そうなってくると、大きくて、みんなが使っているコミュニティを自然と信頼するしかない。なかなか検証も難しいところですね。要するに、物理法則というのは変わらないと決まっているからみんな受け容れていますけど、デジタルなだけに変えられてしまうという穴がどうしても目立つと思うのです。それでどうなるのかなというのがぼくの疑問です。

小林:例えば、ビットコインが一番有名で寿命が長いわけですが、今、13,000から15,000のノードに散らばっている中で、たった10個ほどのマイナーが約8割を占めていて、結局中央集権でいろいろやり取りされているわけですよね。一方で、純粋なブロックチェーンが好きな人、エンジニアの人、もしくは、哲学的な人というのは、decentralizedに理想郷があると思ってやっているわけです。しかし、decentralizedはほぼワークしない。ワークしないというのは証明されているのではないかと思います。どこまでいっても、やはりdecentralizedな部分と管理する部分があって、絶対に必要なのかなと思います。

平井:分散というところのブロックチェーンは、非中央集権という部分が取り沙汰されていますが、ブロックチェーンの考え方で一番大事なのは、データの共有です。まずは、本当にそのデータを共有する価値があるかというところを見て、それから分散型非中央集権でいいかというところを見ていく。分散型だから理想郷のような国が作れると言う方もいらっしゃいますが、ブロックチェーンの一番いいところはデータ共有、そこに対してセキュリティが改ざんされない。そこから発想していくのが一番いいかなと常々思っています。

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【Blockchain EXE #20 SDGsへのブロックチェーン活用③】ブロックチェーンが生み出した新しい文化 – 平井威充 | ステラエックス株式会社

ブロックチェーン活用のチャレンジ!!|Blockchain EXE #20

Blockchain EXE#20は、ブロックチェーンが、SDGsで掲げられた目標である持続可能社会の実現をいかに後押しすることができるのか、各領域で活動する事業家と共に、その実態と今後の展望について迫りました。

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ブロックチェーンが生み出した新しい文化 – 平井威充 | ステラエックス株式会社

平井威充 | ステラエックス株式会社 代表取締役CEO
国内金融機関にて企業年金の資産管理・資産運用業務に従事。また、人事部にて新卒・中途採用業務にも携わる。2012年ごろからブロックチェーンとディープラーニングに興味を持ち2015年に退職。退職後ブロックチェーン業務にエンジニアとして携わり、2018年1月ステラエックス株式会社を設立。現在はアプリ名「island」を今夏β版としてローンチしブロックチェーンの実運用を行うとともにトークンを活用した新しいコミュニティ文化経済圏を研究している。

平井:ステラエックス株式会社の平井です。よろしくお願いします。テーマが持続可能な社会ということで、普段私がこのテーマについて考えていることをみなさんと共有したいなと思っております。

簡単に自己紹介をします。私は大学院を卒業してすぐに三菱UFJ信託銀行に勤めました。そこではファンドマネージャーとして、企業年金の株の運用や債券の運用、あとは人事部で新卒・中途採用の担当をしておりました。2010年にブロックチェーンやディープラーニングに出会って、これからそういう時代が来るんだろうなと思い、2016年に三菱UFJ銀行を退職しました。ITに疎かったので、プログラミング学校でディープラーニングとブロックチェーンのプログラミングを勉強しました。それと合わせて、スタートアップ会社でエンジニアの修業をして、昨年会社を立ち上げました。会社では、アイランドというアプリをリリースしております。そして、それに伴う独自のブロックチェーンAPIを提供しています。また、大学院などでブロックチェーンの教育やコンサル業のようなものをしております。

本日お伝えしたいことは、持続可能な社会を考える上で私が大事だなと思っていることと、コミュニティの重要性です。最後に、アイランドの活用事例をお話したいと思います。

持続可能な社会を考える上で大事なこと

持続可能な社会を考える上で大事なキーワードは、文化です。私は、文化を「特定の共通する価値観でつながり、発展すること」と定義しています。つまり、趣味でつながったり職でつながったり生まれた地が一緒だったり、そのような共通の価値観でつながり、後世にスキルや知恵を残すことが文化だと私は考えています。なぜ文化が大事かというと、文化が人を進化させてきたからです。先祖から伝わるスキルや知恵をどんどんアップグレードさせて人間は進化してきました。「サピエンス全史」の中にも、人間は生まれた環境に依存しながら発達を繰り返してきたという記述があります。

人類の進化と文化

もう一つ、コミュニティも大事です。もともと人は一人では生きていけず、いろいろな集団の中で生きてきました。古くは村社会から始まり、国ができて、そして会社というものができて、ずっと人はコミュニティの中で生きてきましたし、今後もその流れは変わりません。今後は個人の時代だと言われていますが、私はコミュニティの時代だと思います。個人のスキルや知恵が、コミュニティの問題解決に役立つような時代が来るということです。そのコミュニティの土台となるものが文化であり、文化をどう形成するかということが今後の課題になってきます。例えば、今日Blockchain EXEのイベントにこうしてみなさんに集まっていただいているわけですが、ブロックチェーンのイベントは他にもたくさんあります。このイベントと他との違いは何かというと、私は文化の違いだと思います。今回のイベントのように、私たちの文化をどんどんアップデートしていくような機会が必要です。

SDGsにもコミュニティや文化が必要です。17番目に「パートナーシップと連携で課題解決をしていきましょう」とありますが、これがコミュニティのことを示しており、コミュニティを形成して他の16個の課題を解決していこうというのがSDGsの基本的なコンセプトだと認識しています。例えば、高齢者コミュニティ。日本は、高齢者の交流が少ないということが大きな課題になっています。ドイツ、スウェーデン、アメリカ、日本の4か国で行われた国際調査で明らかになったことですが、病気などのときに頼れる人がいるか、近所の方と相談し合うことができるかという質問に対し、いる(できる)と答えた人の割合が日本だけ極端に低かったのです。そのような現状を見ると、今さら日本でコミュニティを流行らせる必要はないじゃないかと思われるかもしれませんが、そうではありません。実は、コミュニティに入ることで健康度合が変わってくるそうです。例えば、コミュニティに入っている方と入っていない方で、介護が必要な方の割合が倍ぐらい違うという結果が出ています。コミュニティに入ると、総介護費用が1.3~3.6兆円も削減できるという試算も出ています。いかにコミュニティが重要かというのがこれでわかっていただけると思います。

アイランドについて

私がそういった文化やコミュニティの重要性に気づいたのが3年ぐらい前なのですが、そういった考えを踏まえて開発したのが「アイランド」というアプリです。これは、今年の8月からAndroidとiOSの両方でベータ版として公開しています。無人島に集まってきた人たちが互いに工夫し助け合うことで島を盛り上げていくというコンセプトのもとに作りました。単純にいうとSNS型の独自コイン発行アプリです。要は、コミュニティがたくさんあって、コミュニティの中で独自のトークンが発行されています。そこで行動するとコインが付与されるというものです。コインはチケットと交換することができます。事例については後ほど説明しますが、特徴としては、コインとチケット、ブロックチェーンを使っているということです。コインはERC20、チケットはERC721、ブロックチェーンはAzureのQuorumを使っています。

なぜブロックチェーンを使うのか

やはり大事なのは、なぜブロックチェーンを使うのかというところです。私が思うブロックチェーンの勘所は次の3つだと思っています。

  1. 本当に正しい履歴としてその情報を管理する必要があるか
  2. データ共有する価値があるか
  3. 唯一無二として価値保存する必要があるか

このような3つの観点から、ブロックチェーンを使うかどうかというのを考える必要があると思います。

➀本当に正しい履歴として管理する必要があるか

銀行とブロックチェーンは相性がいいと言われています。ATMを思い浮かべてみてください。ATMはいつ誰にいくら支払ったとか、支払ってもらったとかいうような情報は、マネーロンダリングなどの関係から正しい履歴をもっておく必要があります。しかし、家計簿アプリのようなものならば、必ずしも何日にいくら使ったかを管理しなくてもいいと思います。家計簿のように、正しい履歴よりも結果が重要なものは、ブロックチェーンとあまり相性がよくないと思います。

➁データ共有に価値があるか

企業の人事部で採用を行う際、履歴書は事務所で管理しますが、転籍や転入がある場合は基本的に紙やエクセルデータでやり取りします。しかし、それは結構リスキーで、もしかしたら誰かがそれを見るとか改ざんするとかいうような話にもつながります。そういうときにはブロックチェーンで共有しておけば、使うメリットがあります。

③唯一無二として価値保存する必要があるか

これは小説を書く場合などを思い浮かべていただけるとわかると思いますが、著作権に関連する部分などで使えるかどうかが勘所かなと思います。

アイランドは、トークンやチケットを使っています。データ共有については、今後サービスを拡張していくときに使いたいと思っており、そういう面を考えると、やはりブロックチェーンを使った方がいいという話になりました。

アイランドの活用事例

ここからアイランドの活用事例をお話しさせていただきます。

まずミュージシャンの方に使っていただいています。この方は新規のファンやコアなファンに対してSNSを使って、情報の調整を行っていますが、どうしても新規のファンとコアなファンに同じような情報が流れてしまうということで悩んでいました。やはりコアなファンには彼らに喜んでもらえるような情報を提供してあげたいということで、アイランドのアプリを使っていただいています。例えば、独自コインを発行して、ライブ会場でプレゼントする。グッズを購入したら、コインを付与する。友達を紹介したら、コインを付与するといったような使い方です。コインを貯めると、ライブの割引チケットと交換できます。そして面白いのが、未発表曲をYouTubeの非公開動画としてアップして、コインを貯めてくれた方にその動画のURLをプレゼントするという特典も用意しています。そうすることで、コアファンの方がどんどんついてきているようです。

2つ目の事例は飲食業です。ここも面白い取り組みをしています。これは渋谷にある焼鳥屋さんで、たしか15~20人ぐらいしか入らないお店ですが、今年の8月からスタートしてすでに三百数十人の方がそこに参加しています。売り上げの5%を還元したり、SNSで投稿した人にコインをプレゼントしたりしたところ、リピーターがものすごく増えたそうです。また、交換できるチケットの内容が面白くて、裏メニューが食べられるのです。そうすると、初めて行ったお客さんが、隣の常連さんが食べている裏メニューに魅かれて、アイランドに参加するような流れができます。そうやって、どんどんリピーターが増えていきますので、あまり大きな声では言えませんが、飲食店の口コミサイトが提供しているような食事券のサービスよりも断然効果があるということで、大変ご好評いただいています。

3つ目、これは地域通貨です。ローカルテレビの方からアイランドで地域通貨を作りたいというお話をいただきまして、商店街でのコインの還元であったりボランティアの返礼としてコインを付与したりする取り組みです。コインが貯まったら、地元の方が旅行プランを考えて、そのプランを提供します。

以上が活用事例になりますが、弊社のホームページからアイランドのアプリのLPまで飛ぶようになっていますので、一度ダウンロードしていただき、コミュニティを作りたい、独自コインを作りたいという方がいらっしゃいましたら、無料で使えますので、ぜひ使っていただければと思います。

持続可能な社会を目指すために、私はこの3つのかけ算が大事だと思っています。まずは、文化というものが人を構成している一番大事なものです。どの時代も、人間はコミュニティに入らないといけません。そこに最新のテクノロジーがかけ合わされて、持続可能な社会が形作られると思います。

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【Blockchain EXE #20 SDGsへのブロックチェーン活用②】トークンエコノミーにおけるブロックチェーンとトークンの使い分け。個人の信頼を可視化を設計するか – 小林 慎和|株式会社bajji

持続可能社会の実現に迫る!SDGs達成にむけたブロックチェーン活用のチャレンジ!!|Blockchain EXE #20

Blockchain EXE#20は、ブロックチェーンが、SDGsで掲げられた目標である持続可能社会の実現をいかに後押しすることができるのか、各領域で活動する事業家と共に、その実態と今後の展望について迫りました。

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トークンエコノミーにおけるブロックチェーンとトークンの使い分け。個人の信頼を可視化を設計するか – 小林 慎和|株式会社bajji

小林 慎和 | 株式会社bajji ファウンダー兼CEO、ビジネス・ブレークスルー大学 准教授
野村総研、グリーを経てシンガポールにて独立。以来国内外で7社起業。現在のbajjiはブロックチェーンで2社目の起業となる。これまで2社のイグジット経験があり、事業のミッションは一貫して社会変革イノベーターの創出。bajjiでも100万人のイノベーターを創出するべく日々事業を推進中。映画監督が本業(自称)。

小林:こんばんは。私、小林といいまして、株式会社bajjiのCEOをしております。他に、大前研一さんがいらっしゃるビジネス・ブレークスルー大学で2017年からブロックチェーンを教えています。

私はこれまでアジアで5社、東京で2社創業しておりまして、東京で創業したのは両方ともブロックチェーンの会社です。1社目は仮想通貨取引所系の会社で、今やっている2社目はテック系の会社です。今日は、その2つの会社を創ってきた中で得た知見、具体的には、何を大切にしてどう創ったのかというところをみなさんとシェアできたらと思っております。

こういった話でよくあるのが、ブロックチェーンを使う意義です。まずは、bajjiというサービスがどのようなものなのかということを理解していただいてから、仮想通貨やブロックチェーンをどのように使っていくのかをご説明したいと思います。

コミュニティの信頼の繋がりを可視化

bajjiはイノベーターのためのSNSです。イノベーターとは、大なり小なり世の中のためにいろいろなことをしている人全てがイノベーターだと思っていて、ここにいるみなさんも全員イノベーターです。なぜなら、心の中で何か少しでも良いことをしたいと考えているからです。そういうみなさんのような方をターゲットとしたSNSです。なぜこのようなサービスを作ろうと思ったかというと、その原体験はこれまでの創業ストーリーと重なる部分がありますので、最初にご説明したいと思います。

今から10年前、私はインドのハリアナにいました。インドの人口10億人のうち4億人は無電化の家に住んでいます。そこで私はソーラーランタンを一日6円で貸し出すソーシャルビジネスを手伝っていました。ある日、無電化の村に一晩泊めさせてもらい、翌朝に村長さんの奥様からカレーやナンをふるまっていただきました。朝食後に村を散策していると、4人のお孫さんを連れたおじいさんに呼び止められて、「Japan,great!」と言われました。そのとき、このような無電化の村にも、Japan,greatと言ってくれるおじいさんがいるのだ、私たちの先輩方は本当にすごいと思うと同時に、現在の日本は少子高齢化が進み非常に厳しい状況なので、これから社会を変革できる人材やグローバル人材をもっと増やさなければと強く思いました。

Twitterでのダイレクトメッセージ

2010年、私はTwitterにハマりました。Twitterがまだ出始めのころです。当時、Twitterで何をしていたかというと、出張で海外に行くときに、グローバルに働いている日本人と会って話がしたいと思い、現地に住んでいる日本人をTwitterで20人ぐらい探して、「来週、出張でアムステルダムに行くので、会えませんか?」というようなダイレクトメールを送っていました。案の定、ほとんどは無視されましたが、その中で返信してくださった建築家の方がいました。彼女は、アムステルダムでSDGsな建築をして、起業し、地域に根ざした取り組みを行っています。

パリへの出張のときにも同じようにダイレクトメールを送り、2、3人から返信があったうち、日程が合ったのが鈴木さんという方でした。彼は当時26歳で、スタンフォード大学のデザインラボを立ち上げるためにパリに来たと言っていました。彼の何がすごいかというと、10歳からたった一人でハワイに留学し、15歳でサンフランシスコに留学して、スタンフォード大学に合格し、初めての就職先がなぜかパリだったのです。彼は京都出身で、現在は京都に戻っていますが、こんなイノベーターに当時いとも容易く会えたのです。とてもびっくりしました。

彼らに刺激を受けて、2012年に最初に起業した1社目は、Blockchain EXEさんのような「CHAOS ASIA」というイベントなどのコミュニティ事業をアジア5都市で2年ぐらいかけて行いました。その後、ECサイトを作ったり、バリ島でコワーキングスペースを作ったりしました。バリは、いろんなデザイナーでちょっと世の中から外れた面白い人たちが集まっていて、その人たちがサーフラインをする場所を作ったりしました。あとは、シンガポールで飲食店をしたり、ジャカルタで不動産業をしたりして、4年ぐらい前まで海外で事業をしていました。

人との出会いや関係を見える化したいと思った

そうすると、シンガポールで小林っていう面白いことをしている人間がいるらしいっていう話が日本に伝わって、毎週のように「ヒアリングしたいのですが」という連絡が来るようになりました。結局、実際に会ったのが数百回か数千回か数えたことがないのでわからないのですが、1年間で約50社から連絡が来ました。これらは大体が大企業で、物見遊山出張で東京に来て、現地に精通している人に話を聞き、ヒアリングをしてこんなに勉強になりましたという、たったそれだけの出張に、私はこんなに多くの時間を費やしました。しかし、2、3時間コーヒーを飲みながら話をすると、心が洗われて力がみなぎってきましたと言ってくださる相談者がいるのですが、私はそのような方の笑顔にものすごく力を与えられているのです。そのほんの1、2時間、私たちが出会った時間というのは、世界のため、SDGsのためにとても貢献しているのですが、その回数や時間は、実はどこにも計られていないし、データが残っていないのです。それはとても悲しいなと思いました。

他には、若者が「小林さん、海外で起業したリアルな話を聞かせてください」と、どんどん取材に来るのです。最近の若者は、そういうのをTwitterやFacebookやブログで見つけて、どんどん来ます。春休みも夏休みも卒業旅行でもどんどん来ます。何百人と会いに来て、今彼らはこんなにいろいろな国で私に感化されて、というかそそのかされて、起業しています。失敗して日本に帰って来た人もいますが、これは私にとって財産なのです。

仮想通貨事件の煽りを受け

そこから日本に帰り、ラストルーツという会社を2016年に立ち上げました。みなさんもご存じの通り、この2、3年、仮想通貨もいろいろな事件がありました。ラストルーツという会社は、3年前にICOを行い、そのコインをリリースし、上場して、日本で取引され、100億円以上の売買があり、何万人という方が保有して、SBIから合計12億円を調達しました。その裏側で、2016年の9月には仮想通貨に関していろいろな規制ができてきて、2017年には海外で詐欺事件が横行し、その煽りを受けました。そこから立て続けに3件で合計600億円の流出事件があって、かなり厳しい状況を乗り越えながら、どうにか最後までまとめきりました。しかし、それでも批判はありました。例えば、会社の体制強化で人数が2年間で一気に65人にまで増えたため、オフィスを引っ越さなければならなくなったのですが、どこもオフィスを貸してくれないのです。私に限らず、世の中には人生の経験値や貢献の度合いが見えにくい人も相当数いて、けれども光るものをもっている人が世界中にいます。そういう人たちのがんばりの蓄積を可視化することができないだろうかとずっと思っていました。

ブロックチェーンで名刺をアップデートしたい

そして7社目、bajjiというのは、例えば、名刺は名前と住所と電話番号とメールアドレスしか書かれていないので、その人の中身が見えないですよね。しかもこれは100年間進化のないテクノロジーです。名刺を見せたら、その人の歴史や経験値、他人からの信頼の積み重ねが透けて見えるような、そんなものができないだろうか。そこにこそブロックチェーンを使う意義があるのではないかと思いました。

今こういうものがあります。こういうもので代用できませんかという意見もあるですが、確かによりつながりやすくなったものの、これでは先ほどご紹介した鈴木さんのようなイノベーターを見つけられないのです。なぜこのような事態が起こっているのかというと、3つ理由があります。1つ目は、無料無制限だからです。1日に100回でも1000回でもラインできますし、フォローもできる。自由自在です。2つ目、不確かすぎるからです。これは弊社のCEOの浜田ですが、共通の友達が52人います。52人の共通の友達が出てきた中で、浜田の親友もいれば、浜田が忘れ去った人も残念ながらいますし、実は浜田が会っていない人も入っていたりするのです。不確かなのです。3つ目は、これは私が書いているのですが、全部自己主張ですよね。第三者の評価でもかなり読まれるわけです。だから、この人の歴史、経験値、他人からの信頼というものをブロックチェーンで可視化できないかというのを研究してきました。

可視化するためのパラメーターが3つあります。まずbajjiという名前は、胸につけるバッジから来ていまして、名刺を作り変えたいという思いが込められています。また、無料無制限に対するアンチテーゼとして有料有限にしています。そうすることによって、むやみやたらに贈れないようにしています。そして、エンカウント。この場所のことです。3回のタップで、ウーバーイーツがマクドナルドを持って来る時代ですが、リアルという出会いを刻むことで、私たちが確かに出会い、いい話をして、お互いに活力を得たということをブロックチェーンに刻もうじゃないかということです。つまり、人の活動量ですね。親指タップで何でもできる時代になったからこそ、こうやってわざわざ足を運ぶ時間の意味が増すと思うのです。

では、実際のbajjiはどのようなものか。このようなbajjiですね。これをブロックチェーンとトークンで作っています。これを見るだけで、ジョブズみたいな人だなとか、世界中のどこでも生きていけるような人だなとか、よく鍛えていて強い人ですねとか、あなたみたいな天才的な数学者もいないよねとかいうことが一目でわかります。私が海外にいたときに訪ねてきた若者の中に、将来、ソフトバンクの孫さんのような人物になって、そうなるきっかけを与えたのがbajjiでしたという風になれば、私は個人的にとてもうれしいです。

3つのパラメーターを数学のブラック理論で計算し、人生経験を経験値として数値化していきます。出会ったことが事実かどうか、あの人が私にこんな感情をくれたかどうかというデータは、ブロックチェーンに保存されているので、フェアな状態なのです。今、アメリカではデジタル権というのが問題になっていて、Facebookにポストしたデータの権利はFacebookが持っていて、我々は持っていません。それを引き出したくても引き出せません。Facebookが勝手に改ざんする可能性もあるので、非常に問題になっています。おそらく、これは18個目のSDGsになります。それに対して、ブロックチェーンに情報を刻み込むのはフェアな状態になります。弊社bajjiのトップ画面を見ると、このような形でいろいろな人からどのようなbajjiをもらってきた人なのかということが一目でわかりますし、これはどうしてもらったのですかという会話の糸口にもなります。その人の深いところを知るまでに何週間、何か月間かかっていたものを、わずか1回の対面で引き出せるかもしれない。そういうものを作りたいと思っています。

これをWeb上でデジタルコンテンツとして売っています。このようにエンカウントしたりbajjiを贈り合ったりすると、どんどん経験値が溜まって、スコアが上がっていきます。スコアが高い人は、多くの人に出会って、影響を与え、賞賛されている人なのです。つまり、会社の給料以外に、世界のために行動している人なのです。その人たちに我々のbajjiの売り上げの一部をリワードとして還元していく、これがブロックチェーンのインセンティブ設計であり、自ら行動するみなさんのような方がターゲットです。私たちはSDGsについて、イノベーターとの出会いを加速させることで、SDGsの問題解決を加速させたいと思っています。人生の経験値を可視化する新しいサービスを、ブロックチェーンを使って開発しようと思ったのは、創業1社目のときに仮想通貨のブロックチェーンを作った経験があったからこそで、今どのようにしたらブロックチェーンを最も生かせるのかということを、私が誰よりもわかっていると思ったからです。

ブロックチェーンと仮想通貨の使い分けについて

次に、ブロックチェーンと仮想通貨の使い分けという話ですが、私がbajjiの前に創ったラストルーツという会社は、ブロックチェーンを動画広告に応用しようとしていました。広告主が動画広告を配信して、最後まで見た人にお礼としてコインを配るというシステムで、コインは広告主の広告費です。それを直接配ります。視聴者は動画で毎日新しい情報を手に入れて、少しずつお小遣いを稼いでいき、金曜日の夜にはビール1杯をタダで飲めるぐらいのコインがもらえる。これは無駄がない広告費です。しかし、途中で規制ができ、これができなくなってしまいました。

プラットフォームを提供する私たちにとっては、動画が多く見られれば見られるほど売り上げが上がるわけですので、視聴者にできるだけ多く見てもらいたい。そして、広告主は動画広告が本当に見られたかを知りたい。そこで、ブロックチェーンのトランザクションを通して視聴者にコインを付与する形にすると、この三者とは関係のないところで、中立的で、かつ効率的に動画の視聴回数を把握することができます。しかし、途中でKYCの件でできなくなってしまいました。パブリックブロックチェーンを使うとさらにいろいろなしがらみがあります。例えば、スケーラビリティでいろいろな人が使うので、サービスで使おうとすると詰まったりしますし、マイナーがハードコークするとブロックチェーンが勝手にアップデートされてしまい、サービスが予期せぬアップデートをせざるを得なくなります。ユーザーはもっと面白いサービスを提供してほしいと思っていますし、コインのホルダーはコインをもっと発展させてほしいと思っています。この2つは利害が対立していますので、やはり仮想通貨が絡むと難しいのです。

規制の中でのトークン活用

その点、bajjiは仮想通貨もトークンも使っていません。ではどうするのかというと、bajjiを贈るという行動をトランザクションに刻むのです。さらに、bajjiはデジタルコンテンツですので、それをポイントで買います。これを180日で失効するようにすれば、規制の対象外になります。ポイントで買ったものを贈るということは、トークンやトランザクションには関係がないのです。返礼するときは、今度はBRポイントというものを用意して、それも180日失効にすれば仮想通貨交換権は関係がなくなります。このように、いかにブロックチェーンのよさを引き出しながら、規制をケアし、意味のあるサービスを設計できるかというところが今後非常に重要になってくると思います。bajjiの場合は、プライベートのところがパブリックブロックチェーンで、PCベースにカウンターパートを行っています。誰が誰にbajjiを贈ったのかという情報は弊社のデータベースではなくて、ブロックチェーン上のパブリックなところからエクスプローラー経由で見ることができます。

よくアプリを使ったら、インセンティブでコインやトークンがもらえるという話は多いですが、仮想通貨そのものを配ることはできません。それをする際には、KYCや仮想通貨交換権の免許が必要になるからです。また、今話題のPayPayやLINE Payのようなサービスをしようとすると、ポイントの開設資金不足をクリアできません。しかし、180日失効でポイントを付与する形にすれば、ブロックチェーンを使いながらうまい具合にインセンティブを設計することができます。ブロックチェーンの生かし方としては、今お伝えしたように、利害関係が対立するプレイヤーがいる場合に、フェアなデータを扱うのに非常に役立ちます。また、これはブロックチェーンならではのよさですが、マイクロな貢献や活動を可視化するのに非常に役立ちます。インセンティブは、キャッシュレスがポイントという場合でも、規制を考慮しながら組み立てる必要があります。そういった面でも、ブロックチェーンを使う意義があるのが重要なのかなと思います。弊社のさらなるミッションは、このようなbajjiを作って、イノベーターを発掘し、彼らを想定外に出会わせて、このサービスを通じて出会った後のエンゲージメントやコミュニケーションを円滑にすることです。

最後に、浅草橋から徒歩1分で、イノベーターに出会えるコワーキングスペースを持っていますので、ぜひ遊びに来てください。

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【Blockchain EXE #20 SDGsへのブロックチェーン活用①】生活者×スタートアップ×大企業によるブロックチェーンを活用したオープンイノベーション型の社会変革プロジェクト – 博報堂ブロックチェーン・イニシアティブ | 伊藤佑介

持続可能社会の実現に迫る!SDGs達成にむけたブロックチェーン活用のチャレンジ!!|Blockchain EXE #20

Blockchain EXE#20は、ブロックチェーンが、SDGsで掲げられた目標である持続可能社会の実現をいかに後押しすることができるのか、各領域で活動する事業家と共に、その実態と今後の展望について迫りました。

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生活者×スタートアップ×大企業によるブロックチェーンを活用したオープンイノベーション型の社会変革プロジェクト | 伊藤佑介 博報堂ブロックチェーン・イニシアティブ

伊藤佑介|博報堂ブロックチェーン・イニシアティブ
2008年にシステムインテグレーション企業を退職後、博報堂にて営業としてデジタルマーケティングを担当。
2013年からは博報堂DYホールディングスに出向し、マーケティング・テクノロジー・センターにて、デジタルマーケティング領域のシステムの開発~運用に従事。
2016年から広告・マーケティング・コミュニケーション領域のブロックチェーン活用の研究に取り組み、2018年9月より博報堂ブロックチェーン・イニシアティブとして活動を開始。その後、次々とマーケティング・コミュニケーション領域のブロックチェーンサービスを開発し、2018年11月5日にトークンコミュニティ解析サービス「トークンコミュニティ・アナライザー」、2019年1月31日に生活者参加型プロモーションサービス「CollectableAD」、2019年2月6日にデジタルアセットリアルタイム配布メディアサービス「TokenCastMedia」をリリース。現在は、さまざまなブロックチェーンベンチャーとコラボレーションしてブロックチェーンの社会実装に取り組んでいる。

伊藤:博報堂ブロックチェーン・イニシアティブの伊藤です。よろしくお願いします。私の方からは「社会変革プロジェクト」という題名からちょっと変わって、より具体的なテーマをお話しさせていただきます。今回お話しするのは、本日11時に博報堂からリリースされたばかりの、ソーシャルグッド活動推進プラットフォーム「GiverCoin(ギバーコイン)」というサービスについてです。今日はそちらについて、開発の背景や舞台裏、今後何をしていきたいか、どういう世界観を実現していきたいと思っているかということをお話ししたいと思っています。

GiverCoinプロジェクトを構想した背景

今日リリースされたのが「GiverCoin」というプロジェクトで、まずこのようなサービスを構想した背景をご紹介します。私は昨年から博報堂ブロックチェーン・イニシアティブで様々なブロックチェーンの活動をしており、主に2つのことをやっていました。

  1. 自社のブロックチェーン事業開発
  2. 他社と協業したブロックチェーン事業開発

今回このプロジェクトを立ち上げるきっかけとなったのはまさに後者で、様々な会社や団体の声に応えたいという思いからでした。

様々な会社とブロックチェーンの取り組みをしようというときに、3つの案が出されました。1つは、業務のセキュリティ面や業務の効率化、課題の解決のような、主にSIベンダーが携わっている部分。2つ目は、収益性や事業計画を伴うような新しいブロックチェーン事業の開発です。そこまでは割と想像できたのですが、もう1つ違った案が出てきました。それが今回のテーマとなっているSDGsの思想に近いものです。

例えば、食品メーカーで、食のトレーサビリティのような取り組みはSIベンダーとブロックチェーンを使っていろいろと行われています。一方で、フードロスに配慮した商品を購入した消費者に対しては何の取り組みもありませんでした。そのため、そのような人たちに対して、環境に配慮してくれたという事を示すための信頼スコアや、トークンを付与するといった中で、ブロックチェーンを活用したサービスを作ってみたいという声が上がりました。

また、エコドライブの推進や二酸化炭素を出さない車の開発など、企業が持続可能な事業を展開していくように応援してくれるユーザーに対して、貢献してくれたことをトークンなどで返すような証を出したいという声もありました。他にも、電力会社では、再生エネルギーを活用することで、収益を上げるだけではなく、ソーシャルグッドの活動を推進しようとしています。

その中で、多くの企業やNPOから、自分たちが社会的テーマを掲げて行っているサービスのユーザーに対して、トークンでその貢献の証を示したいという声が上がったことが今回のプロジェクトを構想した背景にあります。

企業がSDGsに取り組む理由

なぜ各企業がこのようにソーシャルグッドの活動に取り組むのかということを紐解いていくと、やはり今回のテーマに行き着きます。私は最初、企業もいいことをしていかなければならないというようなゆるやかな考えがあるのだと思いましたが、様々な企業の問題意識を聞くと、それだけではないということがわかりました。企業は、ただソーシャルグッドの活動をしたいのではなく、SDGsというテーマが経営課題の一つであり、企業の存続に関わることなのだという考えが背景にあると知りました。それは、企業がSDGsに取り組む意義を野村総研が示していることや、投資家がSDGsに取り組んでいない企業には投資してくれないという事実が存在している事からも明らかで、企業にとっては大変重要なトピックです。

SDGsが世の中に出てから、ソーシャルグッドという言葉はアップデートされました。SDGsに関わる事業で、それに寄与するユーザーや消費者の方々に何かを返すということは、もはや社会をよくするというより、企業を存続するためのものであるということです。SDGsは、17の領域で世の中をよくしようということですが、道徳的な側面だけはなく、ビジネス上、これに参加するということが不可欠なのです。だから、私も「これは社会のために新しいことをやるのではなくて、ビジネスなのだ」と理解を新たにしました。

では、具体的にSDGsのビジネスとは何かということを様々な企業からお聞きすると、もうすでにお手本になるような取り組みを行っている企業がいくつもありました。

例えば、フードロスをなくすということを軸に置いてサービスする企業です。冷凍したフルーツを提供することで、フードロスを発生させない取り組みです。また、最近、私も行きつけのカフェでよく見かけますが、木製や紙製のストローを作る取り組みです。プラスチックのストローは再生性がないということで話題になっていますが、木製のストローは飲みやすいわけでも顧客のニーズでもなくて、SDGsを体現するサービスとして商品開発されています。

生活者側のSDGsに対する意識が低いという課題

私の中で、新しいプロジェクトを立ち上げようと決心したきっかけは企業やNPOがSDGsという経営課題に向き合おうと真剣に取り組んでいる一方で、生活者側のSDGsに対する意識がほとんど醸成できていないと感じたことでした。様々な企業やNPOが事業を展開する中で、トークンのようなもので貢献スコアを出したいというのは、提供する側だけでなく受け手側にもそういった意識を醸成させたいということが裏のニーズとしてあるのではないかと思います。

我々のミッションは、SDGsの浸透のために、ソーシャルグッドの世の中をみんなが自分事化して作るということと、そのような行動に時間をギブしている人を増やすということです。今回のプロジェクト名にもなっていますが、Giverには、このようなSDGsやソーシャルグッドを推進する消費者や生活者をGiverとして自分事化してあげることで、企業側が進めているような取り組みを生活者側にも浸透させようという意味合いが込められています。博報堂では「生活者発想」をフィロソフィーに掲げ、マーケティングなどを通して生活者と向き合い、気づきを与えようと努力しています。私がブロックチェーンのプロジェクトを立ち上げたいと思ったのは、そういった考えや経験や企業のみなさんとの出会いによるところがあります。

GiverCoin開発の舞台裏

こんなことを言っても、私一人では何もできません。ですが、私は幸いにもBlockchain EXEの運営にも携わっており、様々なベンチャーのブロックチェーン担当者の方々と関係を築かせていただきました。そこで、様々なプロジェクトの話をしたところ、トークンポケット株式会社、有限会社ズィープロダクション、株式会社Shinonomeがこのミッションに賛同してくださり、今年の3月にプロジェクトがスタートしました。

そして、今日GiverCoinがリリースされました。このプロジェクトは基本的には社会貢献だと思っていますので、このプロダクトを提供するとともに、今日から様々なソーシャルグッドの活動を推進している企業やNPOの方々と手を組んでやっていきたいという思いでやっています。

GiverCoinアプリについて

今日リリースしたアプリには、3つのフェーズがあります。1つ目は、SDGsに関するサービスの一覧で、ここに順次、連携している企業のサービスが並んでいきます。2つ目は、そのサービスについてアウトプットをするとプレゼントがもらえる仕組みです。そして、3つ目はウォレットで、ソーシャルグッドなサービスを使って得たGiverポイントの合計がわかるようになっています。ですから、基本的には、SDGsを意識したサービスの受け皿として、それを使った人にGiverポイントや証を与えるという設計になっています。

そして、今回一つのサービスをご紹介させていただきます。これは博報堂で一緒にSDGsの活動をしている林さんが考えたサービスで、例えば、「父親の44歳の誕生日を祝ってほしい」と依頼すると、世界中の人からお祝いのメッセージが届くというものです。

私も先日、娘の誕生日のお祝いを依頼したところ、スペインやアメリカ、ブラジルなどの方々から動画が届きました。このようなアウトプットをしてくれた人にGiverCoinが与えられるわけですが、それ以外にも、例えば、美術館のチケットや文化的なイベントの招待券などを提供することができるよう、協賛してくれる企業を募集したりしながらブロックチェーンのプロジェクトを進めていきたいと思っています。

最後に、今回このGiverCoinのスタートアップに携わった方々がSDGsを推進するためのプラットフォームを作ってくれました。この方々こそGiverです。是非みなさんもこのSDGsを推進するプロジェクトに参加してほしいと思います。ありがとうございました。

質疑応答

質問者:ブロックチェーンを使う優位性について、どのようにお考えですか?

伊藤:ブロックチェーンでできたトークンの優位性は、信用創造だと思います。ビットコインもイーサリアムも、世界中の人々が通貨をやり取りすることで、11年かけて経済的価値という信用を創造できました。
GiverCoinに関しては、仮想通貨のような機能性ではなく、活動が重要です。社会がSDGsを信認し、その活動を推進する中で、GiverCoinがみなさんや企業がソーシャルグッドの活動に取り組んだ、その貢献を示すものとして信用されるようにしていきたいと思っています。

質問者:これまでの中で何が一番難しくて、それをどのように解決しましたか?

伊藤:一番大変だったのは、仲間を集めることです。やはり、いきなりお金になる話ではないので。今回協力してくださった3社は、長年コミュニケーションを取っていて、ビジョンが合ったので一緒にできましたが、仲間集めが一番大変だと思います。
2つ目は、会社に対する説明です。博報堂もブロックチェーンにフォーカスしている会社なので、この活動の意義や将来どうなるかということをしっかり説明して理解してもらうことが大変でした。
3つ目は、法的な観点です。会社には顧問弁護士がいるので、法的な観点や行政的な観点できちんと確認を取って、社会から認められる形でコンプライアンスを守り、それを実行すること。この3つが大変でした。

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ブロックチェーンによる分散型クラウドコンピューティングプロジェクト「iExec」と「Blockchain EXE」がパートナーシップを締結日本とヨーロッパを中心としたグローバル提携を開始

フランスを拠点とする「iExec」とグローバルパートナーシップを締結

iExec Inc.(本社:フランス リヨン、CEO, Co-founder Gilles Fedak, Co-founder Haiwu He)とクーガー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表者取締役CEO:石井 敦)の石井が代表を務める「Blockchain EXE」は、日本とヨーロッパを中心としたコミュニティ連携でパートナーシップを締結しました。

パートナーシップ提携の狙い

ブロックチェーンを活用した分散型クラウドコンピューティング技術を提供するiExecと、日本を中心に主要10都市を超える地域でコミュニティを展開するBlockchain EXEの提携を通じ、国内・外で技術的知見交換の流動性を高めることを強化していきます。

目まぐるしく変化する世界の中でAIの技術的発展などで遅れをとっている日本の国内産業には多くの課題が残されています。その中で、AI産業を中心にデータのオープン化と個人情報保護のトレードオフ関係を解決する事はますます重要になっていくでしょう。ブロックチェーン技術を活用したピアツーピアネットワークによって、データやコンピューターリソースの分散ネットワークを提供するiExecがBlockchain EXEとの連携を通じて、海外の技術的知見を日本に還元していくことを目指していきます。

今後の展望

iExecとBlockchain EXEは技術者やビジネスマンを対象にしたミートアップやハッカソンなどのオフラインのコミュニティ形成および、オンライン上での情報発信を行なっていきます。

2018年1月にニューヨークでの海外コミュニティ拡大から始まり、2019年2月にフランスとスペインでBlockchain EXEを開催しました。そして、日本国内に海外の知見を多く取り入れていくためのエコシステムの構築を行なってきました。3年で参加者は3000人を超えた一方で、日本には英語という言語障壁もあり、欧米や中国の先端技術の情報流入は不足しているという課題も残されています。今後、フランスを中心としたヨーロッパ圏において様々な活動実績を持つiExecとのパートナーシップを通じて、ブロックチェーンの技術コミュニティの底上げを図っていきます。

<iExec 会社概要>
社名:iExec Inc.
代表者:CEO, Co-founder Gilles Fedak, Co-founder Haiwu He
本社:フランス リヨン
URL:https://iex.ec/
iExec社はコンピューティングリソースを提供する分散型のマーケットプレイスを提供しています。それによりピアツーピアネットワークで直接、個人や企業が自分たちのアプリやデータセットを収益化したり、コンピューターリソースを非中央集権的に取引することを可能にしています。同社は、最高レベルの信頼性、セキュリティ、そして柔軟性を兼ね備えた、取引を可能とするプロトコル技術を開発しています。
iExecは現在、Intel、IBM Cloud、Alibaba Cloud、Ubisoft、およびその他の主要企業との協業を通じて、ブロックチェーンベースのソリューションを開発し、業界で最高レベルのセキュリティを提供しています。フランス政府の公共投資銀行BPI Franceも、iExecに対して200万ユーロを投資しています。
<Blockchain EXE概要>
代表者:石井 敦
URL:https://blockchainexe.com/
Blockchain EXEはブロックチェーンの技術的側面だけでなくビジネスや法律など、様々な視点からブロックチェーンの社会実装を志す人々の実行(Execution)を支援するコミュニティです。我々は”偏った価値観”ではなく、”多様な価値観”を混合させる事で、様々な人が世界のブロックチェーンの知見にアクセスできる環境作りを目指し、世界10都市を超えるグローバルネットワークを築いています。

【Blockchain EXE #19 ブロックチェーン導入企業ユースケース特集5】ディスカッション:日本はブロックチェーンの技術大国になれるのか?

【ブロックチェーン導入企業 ユースケース特集】日本はブロックチェーンの技術大国になれるのか? | Blockchain EXE #19

19回目となるBlockchain EXEのテーマは『企業 x ブロックチェーンのユースケース特集』。

ブロックチェーン導入企業からゲストをお招きし、日本のブロックチェーン産業の現在地と成長未来を様々な視点からお話しいただきました。

目次

【Blockchain EXE #19 ブロックチェーン導入企業ユースケース特集5】ディスカッション「日本はブロックチェーンの技術大国になれるのか?」

石井氏:今回は「エンタープライズとブロックチェーン」というテーマでしたが、エンタープライズで特に重要なデータ収集やコンソーシアムのメンバーを募る上でのインセンティブ設計はどのように考えていますか?

田原氏:コンソーシアムに入っていただく企業には自分たちの情報がお互いにどういったビジネス上のメリットがあるのかを考えてもらう必要があると思います。

那須氏:LINEがこれまでbotを普及させた流れと同じように、LINK ChainはdAppを作るところから始めました。dApp作成を呼びかけて事例が増えていくうちに企業側から声がかかり、アライアンスを組んでいく形を取っています。

大橋氏:情報共有のインセンティブ設計は難しいと考えています。サプライチェーンのフローの中で共通の課題認識を持っている人がプラットフォームを形成する必要がまずあるのではないでしょうか。

石井氏:持っているデータ量に差があるプレーヤーが同じプラットフォームにいるとメリットのある会社とそうでない会社が出てきてしまうと思いますが、不動産業界はどのような状況ですか?

松坂氏:不動産業界は会社ごとに持っている情報量、価値の基準が異なるので情報の売買が複雑です。例えば一軒あたりいくらといった価値の付け方は難しいところです。

日本と海外のブロックチェーン事業の違い

伊藤氏:テーマが「日本はブロックチェーン大国になれるのか?」ということで、自分たちが取り組まれている領域で日本と海外を比べた時の差があれば教えて下さい。

田原氏:自社はドメスティックな事業が多いので海外との対抗意識はそれほどないのですが、国内における最大の情報基盤ができれば、それは海外には真似できない島国ならではの強みなのではないかと思います。

那須氏:講演中に紹介したPlasmaは実は日本の会社が推進していて、若い社員が世界各国から資金集めに勤しんでいるのでとても将来が楽しみだと思います。

大橋氏:ブロックチェーンを使ったサプライチェーンが進んでいるのは主にASEANで、それはデータを改ざんされるリスクが高い地域であるためだと言われています。しかしブロックチェーンのメリットを改ざん性の側面でしか見ていないと、日本のような改ざんリスクが低い国でブロックチェーン大国を目指すのは難しいと思います。

松坂氏:不動産の情報産業の面で見ると日本はオープンデータの進んでいる欧米に劣っていると思います。しかしブロックチェーンの技術面に関しては、技術力がなくて前に進めないといった課題は今のところないように感じます。

石井氏:これから少子高齢化や東京オリンピックで日本に外国人労働者が増えてくる中、これまで日本人同士の阿吽の呼吸や前提知識で説明できたことを外国人の人も受け入れられるようにする仕組みを作る必要性がでていると思います。これは日本人が得意な均質化とブロックチェーンを組み合わせたユースケースが海外に輸出されるチャンスとも捉えることができるのではないでしょうか。

企業に”ブロックチェーン”に振り向いてもらうために

伊藤氏:企業に所属しながらそれまで注目されていなかったブロックチェーン事業にどのように興味を持ち、仲間づくりや社内の障壁を乗り越えたか、エピソードがあればお聞かせください。

田原氏:積水ハウスはベンチャー企業との議論がきっかけとなって日経の講演会に呼ばれる機会があり、そこで既にKDDIと事業提携があった日立にお声がけいただき、3社で事業を始めることになりました。社内の障壁としては上層部が同業他社との情報共有を好まない傾向があるので、そのメリットについて追求する必要があると考えています。

那須氏:P2Pのネットワークで分散ストレージができる新規事業という点に興味を持って自分から手を挙げました。元々所属していた分散ストレージのチームにはブロックチェーンに乗り気でない人が多かったので、共同で開発していた韓国側のチームから技術者が流れてきました。

大橋氏:以前ビックデータを担当していた時に、大企業が情報占有するばかりで中小企業がデータ活用で大企業に打ち勝つという目標が達成できなかったことがありました。しかしブロックチェーンは横並びでデータを共有して共通の目標を達成するというモチベーションがあるので始めました。社内ではスラックで随時新しい事業構想を共有して仲間を集めています。

松坂氏:ブロックチェーンは新しいプロジェクトを立ち上げるに当たって個人的な興味から始めました。今でもブロックチェーン専業のエンジニアがいないので、就労時間の20%を自己研磨に使える社内ルールを使って自分で勉強しています。最初は社内通貨の開発から始めていきました。

企業間ブロックチェーンのエコシステム設計

石井氏:エンタープライズでブロックチェーンを最大化するに当たって最も重要と言えるのが、可能な限りオープンなプラットフォームを構築して加入者と退出者をスムーズに動かす仕組みだと思いますが、皆さんはどうお考えですか?

田原氏:不特定多数の事業者が入ってくるのが善か悪かは一概には言えませんが、何かしらの審査はあってもいいのではないかと考えています。やはりそこでも重要なのはプラットフォーム内のメンバーに有益なビジネスを提案できるかどうかだと思います。

那須氏:我々が運営しているプラットフォームは最終的にはフルオープンを目指していますが、初期段階は耐性をつけるために社内運用から始めます。そこから段々コンソーシアムを組んでいき、危険なものが入ったらその都度対処していくしかないと考えています。

大橋氏:エンタープライズとなると何かしら共通の目的があれば来るもの拒まずの姿勢は重要だと思います。しかし最低限のルール設定、特に加入する際、退出する際のルールをしっかり決めることは徹底する必要があると考えています。

松坂氏:不動産業界としては個人情報レベルの情報共有が必要になって来るのでコミュニティ内で正しい行動を取ってもらえるようなインセンティブ設計には力を入れて、フルオープンなプラットフォームを目指していこうと考えています。

まとめ

今回はブロックチェーンの社会実装をリードしている各企業から講演者をお呼びして、企業におけるブロックチェーンの現状や今後の課題についてお話ししていただきました。

ブロックチェーンは、エンタープライズに限らず、社会の中で散らばった要素を一つに繋げることで新たな価値を生み出すことが期待されています。新たなプラットフォームを自分で作る、または既存のコミュニティに入るなど、今後コミュニティの流動性が上がっていくことで社会に浸透していくのではないでしょうか。

今回のBlockchain EXEは『実ユースケース』に焦点をあて、実際のリアルな情報をたくさん知ることができました。次回のBlockchain EXEもお楽しみに。

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【Blockchain EXE #19 ブロックチェーン導入企業ユースケース特集4】「ブロックチェーンを活用した不動産管理システムでめざす未来 」田原 陽一|積水ハウス株式会社


【ブロックチェーン導入企業 ユースケース特集】日本はブロックチェーンの技術大国になれるのか? | Blockchain EXE #19

19回目となるBlockchain EXEのテーマは『企業 x ブロックチェーンのユースケース特集』。

ブロックチェーン導入企業からゲストをお招きし、日本のブロックチェーン産業の現在地と成長未来を様々な視点からお話しいただきました。

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積水ハウスからは田原氏にお話しいただきました。積水ハウスは近年ブロックチェーンの不動産業界への導入に本腰を入れています。

【Blockchain EXE #19 ブロックチェーン導入企業ユースケース特集4】ブロックチェーンを活用した不動産管理システムでめざす未来 積水ハウス株式会社|田原陽一

田原 陽一 Yohichi Tahara|積水ハウス株式会社
2002年 積水ハウス入社 情報システム部配属。
2006年 本社経理財務部 派遣
・社内経費申請システム開発、導入支援、保守
・派遣先にて主幹部門とエンドユーザの声を聞きながらシステムのコーディングを行い全社運用事務システム構築。
2007年情報システム部へ戻る(現IT業務部)
・全社総務、管理業務システム担当
・積和不動産工事管理業務担当
・積水ハウス積水ハウスフィナンシャルサービス株式会社立上げ(2011年~)
・マスト少額短期保険株式会社立上げ(2016年~
・積水ハウス信託株式会社立上げ(2017年~
・ブロックチェーンを用いた不動産管理システム構

ブロックチェーン導入に至った経緯

積水ハウスは2016年からベンチャー企業との勉強会や協業の検討を始め、ブロックチェーンで賃貸契約管理ができないかと議論を進めてきました。

2017年の第4次中間経営計画にブロックチェーン事業と表記されてから、本格的に2020年以降を見据えた”住”関連ビジネスの基盤づくりが始まりました。

2019年3月には日立、KDDIとの企業間の情報連携基盤システムの実現に向けた共同事業を立ち上げ、初期段階として賃貸契約の利便性向上の検証が行われています。「将来的には参加企業を募ってコンソーシアムを形成し、異業種データの掛け合わせによるサービス創出を目指していく予定だ」とブロックチェーン事業の展望を、田原氏は述べました。

賃貸契約の簡素化と入居者向けの情報提供基盤構築としてのブロックチェーンの役割

不動産業界にブロックチェーンを活用するのには3つの狙いがあります。

⒈賃貸契約を簡素化し、来店不要での契約を可能に

首都圏の賃貸契約では物件の平均検討時間は18日(2016年度 リクルート社)というデータがあり、これは年々短くなっています。約1割の人は1度も店舗に行かずに物件を決めるというデことからもわかるように、賃貸契約は「簡単」「便利」「スピーディ」が求められる時代になりました。ブロックチェーンのスマートコントラクトを使えば、アプリ内で内覧申し込みから賃貸契約までを完結させ、アナログだった賃貸契約の簡素化が期待できます。

⒉企業をまたいだ新しい情報共有基盤

「物件情報」「入居者情報」といった非競争領域の情報をオープンにすることで、新たなサービス展開が見込めます。社内のデータベースはアクセスに様々な制限や権限設定が必要でしたが、新たな情報共有基盤を設けることで安全でオープンなP2P環境の活用が可能になります。利用者に情報サービスを提供するだけでなく、自社システムを持たない地場不動産業者への情報提供など、同業種間の小さなビジネスも視野に入れています。

⒊将来的にはマイナンバーとのリンクも

他業種や行政との連携もブロックチェーンのネットワークを使って拡大させる狙いがあります。将来的にはマイナンバーとのリンクが賃貸のあり方を変える可能性を秘めています。

不動産×ブロックチェーンを用いた今後のビジョン

賃貸契約の仕組みを大きく変えようとしているブロックチェーンですが、積水ハウスは今後のビジョンとして主に3つの柱を立てています。

ビジョン1:賃貸契約をホテル予約のように簡単に

従来の賃貸契約は何枚もの書類の準備や複数回の来店が面倒とと思われてきました。ネット上のホテル予約のようにアプリで簡単に賃貸契約ができればこれまでと違った賃貸の利用形態が生まれるでしょう。例えば、賃貸の短期利用、シェアリング、遠隔地からの契約といった形態が考えられ、賃貸の枠組みが変われば市場の流動性向上・活性化が期待できます。

そこで賃貸契約で重要なのは契約者の「信用力」です。特にブロックチェーンはユーザの信用力を証明するのに適しており、KYCと連携した電子署名で強力な身元確認を可能にします。ブロックチェーン上の様々な行動履歴(過去の入居、家賃支払い)自体が信用に繋がり、正統性を担保した契約の簡素化が見込めます。

ビジョン2:個人の「電子鍵」としてIoT住宅と連携

スマートロックや住宅内の機器制御といった住宅のIoT化が急速に進んでいる一方、セキュリティを巡る課題も増えています。そこでブロックチェーンの特性を生かした公開鍵/秘密鍵を使ったセキュアな本人確認、スマホの生体認証などを組み合わせることでさらに強固なセキュリティが実現できます。ブロックチェーンと連携したアプリの活用によって、安全・安心・便利に機器を制御できようにすることを目指しています。将来的にはスマートコントラクト機能を用いることで、宅配便の不在受け取りや来客への柔軟な対応が可能になります。

ビジョン3:利用者主導型の共通情報インフラの構築

中国をはじめ、世界的に個人の信用スコアの構築・活用の流れがあります。しかし日本では個人情報の提供に対する根強い不信感があるのが現状です。そのような中、複数企業が連携し、居住、与信、各種契約購買などの情報を「利用者の判断」で提供・共有可能な仕組みの検討が進んでいます。ブロックチェーン上に情報を開示することがユーザにとってメリットのあるような仕組みにし、民主的で客観的・広範囲な情報連携と信用スコア構築を目指します。「信用性が高い」「改ざんできない」「強力な本人確認」「公開性」といったブロックチェーンの特性は個人情報管理の基盤として最も適したインフラであり、複数のサービスが連携することで利用者のさらなる信用力強化が期待できます。

積水ハウスではブロックチェーンを活用し、企業間情報連携のジャパンスタンダード構築を目指して活動していくと田原氏はしめくくりました。

【ブロックチェーン導入企業 ユースケース特集】日本はブロックチェーンの技術大国になれるのか? | Blockchain EXE#19

【Blockchain EXE #19 ブロックチェーン導入企業ユースケース特集3】Blockchain into Interoperability – 那須利将 | LINE株式会社

【ブロックチェーン導入企業 ユースケース特集】日本はブロックチェーンの技術大国になれるのか? | Blockchain EXE #19

19回目となるBlockchain EXEのテーマは『企業 x ブロックチェーンのユースケース特集』。

ブロックチェーン導入企業からゲストをお招きし、日本のブロックチェーン産業の現在地と成長未来を様々な視点からお話しいただきました。

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那須氏は、LINEで新たに取り組んでいるブロックチェーンプラットフォーム「LINK Chain」の開発をリードしてきました。LINK Chainを始めとするブロックチェーンの開発プラットフォームを使うことで、ブロックチェーンを用いたアプリケーションを作成するハードルは下がっていると言います。

【Blockchain EXE #19 ブロックチェーン導入企業ユースケース特集3】ブロックチェーンの相互運用「インターオペラビリティ」- 那須利将|LINE株式会社

那須利将 Toshimasa Nasu|LINE株式会社
ネイバージャパン株式会社、NHN Japan株式会社を経てLINE株式会社に在籍。現在は「LINE Blockchain Lab」にて、LINE独自のブロックチェーン「LINK Chain」の開発を担当、日々奮闘中。

BitcoinやEtheriumといった異種類のブロックチェーンをユーザが取引所を介さずに直接価値の交換ができる、相互運用の仕組みが求められてきています。

その実現のために、サイドチェーンという技術があります。これはブロックチェーンのトリレンマであるスケーラビリティの課題に対するソリューションとも言える技術です。サイドチェーンでトランザクションを行い、メインチェーンであるBitcoinやEthereumに最終的な結果のみを書き込むことでメインチェーンのスケーラビリティを解消します。例えば、BitcoinはLiquid、EthereumはPlasmaというサイドチェーンが有名です。付随情報としてPlasmaを運営するPlasma Groupeは先日、OVMというステートチャンネルを使ってより簡単にサイドチェーンが実装できる仕組みを提案しました。

インターオペラビリティを実現するCosmosとPolkadot

CosmosはZoneというメインチェーンの間にCosmos Hubを中継してサイドチェーンの役割を果たす構造をとって相互運用を実現しています。BitcoinやEthereumと組み合わせる場合はCsmos Hubとの間にPeg Zoneを挟むことで、Cosmos Hubを中心とする広大なネットワークが築ける仕組みになっています。

続いてPolkadotも似たような構造をとっており、Parachainというメインチェーンの間をRelaychainというサイドチェーンが中継しています。またPolkadotのPeg Zoneに当たるものはBridge Chainと呼ばれます。

CosmosとPolkadotは共にメインチェーンの相互運用を可能にし、誰でも簡単にブロックチェーンプラットフォームが作れる開発ライブラリを用意しています。一方で、これらのブロックの生成方法には違いがあります。

まずCosmosはPeg Validationという方式をとっています。これはZoneの中で発行されたトランザクションがファイナリティまで完了してからCosmos Hubに新たなトランザクションを発行することで価値の交換ができる仕組みになっています。ZoneとCosmos Hubのブロック間の関連は不透明という特徴があります。

一方、PolkadotはMerge Validationという方式をとっており、ブロック生成とファイナリティの順番が異なります。まずParachainにトランザクションが発行されるとRelay Chainにブロック生成の提案を行い、Relay Chain内でブロックのファイナリティが取られます。従って、Relay Chainのバリデータが優秀であればブロックの信頼性は担保されます。

LINE Token Economyによるブロックチェーンプラットフォーム

「LINE Token Economyも、様々なアプリケーションを繋いだ相互運用を実現してネットワークを広げていきたい」と開発に携わっている那須氏は語ります。これまで提案されてきたブロックチェーンのスケーラビリティに対する解決策を活用すれば、今後のブロックチェーンの社会実装は加速していくのではないでしょうか。

【ブロックチェーン導入企業 ユースケース特集】日本はブロックチェーンの技術大国になれるのか? | Blockchain EXE#19

【Blockchain EXE #19 ブロックチェーン導入企業ユースケース特集2】エンタープライズにおけるブロックチェーンの動向と考察 – 日本オラクル株式会社|大橋雅人

【ブロックチェーン導入企業 ユースケース特集】日本はブロックチェーンの技術大国になれるのか? | Blockchain EXE #19

19回目となるBlockchain EXEのテーマは『企業 x ブロックチェーンのユースケース特集』。

ブロックチェーン導入企業からゲストをお招きし、日本のブロックチェーン産業の現在地と成長未来を様々な視点からお話しいただきました。

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【Blockchain EXE #19 ブロックチェーン導入企業ユースケース特集2】エンタープライズにおけるブロックチェーンの動向と考察 – 日本オラクル株式会社|大橋雅人

大橋 雅人 Masato Ohashi|日本オラクル株式会社
東京理科大学院 技術経営修士(専門職MOT)取得。日本オラクルに入社後、製造業を中心とした業務コンサルティング、データ活用に関わるプロジェクト・マネジメント、コンサルティング・ビジネスの推進を担当。その後、ビッグデータ関連の戦略ビジネス開発/推進を担当し、現在はブロックチェーン、IoT、AIといった新規技術のビジネス開発/推進を担当している。

日本オラクルの大橋氏は様々な企業に対するヒヤリングを通して得た、企業のブロックチェーン導入動向や可能性について語りました。

企業におけるブロックチェーンの活用動向

ベンチャー企業が新規事

  • ディスカッション:「日本はブロックチェーンの技術大国になれるのか?」

  • 業として取り組むイメージの強かったブロックチェーンですが、伝統的な大企業が既存システムに取り入れたり、既存事業の突破口として用いるケースも増えてきました。

    企業のブロックチェーン導入を進める上での所感

    • 的を大きく外したユースケース検討は少ない
    • =>「ブロックチェーン=ビットコイン」という人は少なくなってきた
    • =>メディアなどでの露出も増え、先行事例を参照されている
    • 小規模な範囲から始めるケースが増えている
    • =>大きく描き、現実的な範囲で迅速に始める
    • =>他社より早く実績やノウハウを積み上げて、他のユースケースに応用したい
    • 技術指向(新規性・PR)から実用指向(着実・地道)に 
    • =>すでに始めている、取り組んでいるお客様が激増
    • =>現行の業務改善はもちろんだが、社会的意義、SDGs、監査・法律対応といった新たなモチベーションも

    その中で、エンタープライズでのブロックチェーンの有効領域といえる3つの要素があります。

    • 証跡ー企業間における正当性証明、トレーサビリティ
    • 共有ー企業間をまたぐ効率的で、ほぼリアルタイムのデータ共有
    • 効率化(自動化)ー企業間における契約の締結、履行、デジタルアセットの価値移転

    これらの要素を活かせる事業として、「利害関係を超えて複数企業で取り組むべき共通のゴールがある。または複数企業間プロセスの効率化や確実な根拠や証拠が必要な場面に価値がある」と大橋氏は言います。つまり、複数企業の共創による課題解決、新たなビジネスの創出が必要な状況にブロックチェーンが活用できると言えるでしょう。

    サプライチェーンへの資産ライフル管理プラットフォーム

    オラクルのブロックチェーン技術を用いた事業展開として、Circulor社の取り組みが紹介されました。Circulor社は紛争地域で取れた鉱物の法規制対策や流通の透明化をブロックチェーンを用いたサプライチェーンの実装で解決しようとしています。

    ブロックチェーンの透明性やトレーサビリティは、従来のサプライチェーンモデルでは困難だった一気通貫の可視化や最適化、リコール発生時の迅速な影響範囲の特定を容易にしました。特に自動車産業との相性がよく、Volvo Cars社はコバルトがリチウムに含まれている状態からリサイクルされ、車に搭載されるまでの工程のトレーサビリティを実現しました。

    サプライチェーンで消費者に届けられた商品をその後も管理する試みも始まっています。資産管理プラットフォームを用いてビルや車といった資産を消費者が正しく買い、管理していることを証明するものです。

    消費者であるユーザ側のメリット

    • 資産管理の確実な証明
    • 各種手続きの簡略化
    • プロアクティブなメンテナンスサービス
    • 透明性のある査定

    参加企業にとってのメリット

    • 契約処理の簡略化
    • メンテナンス管理の効率化
    • エコシステムへの顧客の囲い込み
    • 正確な査定、中古価格の妥当性証明
    • データを活用した新サービス

    企業のブロックチェーン導入ポイント

    最後にブロックチェーンを事業に取り込む際のポイントについてお話しいただきました。

    「まず、事業の初期段階では先行事例を参考にしたユースケースの具体化が必要である」と大橋氏は言います。これまで非合理的だった複数企業間のプロセスやデータを繋げたいというニーズにブロックチェーンは特に有効です。

    ユースケースが決まった後に、「なぜブロックチェーンでないといけないのか」をつめていきます。現状の問題を明確にすると、ブロックチェーンの特徴を活かせそうな箇所が次第に見えてきます。時にはブロックチェーンを使わないという判断も受け入れる必要があるでしょう。

    ブロックチェーンの社会実装に取り組む会社は珍しくなくなってきており、技術的なハードルも劇的に下がっています。これからのブロックチェーンを用いたビジネスは”think big, start small”という言葉の通り、事業の全体像と課題発見を早急に行い、早い段階からイニシアチブを獲得することでメリットが得られると、大橋氏は強く語りました。

    Blockchain EXE#20

    【Blockchain EXE #19 ブロックチェーン導入企業ユースケース特集1】不動産情報・価値・権利のオンチェーン化 – 株式会社LIFULL|松坂維大

    【ブロックチェーン導入企業 ユースケース特集】日本はブロックチェーンの技術大国になれるのか? | Blockchain EXE #19

    なぜ今、ユースケースを取り上げるのか?

    FacebookやUberなどのLibra協会を始め、日本の大企業もブロックチェーンを用いたユースケース作りに動き出す中、

    「なんでブロックチェーンなの?」

    そんな疑問を抱えている人も少なくないからです。

    今回、ブロックチェーン導入企業から豪華ゲストをお招きし、日本のブロックチェーン産業の現在地と成長未来を様々な視点からお話しいただきました。

    目次

    不動産情報・価値・権利のオンチェーン化による企業のブロックチェーン活用 – 株式会社LIFULL|松坂維大

    松坂 維大 Tsunahiro Matsuzaka|株式会社LIFULL ブロックチェーン推進グループ長 / 株式会社LIFULL Social Funding 取締役
    株式会社LIFULLの創業期メンバー。インターネット黎明期よりLIFULL HOME’Sを通して、不動産情報のデジタル化とオンライン化に従事。 新規事業をスピンオフさせたグループ会社LIFULL FinTechの代表取締役を経て、現在はLIFULLにて「ブロックチェーン×不動産」をテーマに分散台帳技術による情報共有コンソーシアム「ADRE」の立ち上げや、不動産のトークン化に関するプロジェクトを推進中。
    企業URL: https://lifull.com/
    Twitter: https://twitter.com/matsuzaka2716

    株式会社LIFULLは「ブロックチェーン×不動産」をテーマにブロックチェーンを用いた様々なプロジェクトを推進しています。

    下記の不動産業界の3つの課題を解決するブロックチェーンのプラットフォームを開発しています。

    • 真正性の担保:不動産の正しい情報をオンチェーンで共有する
    • 権利表象(登記):不動産登記を分散型台帳のプラットフォームで行う
    • 小口化:不動産の所有権をトークン化して流動性を上げる

    ブロックチェーン技術による不動産企業の真正性担保

    不動産業界の課題として一つ目に、事業者ごとに不動産情報の同期が徹底されていないことが挙げられます。不動産情報の現状はデジタルコピーで溢れ、様々な事業者が情報を保有・活用することでデータの正確性やリアルタイム性が担保されない状態となっています。

    • 問い合わせると物件がない
    • 管理履歴が残っていない
    • ユニーク情報(物件の詳細)がない

    これらの被害を消費者が受ける事を防ぐ必要があります。

    この解決策として、LIFULLはブロックチェーンの情報共有プラットフォーム上に多様で正確な不動産情報を集約することで、業界全体で情報の同期を図ることを提案しています。

    しかし、不動産業界は情報産業である点から、情報の共有はビジネスにおいてデメリットと感じる事業者が多いのも現状です。従ってオープンなプラットフォームでありながら情報共有の範囲をどこまで限定するか、つまりプラットフォーム上のIDを発行する事業者の見極めが鍵になってくると松坂氏は語ります。

    ブロックチェーンによる不動産企業の権利公証(不動産登記)

    不動産登記とは不動産の二重譲渡を防ぐため、所有を証明する書類であり、とてもレガシーな仕組みとなっています。

    不動産登記に関する課題として主に以下の3つが挙げられます。

    • 登記をしない/更新をしない/相続登記をしない人が増えており、空き家の所有者不明問題が顕在化している
    • 義務化されていないため、価値の低い不動産に関しては登記費用の支払いを嫌って行わないケースがある
    • 相続などで二重譲渡を行う主体が存在しない場合、登記の必要性が薄れる

    そこでブロックチェーンを用いて、不動産権利移転登記モデルで解決できるのではではないかと考えられています。不動産の所有権トークンを権利移転プラットフォームのパブリックチェーン上でやり取りすることで、政府機関などの第三者を通さずに移転契約を有効にできるため様々な手間を省くことができます。地方の空き家など二重譲渡するメリットやインセンティブがない相続、移転登記にとても有効です。

    しかし、既存の登記と整合性を取る事が難しく、登記のダブルスタンダードが存在するという課題に直面しています。

    ブロックチェーンによる不動産企業の小口化

    最後に不動産業界における少子高齢化と空き家問題も深刻化しています。世帯数の減少と総住宅数の増加に伴って、2033年度の空き家率は30.4%と予測されています。

    空き家を民泊施設やカフェにリフォームして収益化を図るためには、投資家と空き家所有者にリターンを与える仕組みが必要です。

    クラウドファンディングなどの証券化スキームのファンド規模は3億〜で不動産のデジタルアセット化にはコストが見合いません。そこでスマートコントラクトを用いた不動産の証券化スキームの開発が進められています。不動産共有持分の小口売買プラットフォーム内でEthereumのスマートコントラクトが機能することで人の手を介さない投資が可能になります。

    不動産とブロックチェーンは相性がよく、今後も可能性が広がる領域であると松坂氏は語りました。

    Blockchain EXE#19 企業×ブロックチェーン特集