Blockchain EXE & ConsenSys presents『Ethereum ハッカソン for インバウンド』を開催

2018年7月20日~22日の3日間に渡って行われたインバウンドをテーマにしたブロックチェーンハッカソン。数多くの応募から選ばれた16チームが、ハイレベルで白熱したハッカソンを繰り広げました。その最終発表プレゼンの後半をレポートします。

9.Okonomi

世界的に便利ではあるが、海外の観光客にとっては複雑すぎる電車の乗り換え問題に対してブロックチェーンを使った解決策を提案していただきました。

仕組み

  • 写真付きの道順を投稿
  • ユーザーの役に立てばTokenが付与される
  • 地方と都心でトークン付与量を変動させることで地方活性化も!

悪意のある投稿やレビューに対する対策として、”dislike”機能によるインセンティブ設計を考えているとのことでした。

成果物として渋谷駅の山手線から井の頭線への乗車案内デモを披露していただきました。

10.チームなんじょー「DQN Rejector」

日本に来た観光客が過去に悪ふざけをしていないかuPortを利用することで知ることができるDQN撃退アプリを披露していただきました。

課題

  • マナーの悪い観光客がいるために他の観光客もサービスを享受できなくなる
  • 外国人観光客への偏見
  • 入退場が把握できない
  • 常習犯などを業界全体で把握する必要がある

仕組み

  1. 常習犯などを業界全体で把握することができる
  2. もしも観光地を荒らす・他の観光客の迷惑になる行為をした場合、観光地の運営者はその人物のuPortに紐付けられたアドレスに対しDQNポイントを送りつける。
  3. 観光地側は観光客のDQNポイントの保有量に応じて入場を制限したり、要注意の人物を把握することができる。

今後の課題として、「DQNの判断基準」「ポイントがついてしまった人に対する救済処置」「集めたデータの活用」を挙げられていました。

11.NinjaCoin「世界中どこでも病院に行けるP2Pカルテ翻訳ネットワーク」

メディカル・ツーリズムは、中間業者が入って、国間の病院同士をマッチングしている背景から病院や電子カルテシステム会社が情報を囲っているそうです。そのためそれらの医療情報は非効率に運用されており、共有及び活用が出来ていません。

解決策

ブロックチェーンを活用した自分の医療情報の管理、翻訳、売買ができる分散型システム、分散型お薬手帳の流れは以下のようになります。

  1. 医療情報を翻訳者と医者に入力してもらう
  2. 中国語から英語に翻訳、監査者によってバリデートする
  3. 80%以上の監査がOKであれば翻訳完了
  4. その次のステップとして、個人情報と切り分けた形で、医療情報販売をする。

審査員の方から「アナログが多い医療業界に対する素晴らしいアイディアだが、日本の医療学会などを動かすのは相当大変だと思う。そのため、どのように最初の入り口を切り出していくかが重要になるだろう」というコメントがありました。

12.インフル「交流促進サービス」

現地の人と交流したい外国人に対してシャイな日本人が積極的に外国人と交流するためのインセンティブを考えたサービスを発表していただきました。

課題→解決策

  1. 【問題】外国人が日本に来てもきっかけがなく交流できない
  2. 【解決策】交流するきっかけを提供するアプリケーションを提供
  3. 【インパクト】地域活性化 • 2度目の来訪につなげる

なぜブロックチェーンを使うのか?

「本当にその人と交流した」という事実証明のためにブロックチェーンを利用するようにサービスを開発していただきました。

またゲーム的要素を入れることでサービスを楽しく利用してもらいたいというコンセプトがあるようです。

「190cmのロシア人と80歳ぐらいのおばあさんが旅でプレゼント交換をしている様子をみて、交流の面白さを感じた」というコメントがあり、バーチャルとリアルの連携のある面白いアイディアでした。

13.Dockyard「Night Pass」

東京の夜は世界的にもレベルが高いことから、夜遊びをスムーズにできるためのサービスを作っていただきました。

Night Passの提供する解決策

  • パスポートなしで本人確認を簡単にできる
  • 現金支払いをしなくてよい
  • チケットの事前購入
  • クラブの情報を一括にリサーチ

海外からの観光客は若い人が多いということから、遊びをスムーズにするためのアプリを開発していただきました。

「実態のないお店が登録してチケットを販売しないような仕組みが必要」とのコメントがありました。

14.ginpay「個人に最適化された旅行プランの提供」

課題意識

  • 多様性への対応
  • 分散化への対応

サービスの特徴

  • 旅行プランを提供して、その評価に応じてトークン付与
  • 観光地の有名度に比例してトークン付与量が変化

このインセンティブ設計を通じて、東京・大阪のような観光都市以外の地域のPRになり、地方活性化に繋がるというサービスでした。

15.Cipher「Quick Pass Token」

行列で待たされて、充分に旅行コンテンツを楽しめないということがないように、行列に待たなくて良いQuick Passという便利なサービスを作っていただきました。

Quick Passの特徴

  • uPortを用いて来店を断念した際のチケット個人間売買が可能
  • 列長報告でのトークン付与

「トークンを得る仕組みはどのようになっているか?」という質問にたいして「まだ実装段階であるが、トークンを購入する画面がある」とのことでした。サービスの完成度が非常に高いチームでした。

16.LIFULL

予約システムをuPortを用いて簡略化するサービスを披露していただきました。

宿泊する際に必要なもの

  • 予約確認
  • 本人確認
  • レセプト
  • カギ

今後の課題として、さまざまなタイミングで決済ができるようにする必要があるとのことでした。

≫前半の発表

Blockchain EXEハッカソン「審査員・サポーター」コメント

大賞にはグローバルに使える学生証明サービスを作ったHi-Conチームの「Gakusei」、Blockchain EXE賞にはWi-Fiのシェアリングサービスを作った美食倶楽部より「uWi-Fi」が選ばれました。どの発表もレベルが高く、非常に僅差な戦いとなりました。

ハッカソンの最後に審査員・サポーターから参加者に対し、様々んコメントをいただきました。

宮口礼子氏 | Exective Director at Ethereum Foundation

uPortを使うというテーマであったため、個人認証をいかに活用するかが審査において重要な点だったかと思います。発表にあったサービスを組み合わせたら、更に良いものが生まれそうなものも多数ありました。2016年にEthereumのハッカソンに参加した時と比べ、ブロックチェーン業界が大きく進化していて非常に嬉しく感じます。
規制などのチャレンジが日本では多くあるかもしれませんが、Ethereum Foundationはプロダクトを作る人をたくさん生み出すために活動しています。その中でこのような熱気のあるハッカソンは重要な役割を果たすと思いますし、特に若い人の力が日本で育っているのが我々も非常に勇気付けられます。今日は本当にありがとうございました。

Danny Zuckerman氏 | uPort Strategy & Operations

3日間参加できて非常に楽しかったです。uPortはコミュニティの存在が重要であり、様々なアイディア・プロダクトが作られるように頑張ってるので、このような素晴らしい発表をたくさん聞けてよかったです。

澤本豊氏 | J&J事業創造プロデューサー

素晴らしいアイディアばかりで、こんなに楽しい仕事があるんだなと思いました。久しぶりに素晴らしいハッカソンを見たなと思います。もっと長い時間、発表を聞いていたかったです。是非、お時間ある時に(オフィスに)サービスの話をしに遊びに来てください。

Kames Cox-Geraghty氏 | uPort Fullstack Developer

3日間、色々な質問・アイディアに対して答えるという役割をやりましたが、非常に楽しかったです。どれも魅力的なアイディアなので是非、実用化してほしいと思います。

石黒一明氏 | Head of EEA Japan

皆様の全力でぶつかっている姿をみて、非常にエネルギーを感じました。コードレビューをしている中で、”ハッカソン後にビールを買いに行く”というissueがあって、それがclosedになっていたので、ハッカソンが終わって無事にビールを買いに行けたようでよかったなと思いました。

澤田拓也氏 | KDDI 商品戦略部部長

uPortやそのようなサービスが広がった時に、どのように活用できるかを深めることが、今後のサービス開発における課題かなと思いました。素晴らしい発表をたくさん聞けて非常によかったです。

稲葉慶一郎氏 | 日立製作所 オープンイノベーション推進室室員

一つ悲しいことがあるのは、なぜ僕はそちら側(参加者側)に座っていないのかということです。私はプレゼンだけでなく、プロダクトを作る上で試行錯誤をしている姿にこそ価値があると思っています。アイディアそのものだけで上手くいくことはほとんどありません。たくさんピボットしながら、たくさんユースケースを作っていくことを楽しみにしています。また、事業として生き残るために、ゴールの大きさだけでなく、送客・サービスの入り口にもこだわってほしいです。
ブロックチェーンの個人に対してデータの権利を取り戻すだけでなく、トランザクション単位に信頼を積み上げていく部分にも期待をしています。皆様の今後の活躍を楽しみにしています。

石井敦氏 | Blockchain EXE代表, クーガーCEO

今回はEtheremの中枢グループが全て参加しているという貴重なハッカソンとなりました。今回の審査基準は企画力・技術力・新規性・ピッチということですが、なぜこれを基準にしたかというと、どれもが一定基準を満たさなくてはブロックチェーンの社会実装は進まないからです。
Blockchain EXEではそれらのスキルや知識が身につくために、毎月開催されるBlockchain EXE, 実装しながらスキルを身につけるBlockchain EXE Code, 法律を学ぶBlockchain EXE Legal、その他にも様々なコミュニティを運営しています。第2回も考えていますので、引き続きよろしくお願いします。

Jim Maricondo | ConsenSys, Japan Business Development Lead

新しい時代の分散型アプリケーションを世界中に普及させるためにConsenSysは活動しています。我々はアクセラレータープログラムも開始させます。是非、サービスの実用化を本気でしたい場合は応募してください。素晴らしい発表をありがとうございました。

イーサリアムを用いたインバウンドハッカソンは無事に大成功

3日間という非常に短い時間にもかかわらず、レベルの高いハッカソンとなりました。今回のハッカソンの開催はBlockchain EXEのコミュニティメンバーから生まれたアイディアです。様々な問題が起こりながらも、結果的に素晴らしい内容となり大成功で終えることができました。

国内だけでなく、国外での活動も進めているBlockchain EXE。日本でのプロダクト開発を加速するために、今後も様々なアクションを起こしていければと思います。

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