はじめに

連日、ビットコインの価格変動やICOによる巨額の資金調達のニュースが取り上げられています。

特に今年は企業側だけでなく、一般消費者に対するFintechの認知度がかなりあがったのではないでしょうか。

ビットコインは魅力的な決済手段であることは間違いありません。しかし影響力が大きくなったぶん、ICOによる詐欺や国家が仮想通貨を悪用するという問題も増えています。

「ハードフォークが起きる!」「中国が規制!」「ICOで100億調達!」など断片的な情報は目にするものの「全体として何が起きているのか?」という部分はイマイチわかりません。(そんな簡単にわかるのなら儲けられるのかもしれませんが笑)

▼目次

  • インターネットバブル崩壊の歴史
  • バブル→崩壊→回復→再成長
  • 仮想通貨マップから見る過去と現状
  • 各国政府や企業のブロックチェーン技術に対する発言・規制
  • ビットコインバブルは危険なのか?安全なのか?
  • 仮想通貨は衰退するのか
  • まとめ

インターネットバブル崩壊の歴史

インターネットバブルとは

インターネット・バブル(英語: Internet Bubble)とは、1990年代末期から2000年代初期にかけて、アメリカ合衆国の市場を中心に起こった、インターネット関連企業の実需投資や株式投資の異常な高潮である。ITバブルとも呼ばれるが、通常、英語では「dot-com bubble(ドットコム・バブル)」と言う。

wikipediaより

1995年のWindows95の発売は一般の消費者にわかりやすい形でITイノベーションが認知され、それを契機にインターネットバブルを加速させました。

億万長者として言わずと知れた”ビルゲイツ”は、そのWindowsの生みの親であり、マイクロソフトの創業者です。彼の資産は2017年時点で893億ドル(9兆円越)と言われています。

このバブル期にはアメリカだけでなく、日本のIT企業も株価を高騰させていました。連日ファンドの圧倒的な規模や投資額で注目を浴びている孫正義社長ですが、彼の会社であるソフトバンクのバブル当時の時価総額は一時20兆円を超えていました。(現在のソフトバンクの時価総額は約10兆円)

もちろん当時の20兆円と今の20兆円は物価変動によって単純な等価はできませんが、”異常”な盛り上がりであったことは間違いありません。

なぜ、このインターネットバブルを生み出したのか、要因として3つあげられます

  1. 景気低迷による先進諸国の金融緩和政策によって投資マネーが大きく動いた
  2. アジア通貨危機とLTCMの破綻で、マネーの投資先が限定された
  3. ビルゲイツや孫正義といったカリスマ創業者が大富豪にのし上がった事で、投資家のIT事業への投資を加速させた

世界の金融歴史辞典より

1.に関しては世界中で投資マネーは大きくなっているので、(因果関係は別として)投資マネーによる仮想通貨市場の盛り上がりは否定できないでしょう。3.に関しては現状の仮想通貨市場も同様の動きが見られます。

しかし、このバブル期に中身の伴わないIPOを行う企業も多数いました。

どれだけ経営状態が健全でなくても株価は上がり続けるという不思議な現象が起きていました。

インターネットバブルが崩壊した原因

ITバブルが崩壊した原因として専門家の見解は多くありますが、明確な答えはありません。

しかし一つの大きな理由として

「よくわからないけど盛り上がっている・儲かりそうだから」

という理由で実体を理解せずバブル投資をした人々、またそれを利用して体裁だけ繕ってIPOをおこなった悪質な企業が多くいた事があげられます。

無学なる者は貧人となり下人となるなり

福澤諭吉

つまり無知な状態で投資を行うことは大きなリスクがあるという事です。(知っているから儲かるというわけでもありませんが。。)

不動産会社にしても株にしても”情報”を知っているか、知らないか非常に大きな差になります。

極端な例をあげれば、上場前にインサイダー取引をすれば必ず儲けられます。何が言いたいかというと「”正しい情報”を持つことは非常に重要である」という点です。

バブル→崩壊→回復→再成長

NASDAQ(ナスダック)指標からみるITバブル崩壊から現在までの変遷

NASDAQ(ナスダック、National Association of Securities Dealers Automated Quotations)は、1971年に全米証券業協会(NASD)の主催で開設されたアメリカ合衆国にある世界最大の新興企業(ベンチャー)向け株式市場である。

wikipediaより


NASDAQ Composite – 45 Year Historical Chart

インターネットバブル(ドットコムバブル)が異常な盛り上がりを見せていた事はこのグラフをみれば明らかです。

とはいえ、バブル崩壊後のリーマンショックによる景気低迷を経て着々と回復および成長をしていることがわかります。

下記は2000年のインターネットバブル期と2015年のNASDAQ銘柄をバブルチャートにしたものです。

2000年のインターネットバブル期

2015年のインターネット社会成熟期


グラフ引用

バブルチャートからみた歴史

バブル期:Tech系(紫系)ばかり

バブル崩壊:銘柄が多様(カラフル)

私は「バブル崩壊後IT企業はオワコンになった」と言いたいわけではありません。

実際、今の世の中を大きく変えているのはIT企業であることは世界の時価総額ランキングをみれば明らかです。

2015年の銘柄を見てわかるように、”IT”が絡んでいる企業は数多くあります。

重要なのは「バブル期の異常」を経て「市場が健全化し、”IT”が多様化した」という点です。

仮想通貨マップから見る過去と現状

続いては、仮想通貨の現状について見ていきましょう

下図は2013年から今年にかけての仮想通貨全体の時価総額です。

仮想通貨全体の時価総額の推移

ここ1年程度で急激な盛り上がりが起きていることがこの図からわかります。

ビットコインという名前が世間に知られる大きな契機となったMt.Gox事件は2014年に起きたという事を考えると、今の仮想通貨市場の影響力の大きさは相当です。

マクロで見るとビットコインは今まさに一回目の大きな動き(バブル?)を見せていると言えるのではないでしょうか。

下記の動画は過去に起きたバブルの歴史を説明している動画です。(*英語)

2017年時点の仮想通貨の勢力図

さて、2017年の仮想通貨取引量トップ100種の時価総額マップを見ていきましょう。

ハードフォーク問題もありながら、一番歴史のあるビットコイン(BTC)が圧倒的な時価総額となっています。

ドットコムバブル崩壊後の市場拡大と同じように、今後も多くのコインが増える一方で、詐欺コインを筆頭に、現在ある様々な仮想通貨が淘汰されていく可能性は十分に考えられます。。

現状は技術的に他の通貨と違いのない通貨ばかりです。将来的には差別化された新たなトークンが数多く生み出されていくでしょう。

各国政府や企業のブロックチェーン技術に対する発言・規制

続いては仮想通貨、ブロックチェーン技術対する外部環境や周囲の反応がどうなっているのかを見ていきましょう。

中国の金融当局がICOを禁止

中国の金融当局はICOを禁止しました。それに伴って、いくつかの仮想通貨取引所は自ら取引所を封鎖することを発表しています。

とはいえ、モバイル決済が普及しており、マイニング大国でもある中国がこの分野から撤退する可能性は低いです。

今回の規制の狙いはICOによる詐欺被害の増大による、一時的な市場の引き締めをでしょう。

ロシア政府は仮想通貨を支持

ロシア政府は自国のマイニングファームであるRMC(Russian Mining Coin)の独自トークン発行を後押ししています。

マイニングという点で言えば、ロシアの寒い気候を考えると、今後ロシアが仮想通貨技術で盛り上がりを見せる可能性は十分にあります。(またロシアは数学オリンピックで常に好成績をおさめている国なので、ブロックチェーン分野において大きなポテンシャルを持っている気がします)

日本の仮想通貨の位置づけ

日本は改正資金決済法の施行に伴い、利用者保護や資金管理体制などの観点から仮想通貨取引所を開設する際は登録が義務付けられました。

世界のニュースメディアでは連日、仮想通貨に関する話題が取り上げられています。その中で”Japan”というワードは頻繁に使われており、「日本政府の動きを見習うべきだ」という専門家もいます。

現金主義が根強いという意味では決済分野において遅れていると言えますが、仮想通貨に関する政府の動きは他国と比べて進んでいるという見方もできます。

とはいえ、日本のテレビ局よりもアメリカのテレビ局の方が仮想通貨に関して頻繁に取り上げているという事を考えると、情報のアップデートのため常に日本の外にアンテナをはっておくべきかと思います。

JPモルガン社長が仮想通貨は詐欺であると発言

JPモルガンの社長が「仮想通貨は詐欺である」と発言したことを受けて価格が一時変動しました。

中国でのICOの規制を例にあげながら、他国政府も同様の動きをみせるだろうという見解を示しています。

しかし彼はブロックチェーン技術の可能性については大きな期待を抱いており、実際にJPモルガンではブロックチェーンの実証実験を行っているとの報道があります。

IMF専務理事ラガルドの見解

‘We are about to see massive disruptions’と発言

彼女はビットコインなどの仮想通貨に対して否定的な考えではなく、それらによって銀行を筆頭とした金融業が劇的に破壊されるという見解をもっています。

国際金融組織のトップが、このような未来を見据えた発言をしているという点において、日本の銀行はFintech革命にあぐらをかく余裕はありません。。

ビットコインバブルは危険なのか?安全なのか?

ここまでインターネットバブルの歴史と仮想通貨の現状を見てきました。

比較する市場の大きさが桁違いですが、「なんとなく似ているなーー」と感じた人、いや全然比較にならないよという人もいるかと思います。(ので是非newspicksでコメントください。)

中国政府のICOの規制を受けて「中国は時代遅れになる」と主張する人もいますが、この動きを一概に否定することはできません。なぜなら中国政府は今のICOが健全な状態でないことを危惧しているからです。

中身を理解していない人々による投資、それを利用した詐欺の多さから、危険 or 安全かで言えば、多くの人にとってリスクがあると言えます。(そもそもリスクのない投資は存在しませんが。。だからこそ中央銀行はリスクの高いETFよりも国債を買います。)

とはいえ仮想通貨が消滅することはないでしょう。

ICOを規制してもあまり意味はない

当然のようにICOを禁止しても仮想通貨そのものが消滅するわけではありません。

ビットコイン取引所が中国で使えなくても海外の取引所を使えば良いですし、むしろ海外で動かした方が足跡を消す事もできます。

メルカリでお金が売られた事が問題になったように、決算手段を規制することは実質的に不可能です。

例えば、

「オレオレ詐欺が蔓延しているから電話通信を禁止にします。電話をした人は罰金100万です」

と言って政府が国民の通信手段を奪うことは困難です。

「電話という便利なテクノロジーのおかげで手紙のように時間をかけずにリアルタイムで情報交換ができるようになった。」その結果、詐欺としても使われるようになってしまった程度の話です。

つまり

「ビットコインで世界中で決済できるようになったし、個人間送金も一瞬でできる。独自のトークンを発行して自分の仲間が集まる経済圏を作れるようになった。」その結果、詐欺としても使われるようになった程度の話です。(まだそうはなっていませんが)

世の中は脱税しようと思えばバレずに脱税できてしまいますし、メルカリだって悪用しようと思えばいくらでも悪用できてしまいます。

でも99%の人はそんなことしないでしょう。

なぜか

「わざわざ、自分の信用を損なうことをしようとは思わない」という理性が働くからです。

その理由がもっとわかりやすく書いてあります。↓

なぜ中国はICOを禁止したのか?

それではなぜ中国はICOを禁止したのでしょうか?

一つの大きな理由として市場が健全ではないからという点があげられます。無知の人が被害にあわないための事前の救済手段でしょう。

中国委員会が「ICOの大部分が金融詐欺でありネズミ講である」という警告をだしていることからも、その意図を読み取る事ができます。

自国の通貨が国外に流出することを完全に防ぐことは上記の理由からも不可能です。中国ではFacebookが使えないように、他国の良いところを吸収しつつ高い参入障壁を作るというスタンスです。一方でシンガポールのように、外資をたくさん入れて経済を発展させるといったやり方もあります。

そのため、”規制”を表面的に捉えるのではなく、成功している国から「規制によって、どのような動きを見せるのだろうか」を考える事に価値があります。

仮想通貨は衰退するのか

インターネットバブルと現状の仮想通貨を比較しましたが、重要なポイントは「バブルが崩壊して仮想通貨は消えていくだろう」ではありません。

健全化されていない市場においてはインターネットバブル同様に消えていく企業(通貨)は多いがブロックチェーン(仮想通貨)もキャズムを経て世の中に普及する可能性があるという点です。

インターネットバブルが弾けた後、我々のありとあらゆるものがICT化されました。つまり、仮想通貨あるいはブロックチェーン技術も同様に長期的には衰退せず徐々に我々の生活の一部分になっていくのではないでしょうか。

もちろん、技術は掛け算によってサービス化されていくので「AI×ブロックチェーン」「モビリティ×ブロックチェーン」など様々な形(=多様化)をとっていくでしょう。

»»AI(人工知能)はどのようにしてブロックチェーンと共創していくのか

ドットコムバブルが弾けた後、ナスダック総合指数は成長を続けています。このことからFitech革命はまだまだ序章であると言えるかもしれません。また、ここで述べているのは仮想通貨市場全体に対してであって、「このコインはどうなる?」というものではありません。

ドットコムバブル期にMicrosoftやIntelが頭角をだし、その後も世界トップの地位を誇っているように、中身が伴っているものは成長を続けます。

なので「ビットコインは儲かるの?」という問いに対して市場動向などの外部環境だけでなく、技術的な話(中身)を聞くべきでしょう。(技術的な説明が間違っていたら意味はありませんが)

まとめ(未来展望)

  • 無知は危ない(のでEXEで勉強しましょう)
  • ブロックチェーン分野は多様化して成長するのでは
  • 規制による完全撤廃は不可能

「歴史は繰り返す」とよく言いますが、未来のことなどわからないので本当に繰り返すのかは誰にもわかりません。

歴史が繰り返したとしても、私たちが縄文時代の人と同じ暮らしをする事になるだろうと想像する人はいません。なぜなら世の中は景気循環を繰り返しながら成長しているからです。

インターネットによってある程度の情報はググればすぐにわかるようになりました。その結果、”変化のスピード”は加速しています。

とりあえず「盛り上がっているから」ではなく「ブロックチェーンの〇〇には〇〇という可能性があって、〇〇社会を実現できるのか!」といった部分で本質を理解する人たちが増えていくにつれて、ブロックチェーンイノベーションは起きるのではないかと思います。

»ビットコインとは?日本経済から見る非中央集権型社会のこれからと未来

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