持続可能社会の実現に迫る!SDGs達成にむけたブロックチェーン活用のチャレンジ!!|Blockchain EXE #20
Blockchain EXE#20は、ブロックチェーンが、SDGsで掲げられた目標である持続可能社会の実現をいかに後押しすることができるのか、各領域で活動する事業家と共に、その実態と今後の展望について迫りました。
目次
- 生活者×スタートアップ×大企業によるブロックチェーンを活用したオープンイノベーション型の社会変革プロジェクト – 伊藤佑介 | 博報堂ブロックチェーン・イニシアティブ
- トークンエコノミーにおけるブロックチェーンとトークンの使い分け。個人の信頼を可視化するイノベーションサービスどうを設計するか – 小林 慎和|株式会社bajji
- ブロックチェーンが生み出した新しい文化 ~コミュニティトークンの活用事例~ – 平井威充|ステラエックス株式会社
- ブロックチェーンアイデンティティの今と未来 – 安田クリスティーナ|マイクロソフト・コーポレーション デベロッパー・リレーション クラウド + AI プログラムマネージャー
- ディスカッション:持続可能社会の実現に迫る!SDGs達成にむけたブロックチェーン活用のチャレンジ
ディスカッション:持続可能社会の実現に迫る!SDGs達成にむけたブロックチェーン活用のチャレンジ
石井:今日のプレゼンテーションの共通項は、ブロックチェーンが自動で持続される仕組みを作っているということでした。SDGsを実現し、持続可能なものにする上で、ブロックチェーンの活用が難しい部分はありますか。
小林:ブロックチェーンとは全然関係ありませんが、いわゆる社会課題解決のためのサステイナブルな活動が続くように、12年ぐらい前にワークした事例に、水を買うとアフリカの途上国に井戸を掘れるというプロジェクトがあります。井戸を掘ると何がいいかというと、水を汲んだり、飲んだりすることがコモディティ化することです。日常生活で無意識に行う動作のうち、どれか一つがSDGsに紐づいていると、持続可能というか、無意識に続けることができると思います。
安田:今の話を聞いて、特化することかなと思いました。プラットフォームも大事ですし、アイデンティティもある意味インフラストラクチャ―なので、井戸を掘ることがアイデンティティと分散しがちなのですが、SDGsには17の項目があります。これは女性平等、これは貧困、水、森、平和、労働環境などのように、かなり細かくきれいに整理されています。それを1つずつつぶしていかないと駄目だなと思います。プラットフォームでSDGsの項目毎の達成度がわかるものがあると、もっと解決につながるのではないかと思いました。
SDGsの枠組みは大きすぎる
平井:私が思うに、SDGsという枠組み自体が大きすぎるので、もっと細分化する必要があると思います。すでに、SDGsの中でも百何十個に細分化されているのですが、どんどん細分化してピンポイントに取り組んでいく必要があるかなと思っています。例えば、弊社で今、教育関連のプロジェクトを行っていますが、難民の方も含めて、平等な教育が受けられない子ども達がやはり多いです。そういった問題をブロックチェーンで解決できないかということで、教育関連の方と一緒に取り組もうとしているのが、ブロックチェーン上に学歴などの情報を保存でき、その人に足りないようなスキルや本来ならば身につけておかなければならないスキルを無料で世界中の人から教えてもらえるというサービスです。教えてくれた人にはトークンのようなものを発行し、勉強した子にはご褒美をあげようというようなことをしています。実行しようとしているのですが、やはり規模感が大きいので非常に苦戦しています。そこをどう小さくして、どこからスタートしていくかというところをきちんと考えていく必要があるなと思っています。
長期的利益をユーザーが享受するために
石井:ブロックチェーンに書き込むという部分で、先ほど安田さんから話してもらいましたが、デジタルIDを取得するメリットすらわからない、手続きに時間がかかるといった点で目先の利益を考えると導入が進みにくいのではないかという課題もありますが、その中でインセンティブ設計を技術的なもので解決する仕組みが重要だと思います。それに関してどう思いますか。
平井:インセンティブ設計というところでいくと、基本的には、企業側がとりあえず原資を持ち出す形になります。そして、ある程度トークンに価値が出てきたところでリターンを得るような設計を考えています。というのは、10数年前にCSR活動というのが流行ってきたのですが、中々うまくいきませんでした。その原因は、利益を取るということが当時の日本に馴染まなかったからで、その後にCSVKやUSG投資などいろいろと出てきましたが、ようやく今は利益を取っても大丈夫という話になってきています。なので、ある程度最初は原資の持ち出しにして、トークンが循環できたところでリターンを得るような設計を考えているところです。
伊藤:1つ前の話に戻りますが、私は実はSDGsについてあまり詳しくなかったのですが、勉強してすばらしいと思ったのは、世の中に世界共通の目標がなかったところにSDGsを打ち出し、世界の人たちが一緒に何かを達成する土台を作ったことです。言語が違う人たちが一緒になってSDGsに取り組んでいくためには、今のデジタルな世界をデジタルな仕組みに落とし込み、それを管理するシステムを作ることが必要です。SDGsの考え自体にはブロックチェーンは関係ありませんが、そういった考えをシステムに落とし込むときに、自律的にワークさせるような仕組みだと親和性が高いかなと思います。
安田:ブロックチェーンはいろいろな要素や技術の集まりです。トークンの話をされていましたが、ブロックチェーンを利用する時に、そもそもブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズムを変えると、トークンを発生させなくても使えます。トークンはその上に作るもので、トークンでなくてもいいです。何をどう使って解決していくのかというところの見極めはもう少し必要だと感じています。政府の改ざんがないところの証明だけでいうと、電子署名だけでいいかもしれません。もう1つは、先ほどの話と近いのですが、理想的なブロックチェーンの使い方は、ビットコインであると思っていて、Peer to Peerで運営しているLibraが出てきたときにつぶされたのは、やろうとしていることはビットコインと変わらないけれども、Facebookという攻撃対象があったじゃないですか。でも、ビットコインは絶対に消えない仕組みなのです。アイデンティティもそういう仕組みを作りたい。人が運営していて、この人たちがバリデートしたら、このアイデンティティは絶対登録されるという仕組みを作りたいです。一方で、それを大企業が使おうとしているという矛盾もあって、大企業を不必要とするためにできた技術のはずなのに何だっけという部分もあります。彼らが使うべきではないという意味ではなく、いろんなアプリケーションがある中で様々な定義はもっとあってもいいと思っています。
結局ブロックチェーンとはなんなのか?
小林:とても深遠な議論になりそうなのですが、結局ブロックチェーンとは何か、非中央集権とは何かとなった時に、おっしゃったように、ビットコインに刻まれた情報は消えない、改ざんできないというのは確かです。100%そうなのですが、そこに今、問題が2つあって、ブロックチェーンに情報が刻まれているのは確かなのですが、誰がインプットしたのか、誰が読むのかというのは、まったく違います。ここはある種、脆弱というか。これはあの国のあの子のIDだとインプットしたというのは誰でも言えてしまう部分で、ブロックチェーンは保存された後は万能で、これに代わるものはないという気がしますけれども、インとアウトがまだまだ課題です。
安田:昨日お会いしたスタートアップが、トランザクションをトレースバックして、無理やりこじつけるというのをやっていて、全員分はわからないと思いますが、児童ポルノサイトから来たという人は大体わかっているらしくて、私もびっくりしました。ビットコインのトランザクションのうち、そういったポルノ系、AMLによく引っかかっているものは8%しかないらしくて、思っているより少ないし、思ったよりブロックチェーンユーザーはホワイトだということに結構びっくりしました。本当かどうかわからないですけどね。
標準化と中央集権化のジレンマ
石井:みなさんの話と共通して、ぼくが思うことですが、標準化してなるべくみなさんが納得できるようなデジタルアイデンティティを作るという、サステイナブルな部分はあるのですが、この話とそれぞれの個人の主張がなかなか合致しません。ブロックチェーンで起きているハードフォークの連続というのは、収拾がつかない場合があります。こういう状態でどうやってプロジェクト化するのでしょう。結果的にコミュニティが力をもっている形になります。新しくできたブロックチェーンが技術的に優れているとか、パフォーマンスが高いと必死に言っても、あまりみんな試そうともしません。そうなってくると、大きくて、みんなが使っているコミュニティを自然と信頼するしかない。なかなか検証も難しいところですね。要するに、物理法則というのは変わらないと決まっているからみんな受け容れていますけど、デジタルなだけに変えられてしまうという穴がどうしても目立つと思うのです。それでどうなるのかなというのがぼくの疑問です。
小林:例えば、ビットコインが一番有名で寿命が長いわけですが、今、13,000から15,000のノードに散らばっている中で、たった10個ほどのマイナーが約8割を占めていて、結局中央集権でいろいろやり取りされているわけですよね。一方で、純粋なブロックチェーンが好きな人、エンジニアの人、もしくは、哲学的な人というのは、decentralizedに理想郷があると思ってやっているわけです。しかし、decentralizedはほぼワークしない。ワークしないというのは証明されているのではないかと思います。どこまでいっても、やはりdecentralizedな部分と管理する部分があって、絶対に必要なのかなと思います。
平井:分散というところのブロックチェーンは、非中央集権という部分が取り沙汰されていますが、ブロックチェーンの考え方で一番大事なのは、データの共有です。まずは、本当にそのデータを共有する価値があるかというところを見て、それから分散型非中央集権でいいかというところを見ていく。分散型だから理想郷のような国が作れると言う方もいらっしゃいますが、ブロックチェーンの一番いいところはデータ共有、そこに対してセキュリティが改ざんされない。そこから発想していくのが一番いいかなと常々思っています。
目次
- 生活者×スタートアップ×大企業によるブロックチェーンを活用したオープンイノベーション型の社会変革プロジェクト – 伊藤佑介 | 博報堂ブロックチェーン・イニシアティブ
- トークンエコノミーにおけるブロックチェーンとトークンの使い分け。個人の信頼を可視化するイノベーションサービスどうを設計するか – 小林 慎和|株式会社bajji
- ブロックチェーンが生み出した新しい文化 ~コミュニティトークンの活用事例~ – 平井威充|ステラエックス株式会社
- ブロックチェーンアイデンティティの今と未来 – 安田クリスティーナ|マイクロソフト・コーポレーション デベロッパー・リレーション クラウド + AI プログラムマネージャー
- ディスカッション:持続可能社会の実現に迫る!SDGs達成にむけたブロックチェーン活用のチャレンジ