経済大国中国と進むブロックチェーン開発

ビットコインの構成要素として開発されたブロックチェーンという技術は、FinTechなど金融分野への活用が見込まれています。キャッシュレス化が日本よりも進む中国においても、ブロックチェーンに対する関心は非常に高いものとなっています。そこで今回は、中国とブロックチェーンのこれからについて説明します。

▼目次

  1. 進む中国のキャッシュレス化
  2. 中国におけるブロックチェーンの開発状況
  3. 中国国内における仮想通貨の規制
  4. 中国のブロックチェーンに対する意気込み
  5. 中国とブロックチェーンの未来

進む中国のキャッシュレス化

2016年に中国のインターネット利用人口は、7億人を超え、中国総人口の5割以上がインターネットを利用している状況になっています。中国では、インターネット利用人口の約95%がモバイル端末からの利用となっており、7億人近い人がモバイル端末でインターネットを利用している状態です。

このようにモバイル端末でのインターネット利用が進む中国では、現金ではなく電子通貨決済等のモバイル決済によるキャッシュレス化が拡大しています。

中国人民銀行が2017年末にまとめた2017年7~9月期の中国国内モバイル決済額は、2016年同期比39.5%増の49兆2600億元(約837兆円)に上っており、モバイル決済の規模の大きさと普及率が高いことが良くわかります。

モバイル決済を使う”機会”の多い中国

特に中国都市部でのキャッシュレス化の進展は目覚ましく、レストランやシェア自転車だけでなく、屋台での支払いもモバイル決済で行われるほど、普及しています。

中国国民にとっては、もはやモバイル端末、特にスマホが欠かせない存在となっているのです。

中国におけるブロックチェーンの開発状況

モバイル決済の普及を活かし、FinTechの開発が活況

中国の産業発展のキーワードとして、「インターネットプラス」が挙げられます。この「インターネットプラス」という言葉は、中国政府によって掲げられたもので、インターネットと他の分野を組み合わせて、産業を発展させるという意味があり、国策として進められています。

「インターネットプラス」を合言葉に発展しようとしている中国ですが、先述した通り、モバイル決済が普及していることもあり、FinTechの開発に特に力を入れて行われています。

FinTechの開発を進めることから、中国国内ではFinTech関連のベンチャー企業が台頭するだけでなく、モバイル決済に取り組んでいるアリババ等の企業が、中国で培った技術とノウハウを活用し海外へ展開するようになってきています。

中国の信用経済が急成長

これまで中国では個人の信用評価に対するインフラが未整備でした。それを表す数字として、個人の信用をもとに作成されるクレジットカードは、中国において約14%しか普及していません。しかし、2015年には個人信用調査に関する業務が民間に開放されたことから、参入が容易になり、個人の支払い履歴・収入などといった信用情報をFinTechと組み合わせて使用することで、金融サービスのさらなる拡大を模索する動きも見られています。

個人信用とFinTechの組み合わせの例として、中国のユニオンペイがIBMと共同でブロックチェーンを用いたポイント交換プラットフォームの開発に成功したと発表しています。中国ではユニオンペイの銀聯カードが普及しており、このポイント交換プラットフォームでは、銀聯カードの使用に応じて貯まったポイントをATM等で携帯料金等の支払いにあてられるようになったそうです。

FinTechだけでなく、様々な業界にもブロックチェーンを活用する中国

中国でブロックチェーンの取り組みが活発なのは、FinTechだけではありません。他の分野においても、中国ではブロックチェーンの取り組みを進めています。

中国では食品偽装による事件がこれまで頻発していたことから、ブロックチェーンの履歴が残り、情報が公開される特徴を活用して、食品情報のトレーサビリティ(追跡可能性)を実現する仕組みの導入にも力を入れています。ブロックチェーンの仕組みを使えば、流通過程の履歴が自動で残り、改ざんできないため、これまでの流通の過程で発生していた、食品偽装の問題が発生しなくなります。また、情報が公開されることから消費者は食品の情報を把握できるのです。

食品に対してブロックチェーン技術を活用することは、中国の食品の安全性と信頼を高めることにつながり、中国国内の食品市場に活況をもたらすだけでなく、食品輸出国である中国の貿易力をさらに高めていくことでしょう。

中国では食品の流通だけでなく、その他にも様々な業界へブロックチェーン技術を活用しようと取り組んでいます。中国のブロックチェーンの開発は、国策として進められているため、その進歩は目覚ましいのです。

中国国内における仮想通貨の規制

ブロックチェーンの開発に力を入れている中国ですが、仮想通貨に対しては規制を行っています。

中国はICOの禁止および仮想通貨取引の規制を強化

中国は、2017年9月4日に国内でのICOを禁止し、続いて仮想通貨取引所での取引の規制も強化しました。

ICOは、ブロックチェーン関連企業が独自の仮想通貨(トークン)を発行して、資金調達を行いやすくするものです。トークンを発行した企業は、トークンの対価を投資家からビットコインなど既存の仮想通貨で受け取り、それを換金することで資金を調達します。投資家は、企業のトークンを保持することで、将来的に価値が向上することを期待するのです。ICOで発行されたトークンは、株式と異なり、企業の議決権を持たないためトークン保有者が経営に関与できないという特徴があります。

ブロックチェーン技術に前向きな中国政府

ただ、ICOは、法制度が整っていないため、マネーロンダリングなど違法性の高い資金を利用する手段にもなりかねないと言われていました。そのような法制度の整っていないICOに対して、中国は違法行為につながる可能性があるとして、2017年9月4日に「代替貨幣の発行による資金調達 のリスクの防止に関する公告」を出したのです。中国では、公告が出される前にICOで資金を得た企業に対しても、資金を返還するように指示を出しています。

中国では、国内における仮想通貨の取引自体の締め付けも行いました。かつて、中国は仮想通貨大国と言われるほどで、ビットコインなど主要な仮想通貨取引は、中国を中心に行われていました。2017年初頭、中国のビットコイン取引市場の市場シェアは、約90%ほどもありましたが、2017年9月以降は約7%まで市場規模が縮小しています。

ただ、中国当局は、ICOの禁止や仮想通貨取引の締め付けは、あくまでも投資家の保護のためであり、ブロックチェーンの開発を阻害するためのものではないとしています。

中国のブロックチェーンに対する意気込み

法定デジタル通貨の導入を目標に掲げ、国策として開発に注力

ICOや仮想通貨の取引を規制している中国ですが、ブロックチェーンの開発には力を入れています。実際に、中国の中央銀行である中国人民銀行では、ブロックチェーン技術を取り入れた「法定デジタル通貨(CBDC)」の導入に向けて動いています。中国人民銀行は、他国よりも早い段階からCBDCに取り組んでおり、将来的にはCBDCを導入することを目標に掲げています。このように中国では、FinTech分野を中心に、ブロックチェーンに関する開発に力を入れているのです。

民間だけでなく政府も活発に動く中国

中国の場合、ブロックチェーンの開発を民間企業だけで行うのではなく、中国人民銀行のように国策として取り組んでいるところが、他国と大きく違う部分です。国策としてブロックチェーンの開発に力を入れているため、豊富な資金力があり、人材の獲得もスムーズに行われ、急速に進歩を進めています。

中国とブロックチェーンの未来

いかがでしたか。中国におけるブロックチェーンの取り組みについて説明しました。中国は、人口が多いだけでなく、モバイル端末の普及も進みインターネット大国となっています。膨大なネット利用人口を活用するだけでなく、国策としてもブロックチェーンに力を入れる中国の動きから目が離せません。

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