【ブロックチェーン導入企業 ユースケース特集】日本はブロックチェーンの技術大国になれるのか? | Blockchain EXE #19
19回目となるBlockchain EXEのテーマは『企業 x ブロックチェーンのユースケース特集』。
ブロックチェーン導入企業からゲストをお招きし、日本のブロックチェーン産業の現在地と成長未来を様々な視点からお話しいただきました。
目次
【Blockchain EXE #19 ブロックチェーン導入企業ユースケース特集2】エンタープライズにおけるブロックチェーンの動向と考察 – 日本オラクル株式会社|大橋雅人
大橋 雅人 Masato Ohashi|日本オラクル株式会社 東京理科大学院 技術経営修士(専門職MOT)取得。日本オラクルに入社後、製造業を中心とした業務コンサルティング、データ活用に関わるプロジェクト・マネジメント、コンサルティング・ビジネスの推進を担当。その後、ビッグデータ関連の戦略ビジネス開発/推進を担当し、現在はブロックチェーン、IoT、AIといった新規技術のビジネス開発/推進を担当している。 |
日本オラクルの大橋氏は様々な企業に対するヒヤリングを通して得た、企業のブロックチェーン導入動向や可能性について語りました。
企業におけるブロックチェーンの活用動向
業として取り組むイメージの強かったブロックチェーンですが、伝統的な大企業が既存システムに取り入れたり、既存事業の突破口として用いるケースも増えてきました。
企業のブロックチェーン導入を進める上での所感
- 的を大きく外したユースケース検討は少ない
- =>「ブロックチェーン=ビットコイン」という人は少なくなってきた
- =>メディアなどでの露出も増え、先行事例を参照されている
- 小規模な範囲から始めるケースが増えている
- =>大きく描き、現実的な範囲で迅速に始める
- =>他社より早く実績やノウハウを積み上げて、他のユースケースに応用したい
- 技術指向(新規性・PR)から実用指向(着実・地道)に
- =>すでに始めている、取り組んでいるお客様が激増
- =>現行の業務改善はもちろんだが、社会的意義、SDGs、監査・法律対応といった新たなモチベーションも
その中で、エンタープライズでのブロックチェーンの有効領域といえる3つの要素があります。
- 証跡ー企業間における正当性証明、トレーサビリティ
- 共有ー企業間をまたぐ効率的で、ほぼリアルタイムのデータ共有
- 効率化(自動化)ー企業間における契約の締結、履行、デジタルアセットの価値移転
これらの要素を活かせる事業として、「利害関係を超えて複数企業で取り組むべき共通のゴールがある。または複数企業間プロセスの効率化や確実な根拠や証拠が必要な場面に価値がある」と大橋氏は言います。つまり、複数企業の共創による課題解決、新たなビジネスの創出が必要な状況にブロックチェーンが活用できると言えるでしょう。
サプライチェーンへの資産ライフル管理プラットフォーム
オラクルのブロックチェーン技術を用いた事業展開として、Circulor社の取り組みが紹介されました。Circulor社は紛争地域で取れた鉱物の法規制対策や流通の透明化をブロックチェーンを用いたサプライチェーンの実装で解決しようとしています。
ブロックチェーンの透明性やトレーサビリティは、従来のサプライチェーンモデルでは困難だった一気通貫の可視化や最適化、リコール発生時の迅速な影響範囲の特定を容易にしました。特に自動車産業との相性がよく、Volvo Cars社はコバルトがリチウムに含まれている状態からリサイクルされ、車に搭載されるまでの工程のトレーサビリティを実現しました。
サプライチェーンで消費者に届けられた商品をその後も管理する試みも始まっています。資産管理プラットフォームを用いてビルや車といった資産を消費者が正しく買い、管理していることを証明するものです。
消費者であるユーザ側のメリット
- 資産管理の確実な証明
- 各種手続きの簡略化
- プロアクティブなメンテナンスサービス
- 透明性のある査定
参加企業にとってのメリット
- 契約処理の簡略化
- メンテナンス管理の効率化
- エコシステムへの顧客の囲い込み
- 正確な査定、中古価格の妥当性証明
- データを活用した新サービス
企業のブロックチェーン導入ポイント
最後にブロックチェーンを事業に取り込む際のポイントについてお話しいただきました。
「まず、事業の初期段階では先行事例を参考にしたユースケースの具体化が必要である」と大橋氏は言います。これまで非合理的だった複数企業間のプロセスやデータを繋げたいというニーズにブロックチェーンは特に有効です。
ユースケースが決まった後に、「なぜブロックチェーンでないといけないのか」をつめていきます。現状の問題を明確にすると、ブロックチェーンの特徴を活かせそうな箇所が次第に見えてきます。時にはブロックチェーンを使わないという判断も受け入れる必要があるでしょう。
ブロックチェーンの社会実装に取り組む会社は珍しくなくなってきており、技術的なハードルも劇的に下がっています。これからのブロックチェーンを用いたビジネスは”think big, start small”という言葉の通り、事業の全体像と課題発見を早急に行い、早い段階からイニシアチブを獲得することでメリットが得られると、大橋氏は強く語りました。