プロトコル、トークン、トークンセール、次は何?

Ethereumは分散型アプリケーションを作れるようにしただけでなく、ネットワーク自体を発展させる仕組みを備えています。主に2点あります。

1.お金

これに関しては明らかですね。前述した通り、トークンセールにより交換可能なトークンを簡単にリリースでき、プロトコルやアプリケーションを開発するための資金調達を行うことができます。この資金を使って、チームはサービスのネットワークを拡大させるための販売、マーケティングなどに投資することができます。

2.ユーザー

プロトコルや分散型アプリケーションは、トークンセールを行う事により参加者を早期に獲得し、ネットワーク効果の問題を解決するメカニズムを持っています。参加者にとって、今後トークンが価値が出る可能性があるため、より早くトークンを購入するインセンティブがあります。

つまり早期参加者のインセンティブと、開発チームのインセンティブが完全に一致するのです。これにより、早い段階で参加者のネットワークを作りやすくなります。

例えば、新しいファイル共有のプロトコルを構築するとしましょう。トークンを販売して、それを早期参加者や投資家が購入します。彼らは単に投機的な投資に興味があるだけかもしれませんし、本当にその製品の可能性を信じているかもしれません。いずれにしてもこの時点で、彼らはこのプロトコルの「ステークホルダー」となり、製品が成功したら金銭的な見返りを得る事ができます。

そしてこれらの早期参加者はトークンの価値を高めるために、プロトコルの上に構築された製品のユーザーになったり、開発者としてプロトコル周辺のサービスを構築するインセンティブがあります。プロトコルが採用されればされるほどトークンの価値を高め、より多くの投資家や開発者、ユーザーの注目を得、最終的により多くのアプリケーションが開発される好循環が生まれます。

Ethereumが革新的なのは、プロトコルとアプリケーション開発において、とてもフレキシブルな仕組みを提供している事です。今後数年間にわたって、革新的なプロトコルとアプリケーション多く作られる事を期待しましょう!もちろん多くのスタートアップが失敗するのと同じように、これらの試みの多くは失敗するでしょう。しかし時間が経つにつれ、生き残ったプロトコルと関連するネットワークにより、ブロックチェーンがもっと一般に普及するでしょう。

最後に、これらのプロトコルが標準化すると、分散型アプリケーションがその上に数多く構築されるようになります。

まだハッピーエンドではありません

トークンセールでは、プロトコル開発を促進し、そしてプロトコル上のアプリケーション開発を促進する「燃料」を販売すると言えます。

もちろん、これだけで完璧なハッピーエンドとは言えません。

まず第1に、早期参加者を獲得するだけでは十分ではありません。従来のビジネス同様に、ネットワーク効果を持続させるために膨大な労力を割く必要があります。何年にもわたり優れたアプリケーションを開発し続ける必要があるのです。

第2に、現在のトークンセールの大部分が、ある特定のアプリケーションのネットワーク効果をもたらすためだけに行われており、オープンなプロトコルの開発にはほとんど使われていません。トークンは柔軟性がとても高いため、dAppの開発者は特定のdApp用に作られたトークンを作成しようとしてしまい、アプリケーション間で共有できる、標準化されたプロトコルを作ろうとはあまりしません。これはプロトコルの分断につながる可能性があります。

第3に、初期のトークンの価値上昇は主に投機によって行われます(価値あるプラットフォームになるまでには、時間がかかります。)。したがってトークンの価値変動性は高い傾向にあります。これをどのように緩和させるのか、そもそも緩和することができるのかはまだ明らかではありません。トークンの価値に関しては未解決の問題がたくさんあります。理想的には、ある上場企業の株式の価値が、その企業の価値に紐付けられているのと同様に、トークンの価値がプロトコルやアプリケーションの価値と紐付けられるのがベストです。しかし現時点では、トークンの価値は主に投機的な理由で変動してしまっています。

第4に、詐欺が横行しています。規制により、トークンを株式として販売することは困難であるため、多くの開発者はそれをしようとしません。代わりに、より大勢の人をターゲットにしたトークンセールを行いますが、トークンセールが注目されている事を利用して、数百万ドルの資金を調達した後すぐに行方をくらますような人たちもいます。社会に還元する、素晴らしいサービスを築くために集まった人には利益をもたらすが、詐欺師は恩恵を受けないようにしたい。この様な仕組みをどうしたら作ることができるでしょうか。

まだまだ解決すべき問題はたくさんあります。

  • トークンセールの正しい仕組みとは何ですか?
  • どのような場合において、投資証券としてトークンを発行するのが理にかなっていますか?これらのトークンセールはどのように規制されるべきですか?
  • 個人投資家が、何を基準にトークンを評価すべきですか?
  • 投資家は、何を基準に販売プロセスが安全かつ合法的に管理されていると判断できますか?
  • 企業の清算価値の一部を、トークンの持ち主に分配する仕組みは必要でしょうか?配当金はどうでしょう?
  • トークンの持ち主が議決権を持ち、プロトコルまたはアプリケーションの管理をするのは現実的でしょうか?
  • 資金が調達された後、資金はどのように使われるべきですか?
  • 投資家は何を基準に、プロトコルやアプリケーションを開発するチームが長期的な計画やビジョンを実行できると判断できますか?
  • プロトコルごとに新しいトークンを作成するのではなく、Etherを使ったスマートコントラクトにした方が良いでしょうか?
  • 投資家の損益に対する税制は?
  • トークンセールがスタートアップの資本調達の主流となった場合、既存のベンチャーキャピタリストはどのように対処すべきでしょう?

結論

本記事において、トークンセールに関する私の見解を明確にし、またブロックチェーンの開発現場でよく混乱するポイントを整理しました。

暗号通貨とブロックチェーンの開発について語るのは、走っているチーターの写真を撮ろうとするようなものです。 この業界は日々目まぐるしく動いており、ピントを合わせようとするとぼやけてしまいがちです。 ただそれでも私は、暗号通貨に関する、もっと多くの人を対象にした教育が重要だと考えています。

私の仮説に何か間違いがあるように感じたら、ぜひご意見ください。私はもっといろんな人と話し、学びあいたいと思っています。健全で持続可能な暗号通貨経済と作り出すには、皆さんのご意見が必要です。

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この投稿はHackenoonに投稿されたオリジナル記事「Bitcoin, Ethereum, Blockchain, Tokens, ICOs: Why should anyone care?」をPreethi Kasireddyさんの許可を得て翻訳しています。

この記事を書いた人
Preethi Kasireddy: medium
(翻訳:平手宏志朗 / リードブロックチェーンマネージャー / 株式会社クーガー)

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