ワークショップ1日目
9/22-23に、モビリティ分野のエンジニアや、ブロックチェーン技術を使った新しいサービス企画者向けのイベントが行われました。テーマは、「ブロックチェーンはいかにモビリティを更新するか」です。ブロックチェーンコミュニティであるBlockchain EXEとWIREDとのコラボイベント。
1日目は、ブロックチェーンやモビリティに関する現状把握及びサービスの可能性をトークセッション形式で行い、2日目は、ワークショップ形式で「モビリティ×ブロックチェーン」のサービスを参加者全員で企画しました。どんな素敵な企画が生まれたのでしょうか、レポートします!
トークセッション
- イノヴェイションは「移動」から生まれる / 石井敦
- 「ブロックチェーン思考」をインストールせよ/茂谷保伯
- モビリティの未来を考えるネタ / 澤井大輔
- 合同セッション/ブロックチェーンはいかにモビリティを更新するか
イノヴェイションは「移動」から生まれる / 石井敦
クーガー 代表取締役 CEO。楽天やインフォシークの大規模検索エンジン開発、日米韓を横断したオンラインゲーム開発プロジェクトの統括、Amazon Robotics Challenge参加チームへの技術支援や共同開発、ホンダへのAIラーニングシミュレーター提供、「NEDO次世代AIプロジェクト」でのクラウドロボティクス開発統括などを務める。現在は「AI×ロボティクス×IoT×ブロックチェーン」による応用開発を進めている。
最初のセッションでは、クーガー石井氏より大きな仮説として、モビリティに合わせて人が移動する時代から、人に合わせてモビリティが移動する時代になるのではないかと提示がありました。AIとIoTとロボティクスとブロックチェーンの組み合わせで、モビリティの自律化が図られるからです。
まずは、自動車情報の共有、カーシェアリング、自動車保険での実装が進むとのことです。具体的には、北米トヨタが自動運転にブロックチェーンを活用すると発表しています。ブロックチェーンの特徴である改ざんが極めて難しい、データが検証可能(トレーサブル)、P2Pで非中央集権的である3点が、自動運転と親和性高いようです。
セッションを通して、ブロックチェーンとモビリティとの親和性が強く感じられました。自動運転や保険での実証実験も耳にするので、この動きは止まらないでしょう。今後の流れに注視したいですね。
「ブロックチェーン思考」をインストールせよ/茂谷保伯
KDDI コンシューマ事業企画本部 兼 KDDI総合研究所。日立製作所にて管理会計・経営管理に従事後、モバイルサーヴィスのスタートアップを創業。その後LINEにて「LINE Pay」の立ち上げ及び事業戦略・サーヴィス企画を行う。現在はKDDIにて「IoT×AI×ブロックチェーン」関連のプロジェクトを推進している。
このセッションでは、KDDI茂谷氏より、「ブロックチェーンのスマートコントラクトにより、connectedとautonomousが加速する」という仮説を中心に登壇頂きました。
スマートコントラクトの概念について、以下の例を通して学びました。
①雨が降ったらAさんがBさんに10万円を渡す。
②Bさんが10万円を花屋に渡すと、花屋は花をCさんに渡す。
①+②にて、全てがブロックチェーン上の共有台帳で妥当性を検証されながら動いた場合、「雨が降ったらBさんは花をCさんに送る」ことになります。
小さな契約が次々にブロックチェーン上で履行されることで、全体としては自動的に契約が進む、スマートコントラクトの概念を事例と共に理解しました。
また、ブロックチェーン技術の活用が大きく「情報・価値の流通」と「スマートコントラクト」に分けられ、整理されていたのが、わかりやすかったです。
印象に残ったのは、ブロックチェーンにより、自社の枠を越えてサービスを安全に組み合わせ、スピーディにつなげられる可能性があるとの主張です。
もし競合他社が着々とブロックチェーンのインフラを業界横断で、そしてサプライチェーン全体で構築しているとしても、後から追いつくのは容易ではないかもしれません。
モビリティの未来を考えるネタ/澤井大輔
本田技術研究所 四輪R&Dセンター デザイン室 FPCブロックマネージャー。1992年、本田技術研究所に入社。これまでに「S2000」「USアコード」などのエクステリアデザインを担当する。
ホンダデザイン研究所の澤井氏より、そもそも、モビリティとはLIFE、つまり生きることそのものであるとの主張をベースに議論が展開されました。
現在では、データの移動と物理的な移動との間には、極めて大きなギャップがあることを実感し、そしてこのギャップを埋めることがブロックチェーンで可能なのではないかとワクワクする仮説を説明してもらいました。モビリティが街に溶け込んでいる理想的な事例として、アニメで出てくるペンギン村の話があり、参加者の共感を多く得ていました。
自分の物理的な移動を振り返ると、自転車で風を切ったり、ケーブルカーに乗ったりするポジティブな感覚と、睡魔と戦いながらの通勤やドライブなどのネガティブな感覚が思い出されました。ネガティブな方は、改善の余地があるはずです。ブロックチェーンが武器になると嬉しいですね。
ブロックチェーンはいかにモビリティを更新するか
今までのスピーカー3名に加えて、リクルートの本庄氏とWIRED日本版編集長の若林氏も入り、モビリティ×ブロックチェーンに関する様々な議論が行われました。以下に抜粋します。
ブロックチェーン×モビリティのポイント
- モビリティとは、効率だけを追い求めるものではないのではないか。
- 車会社は、カーシェアリングサービス会社に車を提供することになるかもしれない。
- ブロックチェーンで循環する仕組みを作るには、人間の特性を踏まえたインセンティブ設計が大事になる。
- ワークショップ時に飛躍した発想をする場合は、ニーズの延長を追わずに、ありたい世界から追いかけると良いのではないか。
1日目まとめ
今回の議論を基に明日はいよいよアイディアソンです。事前アンケートから8人のグループリーダーが選ばれました。IT企業の開発者からエコノミスト、出版業と多様性に溢れていて、明日のワークショップが非常に楽しみです
ワークショップの最後に懇談会も行われ、短い時間でしたが多くの意見交換が行われていました。
ワークショップ2日目
モビリティ×ブロックチェーンを8グループでサービス企画化
2日目は、8グループに分かれてモビリティ×ブロックチェーンのサービスを考えるワークショップです。最終的には、各グループがサービスをプレゼンします。
アイデアを共有し、グループのサービステーマを決めます。
各グループ共に、多様な意見を分類、集約、選択または創造するのに苦労していました。次に、テーマに沿ったサービスを設計するのですが、各グループ共に、出たアイデアをふせんに書いたり、模造紙にどんどんアイデアを書き込んでいたのが印象的でした。「それイイネ」や「それならこんなのどう?」などの声が飛び交い、新しいアイデアが生まれた瞬間も多くあったようです。
今回は、ディスカッションの途中で、メンバが他グループに移動して、また自グループに戻ってくる流れになっていました。
さらに、「ファシリテーター」として、EXEメンバー中心にブロックチェーン目線やホンダデザイン研究所中心にモビリティ目線、アルチェコ中心にサービス目線でのディスカッションパートナーがグループと対話しながらの進行でした。
その結果、当初案からどんどん進化するグループや、当初案を深掘りして、かなり具体的なサービスを設計するグループなど、短い時間の間に目まぐるしくサービスが変化していったように見受けられました。
各チームのプレゼンタイトルはこちら!!
チーム |
アイディア |
A |
世の中の境界線を「社会問題」×「遊び」でハックせよ! 応募条件のスマートコントラクト |
B |
人間関係がギクシャクしないライドシェアプラットフォーム |
C |
Mobilityを支えるデジタルID |
D |
クルマ=ケータイ |
E |
場所と移動の記憶 |
F |
あなたのコンシェルジェ |
G |
自転車が加速する街創り VERO-CITY |
H |
権利付き移動空間として捉える付加価値 |
プレゼンの内容は、どのグループも現実的でサービス化可能なものが多くあり、参加者のモビリティ×ブロックチェーンをビジネスにする意識の高さを感じました。関係者の投票により、最優秀賞としてAグループ、優秀賞としてCのグループが選ばれました。
非常に短い時間であったのにもかかわらず、どのチームのレベルの高いプレゼンでした。
まとめ
総評として、石井氏からは、この機会に得た他者との接点や、自分にない視点をビジネスに生かして欲しいとメッセージがありました。若林氏からは、ワークショップの形式や民社的な企画プロセスなのかまだ不明だが、今までにない発想やアイデアを阻害する危険について語られました。さらにおもしろい発想をする為に、飛躍した発想を殺さずに、「どうやったらその発想を実現したことになるのか」の視点を忘れないことが重要であるとフィードバックをもらいました。
2日間を通して感じたのは、特にチームAがそれを体現していましたが、同じ目的を持った多様なメンバーが集まり、強いモチベーションがあれば、新しくておもしろいアイデアはどんどん生まれることです。
モビリティ×ブロックチェーンは個人的に強い興味があるテーマなので、情報収集、様々な方との対話を継続します。